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中国が米空母撃沈に執着し、空母建造に走ったのは第三次台湾海峡危機が契機だった。30年が経過した今日の状況はどうなっているのだろうか。

 


1995年から1996年にかけての第3次台湾危機で、米空母の戦略的優位性が中国に明らかになり、中国の軍事計画に転機が訪れた


要約:1995年から1996年にかけての第三次台湾危機で米空母の戦略的優位性が明らかになり、中国の軍事計画での転換点となった。台湾の民主的な選挙と米国の軍事的支援を受けて、中国は威嚇のための軍事演習を開始し、台湾近海でのミサイル発射実験もその一部だった。米国は強力な空母のプレゼンスで対抗し、中国の軍事的限界を浮き彫りにした。この出来事が中国を海軍力整備に駆り立て、ロシアの未成空母「遼寧」を購入・改修し、対艦弾道ミサイルを開発した。今日、中国は空母対策の革新を進めながら、重要な空母艦隊を目指している。


30年前、東アジアで軍事対立が起こり、米中は衝突に近づいた。アメリカではほとんど知られていなかったが、この出来事は中国、特に中国の軍事プランナーに強烈な印象を与えた。歴史家が「第3次台湾危機」と呼ぶこの出来事は、中国が空母の威力と柔軟性を知る契機となった。

 危機は1995年に始まった。台湾初の民主的な総統選挙が翌年に予定されていたが、北京は当然これに反対した。現職の国民党の李登輝総統は、母校コーネル大学で講演するためにアメリカに招待された。李登輝はすでに、自国統治を支持し、中国本土から離れた独立した台湾人のアイデンティティを確立する「台湾化」を強調したことで、北京から嫌われていた。その彼がコーネル大学で台湾の民主化について講演するよう依頼され、北京は激怒した。

 クリントン政権はリーのビザ発給に難色を示したが、その前年にコーネル大学で同様の講演を行なった際にはビザが発給されなかった。だがほぼ全会一致の議会支持があり、リーはビザを与えられ、6月にコーネル大学を訪問した。新華社通信は「台湾問題は火薬の樽のように爆発的だ。温めると非常に危険である。中国に負わされたこの無謀な傷は、中国人民が米国がどのような国であるかを明確に認識するのに役立つだろう」と伝えた。

 1995年8月、中国は東シナ海での一連のミサイル演習を発表した。演習は珍しいものではなかったが、発表は異例であり、これは中国による威嚇作戦の始まりであり、コーネル訪問に対する報復であると同時に、翌年の選挙を控えた台湾の有権者への威嚇であるとの憶測が流れた。演習には人民解放軍第2砲兵部隊(現在のPLAロケット軍)が参加し、中国軍のF-7戦闘機(中国版MiG-21戦闘機)が台湾から250マイル離れた場所に再配備された。また、最大100隻の中国民間漁船が大陸のすぐ沖合にある台湾の馬祖島周辺の領海に侵入した。

 Globalsecurity.orgによると、中国の長距離ミサイル部隊の再配置は1996年まで続き、中国軍は実際に軍事行動の準備をした。中国は1996年3月の総統選挙の直後、台湾に対して30日間、1日1回のミサイル攻撃を行うという有事計画を策定した。これらの攻撃は実行に移されなかったが、その準備はアメリカの諜報機関に察知されていたと思われる。

 1996年3月、中国は第4回目の大規模軍事演習を発表した。解放軍は中国沿岸にミサイル発射区域を設定し、発射方向を延長すると台湾に到達した。現実に中国はミサイル三発を発射し、うち2発首都台北の沖合30マイルに着水し、1発は高雄から35マイル地点に届いた。両都市で台湾の民間海上交易の大部分となる。台湾のように輸出に依存する経済でミサイル発射は正しく同国の経済の弱点を狙った動きに写った。

 米軍はタイコンデロガ級イージス巡洋艦USSバンカーヒルを、台湾南部沖に移動させ、SPY-1レーダーシステムで中国のミサイル発射実験を監視していた。日本を拠点とする空母USSインディペンデンスは、駆逐艦ヒューイット、オブライエン、フリゲート艦マクラスキーとともに島の東側に陣取った。

