Sikorsky-Boeing Defiant-X
シコースキー、ボーイング両社はSB>1ディファイアント複合ヘリコプターを「大規模研究」と陸軍との協議を経てディファイアント-Xとして本日公開した。
どう変わったのか。両社は詳細を明らかにしておらず、今後順次公開するとしている。だが慎重な発表文に報道陣がそれでは満足せず、電話会議で両社に問いただし、以下判明した。
ディファイアント-Xは降着装置を強化し、機首にも追加した。SB>1には大型車輪ふたつを前方に、小型車輪を尾部につけていた。機体重量が増えたのは確実だが、その分未整備着陸地点で安定性が向上したのだろう。
ディファンアント−XはSB>1にあったエンジン下の排気口を廃止している。これで「熱特徴を減らした」と両社は記している。言い換えれば、新設計はエンジン余熱処理を工夫し探知されにくくなった。搭載エンジンは未定だが出力水準、整備性、排熱のバランスを考慮するはずだ。
ディファイアント-Xでは機体形状を変更し、機首が鋭角になり、機体後方にリッジをつけており、両社はこれにより「空力特性の扱い」が改良されたと述べている。陸軍の優先事項は速力だが、この点で改良の言及がない。SB>1はライバルのベルV-280ヴァラーとこの点で劣っていた。
The Sikorsky-Boeing Defiant X
Sikorsky-Boeing image
シコースキー・ボーイングチームはUH-60ブラックホークの後継機を目ざす将来型長距離教習航空機 (FLRAA)の採用をめぐり、ベルと競合している。FLRAAは高速長距離かつ大量の搭載量をめざす。FLRAAは広義の将来型垂直輸送構想の一部で、偵察用から小型無人機まで各種を整備する陸軍の構想だ。両陣営はFLRAA試作機の飛行を開始済みで、ベルが先陣を切った。V-280ティルトローターは性能実証済みのV-22オスプレイを小型化し、スッキリした姿になっている。同機は2020年12月18日に初飛行から三周年を迎え、150回200時間の飛行実績と、水平飛行で時速305ノットを記録している。
Bell V-280 Valor
これに対しシコースキー・ボーイングのSB>1は生産問題で出遅れ、複合ヘリコプター設計特有の超硬性ローターブレイドとギアボックスの組み合わせで課題に直面したのが原因だが、機体前方にローターが二重となり、後部に推進用プロペラをつけている。SB>1の飛行実績は二年未満で31回26時間の実績がある。速力は水平飛行で211ノットで両社の目標は250ノットだ。
両社と陸軍は同機設計の改良に必要なデータは十分得ており、ベルV-280と比較可能な機体になるという。
飛行時間以外にも重要指標がある。ボーイングのヘザー・マクブライアンは報道陣に、飛行テスト機に加え、推進系試験機、システム統合試験、風洞テストを活用していると説明し、このうち推進系試験機とは地上固定式のディファイアントで135時間運転を計上しており、システム統合試験室でのコンピュータシミュレーションは1,500時間超実施したという。
更にシコースキー・ボーイング、ベル両陣営は競合実証リスク低減Competitive Demonstration & Risk Reduction (CDRR) 契約を陸軍と結び設計の完成度をあげようとしている。
シコースキー・ボーイング両社はV-280より速力が劣るものの、両社設計案は陸軍の戦術ニーズによりよく適合すると主張。複合ヘリコプターは基本的にヘリコプターなので、陸軍で供用中の機材と違和感なく運用でき、訓練、戦術、支援施設の変更点は極めて少ないとする。ディファイアントは現行UH-60より大型かつ高速になるが、全長及びローター直径はほぼ同じで、同じサイズの着陸地点に収まる。
V-280はティルトローターで大型ローター2つを航空機に似た形状の主翼に装着し、全幅は供用中ヘリコプターより大きくなる。だが、同機は全長が短い。このためベルはV-280は90度向きを変えればUH-60用の着陸地点に収まると説明。そうなると、同じ機数の機材を運用するとしても角度を変えての運用となる。ただ、UH-60やディファンアントで運用可能となっても、V-280では使えない場所が生まれそうだ。
SB>1ディファイアント(左上)とUH-60ブラックホークの機体サイズ比較。 同じサイズの着陸地点で運用可能とアピールする。
シコースキー・ボーイング両社はディファイアントは低高度での取り扱いがV-280より優れると主張し、これは陸軍パイロットには重要な観点だ。ベルは当然ながら反対意見を示している。
またシコースキー・ボーイング両社はディファイアントは機体下に貨物を吊る輸送スリングローディングが長距離でも実施可能と述べている。V-280でもスリングローディングを実証したが、最大重量や長距離は試していない。両陣営ともに実際のスリングローディング能力は未公表なので、公平な比較はできない。
報道陣に判断がつかなかったのは機敏な飛行性能についての両社の言い分と自律飛行ソフトウェアでパイロット負担を減らすとの説明内容だ。またどちらが整備が楽なのか、モジュラーオープンシステムズアーキテクチャーModular Open Systems Architecture (MOSA) のインターフェイスで本当に性能改修の実施が容易になるのかが判断できない。
当然ながら米陸軍はデータ全てを入手して選定に向かう。最終選定の予定は2022年で、採用案の戦闘部隊配備開始は2030年の目論見だが、COVID-19収束後の予算で負担可能なら、という条件付きだ。■
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Defiant-X: Sikorsky, Boeing Unveil FLRAA Design
on January 25, 2021 at 6:31 AM
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