2017年5月12日金曜日

★中国の新型練習戦闘機L-15Bは途上国向けの選択肢か



よくわからないのがこういう機体を中国は何を目的に作っているのか、輸出用となれば安易に購入できることから韓国のFA-50を駆逐して途上市場を狙うのでしょうか。練習機で戦闘機にもなるといっても中途半端な性能では成熟した市場では需要が期待できません。また機体の信頼度も未知数ですから平気で購入するのは一部国だけでしょう。

China's HAIG rolled out its L-15B LIFT in a ceremony held at the company's Nanchang headquarters on 1 May. Source: CCTV via sina.com.cn

China's Hongdu rolls out L-15B lead-in fighter-trainer 洪都航空工業がL-15B戦闘練習機をロールアウト

Richard D Fisher Jr, Washington DC and Gabriel Dominguez, London - IHS Jane's Defence Weekly
04 May 2017
洪都航空工業集団Hongdu Aviation Industry Group (HAIG) がL-15A(JL-10)高等練習機/軽攻撃機の新型を発表し試作型が同社の本社南昌で5月1日にロールアウトしている。
同機は防空任務、対地攻撃任務に投入可能と中航技进出口有限责任公司(CATIC)が説明している。中国国内メディアは新型機は戦闘能力もさることながらL-15A練習機と同じ装備であり、韓国航空宇宙工業のFA-50戦闘練習機と同等だと説明。
ただし新型はL-15Aとはアフタバーナー付きデジタルエンジン制御エンジン双発となっている点が違う。イヴチェンコ-プログレス(ウクライナ)のAI-222-25Fの可能性が高く、海面上最高速は1,200キロだとJane's航空機年鑑に記述がある。
L-15Bは原型機とはもう一つ違う点がある。機首にパッシブ電子スキャンアレイ(PESA)レーダーを搭載し有効範囲は75キロといわれる。また電子装備でもレーダー警報受信機(RWR)を垂直安定板上部に取り付けているようだ。機首のフィンアンテナは敵味方識別(IFF)装置のようだ。
CATICによればL-15Bには武装用ハードポイント9点があり、ペイロードは3.5トンだ。
5月2日に中国国内ウェブサイトGuancha.cnに記事があり、翼端部は空対空ミサイル搭載に耐える強度があり赤外線・ヘルメット視野誘導方式の洛陽電気光学研究所製PL-9CAAMを搭載できると伝えている。■

2017年5月11日木曜日

アフガニスタンへ米海兵隊増派、戦略案見直しも



米海兵隊がアフガニスタンのヘルマンド地方で活動を再開した。 Source: USMC

Marines return to Helmand as Pentagon relooks Afghan war plans

海兵隊がヘルマンドに復帰、ペンタゴンはアフガン戦方針を見直し中

Daniel Wasserbly, Washington, DC - IHS Jane's Defence Weekly
02 May 2017
  
米海兵隊がアフガニスタンのヘルマンド省に戻ってきた。ペンタゴンはさらに数千名を追加派遣し16年たっても決着がつかない戦闘に投入する検討中。アフガン軍部隊は相当の死傷者を出している。
  1. 米海兵隊(USMC)はオバマ政権下で20千名をヘルマンド省に投入しタリバンにより同省が掌握されるのを防ごうとした。2014年にも治安維持のため再派遣されている。だが4月29日に300名がキャンプ・ショラブに戻りアフガン陸軍第215部隊に加わった。現地部隊だけでは治安が維持できていない。海兵隊再派遣は2017年1月にオバマ政権が決定していた。
  2. 米国防関係者は数千名の追加派遣を検討中で国防長官ジム・マティスが2月に示唆していた新戦略方針を展開する。
  3. 今回の動きは米司令官から繰り返しアフガニスタン戦況が「行き詰まり」と述べ、NATOと米国が支援するアフガニスタン政府とタリバン他反乱勢力の関係を指してたあとに出てきた。
  4. さらに米アフガン再建事業特別監査官Special Inspector General for Afghan Reconstruction's (SIGAR)の最新報告書が4月30日に公表され、アフガン国土防衛治安維持部隊(ANDSF)は治安維持に苦労中のままと指摘があった。
  5. SIGARは在アフガニスタン米軍部隊(USFOR-A)の統計を使い、ANDSFが「ショッキングなまで高い」死傷者数(戦死807名、負傷1,328名)が今年1月1日から2月14日の間だけでも発生したと述べる。死傷者の主な原因は銃撃戦だ。
  6. USFOR-Aは「アフガン政府支配地域と反乱分子支配地域はともにこの四半期で増加したが、両者勢力が拮抗した地域は減っている」とまとめている。アフガニスタン政府は「かろうじて国土407地区のうち6割を支配し、タリバンは11%程度」で支配をめぐり争う地区は「29%ほどに減った」としている。
  7. アフガン政府の実効支配が一部地方で衰退している理由としてANDSFが「戦略的アプローチで優先順位をつけ、死守すべき最重要地区を選定しつつそこまで重要でない地区では力を入れていないため」だとUSFOR-Aは見ている。■

★★歴史に残らなかった機体(8)ヴォートF-8スーパークルセイダー




The F-8 Super Crusader: The Hot Navy Fighter that Almost Replaced the F-4 Phantom 

