核保有国で核戦争計画は最も厳重な秘密とされる。ただし、今回明らかになったのは米国が核兵器80発を北朝鮮に投下する準備に入っていたことだ。内容が漏出した経緯も異例で、ボブ・ウッドワードの近著
「憤怒」がトランプ政権が検討していた内容に触れている。同書は今週出版された。
「オマハの戦略司令部はOPLAN 5027として北朝鮮の政権交代策を慎重に検討してきた。北朝鮮が攻撃してきた際の米国対応は核兵器80発投入も含む作戦となっていた」
これは二通りに読める。ひとつは北が攻撃した場合に核兵器80発の使用も含めた対応をする、というもの。あるいは核兵器80発が北朝鮮による第一撃への対応策とするものである。
ウッドワードはNPRの取材でこの点を聞かれ、核兵器80発は米国による攻撃作戦OPLAN 5027の一部とし、金正恩の「斬首」作戦もその一部だったと述べた。
「北朝鮮がならず者国家であり、核兵器十数発を巧妙に隠しているとの報道がある」(ウッドワード)とし、国防長官(当時)のジェイムズ・マティスは北朝鮮への核攻撃命令を出す可能性に杞憂していたという。「第二次攻撃を食い止めるためにも核攻撃命令は必至だった」とマティスは認めている。
「数百万を焼き殺すはずだった」とマティスが述べているとウッドワード著書にある。「百万名を一度に殺す権利はだれにもないが、当時はその可能性に直面していた」
ウッドワードによれば、トランプ大統領は米国に向かう軌道に乗っている北朝鮮弾道ミサイル一発を迎撃すれば北朝鮮は全面核攻撃に踏み切るのではと心配していた。トランプ大統領はマティス長官へ通常弾頭付迎撃ミサイル発射の権限を与え、米国に向かう北朝鮮ミサイルは全て撃破することにしていた。
マティス長官はトランプ大統領が北朝鮮への先制攻撃に踏み切ることはないと確信していたとウッドワードは伝えている。逆にマティス長官を憤懣させていたのは金正恩だった。
事実、マティス長官はジム用の服装で寝ていたほどだったとウッドワードは伝えている。「バスルームの照明はつけたままで....北朝鮮ミサイル発射を探知した際にすぐ対応するためだった」
マティスは寝室、台所にも警報ベルを置き、2017年夏には一回ならず実際に警報が作動したことがあり、私邸の通信室に直行していた。ウッドワードによればマティスの公用車には常時SUV車が随行し、ミサイル飛翔経路を表示する装備が入っていた。日本、韓国、米国のいずれを狙ったミサイルにも対応していた。マティスがミサイルが敵意あるものと判断すれば、携帯通信リンクで撃破命令を下す体制だった。
NORTH KOREAN STATE MEDIA
ICBM北極星15を視察する金正恩
同書はミサイル警報が鳴った事例を詳しく述べている。2017年8月29日午前5時57分のことで、「機微」情報で北朝鮮のミサイル発射が迫っているとわかった。マティス長官は在宅中で通信室に入り、米迎撃ミサイルの発射準備ができていると報告を受けた。長官は北朝鮮ミサイルの発射後の状況を見守り、日本上空を通過して海中に落下したのを見た。当時のマティスは「休日も取れず、自由な時間が皆無のノンストップで厳しい仕事」だったとウッドワードが記している。
核武装した北朝鮮はマティス在任中の米政権内にとって熟考の対象だった。そこで北朝鮮への攻撃案で核兵器80発の投入構想が大統領、国防長官の間で議論の対象になっていたのは想像に難くない。
2017年9月にもどると、北朝鮮は第六回目(現時点で最終)の核実験を実施し、熱核爆弾と自ら認めた。同年の北朝鮮戦略ミサイル部隊は大陸間弾道ミサイル北極星14、15の発射実験を続けて実施する大胆な動きを示し数発が日本上空を通過した。
同年に米朝間で緊張が高まる中、The War Zoneは戦略軍(STRATCOM) のOPLAN 8010の詳細を報じ、国名を明示しないものの数カ国を対象にした攻撃案を紹介した。その一部を再録した。
宇宙空間、サイバー空間で動的な安全保障へ懸念が広がる中で、主権国家数か国が国家安全保障に従来型の脅威をひきつづき与えており、WMD(大量破壊兵器)の性能も向上している。
The War Zoneが入手した報告書では北朝鮮の国名を示していないが、一節で「世界規模の脅威となっている各国」を取り上げており、北朝鮮であるのは明らかである。
STRATCOM
米戦略軍の作戦計画8010の抜粋
当時ワシントンで検討対象だったのはOPLAN 5015で、核攻撃で北朝鮮指導部を抹殺する作戦としてウッドワードはその存在をトランプ大統領への長時間インタビューから割り出した。ウッドワードは全面戦争の場合は金正恩はじめ同国最高指導部は常に最高優先度つき標的だったと伝えている。
ウッドワードによるインタビューでトランプ大統領は金正恩は対米開戦への備えを完ぺきに準備しており、両国の全面開戦の可能性は「かなり高かった」と述べた。トランプ大統領は両国間の緊張状態は2018年6月のシンガポール会談で緩和されたと見ていた。
米朝間の緊張は2017年を境にある程度まで緩和されたが、核問題では全く解決の見込みがない。2019年ハノイでの米朝会談二回目で交渉は決裂した。
現在の北朝鮮は核兵器の性能向上をさらに進めている兆候があり、潜水艦発射式弾道ミサイルの完全試射が一年以内に行われそうとの情報も韓国から出ている。
潜水艦へ核兵器搭載を進めれば北朝鮮は敵による核兵器探知さらに破壊を免れる。北朝鮮が第二次攻撃能力を獲得の可能性は低いとはいえ、米側も核攻撃作戦案の改定を迫られる。その場合はウッドワードが伝える80発投入では足りなくなるだろう。■
この記事は以下を再構成したものです。
Yes, The United States Did Draw Up A Plan To Drop 80 Nuclear Weapons On North Korea
Yes, The United States Did Draw Up A Plan To Drop 80 Nuclear
BY THOMAS NEWDICKSEPTEMBER 18, 2020
ベテラン記者に核戦争計画を暴露させたことは、いろいろ裏がありそうだ。
返信削除北朝鮮に対する大量の核兵器の使用は、壊滅的打撃を与えることであり、金の逃げ場も継戦能力も無くなってしまうだろう。
では、核戦争計画の暴露は何を目的とするか? 恐らく以下であろう。
①大統領選挙前であり、トランプが核兵器使用も辞さない強い大統領であることの姿勢の誇示
②北朝鮮への脅し。ハノイ会談でトランプは金を脅し、核実験、ICBM実験、及び米国に対する挑発行為を断念させたが、その継続
③韓国への警告。北朝鮮を敵国と認識しない韓国に、核兵器使用を含む戦争が目前にあることを知らしめること
トランプ自身は、北朝鮮への先制攻撃や核兵器の使用など全く考えていなかったと推定する。金は、対米開戦への備えを完ぺきに準備していたと述べたようだが、これはハッタリであろう。ハノイ会談で、金は、トランプに腹の底を見透かされ、トランプの虚実不明な恫喝に健康を損なうほどビビッたのだろう。
韓国は、相も変わらず危険な精神的自慰行為に勤しみ、反日行動を継続し、米中対立の深刻さを認識せず、現実から目を背け続けるだろう。しかし、著しい軍備拡張は、とても危険な要素になりつつある。そうなると国際社会は、韓国の経済破綻の促進を急ぐかもしれない。次の経済破綻は、前回より深刻になると思われるのだが。