2021年10月21日木曜日

海上自衛隊が初の燃料輸送艦建造に踏み切った理由に深刻な日本の安全保障の仕組みの欠陥が見える。YOTは4,900トンの内航仕様の輸送艦のようです。

 Japanese Shipyard Launches First Yard Oiler Tanker for JMSDF

YOT-01は排水量4,900トンで防衛省が昨年発注したもの。

Picture by local ship spotter @crazyquail_BT

 

上自衛隊が発注した燃料輸送艦2隻のうち初号艦が新来島どっく波止浜造船所(愛媛県今治市)で進水した。

 

「YOT-01」(4,900トン)は防衛省が昨年発注した二隻のひとつ。

 

今回建造された燃料輸送艦は沖縄南西諸島方面に展開する自衛艦用の燃料を基地へ輸送する。このため、設計上で「洋上燃料補給」UNREPの想定はない。

 

これまで海上自衛隊は燃料輸送を民間船舶の用船で行ってきたが、有事に民間企業から業務実施を断られる可能性があるため、YOT艦で自前での燃料輸送を行うことにした。

 

燃料輸送艦は2022年春に就役予定で、製油所から燃料を海上自衛隊基地へ運搬する任務につく。海上自衛隊が独自の燃料輸送艦を保有するのは今回が初めて。■


Japanese Shipyard Launches First Yard Oiler Tanker for JMSDF

Xavier Vavasseur  20 Oct 2021


北朝鮮の新型SLBMの正体を推察。同国発表をうのみにすると情報操作に踊らされかねず危険。潜水艦発射だったのか疑わしく、飛翔パターンも失敗の可能性も秘める。

Pictures North Korean released of what it said was the test of a new submarine-launched ballistic missile.

NORTH KOREAN STATE MEDIA

朝鮮が新型潜水艦発射弾道ミサイルSLBMを試射し、優れた飛翔制御を実証したと発表した。今回のミサイルはこれまでの北朝鮮SLBMよりかなり小さい。

同ミサイルへの関心が高まっているが、既存型式なのか新型かで評価が分かれている。

試射は2021年10月19日、東海岸の北朝鮮潜水艦運用の中心地シンポ付近で行われた。南朝鮮メディアは同ミサイルは430から450キロ飛翔し、高度は60キロに到達し、日本海へ落下したと報じている。南朝鮮政府は早くからSLBMと断定していたが、米政府は発射の事実を認めながら、ミサイルの種類については発言していなかった。日本の岸田文雄首相は北朝鮮がミサイル二発を発射したと発言したが、事実と反するようだ。

NORTH KOREAN STATE MEDIA

北朝鮮国営メディアが2021年10月19日のミサイル発射の写真を公表した。

NORTH KOREAN STATE MEDIA

NORTH KOREAN STATE MEDIA

NORTH KOREAN STATE MEDIA

NORTH KOREAN STATE MEDIA

潜水艦発射型ミサイルのモックアップが先週ピョンヤンで公開されていた

 

「朝鮮国防科学院が新型潜水艦発射型弾道ミサイルの試射を19日実施した」と北朝鮮国営メディアが報じた。「初の潜水艦発射型戦略弾道ミサイル発射は5年前のことで、今回新型ミサイルを『英雄艦8.24』から発射したことでわが国の軍事力を見せつけた。党中央委員会への忠誠心がこの誇らしい成果を生んだ」とある。

ミサイル発射の実態は全く不明だ。北朝鮮国営メディアは同国に一隻のみあるコレ(鯨)級潜水艦の写真を公表し、同艦が名称不詳のミサイルを発射後に浮上したとした。同艦の写真を見ると発射ハッチがセイルにあり、開いたままだ。同時に衛星画像ではシンポのSLBM発射用バージが10月18日に港外に移動したことがわかる。

NORTH KOREAN STATE MEDIA

北朝鮮コレ級潜水艦の写真も公表された。同艦のセイル上の発射ハッチが開いている。

「国防科学アカデミーの発表で新型潜水艦発射型弾道ミサイルには高度の制御誘導技術が盛り込まれており、横方向移動のほか滑空ジャンプ操作も可能で、祖国の国防技術の進展で大きな一歩を示した」と北朝鮮国営メディアが伝えている。

