ボルチモア港の出入り口が橋崩落のため封鎖され、米軍の作戦を支援するため寄港中の計4隻の貨物艦が立ち往生しています。The War Zone記事からのご紹介です。
DOD
フランシス・スコット・キー橋の崩落事故により、ボルチモアで立ち往生中の船舶の中に、アメリカ国内で最も高性能な軍用貨物艦が2隻含まれている。アルゴル級の2隻は、一般的な大きさの貨物船としては世界最速の部類に入るもので、事故発生時、ボルチモアに入港していた他の2隻の予備輸送船も含まれている
2012年、ボルチモアの港に停泊中のアルゴル級SSアンタレスとSSデネボラ。500px via Wikimedia
この記事の執筆時点では、ボルチモア港への船舶の出入りは無期限に停止されており、コンテナ船ダリが橋に衝突した際、橋の上で作業中の作業員6人が死亡したと推定されている。このチームの他の作業員2名は救助され、うち1名は入院している。他に死傷者は報告されておらず、当局によると、ダリからのメーデーコールが、災害の拡大を防ぐのに役立ったという。ダリはフランシス・スコット・キー橋の崩落部分の下敷きとなり、甚大な被害を受けている。海峡の復旧と橋の修復のめどは立っていない。
A satellite image from private firm Maxar showing the MV Dali trapped underneath a section of the collapsed after yesterday's incident. Maxar via X
ジョー・バイデン大統領は昨日、「できるだけ早く港を再開し、橋を再建するよう私のチームに指示した。橋再建の費用は全額、連邦政府が負担するつもりだ」。
ピート・バティギグ運輸長官は本日、NPRの"モーニング・エディション"で、「この港は米国でトップの自動車取扱港です。「橋の工事が完了し、水路が再開されるのを待てません。今、港内で立ち往生している船舶があり、通過交通量は膨大です。経済全体にとって本当に重要なことです」。
現在ボルティモアで立ち往生中の船舶には、アルゴル級のSSアンタレスとSSデネボラが含まれ、両艦とも即応予備隊(RRF)艦船の一部である。運輸省海事局(MARAD)はRRFを管理し、民間の商船員によって乗組されている。RRF船隊は、作戦に投入されると、米海軍の軍用輸送司令部(MSC)の管理下に入る。RRF船は、通常、出動要請があるまで、スケルトン・クルーとともに縮小された運航状態(ROS)に保たれ、出動手順完了には5日から10日かかる。
RRFフリートの別の2隻、ロールオン/ロールオフ貨物船MVケープ・ワシントンとMVゲイリー・I・ゴードンもボルチモアにいる。ケープ・ワシントンの姉妹船MVケープ・ラスはボルティモアに母港を構えているが、オンライン追跡データによると、今月初めにベルギーを出港した後、大西洋を西に向かって航行中である。
MARADによると、ボルチモアのRRF艦はすべて、ステータス的には「ROS-5」に分類されている。本誌はボルチモアのRRF船と昨日の事件への対応について、MARADにより詳しい情報を求めている。
ともあれ、今回のボルチモアでのアンタレスとデネボラの立ち往生は特に注目に値する。この2隻でアルゴル級全体の4分の1を占め、高速でその他の能力も高い貨物船である。もともと1970年代にオランダと当時の西ドイツの造船所で、今はなき米国の商業海運会社シーランド向けに建造されたもので、最高速度は33ノットである。同じような大きさの貨物船は、その正確な構成と積載量にもよるが、13ノットから24ノットの間で航行するのが一般的だ。
海軍にはスピアヘッド級の遠征高速輸送船団があり、最高で45ノットの速度を出すことができると言われているが、アルゴルよりもはるかに小型で、貨物輸送能力が低い。
シーランドがSL-7とも呼んだアルゴル級は、従来の蒸気機関貨物船としては世界最速だった。これらの船の推進システムは、2基の大型ボイラーで構成され、蒸気を発生させて2基のタービンを回し、そのタービンで2基のプロペラシャフトを動かす。現在、このカテゴリーで最も高速な船は、2000年代半ばに建造されたマースクのBクラス・コンテナ船で、ボストン・クラスとしても知られている。これらの船は、約29ノットで巡航するように設計されているが、最高速度は約37ノットに達すると報告されている。
