2022年6月16日木曜日

戦闘作戦の失敗事例:ロシアによるウクライナ侵攻は軍事力の限界を露呈している

  

ドネツクの親ロシア民兵。March 7, 2022

Alexander Ermochenko / Reuters



ロシアによるウクライナ侵攻は軍事力の限界を露呈している。今後数年間は今回の作戦の失敗の分析が展開されるだろう

 

 

シアがウクライナに侵攻し数日後の2月27日、ロシア軍は黒海沿岸のケルソン近郊にあるチョルノバイフカ飛行場の奪取作戦を開始した。ケルソンはロシア軍が最初に占領したウクライナの都市で、ロシアのクリミア半島の拠点にも近いため、次の攻勢をかける上で重要な飛行場となるはずだった。しかし、事態は計画通りに進まなかった。ロシア軍が飛行場を占拠した同日、ウクライナ軍は武装ドローンで反撃を開始し、クリミアから物資をぶヘリコプターを攻撃したの。ウクライナ国防筋によると、3月上旬、ウクライナ兵は滑走路に夜間突入し、ロシア軍ヘリ30機を壊滅的に破壊したという。翌週、ウクライナ軍はさらに7機を破壊した。5月2日までにウクライナ軍は18回攻撃し、ヘリコプター数十機に加え、弾薬庫、ロシア軍将官2名、ロシア軍大隊ほぼ1個を破壊したという。しかし、ロシア軍はこの攻撃の間中、ヘリコプターで装備資材を運び続けていた。滑走路防衛の一貫した戦略も、代替基地もないまま、ロシア軍は当初の命令のまま忠実に実行していた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、チョルノバイフカの戦いを「国民を虐殺に追いやるロシアの指揮官の無能さ」の象徴だと評した。実際、侵攻開始後の数週間で、同様の例は数多くあった。ウクライナ軍は常に劣勢であったが、ロシア軍が同じ過ちを繰り返し、戦術を変えなかったので、ウクライナ側は主導権を大いに利用できた。このように、戦争が始まった当初から、指揮のあり方に著しいコントラストが見られる。そして、このコントラストが、ロシア軍がここまで期待を裏切ってきたかを説明している。

 2月24日の侵攻開始までの数週間、欧米指導者やアナリスト、国際報道機関は当然ながら、プーチン大統領がウクライナ国境に集結させた圧倒的な戦力に注目していた。19万人ものロシア軍がウクライナに侵攻する態勢を整えていた。大隊戦術集団120個に装甲車両と野砲を備え、航空支援に支えられていた。ウクライナ軍がロシア軍を相手に長く持ちこたえられると想像する向きはほとんどなかった。ロシア作戦に対する主な疑問は、戦闘に勝利した後、ここまで大きな国を占領する十分な戦力があるかだった。しかし、軍事力の真の測定で必要な要素多数を予測は考慮に入れていなかった。

 軍事力とは、一国の軍備とその使用技術だけではない。敵の資源や、同盟国や友好国からの実質的な支援や直接的な介入を考慮すべきだ。軍事力は武器庫や陸軍、海軍、空軍の火力で測られることが多いが、装備の質、整備状況、隊員の訓練と動機付けに大きく依存する。どの戦争でも、戦力を維持する経済力と、必要物資を前線に確実に届ける物流システムの弾力性が、紛争が長引くにつれ重要性を増す。また、交戦国が国内外から自国の大義への支持をどれだけ集め、維持し、敵の大義をどこまで弱体化させられるかも重要で、そのため退却を合理化し、勝利を予測できる説得力ある物語を構築することが必要だ。しかし、なんといっても軍事力は効果的な指揮命令に依存する。

 プーチンのウクライナ侵攻で、最終的な軍事的成功を決定する指揮官の有する重要な役割が明らかになった。武力は国家に大きな力を与える。西側指導者がアフガニスタンとイラクで発見したように、優れた軍備と火力で領土を支配することはできても、領土をうまく管理する効果ははるかに低い。ウクライナでは、プーチンは領土支配にさえ苦労している。プーチン軍の戦争のやり方では、たとえ親ロシア派とされるウクライナ東部でも、統治しようとすれば反感と抵抗に遭う事態が発生している。プーチンは侵攻開始の際に、敵を過小評価し、その核心は弱いと仮定し、自軍の達成能力に過度の自信を持つという、破滅的なミスを犯した。

 

国家の運命

指揮統制は権威ある命令であり、疑問の余地なく従わなければならない。軍事組織は、規律正しく目的意識のまま暴力を行うため、強力な指揮系統を必要とする。戦時下の指揮官は、部下が生存本能に反して行動し、ヒトを殺すことへの抑制を克服するよう説得する特別な課題に直面する。賭け金は非常に高くなる可能性がある。指揮官は自国の運命を握ることもあり、失敗すれば国の恥になりかねないし、成功すれば国の栄誉になると深く認識しなければならない。

 軍事指揮はリーダーシップの一形態とされ、指揮に関する専門書が概説しているように、軍事リーダーに求められる資質は、ほとんどあらゆる場面で称賛に値することが多い。すなわち、深い専門知識、資源を効率的に利用する能力、優れたコミュニケーション能力、他人とうまくやっていく能力、道徳的目的意識と責任、部下への気遣いだ。しかし、戦争という大きな賭けと戦闘のストレスは、相当の要求を突きつけてくる。ここでは、主導権を維持する本能、複雑な状況を明確に把握する能力、信頼を構築する能力、変化する状況や予期せぬ状況に機敏に対応する能力などが必要な資質として挙げられる。歴史家バーバラ・タックマンは、決断力(「勝ち抜く決意」)と判断力(「経験を生かした状況判断力」)の必要性を指摘した。決断力と鋭い戦略的知性を兼ね備えた指揮官は素晴らしい成果を上げるが、決断力と愚かさを兼ね備えた指揮官は破滅に導くこととなる。