北朝鮮からはこの主張を裏付ける資料は一切公表されていない。「滑空ジャンプ操作」とは「イルカジャンプ」あるいは表面跳躍のことかもしれず、兵器本体あるいは再突入部分が先頭を起立させ飛翔速度を減じ、不規則な軌道を飛翔の最終段階で示すことだ。これにより飛翔コースを変更するとともに兵器の射程を延ばす効果が期待でき、防衛側の迎撃を困難にする。

再突入部分をミサイルから分離したとすれば、岸田首相が言うように日本は二発のミサイルと認識した事の説明になるが、誤りの可能性がある。

今回のテストで発射されたミサイルが比較的短距離対応だったようだ。国営北朝鮮メディアの発表は今回のミサイルが「戦略級」でなく、通常弾頭搭載だったこと可能性が出ている。通常弾頭SLBMは南朝鮮も最近テストしており、強化施設さらに重要拠点の攻撃に効果を発揮する。

今回のミサイルが小型であるのは北朝鮮でミサイル発射用に改装された潜水艦搭載用だ。コレ級に加え、北朝鮮はロメオ級ディーゼル電気推進型潜水艦を弾道ミサイル発射用に改装中でミサイル搭載数を増やそうとしている。

NORTH KOREAN STATE MEDIA

金正恩が2019年にロメオ級潜水艦の弾道ミサイル運用改装工事を視察した。

北朝鮮のその他のSLBMより射程が短いが、南朝鮮国内あるいは日本を標的とするのなら問題はない。小型潜水艦部隊に短距離SLBMを搭載し展開させれば残存性が高いまま各所から多数の目標を攻撃可能となり、敵対国には対応が課題となる。

今回のミサイル性能はともかく、北朝鮮が新型SLBMのテストを行った意味は大きい。少なくとも2019年以降で初のSLBMテストだ。また1月に北極星5型とされる大型新型SLBMも公表しているが、テスト実施の発表はない。

南朝鮮は今回のテストに先立ち、独自に通常弾頭SLBMを島山安昌浩級通常型潜水艦から9月に発射している。南北朝鮮の軍拡レースでともに新型弾道ミサイル、巡航ミサイルが公表されており、北朝鮮はさらに極超音速滑空体を搭載したミサイルもテストしている。

今回の北朝鮮SLBM発射前に北朝鮮問題の米特使スン・キムが南朝鮮特使Noh Kyu Dukとワシントンで会談している。キムは今週ソウルを訪問予定で北朝鮮との交渉再開について協議する。

「米国はDPRKが弾道ミサイル発射に踏み切ったことを糾弾する。発射は国連安全保障理事会決議に違反しており、域内安全保障への脅威だ」との国務省声明を聯合通信が伝えている。「DPRKにはこれ以上の挑発行為を自粛し、対話の継続を求めたい。米国による大韓民国及び日本への防衛の姿勢は不変だ」

北朝鮮からは最近になり交渉への関心を示す兆候が出ている。表面だけかもしれないが、人道援助や制裁解除が焦点だ。金正恩は先週の兵器展示会で軍備拡張を続け、テストも付随して継続すると公言した。SLBM発射もその一環で南朝鮮及び米国の侵略に対応する同国の基本的な権利だとした。

UPDATE:

高解像度写真が公表された。左上の写真では大型エンドプレートが吹き飛ばされている様子が見える。

KCNA

 

高解像度写真を見ると今回のミサイルは地上発射型短距離弾道ミサイルKN-23との類似性が見える。今回発射されたのはKN-23を潜水艦発射型に改装した可能性がある。■

New Short-Range Submarine-Launched Ballistic Missile Tested By North Korea (Updated)

The missile appears to be very similar to a mysterious short-range type that Kim Jong Un recently showed off at an arms showcase in Pyongyang.