F-8スーパークルセイダーは米海軍がF-4ファントムの代わりに採用寸前までいった



April 30, 2017


  1. もし事情が事情なら冷戦時の米海軍トップ戦闘機はF-4ファントムの代わりにF-8クルセイダーになっていたはずだ。
  2. 北ベトナム上空でMiGを次々と撃墜したあのクルセイダーではない。F8Uを大型化しもっと強力にしたXF8U-3だった。
  3. クルセイダーIIIはメーカーのチャンス・ヴォートが海軍が採用したクルセイダーIおよびIIに続き開発した。名前がややこしいがクルセイダーIIIは大型機で以前の型と別の機体といってよい。
  4. スーパークルセイダーは1958年6月に初飛行した。「ダッシュIIIの全般的性能はずば抜けていた」と航空記者スティーブ・ペイスがクルセイダーの歴史をまとめた著書で述べている。「ダッシュIIIの公式最高速度記録はマッハ2.39で、マッハ2.6も無理ではないと見られていた。当時はマッハ3も実現可能との意見もあった。スーパークルセイダーはマッハ2.2の連続飛行を高度68千フィートで実現した。6-G操縦能力があり5.5G旋回をマッハ2.2で行えた。同機は単発機で世界唯一のマッハ2.4を実現した」
  5. スーパークルセイダーは以前のクルセイダーといろいろ違う点がある。エンジンはJT-4ターボジェットに換装され出力が増え高速で上昇率、最高高度が伸びた。全天候性能、航続距離の拡大、飛行制御性能の拡張、操縦性の改良とならび引き込み式の腹部安定板二枚を追加した。チャンス・ヴォートは尾部にロケットエンジンの追加で加速力を増やす提案までしていた。
  6. 皮肉にもファントムはヴィエトナムでは性能不足の扱いだった。機関砲を内蔵せず、初期の空対空ミサイルは信頼性に欠けていたからだ。これに対してクルセイダーIおよびII型は機関砲を搭載し、戦場で賛辞の的となる。だがクルセイダーIIIは搭載していなかった。F-4同様に機関銃なしの戦闘機として空対空ミサイル7発を運用する構想でサイドワインダー熱追尾ミサイル4発とスパロー(レーダー誘導式)3発だった。ヴィエトナム戦の前はミサイルのみの武装が流行だった。このため選択は理解できる。間違っていたが。
  7. 模擬空中戦でクルセイダーIIIは初期型ファントムを繰り返し撃破した。ペイスは海軍航空関係者の発言として「F8U-3は航続距離が長く、高速かつ費用は低く、重量は少なく、機内搭載燃料だけで600ガロン増槽を付けたF4H-1と同じ距離を飛べた。価格はF4H-1より25%安かったと思う。F8U-3は開発中止になった機体の中で最高だった」
  8. それでも海軍はF-4ファントムを選定した。理由が外観でなかったのは確かだ。スーパークルセイダーはずんぐりしたファントムよりずっと洗練されていた。経済性が理由だったのだろう。1960年代初期の国防総省は空軍、海軍、海兵隊で機材統一化をねらっていた。安全性も決め手だったかも知れない。クルセイダーIとIIは事故率の高さが目立っていた。
  9. あるいはスーパークルセイダーがドッグファイトで扱いにくい存在だったからか。スパローミサイル発射には敵機をレーダー照射する必要があった。ファントムの場合はこの仕事を後席の兵装士官に任せ、パイロットは操縦に専念できた。スーパークルセイダーは単座機でパイロットは操縦とスパロー操作を同時にこなす必要があった。ファントムは一方で多目的に投入でき、対地攻撃、ワイルドウィーゼル防空網攻撃、偵察にも転用された。
  10. F-4は驚くほど多任務に転用され米軍で用途廃止になったのは2016年12月のことである。速力と操縦性で優れるスーパークルセイダーが採用されていても58年間の供用が可能だったか怪しい。
  11. スーパークルセイダー試作機がNASAで飛行限界の更新に使用されて生涯を終わったのは妥当と言えよう。「地球大気中の95パーセントを飛行可能範囲にしたスーパークルセイダーが宇宙研究に転用され効果を発揮したのは自然なことだ」とバレット・ティルマンは著作MiG Master: The Story of the F-8 Crusaderでこう述べている。
  12. 「試作機はソニックブーム密度研究にも投入されたが、時折気晴らしに高速度飛行をした」とティルマンは書いている。「NASAパイロットが同機をヴァージニア州ラングレーから飛ばしているとパタクセントリバーで評価中のファントムを見つけることスピード競争をしかけた。海軍パイロットから文句が出て競争は終わったが、ヴォート支持派にはスカッとする瞬間だった」■
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.


★次期コンパスコールは商用機ベースで2020年代末登場。それまでEC-130H供用を続ける。

日本でもC-130Hが供用中ですが....


A new Compass Call: The Air Force is replacing its Vietnam-era electronic warfare planes

By: Stephen Losey, May 4, 2017 (Photo Credit: Stephen Losey/Staff)

