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米議会調査局報告書に見る南シナ海、東シナ海での米国国益の視点。こうした調査活動が米議会での審議のもとにあることに注意。翻って日本の国会議員はなにをもとに議論しているのでしょうか。

 米議会は精緻な言葉が展開される世界ですね。プロの調査部門から出てくる各種報告にもれなく目を通す議員が集まり、知的な議論が繰り広げられているようで、門限時間を超えた飲食に目くじらをたてる、言った言わないの押し問答を続ける某国議会と雲泥の差があります。議員が勉強したところで限界があるので、専門領域はプロの調査部門に任せるほうが効果的なはず。党派に影響を受けないプロの調査部門が国会にも必要と思います。US Naval Institute Newsからの記事です。



 

2021年1月28日、議会調査局が「南東シナ海における米中戦略競合状態及び議会の課題に関する報告書」を発表した。

以下報告書からの抜粋。

 

国際安全保障面で大国間競合状態の再来とされる中で、南シナ海 (SCS)が米中両国の戦略競合の舞台になっている。SCSでの両国の競合状態からトランプ政権は中国へ対決姿勢を強め、インド太平洋地域を自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の状態にするとした。

 

近年の中国のSCSでの行動としては、広範囲に人工島を構築し実効支配するスプラトリー諸島で海軍力によりフィリピン、ヴィエトナム含む近隣諸国に対し自国主張を強硬に主張する動きがあり、SCSが戦略、政治、経済各面で米国ならびに同盟友邦各国にとって重要な海域なため、中国がSCSで実効支配を確立する懸念をもって米国は注視している。中国海洋部隊が東シナ海 (ECS) で日本統治下にある尖閣諸島で展開中の行動にも米国は懸念を持って観察している。中国がSCS、ECSとあわせ黄海の近隣海域を支配すれば、インド太平洋地区ほか各所で米国の戦略・政治・経済各面の権益が損なわれかねない。

 

SCS、ECS双方での米中戦略競合で、米国の目標は次のとおり。条約国の日本、フィリピンを含み西太平洋における米国による安全保障の意思を完遂すること、同盟国・協力国を巻き込んだ米主導による西太平洋の安全保証の枠組みを維持強化すること、域内で力の均衡を同盟国・協力国を含み米国に有利な状態を維持すること、紛争の平和的解決原則を守り、国際問題での『力による解決』の応用へ抵抗すること、航行の自由原則を守ること、中国が東アジアで覇権国の座につくのを阻止すること、広義の米安全保障の一環として以上の各目標を希求し、中国と戦略的に対抗しつつ両国関係を制御することがある。

 

SCSおよびECSを舞台とする米中戦略競合状態での米国の個別目標として以下があるがこれに限定されるものではない。SCSではこれ以上の基地構築を進めさせず、SCS実効支配拠点へこれ以上の人員、装備、補給品搬入を断念させること、SCSスカボロ礁での人工島構築あるいは基地構築を断念させること、SCS内で陸塁を中心とする直線的な中国の領有権主張を撤回させること、SCSに防空識別圏(ADIZ)を設定させないこと、ECSにおいては尖閣諸島での中国海洋武力を削減あるいは撤退させること、フィリピンの実効支配下にあるスプラトリー諸島拠点への圧力をかける行動を中止させ、フィリピン漁民にスカボロ礁あるいはスプラトリー諸島での操業を容易にさせること、米国や西側の海洋交通の自由原則を採用させ、2016年のSCSをめぐるフィリピン対中国の仲裁裁判所裁定を受け入れさせ遵守させることがある。

 

米議会の課題は以下の通り。バイデン政権のSCSならびにECSにおける対中競合戦略がトランプ政権の方向性と異なるのか、バイデン政権の採択する戦略が妥当かつ正しい裏付けがとれているのか、また議会として戦略、実施用の資源のいずれかあるいは双方を承認、棄却、修正すべきか、である。

 

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Report on US-China Competition in East, South China Sea - USNI News

January 29, 2021 9:26 AM


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