BY JOSEPH TREVITHICK OCTOBER 19, 2021



 

2021年10月19日火曜日

軍事用極超音速ミサイル試験を平和目的の宇宙機実験だったと虚偽発言する中国外務省の情報操作をうのみしている日本メディアのおめでたさ。

 中国政府はテストそのものがなかったといい抜けようとしているが、記者会見で触れた宇宙機テストは7月のものでまったく別個のもので、そのまま伝えたNHKなど国内メディアは中国の情報操作に手を貸したことになりました。


An artist's conception of a notional hypersonic boost glide vehicle in flight.

LOCKHEED MARTIN

 

国政府は中国が極超音速滑空体を軌道に乗せたのちに大気圏再突入させ標的に向け飛翔させたとの報道内容を否定した。中国外務省は再利用可能宇宙機だったとし、武器ではないと述べた。しかし、公式声明で宇宙機打ち上げは7月とあり、フィナンシャルタイムズ記事では軌道上爆撃手段のテストは8月とある。

 

 

中国外務省報道官趙立堅は2021年10月18日記者会見でブルームバーグ、AFPからの質問に対し、同記事を否定した。

 

「今回は通常の宇宙機の試験で再利用の可能性を試したものである」「地球帰還に先立ち切り離した後、大気圏内で支持部門が燃え尽き、破片は大洋に落下した」同報道官はこの宇宙機がフィナンシャルタイムズ記事にある飛翔体と同じなのかと尋ねられこう答えた。

 

ブルームバーグのジェイムズ・メイがー、BBCのスティーブン・マクダネル両名がこれを受けて中国外務省から趙報道官の発言は7月の宇宙機の件だったと確認したと伝えている。軌道上爆撃手段システムのテストは8月実施だったことが判明している。

 

国営企業中国航天China Aerospace Science and Technology Corporation(CASC)は7月に再利用可能な宇宙機テストに成功したと発表しているが、その際は準軌道飛翔だったとしている。CASCは同宇宙機の飛翔方式について説明しておらず、内モンゴルの酒泉衛星打ち上げ場Jiuquan Satellite Launch Centerから発射したと述べていた。2020年にも同打ち上げ場から長征2Fロケットが打ち上げらており、「再利用可能試験宇宙機」だったとの説明があった。

 

フィナンシャルタイムズ記事では長征2Cロケットが軌道爆撃システムのテストに使われたとあり、長征ロケット第77回目打ち上げとなったが、非公表のままだ。76回目78回目は7月19日、8月24日に実施されている。

 

趙報道官が言及したCASCによる宇宙機テストはこの売り7月16日にものだろう。さらにフィナンシャルタイムズの取材源によれば今回の軍事装備は標的突入含むすべての飛翔段階を実行したと言い、標的から数マイル外れている。CASCは宇宙機は飛翔実験ののち、空港に着陸したと発表したが、報道通りにともに実行されたとすれば、米情報機関が混同した可能性もある。

 

とはいえ、専門家筋から先に発表のあった再利用可能宇宙機と今回話題に上った軌道爆撃システムがどう関係しているのか疑問点が提示されている。民生用航空宇宙事業が中国で軍用装備とつながっている例はこれまでもあり、軍民両用の開発が展開していることはよく知られている。また、中国が極超音速滑空飛翔体兵器を実際に配備していることも知られている。

 

「今回は米側がX-37Bは兵器ではないと主張していることへの中国の反応なのか」と Secure World Foundationのブライアン・ウィーデンがツイッター投稿しているが、中国のテストに対し数多くの疑問が出ている。X-37B小型宇宙シャトルが宇宙軍が運営しており、実は何らかの軌道爆撃任務を行うものではないかとの噂がこれまで長くありながら実態は不明のままとなっている。

 

「宇宙機はすべてFOBSになるのか」とウィーデンは部分軌道爆撃システムに言及した。

 

FOBSの基本概念は1960年代のソ連にさかのぼる。通常の大陸間弾道ミサイル(ICBM)との比較で、準軌道上に配備するFOBSは射程距離の制約がなく、標的の割り出しが不可能ではないが困難となる。さらにFOBSの低高度弾道は地上配備レーダーでは探知が困難で、敵には対応が課題となる。

 

