The One Word That Could End North Korea
Prosperity. 北朝鮮の存在を終わらせる合言葉は「繁栄」だ
by Thomas Adam
June 3, 2019 Topic: Security Region: Asia Blog Brand: The Buzz Tags: North KoreaKim Jong-unSouth KoreaDonald TrumpEconomic ReformReform And Opening
ベトナムはドナルド・トランプ、金正恩の非核化をめぐる首脳会談の会場として理想的に見えた。ハノイの瀟洒なメトロポールホテルでトランプは金を説得し核兵器を放棄させるかわりに制裁解除を申し出るつもりだった。
北朝鮮経済は1990年代のソ連崩壊後の混迷を脱していない。北朝鮮では飢餓は日常の風景であり25百万国民のうち10.5百万人が栄養不良状態だ。
一方でベトナムはかつては世界最貧国にランクされていたがソ連型計画経済の限界に気づき自由市場改革を1980年代末に実施し所有権を認めた。
歴史家のはしくれとしてベトナムを北朝鮮の青写真と捉えるトランプの見方に賛同できない。
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筆者は大学向けテキストとしてドイツ史を執筆中なのだがちょうど東ドイツが1990年代にソ連式社会主義経済から自由市場型経済に移行する章にさしかかったときにベトナム首脳会談が開かれた。
だが筆者の評価では北朝鮮はベトナムより冷戦時の東ドイツと類似点が多い。
北朝鮮、東ドイツともに共産主義により国土を分断され生まれた国家であり、資本主義を完全排除してきた。
ソ連・米国が日本から解放したことで朝鮮半島は1945年に北緯38度線で分断された。
分断を決定的にしたのが1950年6月で共産主義北朝鮮が統一をめざし南に進軍を開始したことで内戦が代理戦争となり、共産中国が北朝鮮を援助し米軍部隊と対戦した。1953年の休戦以来朝鮮半島の分断化は固定したままである。
挑戦と同様にドイツも分断され、資本主義の西ドイツと共産主義の東ドイツが生まれ、ベルリンは1945年から1990年まで分断された。
当初こそ東ドイツの中央計画経済で国土再建は成功したが、1960年代も半ばをすぎると経済成長が鈍化し消費財、工業製品に不足をきたした。
東ドイツは経済再生をめざし、政府の経済規制を緩和しはじめた。国営企業幹部は決定権を与えられ生産品目を自ら選べるようになったし、利益の留保も認められた。銀行には自由に貸出が許され、銀行業務の拡大が可能となった。
生産性、賃金水準、消費財が全て上向きになったにもかかわらず、東ドイツは突如として1970年代はじめに経済改革を中止した。
それは改革効果がなかったからではないと著者の研究が示している。東ドイツは経済改革の方向性をこれ以上進めると西ドイツと違いがなくなることを恐れた。
1968年にソ連が隣国チェコスロアキアを侵攻し、同国の経済政治面での自由化を終了させた。東ドイツ政府はあわてて経済改革で自由を追求しすぎたと気づく。
東ドイツは共産主義による統治の維持をはかったが経済不振の中で虚しく響いただけだった。1990年10月3日に東ドイツは西ドイツ主導で統一された。
共産主義と言えども経済がその根幹にある。計画経済でソ連、キューバ、ベトナム等の諸国は資本主義体制の民主国家と距離を広げていった。
共産圏の多くで自由市場経済と社会主義経済をミックスしつつ共産党の一党独裁を守る試みが展開された。ベトナム、キューバ、中国がここに含まれる。
こうした国々では資本主義経済への移行の結果、社会不公平が生まれた。自由市場から裕福な起業家が出る一方で大多数の国民は豊かな生活と無縁になった。
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それでも生活水準が改善したためベトナム、中国、キューバの共産党政権は正当性を高める結果になった。
東ドイツと北朝鮮はここに含まれない。
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計画経済を頑なに守るのは資本主義を採用した別の分断国家とは違う選択肢を示すことに意味があるからだ。
こうした国が経済の方向性を変えると残りの分断国家と区別がなくなり消滅するのが歴史の教えるところだ。
著者の研究によれば非核化、米制裁措置解除、市場社会経済への移行で北朝鮮に東ドイツさながらの外的危機状況が生まれると予測される。経済が上向けば北朝鮮の存在そのものが疑問視され、金による専制支配、反米スローガンや孤立主義が根拠を失う。
北朝鮮の全能の最高指導者にとっては計画経済が不振となっても核戦争の脅威を盾に権力掌握が保証されている方が資本主義経済の採択より望ましい。
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金正恩は父金正日の死去(2011年)に国民に対し生活水準の改善を約束した。だが本当に必要なのは経済改革で経済を引き上げつつ経済の共産主義的側面を残すことなのだ。
冷戦後の世界でこの課題に成功した国家はまだない。■
This article by Thomas Adam first appeared in 2019 in The Conversation via Creative Commons License.
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