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F-35のライフサイクルコストは負担不可能なのでNGADに期待せざるを得ない、と退任(?)間際のローパー空軍次官が見解を示した。その他、デジタルエンジニアリング、ABMS、空軍の価値観を語る。

 



F-35


F-35のライフサイクルコストが法外な水準なままのため、空軍は必要とする機数の調達ができない、このため次世代制空機(NGAD)が重要になると空軍で調達を仕切ってきたウィル・ローパー次官が退任を前に報道陣に語った。


「F-35事業は持続不可能だ。大量調達可能な価格水準からも遠い」


「このため次世代制空機が重要となる。戦闘に必要な装備を揃えた次世代戦闘機になるだけではない。調達の仕組みを根本から変えるだけではない。F-35より維持が容易な機体を実現する機会となり、現実にF-35の飛行時間あたりコストが下がっていない」


ローパーは1,763機のF-35調達構想を縮小すべきかの議論には与しない。「だがそれだけの規模の機材を維持できる価格水準でないことは確かだ。今後数年間がF-35事業の運命を決めるだろう」


NGADの実現を早め、実戦に耐える戦闘機部隊を整備すべきと言おうとしているようだ。


「(NGADの)今後には大きな期待があるが、最悪の事態想定で仕事したくない。空軍にTacAirポートフォリオを提供し選択肢を与えており、ボールは空軍にある」


ローパーの説明では空軍戦闘機は開戦当日から制空権確保の役目があり、「初日に勝利できないとその他の軍部隊が戦闘に入れなくなる」からだという。このためF-35では投入可能機材の規模が問題になり、同時に性能水準も重要要素だと指摘する。


「水準についてはF-35は問題ないと評価は一致しているが、次のステップとなるブロック4機体に注目している。機体数は飛行時間あたりコストが本当に下がるかで変わるが、このコストが機体取得価格より重要で空軍の調達数そのものが問われかねない」


主契約企業ロッキード・マーティンはブロック4改修でコンピュータ処理速度を引き上げ、ミサイル搭載数を増やし、コックピットディスプレイを拡張し、航続距離を伸ばし、無人機との連携機能を実現するとしている。だが政府会計監査局はブロック4改修費用は15億ドル増加し今や121億ドルになると把握している。改修が何度も遅延していることがあり、監査局は質面に注目している。「F-35は現場で信頼性、整備性の目標を満たしておらず、事業が期待する品質の機体を納入できていないことが露呈している」と報告書にある。


「ブロック4改修は今も続いており、ソフトウェアのアップグレードを参考にアジャイル開発手法を採用したことで性能は向上し、継続改善と従来機と性能の差の拡大が続きます」とロッキード・マーティン社広報は述べている。


維持可能な価格が実現するかという核心部分についてローパーは「その他の戦術機投入の選択肢に訴求力があり、混合編成案など空軍には選択肢が複数あり、各社の競合、外部圧力が業界にかかり、向上を迫れている中で、唯一の事業ではなくなっている」と語る。


ロッキード・マーティンは「F-35の価格水準の重要性は生産、維持両面で理解しており、他では実現不可能な機能を従来型機材並み価格で提供しようと努力中」と広報は言う。「現在納入中のF-35の機体価格は性能が劣る第4世代機を下回り、維持費用もこの5年で4割下げました」


ローパーはF-35の際限ない問題発生により空軍のソフトウェア開発チーム、共用事業推進室、ロッキード・マーティンが「全員同じ方向に走り、同じペースなのに違う結果を出している」と評した。空軍のソフトウェア開発拠点の頂点、通称ケッセルランが「システム維持に全力を投入している」とし、ロッキード・マーティンが導入したトラブル続きの自動補給支援情報システム(ALIS)に代わるシステムをODIN(運用統合データネットワーク)として開発中だと述べた。「この事業には通常の枠を無視し空軍各所の組織を動員している」。


航空業界のアナリストとして経験豊富なリチャード・アブラフィアは「1,763機というUSAF向けF-35Aの数字が国防調達で虚構の存在として君臨してきた」と評し、空軍がそれだけの規模の調達予算をどうやっても工面できない反面で、NGADが代替策になるとも早々に言えないためとする。


「他事業との兼ね合いもあり単年度で購入可能なのは50機でしょう。これが20年25年続いても1,000機1,200機にしかならない」とアブラフィアはいう。「変動要因として次世代戦闘航空機が調達段階に入れば大きい。NGAD試作機が飛行すれば影響が現実になります。同機が完成し生産開始し、運用開始するまでの期間を検討する必要があります。ただし、F-35調達を縮小し、予算をデジタルセンチュリーシリーズに流用する構想には欠陥があるように聞こえます」


