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中国のミサイル発射は対艦弾道ミサイルの初の発射だった

China's Reported Anti-Ship Ballistic Missile Test In The South China Sea Is A Big Deal

The test fits within a larger trend of increasingly provocative Chinese efforts to assert their authority in the disputed region.

IMAGINECHINA VIA AP IMAGES

国が少なくとも一発の対艦弾道ミサイル発射テストを実施し、各国の思惑が交錯する南シナ海にしたとの報道が出た。真実なら中国軍がこの地区を標的にミサイル発射した初の事例であり、それ以上に中国の過激なまでの太平洋での権力拡大をさらにエスカレートさせることになりそうだ。
NBCニュースが、匿名米関係者の談として最初に報道したのが2019年7月1日のことだった。NBCの取材源はミサイルの種類を言及せず、最終的にどんな標的に命中したかも触れていない。中国政府、米国政府いずれも試射の事実を公式に認めていないが、先週末に実施したようだ。中国は航空関係者向けにNOTAMを南シナ海で二地点を対象に発出して、ミサイル発射と軍事演習について注意喚起していた。NOTAMの有効期限は6月30日から7月1日を有効期限としていた。
NOTAMのひとつが海南島からパラセル諸島まで広範な海域を指定していた。北にはスプラトリー諸島があり、中国が実効支配するウッディ島も範囲に含まれていた。この位置関係から中国軍はミサイルを本土から発射し、ミサイルが飛翔に失敗しても海中落下するよう設定したようだ。
人民解放軍のロケット軍(PLARF)には機動性を備え空母など大型艦を十分標的にできると言われる弾道ミサイルがすくなくとも二種類ある。DF-21D中距離弾道ミサイル(MRBM)とDF-26中間距離弾道ミサイル(IRBM)だ。
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2018年4月に民間衛星画像の解析からこれまで知られていなかった基地が海南島にあるとの指摘があり、今回のNBC報道や公表ずみNOTAMの内容とも合致する。DF-21ないしDF-26は海南島から発射すればスプラトリー諸島まで十分到達可能だ。中国は短距離射程の対艦ミサイルを別に開発中だがこれでは中国本土から発射しても南シナ海への到達は不可能だ。
中国がDF-21DあるいはDF-26をスプラトリー諸島付近に本当に発射したのであれはPLARFが海上目標にミサイルを初めて発射したことになる。中国はゴビ砂漠に空母大の目標をつくりミサイルを発射している。
今回の試射が単純にミサイルを中国本土から発射して南シナ海まで到達させられる能力を示すものであった可能性はある。これでも重要なデータが入手でき今後より実践的な標的を狙うのではないか。
GOOGLE EARTH VIA THE FEDERATION OF AMERICAN SCIENTISTS
ゴビ砂漠に作られた空母大の標的には大型ミサイル数発の命中した跡が認められる。
今回の試射は2019年1月にPLARFのDF-26部隊が短時間でゴビ砂漠及びチベット高原に展開し米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦USSマッキャンベルがスプラトリー諸島を通過した際に対応したことの延長線上に有るようだ。その時点で中国は敵艦艇には安全な場所から弾道ミサイルで対応する能力が有ることを示したかったのだ。実際には弾道ミサイルは一発も発射していないが。
今回のミサイル発射は同様に米海軍と海上自衛隊が南シナ海で2019年6月に実施した戦闘演習に対抗したものであった可能性もある。今回はニミッツ級空母USSロナルド・レーガン打撃群に日本の「ヘリコプター駆逐艦」JSいずもが加わった。
2018年に日本側はいずも級は当初から空母能力を想定して建造したことを初めて認め、F-35B共用打撃戦闘機の運用に対応させると発表した。中国は日本の防衛力整備に一貫して批判的で現行憲法の改正で自衛隊が現状を超えた軍事活動を実施することにも強く反対している。
JMSDF
USSロナルド・レーガンがJSいずもと南シナ海で2019年6月に共同訓練を展開した。