  1. 知名度が低いが対イスラム国で最重要装備品といえるのがEC-130Hコンパスコールで、複雑な通信妨害装備を老朽貨物機に詰めこんでいる。
  2. 十数年かけてコンパスコールに新しい生命が吹き込まれる。2029年末までに米空軍はEC-130Hの搭載装備品を新型機材10機に移植する。新機材はEC-Xと呼ばれる。
  3. 現在15機あるEC-130H各機は数十年の機齢で老朽化が目立つ。第386派遣飛行隊が中東に展開中だが運用機材は1973年調達が一機、もう一機は1964年初飛行の機体だ。EC-130Hは1983年に開発開始され、旧型C-130を利用している。
  4. 各機は米軍の主要作戦に毎回投入されてきた。コソボ、ハイチ、パナマ、リビア、イラク、セルビア、アフガニスタンとつづき、2004年から米中央軍を支援している。コンパスコールは毎日飛んでISIS戦闘員間の通信妨害により連合軍のイラク軍支援で有効手段となっている。
  5. 「交信できなければ戦闘もできない。極めて単純です」とジョシュ・コスロフ中佐(第43遠征電子戦闘飛行隊司令)が今年1月に386隊の本拠地で語っている。「われわれの仕事はダーイシュ通信網を大規模かく乱することです」ダーイシュはISISをアラブ世界で軽蔑的に呼ぶ呼称である。
  6. だが機齢四十年、五十年になる機体を中東のような過酷な状況で集中的に飛ばすのは相当困難な仕事だ。
  7. ジョン・カリム中尉は第43隊で整備員34名を統括し機齢だけが「理由でなく故障が多くなっている」という。コンパスコール各機では構造上の定期点検の必要があり、整備陣も各機の配線やエンジン状況を注視している。古い機体に最新電子戦装備を乗せると面倒な状況も起こる。EC-130Hの機体は「もともと現在の任務用には作られていない」とカリム中尉も言う。
  8. 空軍は既存の商用機調達に傾き、専用機材の開発は断念して新EC-Xとすると空軍報道官エミリー・グラボウスキ大尉が伝えている。
  9. 現在のコンパスコールの契約企業L3コミュニケーションズが機材を選択と装備品搭載を担当するとグラボウスキ大尉は説明し、米空軍はL3に特定の機材の指定をしないという。
  10. 「契約企業主体で行う選定なので空軍は結果をあらかじめ予測できない」とグラボウスキ大尉は述べ「選考過程と結果を尊重しつつ要求内容が実現するよう期待する」
  11. EC-Xコンパスコール一号機は2020年末に稼働開始すると空軍は期待しているとグラボウスキ大尉は述べ、残る機材も2020年代中に配備され、EC-130Hは全機退役させる。
  12. グラボウスキ大尉の説明ではコンパスコールの機材切り替えに今後10年間で20億ドルを10機と初期予備部品をインフレを考慮して算定している。
  13. 現行機材を30年供用し続けた場合と比較すれば新型機導入で「数十億ドル」の節約になるというがグラボウスキ大尉は節約効果の詳細を明らかにしなかった。
  14. 空軍参謀総長デイヴ・ゴールドファイン大将は議会で証言し2017年度に国防費制限措置を継続すれば新型コンパスコール機の配備にも遅れが生じると警告していた。
  15. グラボウスキ大尉は予算制限措置を通年で行うとEC-X一号機の調達も最低12か月遅れると述べている。その間空軍は旧式コンパスコール機材を補修しながら供用することになり3億ドルの追加予算が必要となると述べた。■

2017年5月10日水曜日

★★中国の将来を完全に変えた炒飯調理とナパーム空爆



今日の中国が一歩間違えば北朝鮮同様になっていた可能性があるということですね。しかし朝鮮民族は悲運に苦しめられており、二国がちがう道筋についたことが歴史の大きなわかれめであったことがわかります。しかし歴史を都合の良い形に平気で塗り替える、信じ込む傾向は両国で似ていますね。
Egg Fried Rice and an Air Strike Altered China’s History

Egg Fried Rice and an Air Strike Altered China’s History玉子炒飯と空爆が中国の歴史を永久に変えた

A U.S. bombing run wiped out Mao Zedong's dynasty when his son was cooking breakfast 米軍爆撃が毛沢東の世襲の夢を奪った。息子は朝食を作っていた


May 7, 2017 Sebastien Roblin


  1. 前途有望な若者が戦争で馬鹿げた形で生命を奪われる例は多い。これは北朝鮮も高く称賛する人物の死で中国の将来が変わってしまったという話だ。
  2. 彭徳懐Peng Dehuai将軍の新任書記に妙な点があると杨迪Yang Di 将軍が気付いた。若い将校はロシア語通訳官のくせに幕僚会議の途中で口をさしはさむだけでなく梁興初Liang Xingchu第38軍団司令官に戦術の指導までしていた。そこまでやっても彭徳懐(人民解放軍朝鮮志願部隊総司令官)は何ら叱責しない。彭徳懐が中国将棋で一度打った手を取り消す悪癖を示すと通訳官がいら立ちを隠さない態度を見せた。
  3. 楊は直属の上司Ding Ganru将軍に若者の行いに不満を伝えたところ、つまらないことは言うなと止められた。後になって、楊も事実を知った。書記官は毛岸英Mao Anying、毛主席の実子で中国のトップを約束された人物だった。

