スキップしてメイン コンテンツに移動

スペースXの極秘衛星コンステレーションはISRのゲームを一変させる。中国ははやくも抗議の声をあげているのがその真価の証明だ。

 ロシアや中国が重要なアセットを狙い撃ちするような対抗手段を整備するなら、標的となる装備を多数分散させればよいわけで、これでレジリエンスが実現する一方、攻撃側はこれまでの投資が無駄になるという構図です。中共がスパイ衛星網整備だと抗議の声を早くも上げているのもこうした計算があるからでしょう。The War Zone記事のご紹介です。


<em>DARPA</em>

DARPA


センサー多数を搭載した衛星多数によるコンステレーションが前例のない戦略的・戦術的な監視能力を世界規模で提供する


国家偵察局(NRO)は、地上作戦を支援するために下方の目標を追跡することに特に重点を置く、情報収集衛星のコンステレーションをSpaceXから取得すると伝えられている。このプロジェクトの詳細はまだ非常に限られているが、宇宙軍が以前、スペースXがNROとの契約を得たとされるのと同じ頃に初めて公にした、極秘の宇宙配備のレーダー監視プログラムで語ったことと明らかな類似点がある。もしこの計画が我々が考えているようなものであれば、戦術的・戦略的な宇宙ベースのセンシングに革命をもたらす可能性がある。

 週末にロイター通信が、この契約に詳しい5人の匿名の情報筋の話を引用し報じたところによると、スペースXの政府向け事業部門であるスターシールドは、NROから2021年に受注した18億ドルの契約に基づいて、新しい地球低軌道(LEO)スパイ衛星の開発に取り組んできた。ウォール・ストリート・ジャーナルは2月にこの契約の存在に関する記事を掲載したが、NROの名前は出さず、契約の業務範囲について具体的な詳細を示していなかった。

 本稿執筆時点では、SpaceXもCEOイーロン・マスクも、ロイターの記事に直接反応したり、詳細についてコメントしていないようだ。ロイター通信によると、NROはアメリカのリモートセンシング情報部門として機能する米軍組織で、1992年までその存在自体が公に認められていなかったほどの秘密組織である。

 SpaceNewsによると、「LEO技術を活用するため調達方法を変更した」とNROのトロイ・マインクTroy Meink主席副局長は月曜日のSatellite 2024会議での講演で述べた。「最優先事項は、最小限のリスクで要件を満たすことだ」。

 新しいコンステレーション、あるいは少なくともその初期セグメントが、まだ運用されていない場合、情報収集をいつ開始するかは明らかではない。ロイター通信によると、スペースXはNROとの正式契約前の2020年から、関連するプロトタイプ衛星を打ち上げており、「軌道上の物体に関する米政府のデータベースには、スペースXのミッションで、同社も政府も認めていない衛星が配備されている」という。

 なぜスペースXがこのコンステレーションを国防総省に提供することになったかというと、同社はこの分野のパイオニアであり、現時点で経験豊富な唯一の請負業者だからだ。

 スターシールド事業部門が公に発表されたのは2022年のことで、最初の契約は宇宙ベースの通信サービスで、翌年に宇宙軍からもたらされた。米陸軍も、スターシールドが提供する通信機能を公に評価している。米軍はまた、スペースXの商用スターリンク宇宙通信サービスを過去に何度もテストしている。

 ロイター通信が報じたNRO向け業務について、SpaceXのスターシーリ土のウェブサイトは現在、3つの主要分野の1つとして「地球観測」を挙げている。他の2つは「通信」と「ホスティングされたペイロード」である。

 スターリンクはすでにエンドツーエンドのユーザーデータ暗号化を提供している。スターシールドのサイトによれば、「スターシールドは、機密扱いペイロードをホストし、データを安全に処理するために、追加の高保証暗号機能を使用しており、最も要求の厳しい政府の要件を満たしています」とある。スターリンクの衛星間レーザー通信端末は、現在軌道上で大規模に運用されている唯一の通信レーザーで、パートナー衛星に統合してスターシールドネットワークに組み込まれる。