極超音速飛翔体をFOBSの弾頭部分に組み合わせれば予測不可能な攻撃手段となる。飛翔体は飛行制御性を高くしたままで弾頭を標的に命中させ、敵の防空ミサイル防衛体制を突破する。南極越え攻撃の場合、米ミサイル防衛の想定の裏をかくことになる。極超音速飛翔体の迎撃が極めて難しいことは米国含む各国政府が率直に認めている。

 

そうなると、報道されているような中国版FOBSと宇宙機の関連があるのかないのか不明だが、防衛能力を突破する性能をFOBSにあり、極超音速滑空体を利用することが中国が開発に励む理由なのだろう。また北京政府がFOBS開発を1960年代1970年代から手掛けたが中止されていたのは技術問題が解決できないためだったことが知られている。だが現在の中国航空宇宙産業界は当時より高度技術の実現能力が飛躍的に伸びている。

 

空軍長官フランク・ケンドールは中国軍がFOBSに準じる兵器開発にあたっていると9月の空軍協会イベントで発言していた。「これが実用化されれば従来のICBM軌道は無用の存在になる。ミサイル警報システムや防衛体制が突破される」

 

フィナンシャルタイムズ報道が出ると米空軍のグレン・ヴァンハーク大将(NORAD北米防空司令部司令官)から中国が「非常に進んだ極超音速滑空飛翔体能力を最近実証した」との発言が8月にあり、「NORADの対応能力では早期警戒及び攻撃地点の割り出しが困難となる」としていたことが改めて注目された。

 

米海軍のジョン・ヒル大将は議会で6月に「左右に曲がる飛翔制御は飛翔距離を延ばす意図があるため」と証言しており、各国の弾道ミサイルで飛翔制御能力が向上している様子に触れた。「大気圏再突入すればすべて極超音速になる」

 

中国のFOBSは開発初期段階で実戦化には遠いものの、同国が進める戦略戦力整備の一環でその他にもICBMサイロの整備、弾道ミサイル運用原子力潜水艦部隊の建造もある。米政府は繰り返し、情報から中国が核弾頭の貯蔵を増やしていることが判明していると述べている。

 

北京政府の戦略装備では透明性が一貫して低いままだ。中国との経験が豊かな元国防総省のドリュー・トンプソンは中国がいわゆる「非先制攻撃」方針で柔軟な姿勢を強めており、非核兵器で攻撃を受けても核兵器で対応することを自制してきたのを改めるのは明白としている。

 

FOBS含む技術開発で米側のミサイル防衛体制への対応で自信がつき、各種装備品が充実している。とくに現行の米ミサイル防衛体制では中国が保有中の核兵器を全弾発射した場合に対応できなくなることが重要な点である。

 

米中関係は領土問題、貿易面での意見対立でここ数年冷え込んでいる。米政府はCOVID-19パンデミックでの中国政府の処理を批判しており、ウイグル少数派の新疆での弾圧、香港民主派の取り扱い、台湾への圧力が関係悪化をさらに加速化している。一方で中国国内では強硬派の声が大きくなっている。米中台から有事発生の可能性が高まっているとの懸念が強まっている。

 

「米ミサイル防衛では中国核戦力の技術水準向上を懸念している」が、「米国が台湾とのつながりを強化し、新疆問題で中国を指弾していることが中国の核戦力増強を生んでいる」とカーネギー精華グローバルポリシーセンターのTong Zhao主任研究員がツイッターに投稿し、中国の戦略兵力整備の理由を解説している。

 

こうしたことを念頭に米政府は中国との軍備管理交渉を新たに始めたいとしており、ロシアも含めた三者協議も視野にしている。だが中国からは早くもこの動きを否定する姿勢を示している。

 

まとめると中国のFOBS整備に戦略兵器開発での透明性欠如が加わると今後の地政学上の環境で不確実性がさらに高まりそうだ。

 

Updated 5:45 PM EST:

 

NPRのジョフ・ブルームフィールから軌道爆撃システムに関し興味深いデータが提示された。フィナンシャルタイムズ記事では中国宇宙打ち上げ技術アカデミー(CALT)から長征2Cロケットの77回目と79回目の打ち上げについて公表したものの、78回目の発表がなかったとしていた。ブルームフィールはCALTは76回目打ち上げについても公表がないと指摘。

