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紅海で主要作戦3つが同時並行中で、各国の思惑が工作している交錯する中、地元の主要国は静観し、中国もこっそりプレゼンスを示している...日本は傍観するだけ?

紅海でここまで多様な作戦が展開していることは驚きですが、各国の思惑が錯綜しているのが原因ですね、とくに米英と欧州各国の思惑の違いが気になります。また中国がなんらかの形でフーシ、さらにイランから攻撃を受けない保証を受けているとすれば、なぜ中国が軍事プレゼンスを維持しているのか、疑問の声を挙げなくてはなりません。Breaking Defense記事からお伝えします。


プロパティ・ガーディアン作戦からアスピデス作戦まで、紅海では数十カ国が軍事的に活動中だ



2023年11月、イエメンを拠点とする反政府武装組織フーシ派は、ハマスのイスラエル攻撃と協調し、民間船舶に対するミサイル、ドローン、さらには無人水上艦船の攻撃を開始した。

 フーシ派は正式名称をアンサール・アラー(「神の支持者」)といい、紅海航路を危険にさらすことで、世界の海上貿易の約15%を担う重要な経済水路を攻撃した。船舶は苦渋の選択を迫られた: スエズ運河-紅海-バブ・エル・マンデブ海峡のルートを致命的な事件の脅威にさらされつつ航行するか、ジブラルタルと喜望峰を経由しアフリカを一周するルートを取るか。


 このジレンマに対応するため、多くの国々が自国艦艇をこの海峡に派遣した。しかし、すべてが協力しているわけではない。

 実際、プロスペリティ・ガーディアン、アスピデス、ポセイドン・アーチャーといった名称の軍事ミッションが重複しており、誰が担当し、ミッションの最終目標が何なのかによって、数十カ国が参加したりしなかったりしている。

 今のところ、分断された努力は部分的にせよ機能している。「商業船舶は、10月7日以前のレベルには達していないものの、通常予想される商船往来の70%程度は観測されている」と、ある米国防当局者は本誌に語った。

 しかし、同じ戦略水路で軍用艦船多数が航行しているため、事態は混乱している。少し前には、味方の攻撃でアメリカの無人偵察機が危うく破壊されそうになったほどだ。

 作戦の混乱を解きほぐすために、ここでは誰がそこで何をしているのか、そしてなぜなのかを紹介する:


プロスペリティ・ガーディアン作戦

ロイド・オースティン米国防長官が12月に発表した「プロスペリティ・ガーディアン作戦」は、米国、英国、バーレーン、カナダ、フランス、イタリア、オランダ、ノルウェー、セーシェル、スペインの10カ国による「海上連合軍傘下の多国間安全保障イニシアティブ」である。

 その3日後、国防総省のパット・ライダー報道官は、20カ国がこのイニシアティブを支持すると述べた。1月9日にはシンガポールとスリランカが作戦に参加した。

 プロスペリティ・ガーディアンの重要な特質は、フーシのミサイルやドローンをし空から打ち落とす、完全な防衛的性質にある。次の作戦との対比が示すように、多くの外国がこの作戦に参加した理由のひとつは、この点にあるようだ。


ポセイドン・アーチャー作戦

一方で米英両国は積極的なアプローチをとった。「ポセイドン・アーチャー作戦」と名付けられたこの2カ国は、オーストラリア、バーレーン、カナダ、オランダの支援を得て、1月11日からイエメンのフーシ派の拠点に対する一連の軍事攻撃を開始した。その後の攻撃には他国からの「支援」も含まれているが、米英はその支援の内容については明らかにしていない。

 今回の作戦は、一部国で物議を醸しており、米国と友好的なヨーロッパ諸国から公的な支持を得られなかったことは注目に値する。ロシアとイランは予想通り攻撃を非難し、中国は「イエメンへの攻撃は施設の破壊に止まらず、地域の緊張をさらにエスカレートさせた」と述べた。

 ジョー・バイデン米大統領は、最初の攻撃がフーシ派の攻撃を止められなかったことを認めたが、米政府高官は攻撃姿勢を擁護している。

国防総省のピート・グエン報道官は、「フーシ派武装勢力は11月19日以来、米海軍と商業船舶を99回攻撃・威嚇している」と本誌に語った。

 グエンによれば、アメリカは44回の「自衛攻撃」に加え、「パートナーとともに」1月11日、1月22日、2月3日、2月24日に「4回の複合攻撃」を行ったという。

 同報道官は、「複合攻撃と自衛攻撃によリ、150基以上のミサイルと発射装置、さらに貯蔵・支援建物、UAV貯蔵建物、通信建物、地下貯蔵施設、UAV地上局が破壊された」と述べた。


EUNAVFOR アスピデス作戦

2月19日、欧州理事会は、米国主導の取り組みに反旗を翻すかのように、紅海における独自の多国籍防衛作戦を発表した: EUNAVFORアスピデス作戦である。

 EUは「アスピデス作戦は、2023年10月以降、フーシ派による多数の攻撃が国際商業船舶を標的にしている海域におけるEU海軍のプレゼンスを確保する」と述べた。「志を同じくする国際的パートナーとの緊密な協力の下、アスピデスは、海洋安全保障を守り、特に商船や商業船の航行の自由を確保することに貢献する。その防衛的任務の中で、この作戦は海上状況認識を提供し、船舶に随行し、海上で起こりうる多領域の攻撃から船舶を保護する」。

 この作戦には、米同盟国であるベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、スペインも参加している: なぜ、すでに確立されているアメリカ主導のプロスペリティ・ガーディアンに参加しないのか?