 レーザーベースの通信システムは、大量の情報を素早く送信することができ、また、電子戦の妨害電波にも強く、安全性が高い。

 NROがSpaceXから取得すると報じられている衛星の具体的な能力についての詳細は乏しい。ロイターは、「地上ターゲットを追跡し、データを米情報機関や軍関係者と共有する」ことができ、「群として運用できる地球画像機能を搭載する」と報じている。

 ロイター記事からは、衛星がどのような「画像」を撮影するように設計されているのか不明だ。このことは、ここで説明されているような種類の情報製品が、本当に広範な宇宙ベースの地上監視能力の一部なのかどうかという疑問を投げかけることになる。また、地球低軌道から撮影された従来の電気光学や赤外線画像は、大規模な地上でのリアルタイム追跡にあまり使われていない。

 2021年5月、当時宇宙軍のトップであったジェイ・レイモンド大将(退役)Gen. Jay Raymondは、宇宙軍が「宇宙からのGMTI(Ground Moving Target Indicator)を構築中」であり、機密プログラムの一環として「その能力を提供できるよう積極的に取り組んでいる」と明かした。宇宙軍はその後、この特定の宇宙ベースのGMTI能力の開発は、空軍迅速能力開発室(RCO)の2018年プロジェクトにさかのぼることができるとBreaking Defenseに語った。

 GMTIとは、地上の移動ターゲットと静止したターゲットを識別し、移動ターゲットを時間経過とともに追跡することができる。今日私たちが知っているGMTIは、冷戦後期の国防総省のPave Mover構想から生まれたものである。GMTIを搭載したレーダーは、通常、合成開口レーダー(SAR)画像も提供できる。雲、煙、埃の中や夜間でも、非常に詳細な画像のような地上マップをキャプチャできる。

 GMTIの能力は年々著しく向上しており、特にアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーの導入と処理能力の向上により、ハードウェアははるかにコンパクトになった。GMTIとSARを組み合わせることで、収集されるコンテキストデータがはるかに大きくなる。これらの機能は非常に高感度になり、これらのモードの組み合わせにより、GMTIがどのようなターゲットを拾っているか自動識別と分類を行うことさえ可能となっている。


A SAR image of C-130s on a ramp.

A SAR image of C-130s on a ramp.


 2021年以来、宇宙軍を含む空軍省は、E-8C統合監視目標攻撃レーダーシステム(JSTARS)戦場監視管理航空機の後継装備の重要な要素として、宇宙ベースのGMTI能力を提示してきた。E-8はペーブ・ムーバー計画の主要成果であった。当時、米空軍関係者は、宇宙ベースの能力が実際に存在するのかどうか、あるいは当時存在しなかったとしてもいつ存在する可能性があるのかについては明言しなかった。空軍は来年にも最後のE-8Cを退役させる予定である。

 E-8退役で失われる能力の一部は、紛争空域に侵入できるものを含む分散型空中プラットフォームに向かうだろうが、大部分は宇宙に向かうだろう。そのため、成熟しつつあるGMTIコンステレーションは、E-8Cが退役するこのタイミングと理にかなっている。宇宙ベースのGMTIプログラムがどの程度成功するかは、将来の高度な空中GMTI/SAR監視プログラムにも影響を与える可能性がある。

 NROはこれまで戦略レベルのインテリジェンスに重点を置いており、宇宙ベースのGMTIが特に関連するような戦術作戦を支援することはない。NROと宇宙軍はまた、それぞれの情報・監視・偵察(ISR)責任の所在を明確にしようとここ何年にわたり取り組んできた。この能力の獲得と実戦配備に関して、両者が協力するとしても驚くべきことではない。また、NROがスペースXから取得をめざすコンステレーションが、複数のISRタスクを実行できるセンサー・スイートを搭載している可能性も大いにある。