 

ブルームフィールからはCASCが7月の宇宙機打ち上げでロケットを投入したかで発表をためらっているため情報が錯綜していると指摘。CASCとCALTの間で食い違いがあるため準軌道上の宇宙機と軌道上爆撃システムの両テストの実施時期に関し一層の疑問を生んでいる。■

 

 

China's Claim That Its Fractional Orbital Bombardment System Was A Spaceplane Test Doesn't Add Up

The system could give China the ability to strike any target on Earth unpredictably, but so far Beijing is acting like the test didn't happen.

BY JOSEPH TREVITHICK OCTOBER 18, 2021

 



2021年10月18日月曜日

環球時報社説 「岩のように堅固」とする米国の台湾公約は中国の鉄の意志が砕いてやる

 CPPの息がかかった環球時報社説のご紹介です。うーん、相変わらずえぐい内容の主張ですね。文中で部分はThe Editor(自分)がつけたものです。目には目を。理屈には理屈を。日本も中国共産党の思考のどこが間違っているのか説明できるよう準備が必要です。軍事行動を正当化する作戦が今後も続くでしょうが、PLAが現時点で海峡横断の揚陸作戦を展開する能力には疑問がついたままです。

   

The Economist

 

国の台湾島への公約は「岩のように固い」としながら中国人民解放軍(PLA)による台湾海峡での軍事演習は「安定を損ない誤解リスクを増やすだけ」と米関係者の発言が続いている。▼台湾島の軍司令官が米国を訪問しており、フェルナンデス米国務次官は在米の台湾代表蕭美琴Hsiao Bi-khimと会談している。▼「岩のように堅固」とはいかにも台湾島の急進派になびこうとする欺瞞に満ちた表現だが、中国本土の抑止は絶対に実現できない。▼本土は断固として軍事行動の準備を進めており、台湾問題の最終解決を決定的かつ圧倒的に有利に進める。▼台湾島社会に警告したい。▼米国の「岩のように堅固」との約束に耳を貸すべきではない。▼なぜなら、ワシントンが米国人の犠牲を甘受してまで同島の分離をめぐり中国本土と戦う事態は発生しないからだ。▼米国のねらいは「台湾カード」で中国の台頭を防ぐことだが、このカードは自国民の犠牲を払ってまでも米国が死守するものではない。

 

中国本土は国家主権及び領土保全を守る固い決意のもと、国土再統一を進める。▼これに異議を唱え、妨害する国とは徹底的に戦い、死もいとわない。▼妨害がなければ、再統一は達成されるが、そうでなければ妨害勢力に立ち向かい撃破する。▼本土から見れば、再統一とは簡単だから進める、あるいは困難だから断念できるものではない。

 

ご注意 この記事は環球時報社説のご紹介です。本ブログの意見ではありません。

 

分別ある人物なら中国の決意の強さと台湾海峡問題への米国の意識に大きな差があることは容易に理解できるはずだ。▼これまであらゆる種類の協力を進めてきた両国は台湾海峡政策でも共通点を模索する必要がある。▼同島をめぐる北京とワシントンの相違点は本来衝突するようなものではなかった。▼だが米国の対中政策が大幅に変化し、台湾問題が最大の対立点になっており、中米間の意識の衝突は回避できなくなっている。

 

率直に言おう。台湾への「岩のように堅固」な約束を実行する国力は米国にない。▼台湾海峡含む近隣地区はPLAの攻撃射程内で、中国が台湾問題解決を決定すれば外部の軍事介入を排除する戦力がPLAにあり準備もできている。▼米国が海軍空軍を台湾へ派遣すれば米軍は悲惨な結末を迎えるだけだ。▼さらに中国は核兵器保有国で二次攻撃力にDF-41やJL-3といった大陸間弾道ミサイルがある。▼この現実が核兵器投入も辞さないとする米国の邪悪な思惑を封じ込める。▼端的に言って、米国に中国を脅かすだけの軍事力はない

 

