スキップしてメイン コンテンツに移動

UH−60後継機をねらうボーイング、シコースキーが共同開発のディファイアント新型を発表。ベルのティルトローターと競合。米陸軍は2022年選定で2030年代の運用開始へ。

 


Sikorsky-Boeing graphic

Sikorsky-Boeing Defiant-X



コースキーボーイング両社はSB>1ディファイアント複合ヘリコプターを「大規模研究」と陸軍との協議を経てディファイアント-Xとして本日公開した。


どう変わったのか。両社は詳細を明らかにしておらず、今後順次公開するとしている。だが慎重な発表文に報道陣がそれでは満足せず、電話会議で両社に問いただし、以下判明した。

  • ディファイアント-Xは降着装置を強化し、機首にも追加した。SB>1には大型車輪ふたつを前方に、小型車輪を尾部につけていた。機体重量が増えたのは確実だが、その分未整備着陸地点で安定性が向上したのだろう。

  • ディファンアント−XはSB>1にあったエンジン下の排気口を廃止している。これで「熱特徴を減らした」と両社は記している。言い換えれば、新設計はエンジン余熱処理を工夫し探知されにくくなった。搭載エンジンは未定だが出力水準、整備性、排熱のバランスを考慮するはずだ。

  • ディファイアント-Xでは機体形状を変更し、機首が鋭角になり、機体後方にリッジをつけており、両社はこれにより「空力特性の扱い」が改良されたと述べている。陸軍の優先事項は速力だが、この点で改良の言及がない。SB>1はライバルのベルV-280ヴァラーとこの点で劣っていた。


The Sikorsky-Boeing Defiant X

Sikorsky-Boeing image


シコースキー・ボーイングチームはUH-60ブラックホークの後継機を目ざす将来型長距離教習航空機 (FLRAA)の採用をめぐり、ベルと競合している。FLRAAは高速長距離かつ大量の搭載量をめざす。FLRAAは広義の将来型垂直輸送構想の一部で、偵察用から小型無人機まで各種を整備する陸軍の構想だ。両陣営はFLRAA試作機の飛行を開始済みで、ベルが先陣を切った。V-280ティルトローターは性能実証済みのV-22オスプレイを小型化し、スッキリした姿になっている。同機は2020年12月18日に初飛行から三周年を迎え、150回200時間の飛行実績と、水平飛行で時速305ノットを記録している。


Bell V-280 Valor



これに対しシコースキー・ボーイングのSB>1は生産問題で出遅れ、複合ヘリコプター設計特有の超硬性ローターブレイドとギアボックスの組み合わせで課題に直面したのが原因だが、機体前方にローターが二重となり、後部に推進用プロペラをつけている。SB>1の飛行実績は二年未満で31回26時間の実績がある。速力は水平飛行で211ノットで両社の目標は250ノットだ。


両社と陸軍は同機設計の改良に必要なデータは十分得ており、ベルV-280と比較可能な機体になるという。


飛行時間以外にも重要指標がある。ボーイングのヘザー・マクブライアンは報道陣に、飛行テスト機に加え、推進系試験機、システム統合試験、風洞テストを活用していると説明し、このうち推進系試験機とは地上固定式のディファイアントで135時間運転を計上しており、システム統合試験室でのコンピュータシミュレーションは1,500時間超実施したという。


更にシコースキー・ボーイング、ベル両陣営は競合実証リスク低減Competitive Demonstration & Risk Reduction (CDRR) 契約を陸軍と結び設計の完成度をあげようとしている。


シコースキー・ボーイング両社はV-280より速力が劣るものの、両社設計案は陸軍の戦術ニーズによりよく適合すると主張。複合ヘリコプターは基本的にヘリコプターなので、陸軍で供用中の機材と違和感なく運用でき、訓練、戦術、支援施設の変更点は極めて少ないとする。ディファイアントは現行UH-60より大型かつ高速になるが、全長及びローター直径はほぼ同じで、同じサイズの着陸地点に収まる。


V-280はティルトローターで大型ローター2つを航空機に似た形状の主翼に装着し、全幅は供用中ヘリコプターより大きくなる。だが、同機は全長が短い。このためベルはV-280は90度向きを変えればUH-60用の着陸地点に収まると説明。そうなると、同じ機数の機材を運用するとしても角度を変えての運用となる。ただ、UH-60やディファンアントで運用可能となっても、V-280では使えない場所が生まれそうだ。


Sikorsky-Boeing photo

SB>1ディファイアント(左上)とUH-60ブラックホークの機体サイズ比較。 同じサイズの着陸地点で運用可能とアピールする。



シコースキー・ボーイング両社はディファイアントは低高度での取り扱いがV-280より優れると主張し、これは陸軍パイロットには重要な観点だ。ベルは当然ながら反対意見を示している。


またシコースキー・ボーイング両社はディファイアントは機体下に貨物を吊る輸送スリングローディングが長距離でも実施可能と述べている。V-280でもスリングローディングを実証したが、最大重量や長距離は試していない。両陣営ともに実際のスリングローディング能力は未公表なので、公平な比較はできない。


報道陣に判断がつかなかったのは機敏な飛行性能についての両社の言い分と自律飛行ソフトウェアでパイロット負担を減らすとの説明内容だ。またどちらが整備が楽なのか、モジュラーオープンシステムズアーキテクチャーModular Open Systems Architecture (MOSA) のインターフェイスで本当に性能改修の実施が容易になるのかが判断できない。


当然ながら米陸軍はデータ全てを入手して選定に向かう。最終選定の予定は2022年で、採用案の戦闘部隊配備開始は2030年の目論見だが、COVID-19収束後の予算で負担可能なら、という条件付きだ。



この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


Defiant-X: Sikorsky, Boeing Unveil FLRAA Design 

By   SYDNEY J. FREEDBERG JR.

on January 25, 2021 at 6:31 AM


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