 空軍の2025会計年度予算要求が先週発表されたのを前に、3月初めに本誌などが出席した円卓会議で、フランク・ケンドール空軍長官は「パススルーの中身について詳しくは言えないが、こう言っておきたい。宇宙には、諜報活動にも軍事利用にも価値のあるデュアルユースの能力がある。このためパススルーには宇宙軍にも有益なものも含まれると申し上げておく」。

 ここでいう「パススルー」とは、空軍予算のうち、他機関に直接支払われるもののことで、一般的には機密プログラム用であり、これも公に認められていないことが多い。NROは、何十年も、公に活動することができなかったため、この点で歴史的に空軍と非常に緊密な関係にある。


GMTI tracks overlaid on a SAR image. (Public Domain)

GMTI tracks overlaid on a SAR image. (Public Domain)


 GMTIとSARが可能となる大規模な衛星ネットワークは、戦略的な意味で大きな助けとなる可能性がある。これらの資産やその他の戦略的な動きを持続的に追跡することは、国防総省が何十年も切望してきた戦略的監視で究極の実現となると言ってよい。大規模なコンステレーションがあれば、軌道上のリソースを一定量このミッションに割り当てることができる。

 スペースXがNRO向けに製造中とされる衛星の正確な能力、運用開始時期、これが宇宙軍のGMTI計画と関連しているかどうかにかかわらず、コンステレーション・コンセプトの利点は明らかだ。歴史的に、スパイ衛星の最大の限界として、一度に必要な場所に行くことができないことと、再作業のスピードが比較的遅いことがあった。また、従来のスパイ衛星の動きは予測可能であり、スパイ衛星を監視する手段を持つ国は、スパイ衛星が上空にいる時間に合わせ活動を綿密に調整することができる。

 一方で地球低軌道上のスパイ衛星は、収集できる情報の種類や文脈に制限がある。一刻を争う作戦を支援したり、戦場のすぐ近くにいる部隊にオンデマンドの追加情報源を提供するのは難しいかもしれない。ロイター報道によれば、NROがスペースXから新しい分散型コンステレーションを購入する背景には、地上での戦術的な作戦をサポートすることが大きな原動力となっている。

 対照的に、大規模な分散型コンステレーションは、地球の広大な範囲を同時監視する能力を持ち、コンステレーションの規模にもよるが、少なくともシームレスに継続監視ができる。これにより、相手が興味のある活動を隠すことは不可能ではないにせよ、困難になる可能性がある。非常に低い再訪問率、あるいは再訪問率を完全になくすことで、地球低軌道からその場所を継続して「ストリーミング」カバーする可能性さえ開けるだろう。これは、地上の動きをリアルタイムで追跡する永続的なGMTIカバレッジで不可欠なものであり、実際に兵器をその軌跡に誘導できるほどの忠実度を持つ。より限定的な同意ではあるが、空中追跡も機能する可能性がある。E-3セントリー空中警戒管制システム(AWACS)も、E-7ウェッジテイルとともに、部分的には宇宙ベースの機能に取って代わられるだろう。

 これは別のタイプのシステムで、おそらく追跡を行うエキゾチックな機能を備えた広範囲の光学/赤外線イメージングを実行するものである可能性が高いが中身は不明だ。

 いずれにせよ、ここでは宇宙からの全方位、あるいはそれに近いターゲティングと監視の可能性について話している。

 特に機械学習や人工知能(AI)技術の利用によって可能になる、より優れた共同作業能力は、関心のあるターゲットや異常をはるかに速く発見するのに役立つだろう。これはまた、より自律的な収集、タスク/リタスク、その他の能力への扉を開く可能性もある。シームレスなカバレッジが必要な関心エリアでは、人間のデコンフリクトやオペレーターによる直接指示さえ不要となり、自動的に必要な軌道に追加衛星をリタスクさせることができる。