同島の民進党(DPP)は状況を見誤ってはならない。▼米国に台湾防衛の能力がない事実を冷静に理解すべきだ。▼米国が台湾島を見捨てる事態になるはずがない、本土を遮断すべく一緒に戦ってくれると偏った考えをしている。▼本土が台湾問題を武力で解決する政治決断を下せば、解放戦争(1946年-49年)の南京解放の現代版が実現し、米国は台湾放棄に走らざるを得なくなる。

 

米国と台湾島は中国本土への脅かしを中止し、力による再統一は深刻な政治経済上の結果をもたらすとの主張を引っ込めるべきだ。▼米国はその場合は全面的な中国封じ込めになると言っている。▼中国人民全員がその事態を体験しており、抑止効果は皆無である。▼台湾海峡をめぐる緊張が高まっている原因はDPPが1992年合意を撤回したことにある。▼米国はDPPへ圧力をかけず同合意の復活は実現してない。▼逆にワシントンはDPPの危なっかしい動きを利用し台湾海峡の危険モードを加速化しており、本土封じ込めや弱体化を図っている。▼その結果、海峡情勢は対決に向かっている。

 

中国本土はDPPの傲慢さを引きずり降ろしてやりたい気持ちでいっぱいだ。▼さらに米国がいう「岩のような堅固」な約束は鉄の意志で粉砕してやる。▼中国は台湾問題の平和的解決策の希求を止めないものの、再統一で平和的解決は完了するのであり、「二つの中国」や「一つの中国、一つの台湾」等は認めるわけにいかない。▼中国分断を狙う勢力に平和的な実現方法はありえない。■


ご注意 この記事は環球時報社説のご紹介です。本ブログの意見ではありません。

 


China's iron will stronger than US' 'rock solid' commitment to Taiwan: Global Times editorial

By Global Times

Published: Oct 14, 2021 09:12 PM


2021年10月17日日曜日

再び嘘をついているのはどっち。今度は日本海で米ロ海軍の言い分が食い違う事態が発生。

 

 

米駆逐艦チャフィーをロシア駆逐艦アドミラル・トリブツが日本海のロシア領海内で2021年10月15日撮影した。Russian Ministry of Defense


  • ロシアから10月15日に太平洋ロシア領海で米海軍軍艦を排除したとの発表が出た

  • 発生場所は日本海で米国は以前もロシアの領海主張に挑戦したことがある

  • 同日にロシアと中国は同海域で共同演習を実施していたEmail address




シア国防省は10月15日ロシア、米両国の艦艇が日本海で接近遭遇した際の映像を公開し、ロシア艦が米駆逐艦のロシア領海侵入を阻止し排除したと主張している。


米海軍は同日夜にロシア見解に反論し、駆逐艦チャフィーは事件発生時に公海上にあり、安全かつプロ精神で行動したと述べた。


映像ではUSSチャフィー (DDG-90) が日本海でロシア駆逐艦アドミラル・トリブツから数百フィートで航行している様子が映っており、チャフィー搭載のヘリコプターのローターが回転しているのがわかる。


ロシア国防省は現地時間午後5時ごろ米艦が「ロシア連邦領海に接近し、国境線を越えようとした」ためアドミラル・トリブツが「警告した」と説明している。チャフィーは「承認しがたい行動をとろうとした」ため、該当水域は実弾射撃のため進入禁止だと通告された。ロシア中国の共同海軍演習が今週展開されていたためだ。


ロシア側発表ではチャフィーは航行を続け、ヘリコプター発進を告げる旗を掲げ、進路速度の変更ができないと伝えてきた。そのためロシア艦は米艦を排除する進路をとった。結局チャフィーは進路変更したが、両艦の距離は200フィートまで接近したとロシア側発表にある。ロシアは海上衝突を回避する国際取り決め、ならびに1972年の両国間の海上空中事故防止合意に「はなはだしい違反」だったと批判している。


これに対し金曜日発表の米海軍声明文ではロシア発表を「虚偽」と呼んでいる。


ロシア艦はチャフィーから65フィート以内まで接近して来たが、チャフィーは国際公海上にあり、ヘリコプター発艦準備中だったとし、さらに「両艦は安全かつプロ意識を発揮した」とあり、その時点で演習は実施されていなかったと述べている。