2019年3月にフィリピンに寄港した米海軍強襲揚陸艦USSワスプは、異例なまでのF-35で兵力搭載していた。ワスプはその後スカボロー礁沖合に進出し、中国とフィリピンが領有権を争う場所だ。
スカボロー礁は中国が目指す「戦略三角形」の一部で中国の領有権主張にとり重要だ。残りはウッディ島が北に位置し、スプラトリー諸島が南にある。中国は2014年から南シナ海で大規模な造成工事を展開し人工拠点づくりを続けてきた。
同時に中国は地対空ミサイルや沿岸部に対艦ミサイル他軍事装備を各拠点に持ち込んでおり、広い意味の接近阻止領域拒否体制を構築している。
GOOGLE MAPS
中国の南シナ海における「戦略三角形」、すなわちパラセル諸島のウッディ島(北西)、スカボロー礁(南東)、スプラトリー諸島(南)を示す地図.
南シナ海の標的に対艦弾道ミサイルを本土から発射できれば中国に新しい防御体制が生まれる。更に内陸部に移動させれば敵の一次攻撃から逃れる可能性も増える。
対艦弾道ミサイルが対艦巡航ミサイルによる防衛網に加われば、敵側に防御が困難となる。弾道ミサイルの探知発見は迎撃にまして困難で低空飛行する空気吸い込み式巡航ミサイルへの対応と大きく異なる。
中国が大型艦を想定した標的に命中させる技術を実証した事自体に大きな意味があるが、信頼性は別の話だ。同様に人民解放軍に艦艇を発見するセンサーと通信ネットワークがありPLARFが数百数千マイルの彼方からミサイルの照準をあわせられるのかも不明だ。
とはいえ2019年6月のミサイル試験は今年早々のDF-26演習とともにPLAがこの能力開発を依然進めていることを如実に示している。中国が空中発射式弾道ミサイル開発に関心を示しているとの報道もあり、実現すれば弾力的運用につながり、南シナ海での領有権をはばかることなく中国は主張していくだろう
DOD
スプラトリー諸島に点在する中国の人工防衛拠点

さらに中国軍が戦力を同地域近辺で整備するのと並行して海洋警備活動を強化していることに注意が必要で、中国が主張する海域を遥かに超えた場所で公船、民間船舶がパトロールを展開している。2018年9月には052C旅游II級駆逐艦蘭州が米海軍アーレイ・バーク級駆逐艦USSデカターとスプラトリー諸島で衝突寸前になった。
米中両国は貿易戦争で動きが取れない状態だが、台湾を巡っても両国の緊張が高まっている。G-20サミットが日本で開催されたがドナルド・トランプ大統領と習近平主席は関税追加を棚上げし交渉を再開することで合意した。トランプは中国通信家電大手のフウァエイへの制裁緩和にさえ言及し、二国間の貿易問題での緊張案件となっていただけに意義深い。
だがPLARFが南シナ海へミサイル発射したとすると、経済面で緊張が緩和しようが、南シナ海で広がる自国権益を撤回するつもりが中国にないことが明確だ。■
Contact the author: joe@thedrive.com

コメント

  1. ぼたんのちから2019年7月7日 16:02

    PLAが行った弾道ミサイル実験の全容は不明だが少なくても2種類のミサイル実験を行った可能性がある。
    一つは中国本土からのDF-21D、あるいはDF-26対艦弾道ミサイルと推定する。NHKによれば発射数は6発とのこと。発射数の数の多さは、複数の種類のミサイル、及び誘導方法の実験を行った可能性がある。
    もう一つは、ロイターによれば南沙諸島の中国が造成した人工島から発射した対艦弾道ミサイルであり、飛翔距離は500km弱程度と推定するが、CM-401の発展型のようなものでなかろうか。
    実験の成否、及び実験条件は不明であるが、少なくても中国は、南シナ海の制海権を保持し、米艦の跳梁は許さないとの意思表示をしたいのだろう。

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