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韓国タンカー拿捕事件で韓国海軍駆逐艦1隻がホルムズ海峡付近に移動完了。事件は外交で解決すると韓国政府は表明するが....

 The South Korean Navy's Chungmugong Yi Sun Sin class destroyer Choi Young.

USN

 

 

ラン革命防衛隊が韓国船籍タンカー、ハンククケミHankuk Chemiを拿捕した翌日に韓国海軍の李舜臣Chungmugong Yi Sun Sin 級駆逐艦1隻がホルムズ海峡付近に到着した。韓国政府は同艦は付近を通行する韓国商船を支援するとし、一方で拿捕事件は外交解決を目指すと表明。

 

韓国国防省は到着したのはチェヨンChoi Youngと認めた。同艦は中東、アフリカの角沖合の海賊対策で派遣中の清海部隊Cheonghae military unitの中核だ。

 

チェヨンは基準排水量4,400トンのKDX II級駆逐艦で供用開始は2003年と新しい。主兵装はMk 41 垂直発射 装備(VLS) 64セルで、米製スタンダードミサイル2ブロックIIIA対空ミサイル、韓国製玄武Hyunmoo-3対地攻撃巡航ミサイル、韓国式対潜ロケット砲(K-ASROC)を搭載する。同級駆逐艦はハープーン対艦ミサイル4発発射装置を二基搭載し、5インチ主砲、RIM-116ローリングエアフレイムミサイル(RAM)発射機、30mmゲートキーパーCIWSも搭載する。リンクス軽ヘリも2機まで運用可能だ。ただし現時点の同艦の兵装は不明だ。

 

チェヨンはイラン側が韓国船籍商船を追加拿捕しないよう抑止力になるはずだ。ホルムズ海峡を通過するタンカーは世界の石油輸出の2割を運搬しており、韓国は石油輸入国トップ10に入る。韓国商船平均6隻毎日同海峡を通過している。

 

チェヨンは単艦行動のため、各地を同時にカバーできず、追加拿捕のリスクが消えたわけではない。韓国は米主導の国際海上警備体制に加わっていないが、積極的に協調しているという。同体制はイランによる攻撃を抑止すべく、民間商船含む海上交通を監視するのが目的で2019年に発足している。

 

なお、韓国は外交チャンネルでハンククケミの解放を目指し、乗員20名は韓国、ミャンマー、インドネシア、ヴィエトナムの混成だという。

 

韓国外相康京和は「在ソウルイラン大使館、在テヘラン韓国大使館を通じ状況把握に努めており、問題解決を模索している」と報道陣に語った。

 

イランは環境取り決め違反でタンカーと乗員を拘束したと説明したが、運行会社タイクン海運はこれを否定している。「言われるような海洋汚染なら、沿岸警備隊が接近してくるはず。実態は武装兵が乗船し船内捜索を乗員に告げてきた」と同社はワシントンポストに伝えている。

 

VIA IRNA

イラン革命防衛隊がハンククケミに近づいている。Jan. 4, 2021.

 

 

イラン当局は拿捕の理由に韓国がイラン資産70億ドル相当を制裁措置の一環として凍結していることだと公然と認めている。韓国はイラン原油の大手輸入国だったが、2020年5月以降は米政府の顔色を見て買付を中止した。

 

ハンククケミ拿捕は人質なのかとの報道陣の問いにイラン政府報道官アリ・ラビエイは「人質をとっているのは韓国政府であり、70億ドルは我が国のものだ」と答えている。

 

今週末に韓国外務副大臣がイランに急遽移動し本件を協議すると韓国政府関係者は明らかにし、これと別に「作業ベレル」の外交団をイランへ派遣するとも述べている。韓国とともに米国もタンカー及び乗員の即時釈放を求めている。

 

イランが民間商船を拿捕するのは今回が初めてではなく、攻撃を加えた事例もある。2019年にイスラム革命防衛隊(IRGC)は英英国官憲がジブラルタルでイランに向け高航行中だったタンカーを差し押さえた事件の報復として国船籍のタンカー、ステナ・インペロを奪取し、リベリア船籍の別の英国商船も短期間ながら拿捕し、環境規則等の遵守状況を見るため臨検したと説明していた。ステナ・インペロは9月に解放されている。

 

オマン湾では2019年6月にイランとつながる勢力が日本船籍のタンカーを襲撃しており、当時は安倍晋三首相がイラン公式訪問中で最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイと会談の予定だった。

 

IRGCがハンククケミ拿捕に走った背景にイランと米国の緊張の高まりがあり、問題は多々あるが、ひとつにイランがウラン濃縮で20パーセント純度を確保し、兵器級の核物質確保に近づいたことがある。その前に核科学者モーセン・ファクリザデの暗殺事件が発生しており、イラン側はイスラエルの犯行と非難していた。

 

IRGC将官カセム・ソレイマニの殺害があった2020年1月3日から一年になり、イラン軍あるいはイランの支援を受けた戦闘集団が中東とくにイラクで攻撃に走るのではとの懸念が根強い。イラン側は報復を誓い、ドナルド・トランプ大統領自身も攻撃の対象だと声を上げていた。

 

このため大統領はスーパー空母USSニミッツの本国帰国を中止させ、中東へ戻るようペンタゴンに命令したと言われる。前後してB-52爆撃機が繰り返し中東で飛行し、オハイオ級誘導ミサイル潜水艦USSジョージアを意図的にホルムズ海峡を異例の浮上通過させペルシア湾に移動させていた。

 

現時点で米国の権益への攻撃の事実は中東地区では発生していないが、ハンククケミをめぐる状況で韓国軍艦がホルムズ海峡付近に姿を表したのは、これまでになく流動的な状況であり、同地区を通過する各国の海運に安全はない。■

 

この記事は以下を再構成したものです。翻訳は人力でお送りしています。

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