ソ連へ

  1. 毛岸英の出自で母親の楊開慧Yang Kaihuiは避けて通れない。楊開慧の父は毛沢東を同じ湖南出身者として助けた。毛沢東は楊開慧の美貌と政治思想にひかれ、ふたりは1920年に結婚し長沙で所帯を持つ。実は楊は毛沢東の四人の妻のうち二番目で最初の妻は本人の意思とは関係なく結婚させられたがすぐ死んでいる。
  2. 楊は子宝三人に恵まれた。岸英、岸青、岸竜の男の子ばかりだ。毛沢東は遠隔地で楊がいながら遊撃隊の狙撃名手の賀子珍He Zizhenと結婚してしまう。
  3. 1930年、共産勢力が長沙で敗れると国民党の軍閥何鍵 He Jian が楊開慧を逮捕する。毛沢東の情報開示を拒み、楊開慧は息子たちの目前で銃殺された。息子たちは上海で不良となり、岸竜は赤痢で短い生涯を閉じ、岸青は警察に拷問を受け生涯を通じ精神を病んだ。
  4. 共産勢力は残った毛沢東の子息をソ連に1936年に送った。各国共産主義者の子弟と寄宿舎で学んだ岸英はロシア名セルゲイ・ユン・フを名乗り、流ちょうなロシア語を話すようになる。継母の賀子珍もロシアで合流し戦闘の傷手当を受ける間に毛沢東は四番目で最後の妻江青 Qing Jiangと結婚した。
  5. モスクワのフルンゼ軍事大学で学んだ毛岸英はスターリンに第二次大戦中の赤軍で戦いたいと懇請し第一白ロシア戦線で砲兵隊に従軍し、ポーランド、チェコへの進軍に加わった。
  6. 1946年1月に父から延安へ戻るよう命じられたのはこれ以上ロシアに残せば中国人というよりロシア人になると恐れたためだ。毛岸英は聞く耳を持たず父へのカルト的人気さえ批判する人物だった。父により地方の肥料工場へ送られた。比較的単純な作業に従事しながら1949年に劉松林Liu Songlinと結婚する。劉の両親も国民党との内戦で死亡していた。
ソ連軍制服を着た毛岸英
Mao Anying in a Soviet uniform. Photo via Wikimedia

朝食時の戦死

  1. 毛沢東は中国の支配を1949年に掌握し、その関心は分断された南北朝鮮に向けられた。米国は国民党を支援しており、毛沢東は南朝鮮が米軍の反攻の足場となるのを阻止しようとした。
  2. 毛沢東は1950年の北朝鮮による韓国侵攻を手助けしたものの計画はすぐに裏目に出る。国連軍の反抗攻勢で北朝鮮が消滅寸前になり、さらに鴨緑江を超え中国内部にまで侵攻する勢いだった。
  3. 米大統領ハリー・トルーマンにはその意図はなかったが、在韓米軍総司令官ダグラス・マッカーサー元帥は実現を願っていた。
  4. そのため毛沢東は大規模な「志願軍」を彭徳懐将軍の指揮のもと組織し事態改善を図った。中国軍は北朝鮮国境を1950年10月に越えて冬攻勢で国連軍を撃退するつもりだった。戦闘は人海戦術のため多大な人的損害が生まれた。
  5. 岸英は志願軍入りを求め、歩兵隊従軍を願っていた。だが彭徳懐は毛沢東の息子が戦死するのは見たくないとして、岸英をロシア語通訳官として劉書記の仮名で司令部付きにした。司令部は中国北東部をはさんだ東倉郡にあり米軍空襲を避けて金鉱の中にあった。この時点で米航空戦力は戦線のいたるところで活発で共産軍兵士や車両が安全に移動できるのは夜間に限られていた。
  6. ただし双発の RF-61Cレポーター(P-61ブラックウィドー夜間戦闘機の写真偵察型)が11月24日夜に司令部の所在を数時間にわたり探っていた。彭徳懐は所在がばれることを恐れ全幕僚に地下に隠れるよう命じ、調理も夜間限定とし煙の目視を避けた。
  7. 司令部幕僚は午前4時に勤務開始だったが、岸英は眠り込んでいた。午前9時に起床し朝食が欲しくなり幕僚仲間に彭徳懐の居室にあるストーブで卵入り炒飯を作るよう命じた。居室は地上の建物にある。戦場では卵は貴重品で北朝鮮側から彭徳懐への贈答品として届いていた。
  8. 楊将軍の回想録では建物から煙が出ているのに気づき、岸英に敵の注意を引く前に火を消せと注意したとある。岸英の一行は楊に調理が終わればすぐ火を消すから心配するな、あっちへ行けと言ってきた。
  9. 午前10時、米空軍B-26インヴェーダー4機編隊が軍団本部の爆撃を開始した。岸英の友人Cheng Puだけが窓から飛び出たが、岸英は取り巻きとベッドやテーブルの下に隠れた。その建物から煙が出ているので屋内にとどまるのは賢明とはいいかねる行動だった。
  10. ナパーム弾をヴェトナム戦で使われて知ったという人が多いが、実は第二次大戦中から投下されており、朝鮮戦争で多用されていた。
  11. 一発が司令部を直撃し、炎が建物を包んだ。楊は大火を恐れず建物に入り、岸英の焼け焦げた遺体を見つける。識別できたのはソ連製腕時計が溶けて見つかったためだ。遺体は他の犠牲者とともに北朝鮮内の解放軍墓地に埋葬された。
  12. 彭徳懐は毛沢東の息子の死を二か月にわたり報告せず、1951年1月にやっと電報を一通送った。毛沢東は知らせを聞きその日は終日沈みこみ喫煙を続け、家系が「終わった」とため息をついたと述べる筋もある。
  13. 彭徳懐は毛沢東の面前で謝罪したが、毛の返答はかたくなで「正規兵が一名戦死したに過ぎない。息子だからと言って特別扱いはふさわしくない」と述べた。 のちに岸英の死に触れ「犠牲なくして勝利は得られない」と述べている。
B-26Bインヴェーダーがナパーム爆弾を北朝鮮に投下している。 1951年5月。.U.S. Air Force photo

