中国との開戦が限定戦となっても主要航空基地の滑走路が使用不能となる恐れがあり、米軍に真剣な課題になっている。グアムのアンダーセン空軍基地は中国弾道ミサイルの射程に入っており脆弱性は否めない。そこで空軍は前方基地としてウェーキ島やテニアン島の利用を検討している。そのアンダーセン基地の北西滑走路はジャングルに囲まれ過酷な環境のままだが、ここから戦闘機を運用させようというのが多国籍演習となるコープノース航空戦力演習でグアムを主舞台とする。
Air Force Magazineのブライアン・エバースティンがアンダーセンの北西飛行場でエイルソン空軍基地のF-35、三沢航空基地からのF-16を運用すると他に先駆け報じた。同地ではC-130、ヘリコプターの運用はあったが、最近延長工事のため航空機運用は行っていなかった。もともと頑丈な作りでなく、インフラに依存しがちな戦闘機を同地で運用するのはUSAFでも前例のない試みとなる。
GOOGLE EARTH
2018年9月当時の画像では北西飛行場の東滑走路が整備作業を受けているのがわかる。
コープノース演習に未整備飛行場の運用を含めたのはペンタゴンがすすめるアジャイル戦闘展開戦術構想を磨く意味もあり、敵の裏をかく形で少数機材を過酷環境や地上支援体制が限られる地点から運用する狙いがある。構想の実効性を高めるべく、地上支援部隊は最小限人員とし、最小限の機能だけの不完全飛行基地を確保し、移動を繰り返しながら敵の攻撃防衛案を混乱させる。またアジャイル戦闘展開部隊の生存性も高まる。
演習は2月開始で、現地では全長8千フィートの滑走路に手を入れており、緊急拘束装置の設置を目指す。これは緊急時に滑走路だけでは静止できない機体を安全に回収するための追加装備だ。
USAF
大規模なアンダーセンAFBの全体像
北西飛行場はその他部隊も利用しており、THAAD部隊もそのひとつで同島を弾道ミサイル攻撃から守っている他、衛星通信施設もある。滑走路の東端に小さな建屋が2つあるのを除くと、通常の基地にあるような建築物は見当たらない。滑走路は濃いジャングルに囲まれており、この環境でハイエンド機材を運用するのは冒険的でもある。
USAF
2000年代はじめの北西飛行場は再整備前の姿を示していた。
コープノースでF-15C/Dヴァイパー部隊とF−35ライトニングII部隊が同地に着陸し、燃料補給し、兵装を再搭載し、離陸するが、あたかも遠隔地での戦闘任務の想定となる。設備が整った基地でさえ、ハイテンポ運用に困難となる。遠隔地で通信交信もなく、支援車両もない状態で高性能機材を運用するのだから難易度はさらに高い。例えば燃料搬送でMC-130特殊作戦支援機が投入されるはずだ。現地の野生動物対応が必要となる場合もあろう。
USAF
MC-130が前方兵装燃料補給拠点 (FARP) となり、F-35Aを支援する。この訓練は近年増加しており、今回は統合運用としてテストされる。
演習から補給活動の知見が大量に得られるはずで、整理した上で今後の前方基地展開に応用されるはずだ。
コープノース演習が実際に始まれば、現地の動きを逐一お伝えしたい。■
この記事は以下を再構成したものです。
F-35s And F-16s Set To Operate From Austere Jungle Airfield During Major Exercise On Guam
BY TYLER ROGOWAY JANUARY 27, 2021
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