スキップしてメイン コンテンツに移動

完成近づくB-21レイダーでわかっている(わずかな)事項をまとめてみた。

元記事の内容はこのブログ読者にはわかりきったと思われるかもしれませんが、B-21が秘密開発事業なだけに納税者である国民に基本的な理解を深める一種の情報活動であるとも言えます。



ースロップグラマンB-21レイダーは10年以内に運用開始が期待されている。配備されれば前例のない高性能軍用機となりそうだ。

 米国のステルス機開発と運用はF-117ナイトホークが登場した1981年に遡る。その後、米国のみがステルス機を運用する状況が続いたが、F-117が撃墜されたのを契機に他国も追いついてきた。中国から大型ステルス爆撃機H-20の発表があり、ロシア・中国両国は第5世代戦闘機の実用化に成功している。両国の発表内容には誇張気味の点もあるが、一つ確かなことがある。米国のステルス機独占状況は終わった。

 さらに悪いことに防空体制が急速進歩している。ステルス技術には誤解もあり、レーダーに全く映らないわけではない。最高性能のステルス機といえども実態は各種手段を使い敵領空内で探知を逃れるのが実態だ。ステルスという一個の技術と見がれがちだが実は航空機設計や運用上で各種技術や手段を駆使する。



B-21 Raider

(USAF)


B-21レイダーのなにがすごいのか ノースロップ・グラマンB-21は極秘事業で契約交付の2015年以来その実態はほとんど外部へ出ていない。わかっているのは完全新設計機体はで今後の米重爆撃機兵力の3分の2を構成することだ。現状ではB-52ストラトフォートレス、B-1Bランサー、B-2スピリットが供用され、うちB-1BとB-2は退役予定でB-52が今後数十年にわたり供用を続ける。

 公表された唯一のB-21レイダー想像図にB-2の影響が強く見られるが、B-21はステルス性能が大幅に向上するはずだ。レーダー吸収塗料の改良やF-35と基本的に同じエンジンがその理由だ。ステルス技術の進歩によりB-21はレーダー探知が最も困難な機体になるが、これまでの膨大なステルス技術への投資があってこそだ。


B-21 Raider

空中給油を受けるB-2スピリット(U.S. Air Force)


B-21レイダーは投入される作戦とは 高速B-1BとステルスB-2の後継機としてB-21レイダーはあらゆる標的にあらゆる時間帯であらゆる場所で対応可能な性能が求められる。B-21は亜音速機となるが長大な航続距離と空中給油機能で世界各地を攻撃範囲に収めるはずだ。同様に同機が世界各地に展開すれば米国は防御堅固な対象を数時間内に攻撃できる能力を実現する。


B-21 Raider

B61重力落下式核爆弾  (Greg Goebel on Flickr)


どんな兵装を搭載するのか 先代各機同様にB-21も核兵器運用能力があり、B61可変威力式重力投下爆弾や長距離スタンドオフ (LRSO) 巡航ミサイルを搭載可能だ。だがそれだけではない。B-21では大量の通常兵器も搭載可能となり世界各地の戦闘に対応かのうとなる。B-21のペイロード能力に関する情報は公開されており、これから推察した。

 それでB-21がロッキード・マーティンの長距離対艦ミサイル運用の役目をB-1Bから引き継ぐ意味がわかる。南シナ海の敵水上艦をねらうのにステルス機が最適だ。さらにボーイングのGPS誘導方式共用直接攻撃弾はじめ新型兵器が長距離から敵を狙う使用になっており、B-21は敵の探知できない距離から標的を定めるだろう。


B-1B

379遠征航空機整備隊のデイビッド・ベイカー曹長が機付長としてB-1Bランサーとポーズを取る。カタールのアルウデイド航空基地にて。May 21, 2014. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Colin Cates)


新型爆撃機がどうして必要なのか 米国の現行大型爆撃機は157機だが多数は即応体制にない。各機が数十年にわたる供用を受け、各種改修はおこなっているが運航は高経費になり安全確保が大変だ。老朽化が進む機体をB-21に交代させれば空軍は長い目で経費節減が可能となり、旧型機依存を減らしても同じ効果が生まれる。

 だが経費節約だけがB-21取得の理由ではない。性能も大きな理由だ。防空能力が向上する中でロシアのS-400のような装備品が世界各地に拡散しており、米国にはさらに先をゆくステルス爆撃機が必要なのだ。

 B-21は2020年代後半に供用開始となる期待が寄せられ、一号機は2021年末ないし2022年初頭にその姿を表すはずだ。■


この記事は以下を再構成したものです。

The most advanced bomber ever: Here's what we know about the B-21 Raider

Alex Hollings | August 23, 2020

Feature photo by Airman 1st Class Taylor Phifer. U.S. Air Force


 

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...