諸説あふれる

  1. 楊将軍の回想録で卵入り炒飯の話があるが、Ding将軍への1985年インタビューやその他中国軍将校の回想では相違点がある。
  2. 南アフリカ空軍第18戦闘爆撃隊のP-51マスタングが岸英を殺したとの説がある。ただし、南アフリカ空軍は確かに朝鮮でナパーム弾を多用していたが、単発のP-51と大型で双発のB-26を見間違うのはあり得ない話だ。
  3. 卵入り炒飯の話は中国国内でよく知られているが、快く思わない向きもある。間一髪で助かったCheng Puは話は虚偽で戦場では卵など手に入らなかったと述べている。もう一人作家のCheng Xiは中国テレビで毛岸英はリンゴの皮を炒めていたと述べる。歴史家Yuan Jiangは揚げパンと粥を温めていたと主張する。
  4. 岸英の戦死はあまりにも尋常でなく、馬鹿げている余り、政府としても英雄的な物語にできなかったのか理由が見えてこないほどだ。岸英の生涯を描いた劇が北京で2013年に上演されたが演出家は自身の調査で岸英は司令部で文書を取りに行く途中で戦死したとした。別の脚色では岸英を毎日夜遅くまで仕事に取り組む人物としており、楊将軍が描いたあまやかされた王子で防衛体制を無視した人物とあまりにもかけ離れている。
  5. さらに噂が流れており、岸英の朝鮮での戦死は中国内部でお膳立てされたもので毛沢東四番目の妻江青が命じたとする説がある。たしかに岸英の未亡人劉松林も岸英の死で江青が「しごく満足した」と述べている。ただし江青は岸英の朝鮮志願軍入りに反対しており、岸英暗殺説の証拠はない。

実現しなかった道

  1. 岸英の死で毛の家系による中国支配の芽は摘まれた。兄弟の岸青は精神病のため対象外だった。岸青は結局結婚し2007年に死亡した。岸青の息子毛新宇Mao Xinyuは人民解放軍少将だが目立つことのない人物だ。
  2. 毛沢東の娘二名の婿も政治面で高位についていない。賀子珍とは娘2名と息子3名が別にいるが戦時中に死亡あるいは不明になっている。
  3. 毛沢東に岸英を後継者にする願望があれば成功していたのではないか。中国共産党は世襲を原則として認めていないが、毛沢東のカルト的人気は絶大であり、本人は1960年代に生まれた党改革を快く思っていなかった。そこで文化大革命を単独で始めたのだ。
  4. 革命指導者であり政治のまとめ役としての成功を背にしながら毛沢東は国の統治では悲惨な成果しかあげていない。五か年計画の旗の下で農業生産は大失敗に終わり、1950年代に数千万人が餓死した。
  5. 1960年代の文化大革命により大学教育は機能しなくなり、10年間ほどこのままで、共産党内の派閥間で血の闘争が生まれた。要職の解任、公の場での罵倒、政治家・専門職数万名の拷問、後者は国の運営方法を知っているだけに大きな損失になった。
  6. 毛沢東最後の妻江青が夫の権力の後押しを四人組とともにすすめ、政治ライバルのみならず個人的に気に入らない人物に暴力をふるった。毛沢東の政策の危険性をあえて口にした政治指導部は権力の座を奪われ、遠隔地の農場に送られたりした。
  7. その被害者のひとりが彭徳懐で長年の責め苦にも耐えられず後年になり名誉回復された。一部には毛沢東は岸英の戦死で高名の将軍を許せなかったのだという声があるが、廬山会議(1959年)で毛沢東を名指しで批判したことが遠因とされている。
紅衛兵に捕まった彭徳懐Peng Dehuai in the hands of Mao’s Red Guards. Photo via Wikimedia

  1. 北朝鮮は隣国の虐殺対象が政治エリート層に及んだことを注視していた。毛沢東支配下の中国は二十年間にわたりカリスマ指導者が独裁権力を行使した場合の専制国家の最悪面を示し、行政を司る官僚や政治エリートはいつも毛沢東の気まぐれや急進的な政策に振り回されていた。
  2. 毛岸英が生存していたらどんな指導者になっていたかは知りようがないし、どんな価値観を示していたかもわかりようがないが、父の政治思想を継承したら、事実上の毛王朝が生まれ中国はどうしようもない状態で血の内部抗争の陰謀がはびこり、ちょうど現在の北朝鮮の金一族支配下の様相を呈していたのではないか。現在の北朝鮮は孤立し圧政に国民が苦しんでいる。
  3. 毛沢東が1976年に死去し一か月がたち、クーデターで江青と四人組が放逐された。江青は服役後の1991年に自殺した。新しく権力の座についた指導層は毛沢東を「7割正しく3割誤っていた」とし、改革開放政策により中国を大国の座に導いた。
  4. 今日の中国も一党支配の専制国家であることに変わりないが共産党は内部で権力を争う集団に分断されている。しかし現在の最高指導者は中国共産党中央委員会総書記の肩書で全国人民代表会議で5年任期で選出される。複雑で不透明な仕組みにより特定の有力人物が主席の座に一生しがみつくのを防いでいる。
  5. 北朝鮮では今日でも毛岸英は英雄扱いだ。戦場で命を犠牲にしたとの賛辞もある一方で、権力承継が実現しなかったことに感謝する中国人もいる。■

2017年5月9日火曜日

★★★トマホーク巡航ミサイルを日本が導入検討へ



なるほどイージスアショア導入はトマホーク導入も視野に入れていたのですね。ここで役所的にイージスアショアをまず導入してから、トマホークをとプログラム的に考えては時間ばかり消費します。かといって専守防衛の域を出る装備だと感情的な反対ばかり出ても困まります。これまで軍事面の情報、思考は無視してきたツケでしょうか。反対党には日本国防のあるべき姿で考えてもらいたいのですが、きっとどこかの誰かが「北朝鮮先制攻撃手段」だとレッテルを貼ってくるのでしょうね。成熟した議論を期待しつつ、早期の導入を願います。

