勝った勝ったと大騒ぎの民主党でしょうが、これからが大変です。左派は主張が実現できないことに気づき暴れるでしょうが、穏健派は左派を抑え込めず共和党に好機を生みそうです。ただし、米国は議員内閣の国ではなく、党による議決の拘束もないので、与党野党とラベルを貼りたがる日本のメディアは本質を見逃していますね。
U.S. Capitol
Credit: U.S. Government
1月20日にジョー・バイデンが大統領就任を迎え、民主党が上下両院で多数勢力となる。国防予算の削減は回避不能なのだろうか。
バイデンの背後には党内急進派の圧力があり、下院議員ではアレクサンドリア・オカシオーコーテス、バーバラ・リー(ともにカリフォーニア州選出)、マーク・ポカン(ウィスコンシン)のように国防予算の毎年10%以上700億ドルの削減を求める動きがある。だが党内支持は広がっておらず、ここまでの削減は難しいのではないか。
下院歳出委員会の委員長ローザ・デラウロ(コネチカット)が今後の予算規模のカギを握る。「予算管理法による上限が撤廃され、重要な予算決定の場面が今後発生する。支出法案を重要視する民主党は国内の優先課題の実現を慎重に検討しながら強靭な国防体制も維持していく」と語っている。
その他の有力民主党議員に下院軍事委員会委員長アダム・スミス(ワシントン)、カスリーン・ヒックス(バイデンが国防次官に指名)がおり、ともに削減は3-4%程度の200-300億ドルとすべきとの主張だ。
ヒックスはForeign Affairsに「米国は国家安全保障で軍事面を過大に打ち出す姿勢をあまりにも長く続けてきた」とし、大戦略で外交政策手段の幅を広げ、国防支出以外も注目すべきだとする。
スミスは国防予算の10−20%削減で健全な安全保障政策が実現するか「確信が持てない」としつつも「国防総省は気に入らない。同省予算を削減してやる」と発言している。
コーウェンワシントンリサーチグループのローマン・シュワイザーは上院の民主党支配は国防に関しては最悪の事態としながらも、すべての面で損害が生まれるわけではないとしている。予算の小規模削減でさえ実現は困難なのは、安全保障に党派を超えた支持があるからとする。下院議長ナンシー・ペロシ(カリフォーニア)、上院院内総務になるチャック・シューマー(ニューヨーク)はソーシャルメディアを巧み利用する急進派の抑え込みに追われるだろう。急進派は「DoD予算カット」」「ICE(入国管理)廃止」をスローガンに2022年中間選挙で民主党に損害を与えかねない。上院共和党のミッチ・マコーネル(ケンタッキー)が民主党の動きを封じ共和党基盤を強める可能性が出てくるとシュワイザーは見ている。2022年度歳出の手続きは大統領が予算案を議会に回付して始まる。その期限が2月1日に迫るが、大統領選挙後に延期され新政権が時間稼ぎするのはよくあることだ。
海外に目を向けると国防業界は米国製防衛装備の中東向け輸出に障害が発生するのを覚悟すべきだ。とくに戦闘航空機や精密誘導兵器が影響を受けそうだ。キャピタルアルファパートナーズのバイロン・キャランが1月6日に機関投資家向けに伝えている。まず一年は防衛装備品市場は後退を余儀なくされるので防衛産業各社がどう対応するか注視しているという。■
この記事は以下を再構成したものです。
What Does Democratic Control Of Congress Mean For Defense?
Lee Hudson January 07, 2021
バイデン政権は、本ブログ「2020年選挙で負けたのは左翼勢力…(11/8)」でコメントしたように弱体政権であり、議会の国防予算削減圧力に抵抗できないであろう。
返信削除問題は、削減額と配分となる。真っ先にやり玉に挙げられるのは、空軍と海軍だろう。空軍はB-21やF-35Aの配備計画の見直し、海軍はフォード級空母やLCS調達の打ち切り、ズムウォルト級駆逐艦の運用停止があるかもしれない。陸軍や海兵隊も無傷ではいられない。国家戦略に基づく再編計画も遅延するだろう。
また、バイデン政権は、トランプ政権が行ってきた米軍の世界的再編を遅らせるだろう。米国の弱体化は、中国、ロシア、イラン等の反米国家・グループの挑発を招き、結局、兵力の分散を余儀なくされるかもしれない。
中国の軍拡のペースは落ちず、米軍との軍事力の差を広げようとするだろう。この差の広がりは台湾と日本に危機をもたらすかもしれない。
バイデンは、健康問題と様々な疑惑問題により任期を全うすることが難しいかもしれない。そうなると次はハリスとなるが、民主党左派に甘いと言われる大統領では混乱に拍車をかけることになりそうだ。