NGAD とデジタルエンジニアリング


Lockheed Martin Skunk Works concept art of a sixth-generation fighter

ロッキード・マーティンのスカンクワークスによる第6世代戦闘機の構想図



ローパーに成功を最も期待している事業はなにか尋ねると、本人はNGADとデジタルセンチュリーシリーズのモデルと答えた。


「具体的に言うとデジタルエンジニアリングをフル活用して次世代制空機を実現したい。というのは次世代戦術機の製造以上の意味があるからだ」と述べた。NGADではデジタルの限界、空軍・宇宙軍の限界にも挑戦する。ローパーは宇宙軍参謀総長レイモンド大将にもデジタル作業の全体像を説明しており、宇宙軍は衛星にデジタル作業を応用している。


「この動きで空軍にメリットが生まれ、機材全般にも良い結果が生まれ、宇宙軍では衛星打ち上げロケットの性能向上を期待している。うまいたとえがないが、大きな機会であることは確かだ」


「デジタルエンジニアリングはここ8年間での最大の変化」と強調し、「このため24時間デジタルエンジニアリングの最新動向を学び、空軍と話についていけなくならないよう努力している。これで来週にも幹部をひと押しする。その後は実際の作業で結果が出てくるだろう」


ABMS


空軍がトップ優先事項とする高性能戦闘管理システムAdvanced Battle Management System (ABMS)で最初の成果が出てくることをローパーは退任予定の1月19日以前に期待している。


「大統領就任式を控え、リリースワン取得戦略を承認するのが最後の仕事になる。あくまでも普通の形で普通の事業としてテスト日程を組み、全て通常通りにすすめる」とし、「調達としては目立つところはないが、最初となるとやり方も変えないといけない」


「リリースワン」とはABMSパッケージの最初の成果で「16-17種類」の「製品」で構成し、例としてクラウドワン、プラットフォームワンがABMS事業の「実地」試験でテスト済みであり、すべて「軍事装備システムの小型版インターネット」になるとローパーは述べている。


「クラウドがあり、デバイスを接続し、大規模アナリティクスもある。宇宙他各方面の運搬手段があり、モノのインターネットを利用できる。携帯電話中継塔に匹敵する手段で各帯域で各種デバイスにデータを中継する。空軍ではデバイスが各種業務をこなす手段になっており、敵に対抗していく」


中でも航空機動軍団の給油機が「空中中継塔の機能となっており、各種帯域をつなぎ、データを戦術機材に送信し、通信妨害や位置測定、航法、計時できない環境でも対応している」という。給油機にはデータ処理作成用ソフトウェアが搭載され、「事態の進展に合わせ適宜アクションを取れる」というが、ローパーはABMS機能を搭載した給油機の種類に言及していない。ボーイングKC-46は通信情報収集センサーを搭載しており、ABMS機能としてゲイトウェイワン含む装備がつくとの報道もある。


ウィル・ローパー次官、左から二番目


ローパーはABMSを始めた時点で軍用モノのインターネット構想につながる基盤は皆無だったと言う。「二年前には軍用インターネットの基礎はどこにもなかったのでプロジェクト別に構築を迫られた。重要なことはインターネットのような存在は使わないことで、読者にはぜひこれを伝えてもらいたい」


読者は2021年度支出法案で空軍のABMS要求は半額に減額され、159百万ドルになったことを承知されているだろう。議会報告書では「正当化が難しい内容」と評している。


遺産と未来


誇るべき業績について尋ねると、空軍を「イノベーション重視」価値観に向かわせたことと答えた。この価値観はソフトウエア制作拠点の新設、代替調達方法を強力に追求したこと、新規企業中心に民間活力を利用する仕組みを構築したことなど各種手段で根付いたもので「空軍内部に構築するのは難しかった」と振り返る。「非常に硬いスポンジに水をかけるようなもので、表面と裏面こそ濡れるが、内部まで水分を通すには大量の水が必要で特に上層部には多大な労力を投入した。間違った印象を与えれば即座に否定される、とくに上層部には。今後の動向に期待している分野だ」


ローパーはバイデン政権のペンタゴンで仕事を続けるつもりがあるのかは明らかにしていない、また次の仕事についても言及していないが、これまでの業績に満足し引退生活を楽しむ素振りは皆無だ。次期政権でも本人の存在が必要だと訴えそうな気配がある。


「現時点ではわからない。政権交代はすでに一回乗り切っている。オバマ政権下の仕事のほうが現政権より長い。自分は政治家ではない。政治には関わりたくないし、自分なりの強い政治観もある。毎日こうやって仕事場に出てくるのは自分の技術知識や変革を率いる力で政府の変化やイノベーションを実現したいからで、さらに中国がある。中国は今後長期に渡り注視すべき対象で一政権だけの話ではない」


「中国はこちらを打倒する構想をねっており、このため国防分野に奉職している。またこのため懸命に働いてきた。これから先のことはわからないが、米国の優位性を取り戻す一環でいたいし、政権内部あるいは外部でもこれは可能だ」■


この記事は以下を再構成し、人力翻訳したものです。


Roper Hints NGAD Could Replace F-35; Why? Life-Cycle Costs

By   THERESA HITCHENS

on January 14, 2021 at 4:14 PM


コメント

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