DOD

Japan May Buy Tomahawks For Retaliatory Strikes On North Korean Missile Sites 日本が北朝鮮ミサイル発射施設への報復攻撃用に巡航ミサイルを導入する可能性が浮上

The system could be paired with the Aegis Ashore anti-ballistic missile system that Japan is also interested in acquiring. 日本が導入を検討中のイージスアショア弾道ミサイル迎撃システムと組み合わせが可能

BY TYLER ROGOWAYMAY 8, 2017


  1. 日本がイージスアショア導入を真剣に検討中と先週末に伝えたばかりだが、日本がトマホーク巡航ミサイルの導入も検討していることが明らかになった。スタンドオフ報復攻撃手段として北朝鮮のミサイル発射地点を攻撃する想定だ。日本の戦略状況を見ると完璧な選択の観があるが、「専守防衛」という日本のとってきた姿勢から大きな変化となる。
  2. 日本政府上層部に出回っている緊急提案では弾道ミサイル迎撃だけでは不十分で北朝鮮のミサイル発射能力自体を反撃対象とすべきとの意見だ。ここでスタンドオフ対地攻撃ミサイルの存在が浮上する。いったんミサイルが発射されれば、日本はトマホークの牙でミサイル発射地点、要員や支援施設を攻撃する。北朝鮮軍事指揮命令通信拠点も攻撃対象に加わるだろう。
マーク 41 VLSからのトマホーク発射の瞬間 USN
  1. 日本が攻撃兵器とみなされる装備を堂々と導入すれば、日本の軍事力増強を問題視する勢力の怒りを買うのは必至だ。イージスシステム水上艦のマーク41垂直発射管に装填されれば議論の火に油を注ぐことになりそうだ。導入が想定される艦は世界有数の戦力を有しており、日本から遠く離れた地点にも展開できる。トマホークの射程は1,000マイルあり日本は世界各地の陸上目標の多くも攻撃対象にできることになる。
  2. そこで対応策は日本国内の固定発射装置にミサイルを導入することだ。水上艦に導入すれば兵力投射となるためだ。これでミサイルを報復手段としてのみ投入する既定方針に合う。言い換えれば日本は先制攻撃は決して選択しないということだ。
  3. 日本がイージスアショアを陸上固定ミサイル防衛能力の手段として導入すれば一石二鳥だ。イージスアショアも同じマーク41垂直発射管VLSを流用しており、米海軍水上艦ではこれでBGM-109トマホークを運用している。米海軍の駆逐艦巡洋艦と同様に日本もトマホークをイージスアショア施設で運用すればよい。
  4. 戦術版トマホークの最新型は通称「Tac-Tom]で飛翔中に攻撃目標を再設定可能なうえ、滞空しながら敵目標攻撃命令を待つことができる。移動目標の攻撃も可能だ。弾道ミサイルがTEL輸送起立発射装備で運用された場合に有望な攻撃能力になる。
  5. 日本本土から北朝鮮国境までは一番近くで310マイルなのでTac-TomにはTELが活動している地点やその他発射施設のある地区上空を十分な時間で滞空待機できる。パイロットを危険にさらすことなく、航空自衛隊の新型機、弾薬装備、訓練は不要だ。
  6. イージスアショアがなくても日本には陸上配備トマホークをスタンドアローンのマーク41VLSに指揮統制装備と組み合わせて配備は可能だ。独立運用でトマホークを運用することも四発搭載輸送起立発射装備の導入で可能だ。米陸軍ではトマホーク派生型のBGM-109Gグリフォンで同じ装備を導入していた。(中距離核兵器削減条約で現在は供用されていない) だがトマホークをイージスアショアに統合して運用するのが最大効果を上げながら、政治的に微妙な同装備の導入につながるのだろう。
BGM-109G Gryphon TEL DOD
  1. 抑止力としてトマホークを導入すれば日本は北朝鮮に対して自国防衛力と反撃力を同時に確保することが可能となる。北朝鮮には一層の圧力となり近隣国攻撃に慎重となり、日本海へミサイルを撃ち込むのも控えるようになるだろう。
  2. イージスアショアと組み合わせれば日本には完ぺきな選択となろう。巡航ミサイルがもっと高速かつ迅速に発射できれば北朝鮮のTELに有効に対抗できる。だがこのためには日本はきわめて正確な情報でミサイル発射地点を把握しなければ迅速な攻撃は不可能だ。このため衛星データで発射を探知し飛翔を追跡する能力が必要だが、これを有するのは米国のみだ。日本も独自に朝鮮半島を監視する同様の能力の衛星を打ち上げようとすれば非常に大きな予算措置が必要になる。
  3. マッハ2.5程度の飛翔速度が可能な巡航ミサイルがあれば日本本土から北朝鮮国境地帯には最短10分で到達可能となる。だが発射前にに敵の脅威内容を分類し指揮命令系統の認証を受ける間に北朝鮮のTELは移動しているだろう。またこの速度のミサイルだと距離、ペイロード、さらに滞空待機能力を犠牲にし、目標再設定能力も望めない。
  4. そうなるとトマホークは戦術、戦略両面での複雑な条件を解決する有効な選択肢になる。トマホーク単体では有事の際に北朝鮮によるミサイル攻撃続行能力を除去できないが、イージスアショアと組み合わせて有効な防衛力・抑止力をの同時に実現できる。同じ結論を安倍晋三政権が下すか見守りたい。■