高速で高性能ではあったが、シーランドはSL-7を運用するにはコストがかかりすぎると判断し、1980年代に8隻すべてをアメリカ政府に売却した。これらは当初MSCに直接割り当てられ、新しくUSNSの名前が与えられた。この船はその後、高速輸送船(FSS)とも呼ばれるようになり、車両搭載など軍事用に最適化するための改造も行われた。2000年代後半には、アルゴル級は海軍任務から外され、MARADに引き渡され、その時点でUSNSの接頭辞は民間のSSのものに置き換えられた。
MARADによると、アルゴル級は、いずれも54,895トンの排水量を持つが、現在、内部構造がわずかに異なる3つのサブクラスに分類されている。アンタレスは、199,362平方フィートの「軍事的に有用な容量」を持つ3隻に含まれ、デネボラは、同様に有用な内部空間を持つ206,963平方フィートの2隻の1隻である。残りの3隻の容量は203,000平方フィート。
アルゴル級は、何度も要請を受けている。そのうちの5隻は、第一次湾岸戦争直前の砂漠の盾作戦の第一段階で、米国からサウジアラビアに送られた米国貨物の20%の輸送を運んだ。この船はその後、湾岸戦争の全過程で米国からサウジアラビアに到着した全貨物の13%を輸送することになる。
米軍はその後、1990年代のソマリアやバルカン半島での作戦支援し、2000年代初頭のアフガニスタンやイラクでの戦争開戦期にもアルゴルを使用した。
同艦は、大規模な演習や人道支援任務にも活用されている。下の写真は、ギャラント・イーグル86演習で、アルゴル級USNSアルテアから米陸軍LACV-30ホバークラフトに荷揚げされているところである。
MVケープ・ワシントンとMVゲイリー・I・ゴードンは、RRFフリートにある約30隻のロールオン/ロールオフ貨物船の一部だ。MSCに直接配属されているロールオン/ロールオフ貨物船は他にもある。ケープ・ワシントンとケープ・ラスは、ボルティモアの事故に巻き込まれずに済んでいるようだが、MARADによれば、295,958平方フィートの軍事的に有用な容積を持つ、RRFの在庫の中で最大級の2隻である。ゲイリー・I・ゴードン号の内部貨物スペースは284,064平方フィート、さらに甲板には49,991平方フィートと報告されている。
国防総省が太平洋における中国との潜在的なハイエンドの紛争に備えることに引き続き力を注いでいる。また、ウクライナ紛争が進行中であり、それが他の地域にも波及する可能性が懸念されるため、欧州の現在の安全保障状況に照らしても、海上輸送は特に重要となっている。米軍は、M1エイブラムス戦車やM2ブラッドレー歩兵戦闘車など、ウクライナ向けの援助物資を欧州の中間中継地点まで運ぶために、民間貨物船も利用している。
米軍輸送船はまた、人道的危機や、実際の紛争以外の不測の事態に対応するためにも、引き続き利用できる。同じくRRFのロールオン/ロールオフ貨物艦であるボブ・ホープ級ロイ・P・ベナビデスは現在、ガザ地区への人道支援物資の流入を増加させる目的で、一時的な沖合桟橋構築用の機材を積んで地中海に向かっている。
ここ数年来、米軍の既存の海上輸送能力は、大規模紛争が勃発した場合に必要とされるものはおろか、現在の需要に応えるにも不十分であることが懸念されてきた。MARADによれば、2019年時点で、8隻のアルゴルのうち3隻を含む少なくとも11隻のRRFは、任務遂行能力がまったくない状態だ。
RRF艦隊全体の即応性の現状は不明である。しかし、USNI Newsによると、昨年の公聴会で、退役海軍少将でもあるMARADのアン・フィリップス局長は、下院軍事委員会のメンバーに対し、必要であればすべてのRRF艦船を活動させることができるのかと問われ「まったく自信がない」と述べた。
海上輸送能力を維持し、潜在的に拡大をめざす海軍の現在の計画の中核は、軍用にMARADにより転用可能な商業貨物船の取得に資金援助を続けることである。運輸省はまた、MARADを通じ民間船舶を活用し、海上輸送能力の増強に役立てるという新たな取り組みも実施している。
昨日のボルティモアでの事故は、RRF艦隊にさらなる複雑な事態をもたらし、高い能力を持つアルゴル・クラスの2隻を含む4隻が港でふさがっている。■
Two Of The Fastest U.S. Sealift Ships Trapped By Baltimore Bridge Collapse
.BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED MAR 27, 2024 3:53 PM EDT
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