 ミサイル実験の後、空母ニミッツはペルシャ湾地域を離れ、西太平洋に急行した。これは、イージス巡洋艦ポートロイヤル、誘導ミサイル駆逐艦オルデンドルフとキャラハン(後に台湾海軍に譲渡された)、誘導ミサイルフリゲート艦USSフォード、原子力攻撃潜水艦USSポーツマスからなる、強力な空母戦闘群であった。ニミッツとその護衛艦はフィリピン海に到着し、インディペンデンスを支援する準備を整えた。

 人民解放軍は、アメリカの空母に対し何もできず、屈辱を味わった。中国は、急速な経済拡張の結果を見せ始めたばかりであったが、海岸線からわずかな距離しか離れていないアメリカの艦船に信頼できる脅威を与えることができる軍隊をまだ持っていなかった。

ー空母とー対艦ミサイル: ー1996年以降のー

その後どのような話し合いが行われたかはわからないが、その後何が起こったかはわかっている。わずか2年後、ある中国人実業家が未完成のロシア空母リガの残骸を購入し、リゾートとカジノにすると明言した。この船は中国海軍に移管され、15年間の改装を経て、中国初の航空母艦「遼寧」として今日に至っている。他に少なくとも1隻の空母が建造中であり、最終的な目標は5隻の中国空母になるかもしれない。

 同時に、第二砲兵部隊は長距離ロケットの専門知識を生かして、対艦弾道ミサイルDF-21Dを開発した。DF-21は、空母のような大型艦船に対する用途が明らかであり、将来の危機では、米海軍は台湾といわゆる"第一列島線"の沖合800~900マイルで作戦を展開せざるを得なくなる可能性がある。

 第三次台湾危機は、長い間、自国の国境内で戦争を戦う準備をしてきた中国にとって、残酷な教訓となった。それでも、PLA海軍がこの事件から学んだことは称賛に値する。そして今、中国がアメリカの空母に深刻なダメージを与えたり、撃沈したりする可能性は十分にある。また、アメリカとは異なり、中国は空母の価値を見出して自国の艦隊を建造すると同時に、空母の撃沈に多くの時間と資源を割くユニークな立場にある。米国も近い将来、同じ立場に立たされるかもしれない。■


China Is Obsessed with Sinking America's Aircraft Carriers | The National Interest

by Kyle Mizokami 

February 27, 2024  


About the Author: Kyle Mizokami

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009, he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch


コメント

  1. ぼたんのちから2024年3月9日 11:23

    PLANは、第1列島線内を我が物にする、「沿岸艦隊」から、世界を目指す「太洋艦隊」へと脱皮する過程であるようだ。「太洋艦隊」の手本は、奇妙なことに巨大な米国艦隊であり、あわよくば質量ともに凌駕して米海軍を駆逐し、海洋覇権の掌握を狙っており、「太洋艦隊」の最大の目的は、米空母部隊に対する対抗と排除、そして示威である。
    PLANの現段階は、未完であるが、その空母は贔屓目に見ても米強襲揚陸艦程度の実力しかなく、艦載機の程度を評価すると、その差はもっと広がる。PLAN版イージス艦もその実力は、米イージス艦を越えることはない。兵站や支援基地等を含めて考える結論から言うと、PLAN艦隊は巨大な「沿岸艦隊」でしかないが、訓練を積めば台湾侵攻には十分かもしれない。
    また、接近拒否に大きな役割を果たす対艦弾道ミサイルは、その実力を画像など具体的な証拠で表していない。これは見せられないためと推測する。過去の演習では、不具合の発生や、精度に問題があり、非常に高度な技術を要する「対艦」弾道ミサイルと言えないかもしれず、また、ウクライナ戦争で見せた、ロシアの極超音速弾道ミサイルが迎撃可能であることから、意外と対処方法は多くあると思われる。
    さらに最近のPLAロケット軍の粛清の原因かもしれない、ミサイルの機密情報の漏洩により、迎撃はより容易になったかもしれない。
    このように見てみると、PLAはやはり「張子のトラ」かもしれず、恐れる必要はないのかもしれない。

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