★F-35Aから操縦を開始する新世代パイロット養成を開始した米空軍



F-35でキャリアを始める新世代のパイロット養成を米空軍が開始しました。航空自衛隊ではこうはいかないでしょうね、導入機数が全く違いますからね。米空軍はF-35に相当の賭けをしているようですが、失望することのないよう祈るばかりです。

米空軍初のF-35AライトニングII基礎訓練課程学生パイロットがルーク空軍基地で2017年2月8日に初めて実機で空に飛んだ。B課程学生は経験豊かな第61戦闘飛行隊の教官パイロットが指導中で、課程を修了すれば初のF-35戦闘パイロットになる。 (Courtesy Photo via AF.mil)

What It’s Like Training Brand-New Air Force Pilots on the F-35A 米空軍のF-35Aの新規パイロット養成課程の内容は


DefensetechPOSTED BY: ORIANA PAWLYK MAY 4, 2017

  1. 米空軍は最若年パイロットを最新かつ最高水準の性能を有するF-35A共用打撃戦闘機で訓練している。
  2. 少尉から中尉六名がF-35の「B課程」つまり基礎操縦訓練をルーク空軍基地(アリゾナ州)で受講中だ。このパイロットたちはライトニングII以外の機材は経験がない。
  3. 「新規学生を他機の経験がないまま訓練すると効果が高いです。まっさらな素材でスポンジのように吸収が早いですからね。先を見越した戦術をすべて教えていきます」とイアン・オステリチャー大尉(第61戦闘飛行隊、B課程飛行教官)が言う。
  4. 「目標は生徒を訓練課程八か月に放り込み、戦闘準備をさせて実戦飛行隊を準備することです」とオステリチャー大尉はMilitary.com取材で答えている。
  5. 米空軍唯一のJSF実戦部隊はヒル空軍基地(ユタ州)にあり、同基地から8機がヨーロッパに移動し初の戦闘訓練展開中だ。
  6. 一年間の通常訓練を受けた新規パイロットは昨年12月にユタに移動し、基本システム、シミュレーション、武器取り扱い訓練で同機搭載のエイビオニクスを習熟した。2月に機体をはじめて飛行させた。
  7. 訓練課程の141日でパイロットは学科300時間、シミュレーター訓練(46時間から80時間)を経てF-35の実機操縦を35時間学ぶと大尉は説明。
  8. 教官にはオーストラリアパイロット4名もいる。オーストラリアもF-35を導入中だ
  9. 第62戦闘飛行隊は61隊の姉妹部隊で6名の訓練を今週開始したところだ。61隊は9月に次の組を迎える。
  10. 同飛行隊は年間60名のパイロットを養成すると大尉は説明してくれた。
  11. 訓練課程の最終段階数週間で戦術航空迎撃や戦闘操縦、ドッグファイトを取りあげ、「ミッションシステム各種を使いながら戦術迎撃の課題に挑戦する」のだという。
  12. オステリチャー大尉によればドッグファイトに重点を置いていないが、このシナリオにでは「各パイロット学生に一通りの技能を与えないと生き残れませんから」という。
  13. 課程の最後にはパイロットは「視程外」訓練に入る。接近阻止領域拒否A2ADの環境が今後増える中で避けられない想定だ。
  14. 「空対地支援、航空阻止、敵防空制圧に取り組みますが、最後が課程のハイライトですね」と大尉は言い、空対空戦ではF-16ファイティングファルコンが相手をする。
  15. 課程修了後のパイロットはヒルAFBで新戦闘航空隊編成を待つ。
  16. 学生パイロットに別機種の経験がないことが一つの課題で、パイロットは毎日を一歩ずつ学んでいると大尉は述べる。「F-35をそつなく飛ばせるのですが、必要なミッションの実施が一番の課題です」
  17. 養成課程で不合格になるのは安全面の理由が一番多いという。例として「安全に離着陸できないと困ります。きつい着陸が多いのです」とオステリチャー大尉は述べる。あるいはパイロットが「訓練バブル」と呼ぶ他の機体から1,000フィート内に入ることがあり、「教官に接近しすぎて訓練規則を破ることになります」
  18. 訓練学生は8月の卒業までに真価を発揮する必要に迫られる。
  19. ルーク基地には2022年までにF-35が144機そろう。米空軍は計1,763機を導入する。そこでF-35パイロットを急増することが空軍の最大の課題だ。
  20. オステリチャー大尉自身はA-10サンダーボルトの操縦からはじめた。2010年のことだ。
  21. 「ずっとA-10を操縦して退役まで数千時間を稼ぐつもりでしたが、今や教官パイロットはA-10、F-16、F-15上がりばかりでF-35の専門家となっていますよ」「最重要ミッションは戦闘部隊としての空軍に早く準備させることです」■

2017年5月8日月曜日

北朝鮮によるEMP攻撃は米国では可能性が低いが....