 近東・南アジア安全保障研究センターのデビッド・デ・ロッシュ准教授は以前、本誌取材に対し、「EUは軍事分野において、アメリカ主導のNATOと一線を画す独自のアイデンティティを確立しようとしている」と語った。

 同様に、ワシントンを拠点とするシンクタンク、アトランティック・カウンシルによれば、「欧州数カ国はプロスペリティ・ガーディアンと協力を続けているが、EUの作戦は、米国が主導するフーシ派に対する作戦からの離脱を示すものとして設定されたものだ」。

 また、米国のリーダーシップがなければ、欧州諸国は効果的な活動ができるかもしれないとも述べている。「欧州の現在のアプローチは地域のパートナーにとって真価があるかもしれない。アデン湾周辺に長年にわたって海軍、軍事、外交的プレゼンスを持つ欧州には、地域プレーヤーにもっと包括的に関与する資格と正当性がある」。

 しかし、ドイツのフリゲート艦が米国のMQ-9B無人偵察機に誤って2発のミサイルを撃ち込んだ事件が2月下旬にあり、ばらばらな任務実行の危険性が明らかになった。

 米国防高官は「2月27日に紅海で米国のMQ-9無人航空機が標的にされたことを確認している。「UAVは被害を受けず、任務を継続した。米中央司令部はEUおよびアスピデス作戦と緊密に連携し、今回の事態に至った状況を調査し、空域の安全なデコンフリクションを確保している。プロスペリティ・ガーディアン作戦とアスピデス作戦は、航行の自由を確保するため、互いに協力しつつ活動を続けている」。

 今週の時点で、同高官は本誌に対し、2つの作戦間で他に誤報が発生した事例は追跡していないと断言した。

 「我々は、OPG(オペレーション・プロスペリティ・ガーディアン)とアスピデスの紅海における防衛作戦を確実に調整するために、EUとアスピデス指導部と緊密に連携している。以前にも別の作戦でこのようなことをしてきたし、志を同じくする国同士として、協力し、うまく連携していく」と述べた。


湾岸諸国はどこにいるのか?

この地域に外国船が流入する中、前述の作戦に公然と積極的に参加している湾岸諸国は1カ国だけだ:プロスペリティ・ガーディアンのバーレーンである。

 紅海の問題、特にフーシ派の脅威は、サウジアラビア王国(KSA)とアラブ首長国連邦(UAE)に直接影響を与えるが、両国とも安全保障任務には参加していない。2つの君主制国家は公にはコメントしていないが、アナリストが今年初めに本誌に語ったところによれば、ガザでの戦争でイスラエルを支援していると見られたくないからであろう。

 バーレーンの戦略アナリスト、ユスフ・ムバラクは、「現代のアメリカの外交政策と最近の防衛連合やイニシアチブは、KSAやUAEのような湾岸の歴史的な主要同盟国の国家安全保障上の利益を優先順位に置き、地域のライバルやその代理人を優先している」と本誌に語った。


そして中国

米国防当局者によれば、商業海上交通を確保するため、常時4隻から8隻の米軍主導の連合軍艦船がこの地域にいるという。しかし、この地域にいる大国は米国だけではない。

 中国国営メディアは、人民解放軍海軍が第46戦隊を中東に派遣し、「アデン湾とソマリア沖で第45戦隊から護衛任務を引き継いだ」と報じている。

 「この海域が国際貿易にとっていかに重要であるかを考えれば、基本的にすべての国が紅海の安全保障に既得権益を持っている。中国も例外ではない」と、米国を拠点とするコンサルティング会社Gulf State Analyticsのジョルジオ・カフィエロ最高経営責任者(CEO)は本誌に語った。

 中国はアメリカの覇権主義を支持したくないからだ。また、プロスペリティ・ガーディアンに参加することは、ガザ紛争でイスラエルを支援するという点で、「中国がアメリカと足並みを揃えているというメッセージを発信する」危険性があるという。

 「指導部は、アラブ・イスラム世界、そしてより広くはグローバル・サウスに対して、中国はパレスチナの大義の擁護者であるという物語を伝えようと強く望んでいる。(フーシ派が)海上攻撃を仕掛けてこないという意味で、中国の船舶は免責されているようだ。従って北京は、フーシ派がこれ以上破壊的な行動に出ることを抑止する点で、西側諸国と協力する大きな動機があるわけではない」とカフィエロは語った。■



Crowded waters: Who's doing what in the international hotspot of the Red Sea - Breaking Defense

By   AGNES HELOU

on March 18, 2024 at 7:33 AM


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