スキップしてメイン コンテンツに移動

北方領土に主力戦車まで配備するロシアに四島返還の意思は皆無。現実の重みをもとに100年先を見通す対ロ外交をデザインすべきだ。

なぜこんな装備を島に配備するのか、日本の侵攻を真剣に恐れているのか。日本が条約を盾に理詰めで主張しても力を信じる(つまり恐れる)ロシアには通じないのでしょうね。ロシアの衰退を気長に待つのか、チャンスを逃さず行動するのか、いずれにせよ日本には100年単位の大戦略が必要な気がします。National Interestの記事です。

 

 

二次大戦が終わり75年になるが、クリル(千島)列島はロシアが実効支配したままで、日本は南端4島の返還を求めてきた。ロシアは南クリル、日本が北方領土と呼ぶ各島は1945年8月末から9月にかけ赤軍が占領し、ソ連に併合された。

 

各島が日ロ関係に悪影響を与えており、平和条約が締結できず、第二次大戦は公式には両国間で終結していない。

 

該当島嶼部分の地位をめぐる交渉は2018年以後途絶えているが、ロシアは撤収の姿勢を示していない。クリル列島には第18機関銃歩兵師団が駐屯し、S-400地対空ミサイル、Su-27戦闘機、キロ改潜水艦、地上配備対艦ミサイル、Ka-52攻撃型ヘリコプターを配備中との報道がある。

 

 

このうちDefence-BlogはロシアがT-72B3主力戦車を配備すると伝えている。

 

T-72B3戦車は最新鋭ではないものの、敵の揚陸部隊のみならず小艦艇も撃破できよう。125ミリ平滑砲で誘導ミサイルも発射できる。

 

「T-72B3は近代装備となった」とロシア軍事専門家アレクセイ・フロポトフがDefense-Blogに語っている。「基本形と比べエンジンが高出力となり、熱感知、火器管制、通信機能が改良され、装甲も追加している」

 

日本が問題の各島を軍事攻撃する可能性は極めて低いが、同戦車の配備はロシアに返還の意図がないことを意味する。実はこの島嶼部分がロシアと日本間で世紀をまたがる紛糾となってきた。

 

同地にはアイヌ原住民が居住していたが、17世紀にアイヌ民族が徳川幕府の治世下に入り、18世紀にカムチャツカ半島から南下してくるロシア探検隊との遭遇が生まれ、1855年に江戸幕府とロシア帝国は南端の択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島を日本領土とし、以北はすべてロシア領とする条約を締結した。

 

その後の1876年条約で日本は千島列島全部、ロシアはサハリン島以西を領土とする合意ができた。日露戦争後に日本はサハリンの半分を領土とし、数千名の日本国民が移住した。

 

真珠湾攻撃を控え日本帝国海軍艦隊は択捉島に集結したが、霧の発生で知られる同島で艦隊終結の状況を隠せると判断したためだ。第二次大戦中に同島は米B-25やB-24の空襲を受けた。

 

ヤルタ会談でフランクリン・ロウズベルト大統領はソ連の要求を受け入れ、対日開戦を条件にクリル列島をソ連領土としてよいとした。

 

米国は秘密裏に艦艇149隻をソ連海軍へ引き渡し日本が占拠する各島への侵攻作戦を準備させた。赤軍は1945年8月17日に霧の中で侵攻を開始し、日本守備隊は完全に虚をつかれた格好だった。8月23日に20千名強の帝国陸軍守備隊はその他日本部隊と同様に降伏した。しかし、一部部隊は命令を無視し、ソ連部隊への抵抗を続けた。戦闘自体は苛烈なものではないが、ソ連兵士1千名近くが戦死し、日本軍も1千名が戦死負傷している。

 

大戦後に日本民間人17千名が送還され、日本軍捕虜はシベリアに抑留され、1950年代まで帰国できないものもあった。現在はロシア住民19千名が列島に暮らすが、戦車部隊が投入されるのは、当面ロシアが同地を去りそうもないことを意味する。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

Russia Sending Weapons of War to Disputed Kuril Islands

January 13, 2021  Topic: Kuril Islands  Blog Brand: The Reboot  Tags: RussiaJapanKuril IslandsMilitaryT-72S-300Su-27

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com. This article first appeared last year and is being republished due to reader interest.

Image: Reuters.

 

コメント

  1. ぼたんのちから2021年1月14日 11:16

    日本政府は、ヤルタ会談に拘束されないとの見解であり、それならば1875年の樺太・千島交換条約(記事の1876年は間違い)に立ち戻るべきだろう。1855年、1875年の条約は、戦争処理の条約でなく、平時の条約であり、最も根拠とすべき条約である。
    ロシアの主張の根拠は、ヤルタ会談であり、昨年ロシア外相が言うように、戦争の結果で取ったものと考えるならば、戦争で取り返せばロシアは認めざるを得ないと言うことになる。もちろん日本は戦争で取り返そうなどとは考えない。
    それならば、1875年の樺太・千島交換条約を根拠に千島全島は日本の領土であると国際裁判所等、調停機関に提訴すべきだろう。日本に有利な採決が出てもロシアは不法占拠を続けるだろう。しかし、現在存在する領土問題の国際的理解が得られることになる。
    ロシアは、遠からずプーチン政権が終わり、プーチンの国内政策の失敗により国内は混乱するだろう。プーチンの国内資源、特に原油に依存した経済政策は、原油価格の下落や長期的には脱二酸化炭素の国際的協調により、さらに窮乏に陥り、縮小すると見込まれる。現在の異常とも言える軍備増強も長くは続かないないであろう。北方4島の配備はロシアとしては無理しているように思え、その保守・管理は長く維持できない。
    このように考えると、日本がロシアに経済的援助の手を差し伸べ、平和的に千島の返還を達成することが可能な状況になるかもしれない。お金で千島を取り返せるなら、戦争するより安いものだ。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...