 データ収集では、機械学習とAIが、大規模な分散型コンステレーションが収集する膨大な量のデータを解析するのに役立つ鍵となるだろう。この能力はすでに実証ずみで、米軍は継続的な開発に積極的に投資している。

 NRO副長官のクリストファー・ポバック宇宙軍少将Maj. Gen. Christopher Povakは、昨年、SpaceNewsによると、「我々のアーキテクチャの拡散と多様化は、カバレッジの拡大、より大きな容量と回復力、よりタイムリーなデータ配信を提供する」と述べた。

 衛星数百機で構成するコンステレーションは、敵対的な攻撃に対する耐性もはるかに高い。米国の敵対国や潜在的な敵対国、特に中国とロシアは、さまざまな対衛星システムを実戦配備しており、さらに高度な能力を開発し続けている。

 米軍はすでに、弾道ミサイルや極超音速兵器に対する早期警戒など、さまざまな任務を支援し、将来の攻撃時にアクセスを確保するため不可欠と見なす、その他分散型コンステレーションに公的に取り組んでいる。また、さらなる弾力性を提供するために、米当局は衛星画像の調達に関しても、民間宇宙企業との協力関係の拡大を模索している。しかし、インテリジェンス・コンステレーションを完全にアメリカ政府の管理下に置くことで、特定の民間業者との問題によるアクセスへの潜在的な脅威を排除できる。スペースXとマスクCEOは、ウクライナ紛争に関連し、スターリンクの利用がどのように許可され、また許可されなかったかについて批判に直面している。独自のコンステレーションを持つことで、この変数は方程式から取り除かれる。

 同時に、分散型コンステレーションへのこのような公的な注目は、競合他社が新たな、そして議論を呼ぶ衛星対抗策を模索することを促しているように見える。今年初め、ロシアが核兵器を使って一度に大量の衛星を無効化または破壊する宇宙ベースの対衛星システムを研究しているとの情報をアメリカ政府が入手していることが明らかになった。

 以前から、中国軍も大規模なコンステレーションへの攻撃手段として核兵器の使用を検討しているとの指摘があった。また、人民解放軍に関連する中国の研究者は、ウクライナで進行中の戦争からの観察に基づき、スペースXの既存のStarlinkコンステレーションがもたらす潜在的な脅威について懸念を表明している。

 「今日、我々のコンステレーションは穏やかな環境に最適化されていると言える。そして、これらの脅威が増大しているのを見るにつけ、次世代の回復力のあるコンステレーションを開発するまで、現行のコンステレーションを保護し、防衛しなければならない」と、スティーブン・ホワイティング米宇宙軍大将Gen. Stephen Whitingは2月の上院軍事委員会公聴会で語った。「その作業は、次世代の弾力性のある装備を配備するため進行中である。「最も懸念されるのは、中国がわれわれとわれわれの宇宙依存を臨床的に研究し、われわれのアーキテクチャーがどのようなものかを正確に把握し、現在、そのアーキテクチャーを危険にさらすシステムを急速に構築していることだ」とホワイティングは付け加えた。

 中国は、宇宙空間での情報収集能力の拡大も急ピッチで進めている。ロイター通信は本日、人民解放軍に関連する中国の国営メディアやソーシャルメディアのアカウントが、スペースXとNROの契約に関するニュースを特に声高に非難していると報じた。

 全体として、NRO向けの新しい巨大なスパイ衛星コンステレーションでスペースXの仕事の規模、範囲、進捗状況については、宇宙ベースのGMTI能力を実現する努力との関係も含め、疑問が残ったままだ。同時に、このような宇宙ベースの分散型情報能力は、理にかなっているだけでなく、ゲームを変える影響を与え、脅威の増大に直面する中、ますます不可欠になっている。■


If SpaceX's Secret Constellation Is What We Think It Is, It's Game Changing


BYJOSEPH TREVITHICK, TYLER ROGOWAY|PUBLISHED MAR 20, 2024 4:44 PM EDT

SPACENEWS & FEATURES







コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...