「USSチャフィーは一貫して国際法・慣習に則り行動した。米国は今後も国際法が許す範囲で飛行、航行、作戦を継続する」と米海軍は発表。


米駆逐艦チャフィー艦上のヘリコプターをロシア駆逐艦アドミラル・トリブツが日本海のロシア領海内で2021年10月15日撮影した。Russian Ministry of Defense



米ロ艦艇の遭遇事例は今回が初めてではなく、両陣営はそれぞれの主張で食い違いを示している。


2020年11月には米駆逐艦USSジョン・S・マケインが航行の自由作戦を日本海近くのピョートル大帝湾付近で実行し、ロシアの過剰な海上領有主張に挑戦した。ロシア駆逐艦が出動し米艦を排除したとロシアは発表し、警告ののちに衝突も辞さない行動を示したところ米艦は国際公海に戻っていったとした。


だが米海軍はこの説明を否定し、ロシア発表を「虚偽」と断じ米艦艇が「排除された」事実はないとし、作戦は「国際法に則り」実行されたと発表していた。


米国、NATO加盟国、ロシアは海上での挑発行動を非難しあうことが多い。今夏もロシア軍から英海軍駆逐艦がクリミア付近の航行を続けたため警告射撃と爆弾投下を行ったとの発表があった。クリミアはロシアが2014年に占拠している。


英国はロシア説明を否定し、「偽情報」と断じた。英国防省は当該艦HMSディフェンダーは「ウクライナ領海内で国際法に則り無害通航を実行中だった」とした。


金曜日発生の事態はロシア、中国が共同海軍演習を同海域で始めた翌日のことで、演習は17日日曜日までの予定で、通信業務、共同運用、海上実弾射撃、対機雷戦、対空、対潜戦を試すと両国発表にある。


ここにきてロシア軍中国軍は軍事協力を拡大しており、共同演習もその一環だ。両国の爆撃機が日本海を二回パトロール飛行し周辺各国が警戒した。


米軍関係者は両国の軍事協力を「表面的」とするものの、西側各国は懸念をもって情勢を見ている。■



Russian Video Shows Close Encounter With US Warship in Pacific

Christopher Woody 

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中国が大気圏再突入型極超音速ミサイル実験を実施。従来型ミサイル防衛の不備がつかれる事態を恐れる。中国との戦略兵器制限交渉は可能なのか。

 

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LOCKHEED MARTIN

 

国が核運用可能な極超音速滑空体を宇宙空間に打ち上げ、周回軌道に近い形で移動させて大気圏へ再突入し標的に移動させたとフィナンシャルタイムズが伝えている。この装備が実用化されれば影響は大きいと同紙にあり、関係者5名に意見を聞いたところ、米国はこの事態に虚を突かれた形だという。

試験実施は8月ごろで加速滑空体は長征2Cロケットが打ち上げた。同ロケットは77回目の発射となったが、北京は公表していないが、8月の76回78回の発射は公表している。フィナンシャルタイムズ記事では滑空体は標的から数マイル外れたとあるが、開発中の技術内容のほうが重要だ。

宇宙空間からの爆撃構想は冷戦時代からあり、部分軌道爆撃システムFOBSと呼ばれるが、当時は核兵器を再突入体から投下する構想だった。今回の中国装備では極超音速滑空体の膨大な運動エネルギーを使う。大気圏内で長時間の飛翔制御を行いつつ膨大な速度で標的に向かうのが特徴だ。

FOBSへの懸念が生まれたのは、ミサイル防衛の網をかいくぐるだけでなく早期警戒網で探知できなくなるためだ。通常の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と比べるとFOBSは予測不能の攻撃手段となる。飛翔距離の限界もなくなる。だがこれまでのFOBSは弾道ミサイルの延長で中間段階で追跡すれば飛翔経路は予測ができないわけではなかった。

