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2019年パリ航空ショー:ボーイングはどんな対応をするだろうか

How will Boeing approach the Paris air show?


10 JUNE, 2019
 SOURCE: FLIGHT INTERNATIONAL
 BY: JON HEMMERDINGER
 BOSTON
https://www.flightglobal.com/news/articles/how-will-boeing-approach-the-paris-air-show-458252

像してもらいたい。737 Maxの墜落事故二件がなければ、346名死亡が発生していなければ、規制当局により運行停止措置が下りていなければボーイングは今年のパリ航空ショーに堂々と乗り込み737 Maxの成功を高らかに宣伝していたはずだ。

現実は別だ。同社は会場で新型中規模機(NMA)の発表をする、あるいはワイドボディ機受注をとりつけるかもしれないが、737 Maxの事故が全てに影をさしている。

737 Maxの飛行再開時期をみんな知りたがっている。ボーイングはおそらく答えることができないだろう。各国の規制当局が決めることであり、ボーイングのソフトウェア変更内容を承認する必要がある。これだけ不確実さがある中でボーイングは今年の航空ショーにどう対応するのだろうか。

「考え方は2つですね」とコンサルタント会社Airの航空宇宙部長マイケル・マールゾは言う。「ひとつは低姿勢を貫くことです」これで二件の墜落事故へ謙虚な姿勢を示せる。実際にボーイングは3月のエチオピア航空機事故以来この状態にある。

もうひとつは前向きなビジネスの話にもっていくことで、サービス産業の成長性や軍事航空関係の好調な販売状況を取り上げることだとマールゾは言う。

たしかに同社の軍用機部門に良いニュースが多い。KC-46ではつまづいているが、2018年には大型案件が相次いで同社のものとなった。米空軍向けにはT-X351機を関連機材含め97億ドルで受注に成功しており、T-Xは1,000機規模の事業になるとみる向きもある。

さらに海軍向けにはMQ-25A無人給油機をまず4機製造する契約を805百万ドルで受注し空軍にはMH-139ヘリコプター84機を24億ドルで納入する。

ボーイングの2018年度実績では国防・宇宙、安全保障関連売上は13パーセント増で232億ドルになった。

他方で航空機関連サービス事業の拡大を積極的に進め、グローバルサービシズ部門として独立させている。CEOデニス・ムイレンバーグは一連のリストラ策が功を奏し10年以内に500億ドル企業をめざすという。
同社は目標からまだ遠いがサービス関連事業は急成長しており、ソフトウェア企業ForeFlightや部品供給業者KLXの買収が一役買っている。またサフランとは補助動力をめぐり共同事業を立ち上げており、アーデント・エアロスペースとも機内シート事業を開始している。各社の買収によりボーイングのグローバル・サービシズの2018年売上は17%増で170億ドルになった。

とはいえこれだけでは737 Maxを覆う陰鬱な空気を一変させるだけの迫力はない。ボーイングは同機で4,620機の受注残をかかえ、今後の売上を左右する大きな部分になっている。

同社幹部はパリ会場で 737 Max 関連の質問を浴びる覚悟をしており、トラブル続きの機体制御補強システム(MCAS)でも多数の質問が出るだろう。ただし正式調査が続く中で簡単に答えが述べられる問題ではない。
ライオン・エア機の事故がまず発生してから同社は質問に積極的に答えていないが、MCASで批判が相次いでおり、またそもそもMCASの存在をエアラインパイロットに開示していなかった。連邦航空局も同機の型式証明交付で大きな批判の矢面に立たされた。

4月にごく短い記者会見を行ったムイレンバーグは悔恨の念こそ示したものの同社設計内容を擁護しさらにMCASはさらに高性能になると豪語。

ボーイングはソフトウェア改良作業を完了しており、MCASはセンサー2基を利用し急な機種下げ入力を防止する。事故二件でこの現象が発生していた。問題は規制当局が新ソフトウェアをいつ承認するかだが、未定のままだ。

他方でパリ会場で同社が民間機事業の発表を行うかも未定だ。会場で受注が実現するのは確実だが、737 Maxの新規受注は当然ながら失速状態にあり4月にもインドのジェット・エアウェイズの運行停止を受けて737で196機の受注を取り消している。

一方で他機種でもボーイングの受注は低調でついに4月は新規発注がなくなった。787は受注残584機でヒット作のままだが、開発中の777Xでは思ったより受注が伸びていない。

2013年のドバイ航空ショーでお披露目された777X事業は予定通り今年中の初飛行でその後型式証明と初納入が待つ。777-9がまず登場しその後777-8が続く。

777Xは新設計の複合材主翼、大型化した客室窓、客室の拡大、GEエイビエーションGE9Xエンジンが特徴でとくに同エンジンは民間機用で最大径となる。ダッシュ9は乗客425名を7,525カイリ(13,940キロ)はこび、777-8は375名で8,690カイリの性能となるとボーイングは発表。
4月時点で777Xの受注は344機でうち281機が777-9となっている。発注エアラインには中東、アジアのグローバルエアラインのエミレイツ、ANA、キャセイ・パシフィック、エティハド、カタールエアウェイズ、シンガポールエアラインズに加えブリティッシュ・エアウェイズとルフトハンザも名を連ねている。

777Xは優秀な性能でA350には手強い競争相手になるとの見方が外部にある。特に長距離性能とペイロードは超長距離路線投入に最適だ。ただ産業ウォッチャーには777Xは時代の先に行き過ぎた機体との見方もある。ワイドボディ機の更新をすませたエアラインが多いこと。777-300ERの様な機体にまだまだ供用期間が残っていることを指摘する。

777Xはボーイングの新型だが、もっと大きな疑問への答えが見えない。ボーイングの次代をひっぱる機体はどれか。ここ数年に渡りボーイングは200-270席双発で4千から5千カイリの性能のNMAが757後継機としてさらに生産システムの変換で大きな役割をにない次代の大型案件につなぎたいと述べてきた。大型案件とは737後継機であろうと関係者は見る。今年早々にボーイングがNMAに乗り気になっている兆候が出ていた。NMAの立ち上げ決定は今年中としても正式な事業開始は来年で路線就航は2025年となろう。

737 Max事故、飛行停止措置でNMAにも不確実性が増えた。ボーイング幹部の口からNエチオピア機事故以来MAの話題はめっきり減っている。ムイレンバーグはNMAでは順調に進捗中とするものの優先順位はMaxであるのは明らかだ。「疑いなく最大の優先事項はMaxの運行再開だ。これにしたがい社内体制も対応しており、NMAは平行して作業する」

ボーイングはその他にもブラジルのエンブラエルと共同事業二案件を進めており、民間、軍用それそれだ。民生部門ではエンブラエルの民間機部門の80%を42億ドルで買収する。軍用機部門ではエンブラエルのKC-390輸送機の販売促進、開発を進める。両社は年末までに合意をまとめるという。■


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