本当にそうでしょうか。20キロ半径の地域が被害を受けるのあれば、東京あるいはソウルの金融経済中心地を狙った攻撃で経済活動はマヒし交通通信機能も大きく傷つきます。自暴自棄になった北朝鮮が虎の子の核弾頭を高高度で爆発させない保証はないのでは。あくまでも米国が(今のところ)安全と言ってるにしか聞こえないのですが。

A North Korean Nuclear EMP Attack? … Unlikely

北朝鮮による核EMP攻撃の可能性は低い
38 North offers informed analysis of events in and around the DPRK.By Jack Liu
05 May 2017

北朝鮮が米国に向け電磁パルス(EMP)攻撃を実行するのではとの報道があり、直近のミサイル発射実験失敗もEMP攻撃の一環を示すと見る向きがある。ただし、北朝鮮によるEMP攻撃の可能性は薄い。もっと大型の核兵器とミサイル能力の向上がないと北米を攻撃できないからだ。
EMPの何を懸念すべきか
米国を狙ったEMP攻撃脅威の評価をまとめた委員会[1]の報告書は以下述べている。
高高度での核爆発からEMP信号が発生し、広範囲な地域へ核爆発と同時に到達する。ブロードバンドで高振幅のEMPが精密電子装置を広範囲かつ長時間にわたり破損させ、米国社会の基盤たるインフラストラクチャーが破壊される。
パルス効果は精密なデバイスに直接入り、または送電系統にサージ電流として入る。

下図はEMPの三段階をE1からE3の形で時間による変化を一般化したものだ。[2] このうちE1段階の破壊効果が一番大きい。残りは最初の段階の100分の一程度の被害を生じさせる。
Figure 1. The three phases of an EMP threat.
EMP Graph 17 0504
E1段階は非常に短いが強力な電磁場を生み、導体に高電圧を与える。装置の電圧限界を超えないど破損は発生しないが、非常に早く発生するため通常の保護装置でコンピューターや通信機器を守れない。ただし、この段階のEMPに対抗できる特殊保護装置の導入が進んでおり、重要装置をEMPから守ることは可能だ。
E1段階でガンマ放射線が核爆発後直後10ナノ秒(1ナノ秒は10億分の一秒)に大気中の原子から電子をはぎ取ることで発生する。電子はほぼ光速で移動し爆発下の場所に届く。地球自体の磁場により電子の移動方向が変わり直角で電磁場に到達するため非常に大規模電磁パルスが短時間で地域に降り注ぐ。
E2段階はガンマ光線と爆発で出る中性子の衝突によるガンマ放出で発生する。発生は電磁パルス発生後の1マイクロ秒から1秒にわたり持続し、落雷時に発生する電磁パルスと似ている。落雷による被害の防止策が広く普及していることからE2段階のパルスは対応が一番楽とみられる。[3]
E3段階のパルスは速度が遅く10秒から数百秒にわたり持続する。核爆発により地球の磁場が乱れることから発生するが、磁場はその後回復する。この段階は大規模な太陽フレアで発生する磁場嵐と極めて似ており長い導体内に電流を発生させ、送電系統で被害を起こす可能性がある。
問題なのは規模だ
核爆発が大きければ、影響を受ける地域も広くなる。核爆発で発生するEMPに関する研究は大部分が非公表扱いだが、カリフォーニア高等技術専門校のD・ハフェマイスターの論文で核爆発の大きさと影響を受ける地域の距離関係がわかる記述がある。同論文では以下のように想定している。
  • 爆発は完全な球状とする(現実には必ずしもこうならない)
  • 地球の磁場は考慮に入れない
  • ガンマ光線は爆発エネルギーの0.3パーセント相当で爆発後10ナノ秒で放出されたとする
  • 直後のガンマ光線からほぼ光速移動する電子が発生し、E1段階のEMP効果が生まれるとする
  • E1段階での電界被害発生の閾値は15千ボルト/メートル以上とする

上記の仮定で数字を入れるのは妥当といえよう。その結果は驚くほど簡単だ。D=Yとなり、Dが被害が及ぶ最大距離(キロメートル)でYは爆発威力(キロトン)だ。20キロトン核爆発を適正高度で実施すれば、EMP被害の最大距離は20キロとなる。1メガトン(1,000キロトン)爆弾なら1,000キロまで被害が及ぶ。北朝鮮が現在までのところ実験した最大の核爆発は20キロトン程度とみられる。
結論
EMPの物理原則と北朝鮮の現状の核開発状況を考慮すれば、報道にあるような北朝鮮のEMP攻撃ですべてお終いというのはおおげさといえる[4]。北朝鮮の核実験ではこれまでのところ大規模なEMP被害を生む核威力は確認されていない。また爆弾の保有数が少ない北朝鮮がEMP兵器開発専用の核実験を行うのは非現実的だ。
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[1] John Foster, et al., Report of the Commission to Assess the Threat to the United States from Electromagnetic Pulse (EMP) Attack—Critical National Infrastructures, April 2008.
[2] Edward Savage, James Gilbert, William Radasky. The Early-Time (E1) High-Altitude Electromagnetic Pulse (HEMP) and Its Impact on the U.S. Power Grid, Meta-R-320, Prepared for Oak Ridge National Lab., Jan 2010.
[3] 米EMP検討会は「総じて重要インフラ施設ではすでに落雷による予想被害に対応した保護措置があることから深刻な問題ではないといえよう。最も警戒すべきリスクはシナジー効果であり、E2段階が第一段階のほぼ直後に発生し、保護制御機能が第一段階で破壊されている可能性があるため第二段階で生まれるエネルギーが流れ込み損傷を発生するることにつながる」
[4] 1950年代初頭に地表核爆発実験が米国ではおこなれており、爆発規模は北朝鮮実験の規模とほぼ同等だった。ネヴァダ核実験場はラスヴェガスから65マイルしか離れていないが、停電の報告はない。カジノは通常通り営業を続けている。放射性降下物の方が大きな問題だった」