今回テストされたとされるハイブリッド設計では全く予測不能となる。

CHINESE SPACE AGENCY

長征2Cロケットの打ち上げ

制御可能な極超音速滑空体が高高度から超高速降下すると通常の弾道追跡では対応できない。さらに事態を複雑にするのが、南極経由の攻撃を実施することで、米国の弾道ミサイル早期警戒網は北極越え軌道を想定しているためで、防衛手段も同様だ。この装備への対抗が極めて困難になる理由は、米国の中間段階での迎撃は通常の弾道ミサイルに特化した放物線軌道対応が中心なためだ。

滑空体とFOBSが一緒になれば、大気圏再突入時に防衛側の中間段階対応能力外の距離を方向を替えながら飛翔し標的にむかう。通常の地上配備レーダーの有効範囲では対応できない。そこに超高速が加わり、防衛側の現行装備では対応不能となる。

現時点では極超音速滑空体への対抗は極めて難しい。対抗策の開発が進んでいるものの、迎撃解が得られるかは対象の飛翔速度、飛翔制御、数量、支援にあたる探知機能の効果に左右される。運動エナジーと極超音速の組み合わせで撃破が最大に困難な攻撃手段になる。

フィナンシャルタイムズ記事では米国防総省関係者の驚くべきコメントも伝えており、「非通常型」運搬システムは米国の戦略防衛能力をかいくぐるとしている。

先月だが、米空軍長官フランク・ケンドールは中国が新兵器を開発中とほのめかした。長官によれば中国が大きな進展を示しており、「宇宙からのグローバル攻撃の可能性」があるという。詳細には触れず、中国が「部分的軌道爆撃システム」として旧ソ連が冷戦中に配備しようとして放棄した装備に近いものを開発中だという。これを投入してきたら通常型のICBM想定の防衛手段では探知対応ができないとケンドールは述べている。

北米航空宇宙防衛司令部のグレン・ヴァンハーク大将は8月の会議席上で中国が「高度な内容の極超音速滑空飛翔体運用能力の実証を最近行った」と述べた。中国が示した能力は「わがNoradの対応能力では警戒および攻撃評価が大きな課題となる」

DoDにはかねてから中国の核兵力整備に懸念の声があり、中国が米早期警戒防衛能力をかいくぐる兵器運搬システムの整備に走ることを想定していた。中国が砂漠地帯に数百ものミサイルサイロを構築しており、新型弾道ミサイルを格納し、今回のような滑空飛翔体を搭載する日が来れば、懸念が現実になる。そこでペンタゴンは新型宇宙配備早期警戒・追尾システムをは展開し、極超音速弾道ミサイルへの対応を急ぐとしており、とくに中間飛翔段階でミサイル監視をおこなう「コールドレイヤー」の実現をめざす。

このレイヤーがFOBSに効力を発揮するのは、防衛手段が実行可能かつ戦略的に意味がある場合に限られる。ならず者国家が高性能弾道ミサイル数発を運用する場合を論じているのではない。中国は数十発あるいは数百発もミサイルを同時発射してくるかもしれない。こうした想定では物理的な防衛体制の整備は非常に高額となりながら実効性がないものになりかねない。

とはいえ、今回のテストは宇宙開発用ロケットを使った初期段階のものだった。中国がこの技術を実用化するまでは時間がかかるだろう。高温対応や大気圏内の摩擦問題も解決が必要だ。とはいえ、中国は極超音速加速滑空飛翔体の実現を目指しここ数年精力的に開発努力を展開しているのが現実だ。

今回のフィナンシャルタイムズ記事が正確だとすれば一つ確実なことがある。超高額になっても有効なミサイル防衛能力を求める声が議会筋でも大きくなっている一方で、中国を交渉の座につかせ戦略兵器制限条約を実現するべきとの声も広まっている。

この問題は事態の進展とともに続報をお伝えする。今回のフィナンシャルタイムズ記事China tests new space capability with hypersonic missileはクリックすると読める。■

China Tested A Fractional Orbital Bombardment System That Uses A Hypersonic Glide Vehicle: Report

Such a capability could potentially allow China to execute a nuclear strike on any target on earth with near-impunity and very little warning.

BY TYLER ROGOWAY OCTOBER 16, 2021