スキップしてメイン コンテンツに移動

紅海の七面鳥射撃大会----連合国がフーシのドローン一斉発射を撃破し、防空対応の実戦体験を得ているのは羨ましい

原文タイトルの七面鳥撃ちとは、大戦中のマリアナ沖海戦で米海軍が練度の低い日本海軍機を次々に撃ち落とした事案で知られる、一方的な撃破を示します。七面鳥というのは日本人にとってなじみがないのですが、自分の身を守ることが不得意なようです。フーシがこれだけの攻撃を継続できるのはイランの支援があってこそであり、はやく根を絶たないとイタチごっこのままではないでしょうか。各国海軍にとってはスリルを感じながらも防空実践体験を積んでいるわけで、羨ましい限りです。望むらくは艦艇に実被害が生じないことですが。The War Zone記事からご紹介します。



紅海で七面鳥射撃大会: 連合軍がドローン数十機を一気に撃墜


連合軍の艦艇・航空機が紅海で大規模なドローン攻撃を撃退したが、フーシには引き下がる兆候がない


サイルやドローンの発射準備という形で数週間にわたり日和見的な攻撃をフーシ派に行ってきたにもかかわらず、フーシ派は紅海とアデン湾を隔てるバブ・エル・マンデブ海峡周辺の標的にドローン28機を発射した。米中央軍はその後、無人機はどれも命中せず、同盟国の艦船や航空機によって撃墜されたとの声明を発表した。この猛攻撃の成否はともかく、フーシ派が海運への攻撃を縮小するつもりがないこと、そして艦艇と戦闘機からなる拡大対応がこの難題に真っ向から立ち向かおうとしていることは、非常に明確だ。

 現在、この地域では2つの海軍機動部隊が活動している。米国主導の「プロスペリティ・ガーディアン」作戦(英国をはじめとする国際的なパートナー部隊を含む)と、フランス、イタリア、ドイツ、ギリシャの水上戦闘艦やその他の能力で構成される欧州連合中心の「オペレーション・アスピデス(盾)」である。

 現在のところ、複数国の複数部隊が無人機と交戦したことがわかっている。プレスリリースによれば、フランスは4機の無人機を撃墜した。

 フランス国防省は、フランス戦闘機が無人偵察機から自国のフリゲート艦を守るために関与したとの声明を発表した。これはおそらく、この地域に前方展開されているる戦術ジェット機、ミラージュ2000またはラファールを指しており、ジブチにある同国の前方基地が最も論理的な場所である。

 フランス国防省が投稿した画像には、アキテーヌ級フリゲート、FSアルザスが、水平線の上空で76mmスーパーラピッドデッキガン(フーシの無人機を撃墜する能力がすでに証明済み)を発射する様子が写っている。その他の画像には、Aster-15ミサイルを発射する垂直発射システムや、前方監視赤外線(FLIR)システムの静止画像が含まれている。



 フランスにとって、この交戦で初体験が複数あったのは明らかだが、それはイギリス海軍にも言える。

 英国国防省によれば、紅海周辺に展開中の23型フリゲート、HMSリッチモンドがシーセプター・ミサイルでドローン2機を撃墜したという。これは先進的な中距離地対空ミサイルの戦闘デビューとなる。

 一方、デンマークのフリゲート艦アイヴァー・フイトフェルト Iver Huitfeldtも戦闘に参加し、ドローンを4機撃墜した。政府発表によれば、フリゲート艦の艦長は次のように述べている:「現地時間04:00過ぎ、我々はアイヴァー・フイトフェルトと付近の艦船に向かうドローンを探知した。敵であることを確認した後、交戦して撃破した。その後1時間の間に、これはさらに3回起こった」。

 アイヴァー・フイトフェルトは、24基の中距離用RIM-162進化型シースパロー・ミサイルと36基の中・長距離用SM-2ブロックIIIA標準ミサイルを搭載し、エリア防空用に十分な武装を備えている。ドローンの撃墜に何が使われたのか、現時点では正確には明らかになっていない。

 イギリス、フランス、デンマークだけで、28機の撃墜のうち、10機が撃墜されたことになる。中米中央司令部(CENTCOM)の声明によれば、米国の艦船や戦闘機も無人機多数を撃墜した。他の同盟国も同様に撃墜した可能性がある。

 フーシは合計37機を発射したという声明を発表している。行方不明の9機の行き先は明らかではないが、故障のために目標地域にたどり着けなかったというのが論理的な推測だ。この24時間、フーシの武器に被害を受けた船舶はない。

 EUが主導するタスクフォースがこの地域に到着したのは、この大量攻撃から商船を守るのにちょうどいいタイミングだったようだ。一方で、使用されたドローンの一部は、同盟国艦艇を直接標的にしていたようだ。また、フーシがミサイルや無人機の兵器を、この地域一帯の陸上にある米国や連合軍のインフラ、資産、人員に向ける可能性があることも忘れてはならない。ジブチにあるアメリカの広大な基地は、最大の懸念事項である。これは、これまで以上に現実になっている。連合軍の艦艇・航空機は、この重要な海上大動脈を航行する船舶を保護する一方で、まさにこの種の潜在的な攻撃に対するスクリーニングも行っている。同様の作戦は、現在進行中の危機の初期段階において、フーシがイスラエルに向け発射した無人機や長距離ミサイルを撃墜した。

 ひとつ懸念されるのは、これらの連合軍の艦船は、ほとんどの場合、強力な対弾道ミサイル能力を備えていないということだ。アメリカのイージス戦闘艦は、このような攻撃からこうした艦船を守るのが任務であろう。この危機は、対艦弾道ミサイルが戦闘で初めて使用されたことを意味する。

 フーシの対艦弾道ミサイルは能力スペクトルで最下位に位置し、個別の対弾道ミサイル能力を持たない艦船でも交戦できる可能性があるが、ごく限られた状況においてのみである。このような兵器が連合軍艦艇に命中すれば、大きな影響が出る可能性がある。それでも、アメリカのイージス駆逐艦でさえ、ローエンドのASBM攻撃からの防御範囲には限界がある。

 今回の交戦は、非常に高価なミサイルが、たとえ非国家主体により発射されたものであっても、安価なドローンにいかに速く食い尽くされるかを思い起こさせるものでもある。

 言い換えれば、これは海軍部隊にとって、全面的な連合軍の戦闘環境下で、この種の脅威を大規模に、しかも非常に複雑な環境で扱う信じられないような実体験となっている。重大な危険を伴うとはいえ、これらの乗組員が得ている教訓や経験は、訓練では再現できないもので、今後大きな影響を与えそうだ。■



Red Sea Turkey Shoot: Allied Warships Down Dozens Of Drones Within Hours

BYTYLER ROGOWAY|PUBLISHED MAR 9, 2024 8:43 PM EST

SEANEWS & FEATURES



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...