CSBC Corporation
台湾初の国産潜水艦に迫る----The War Zone記事からのご紹介です。
台湾初の国産潜水艦"海鯤ハイクン"が海上公試を開始しようとしている
台湾初の国産建造潜水艦の海上試験が開始されようとしている。昨年9月に高雄で進水したディーゼル電気推進式「海鯤」「ハイクン」(SS-711)は、老朽化が目立つ台湾の潜水艦部隊を刷新しようと計画された8隻の1号艦だ。
ハイクンの新しい写真が公開された。この潜水艦は、造船所から浮きドックに移され、海上試験を開始するために海中に投入された。以前の報道によれば、この潜水艦は4月下旬に受入試験のために海に出て、年内に引き渡されることになっていたが、このプロセスが遅れる可能性もあるようだ。
これまで艦の全体的な仕上げで、特にセール部分が完成レベルに達していないとの指摘があった。最新の画像は指摘を正確に否定するものではないが、このクラス初の潜水艦が急速なペースで完成したことも忘れてはならない。
このことを念頭に置いて、潜水艦戦のアナリストであり、『ウォー・ゾーン』の寄稿者でもあるメイトゥス・スムトニーは、画像でわかるハイクンの主な特徴をいくつか挙げてくれた。
via Matus Smutny
艦前部には主要兵装である533mm魚雷発射管の開口部が見える。Mk 48大型魚雷以外にハープーン対艦ミサイルや、機雷を搭載できる可能性がある。また、同部分には、音響センサーの主要部分であるシリンドリカル・アレイ・ソナー(CAS)がある。船体の断面を円形に囲むように配置されたハイドロフォンで、周囲を把握できる。
船体の上部、セールの前方には、音響インターセプト/レンジング・アレイがある。これは、傍受されたアクティブ・ソナー・トランスミッションと音響トランジェント・イベントを定位、処理、表示するために使用される。システムは信号源の方位、距離、速度を提供する。また、潜水艦自身が配備した武器や対抗措置、水中通信、潜水艦自身の騒音レベルを監視するためにも使用できる。
さらに艦体下方に進むと、パッシブ・レンジング・ソナー(PRS)と、さらにその下方に、かさぶた状の側面ソナー・アレイが見える。側面ソナーが船体の他の部分よりも外側に突出していることで、潜水艦本体からの音響的な「デカップリング」が最適化され、接触分類能力が向上している。その他の潜水艦とは異なり、ハイクンが曳航式ソナー・アレイも搭載している形跡はない。この種のセンサーと船体の間の距離のおかげで、音響デカップリングはさらに改善される。
船体側面の大きな開口は、二重船体と一重船体の間の移行を示す。この特徴はオランダのウォーラス級にも見られ、台湾の設計に大きな影響を与えている。基本的に、潜水艦の前部と後部は二重船体で、中央の圧力船体(乗組員の居住区を含む)は一重船体である。これは実用的には理にかなっているが、騒音が増える可能性もある。
船体側面に設置された小さなポートは、魚雷対策で使用される。船体後部には、X字型の舵と尾翼の配置、そして、例えばドイツの212型のような、シグネチャーを減少させる渦減衰器がない、ごく標準的なブレードタイプのプロペラが見える。
潜水艦の潜航時間を大幅に延ばし、探知を困難にする、噂されている空気非依存推進(AIP)システムに関する報告は今のところない。しかし、スペイン海軍のアイザック・ペラル級の一部が大規模なオーバーホール中にAIPシステムを導入しているのと同様に、将来的な改装を想定してスペースが確保されている可能性はある。
ハイ・クンの実現に外国がどこまで関与しているのかは、不明だ。
15億4000万ドルをかけて台湾の中国造船公司(CSBC社)が建造したとされるこの潜水艦は、前述の兵器のほか、重要なミッション・システムはロッキード・マーチンが提供している。また、英国を含む少なくとも6カ国が援助を提供したと伝えられている。
台湾が2014年、独自の潜水艦建造計画に乗り出したことは、それ自体が物語であり、以前にも取り上げた。米国やイタリアからの導入など様々な選択肢を精査した上で、台湾が外国製潜水艦を購入する機会を閉ざす決定をした背景に北京からの圧力があった。
人民解放軍海軍(PLAN)の潜水艦艦隊は台湾にとって特に懸念事項となっている。PLANの潜水艦艦隊は少なくとも60隻に達し、各種設計の潜水艦が急ピッチで建造されているため、台湾は潜水艦の隻数で中国に対抗できない。能力面でも、中国は強力な原子力攻撃型潜水艦、原子力弾道ミサイル潜水艦、一層革新的になってきた通常動力型潜水艦、さらに無人水上艦艇や水中機(USVやUUV)など、明らかに最前線にいる。
台湾の潜水艦計画の真価で議論が残るが、国防費が増え続ける中、軍事計画の要であることに変わりはない。台湾政府関係者は、新型潜水艦は「戦略的抑止力」であり、中国による海上封鎖などの危機に際して太平洋への「生命線」を維持できると豪語している。
このような主張に対し、中国国営メディア『環球時報』は、台湾の潜水艦戦略は台湾が「白昼夢を見ている」あらわれであり、中国は「島の全周に多元的な対潜ネットワークを構築済み」と述べている。
現代のディーゼル電気潜水艦は、特に『非対称』戦争という点で、貴重な軍事的役割を果たすことができる。このように、これらのボートの小さな艦隊であっても、中国艦船を待ち伏せしたり、特殊作戦に使用することができる。また、浅瀬を得意とするため、いわゆる「第一列島線」まで進出し、バシー海峡や宮古海峡のような主要な隘路でPLANの活動を妨害することもできる。しかし、これは、台湾の潜水艦が紛争で長く持ちこたえられる前提であり、特に、PLANの対潜戦能力が改善され続けている場合が懸念材料となる。
A Pentagon graphic showing the geographic boundaries of the First and Second Island Chains. U.S. Department of Defense
しかし、ハイクン級は、現在中華民国海軍(ROCN)で供用中の老朽化した潜水艦艦隊に比べ、大きな改善を意味する。現有勢力は1980年代半ばにオランダで建造され、2016年以降の中期のアップグレードの対象となった海龍級2隻で構成されている。第二次世界大戦中にテンチ級潜水艦とバラオ級潜水艦として建造されたハイ・シ級2隻は、もはや外洋に出れない可能性が高い。
ハイクン級がいかに成功を収めても、中国には常に数で劣り、場合によっては打ち負かされることになる。しかし新型潜水艦の試験運用が開始されたことは、台湾の造船産業と軍事全般の大きな進歩を示している。■
Our Best Look At Taiwan’s First Homegrown Submarine | The War Zone
BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED FEB 27, 2024 4:53 PM EST
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。