 部下が全員自動的に命令に従う保証はない。命令が不適切なこともある。古い情報や不完全な情報に基づいた命令では、最も勤勉な現場将校でさえ無視することがある。また、同じ目的の達成にもっと良い方法があり、実行は可能だが賢明でない場合もある。部下は、嫌いな命令や不信な命令に直面したとき、全面的な不服従に代わる方法を模索することができます。命令を先延ばしにしたり、中途半端に従ったり、目の前の状況に合うよう解釈することもある。

 しかし、このような緊張を避けるため、欧米の近代的な指揮思想では、率先して事態に対処することを部下へ奨励し、指揮官は現場に近い者の判断を信頼しつつ、事態がおかしくなった際に介入する傾向が強まっている。ウクライナ軍はこのアプローチをとっている。だがロシアの指揮思想は階層的のままだ。指揮系統は、部下が命令に背くことを許さない。柔軟性に欠ける指揮系統は、過剰な警戒心を生み、不適切な戦術に固執し、「現場の真実」を欠き、部下は問題を意図的に報告せず、「すべて順調だ」と言い張ることになる。

 ロシアのウクライナにおける指揮の問題は、軍事哲学というよりも、政治的リーダーシップの問題である。ロシアのような独裁体制では、官僚や将校は上司に楯突くことをためらう。指導者の意向を疑わずに行動するのが一番楽なのだ。独裁者は大胆な決定を下せるが、自らの思い込みに基づく可能性がはるかに高く、意思決定プロセスで異議を唱えられることはまずない。独裁者は、同じ考えを持つ助言者に囲まれ、上級軍事指揮官には能力より忠誠心を重んじる傾向がある。

 

成功が膠着へ変わる

プーチンがウクライナで自らの判断を信じようとしたのは、過去の武力行使で判断がうまくいっていたことを反映している。プーチンが政権を取る前の1990年代のロシア軍の状況は、エリツィン大統領が1994年から96年に行ったチェチェン紛争に見られるよう悲惨なものだった。1994年末、ロシアのグラチェフ国防相は、チェチェンの首都グロズヌイにロシア軍を迅速に投入すれば、ロシア連邦から分離独立しようとするチェチェンを終わらせることができるとエリツィンを安心させた。クレムリンは、チェチェンを人為的でギャングがはびこる国家と見ないし、ロシアの軍事力の全開に直面すれば、命を犠牲にしても抵抗する国民は皆無のはずと考えていた。この誤った推測は、現在のウクライナ侵攻のものと似ている。ロシア軍部隊には、ほとんど訓練を受けていない徴募兵が多く含まれ、クレムリンはチェチェン防衛軍が都市部地形をどこまで利用できるかを理解していなかった。結果は悲惨なものであった。攻撃初日、ロシア軍は戦車を含む100両以上の装甲車両を失い、ロシア兵は1日100人の割合で戦死した。エリツィンは回顧録で、この戦争を、ロシアが「わが軍の力について、その不屈の精神について、極めて疑わしいが好意的な幻想と決別した瞬間」だったと述べている。

 第一次チェチェン紛争は、1996年に不満足な形で終結した。1999年9月にエリツィンの後任として首相に就任したウラジーミル・プーチンは、再びこの戦争を行うと決意し、今度はロシア軍が準備を整えるよう確認した。プーチンは、KGBの後継組織である連邦保安庁(FSB)の長官としてキャリアをスタートさせていた。1999年9月、モスクワなどでアパートが爆破されたとき、プーチンはチェチェンのテロリストを非難し(FSBが新たな戦争の口実を作ったと疑う根拠はあった)、ロシア軍に「あらゆる手段でチェチェンを制圧せよ」と命じたのである。この第二次チェチェン戦争で、ロシアはグロズヌイ占領に成功するまで、慎重かつ冷酷に進めた。戦争は長期化したが、プーチンはチェチェン反乱を終わらせる明確な意志を示し、2000年春の大統領選挙で決定的勝利を収めた。プーチンは選挙戦の最中、記者から「最も興味深い政治家は誰か」と聞かれ、ナポレオンを挙げた後、ドゴールを挙げた。協力な中央集権で国家の力を回復しようとする者にとっては、当然の選択だったかもしれない。

 クリミアの占領は、辣腕指揮官としてプーチンの地位を確かにした。

 2013年、プーチンは目的を達成するために、ある道を歩み始めた。商品価格の高水準により、プーチンは強い経済を手に入れた。また、野党を排除し、政権を強固にした。しかし、ロシアと西側諸国との関係は、特にウクライナ問題で悪化していた。2004年のオレンジ革命以来、プーチンはキーウの親欧米政権がNATO加盟を目指すのを懸念していた。2008年のNATOブカレスト首脳会議でこの問題が取り上げられると、懸念はさらに強まった。しかし、危機が訪れたのは2013年、親ロシア派のヤヌコビッチ大統領がEUとの連合協定に調印しようとしていた時だった。プーチンはヤヌコビッチに強い圧力をかけ、調印を見送らせることに成功した。しかし、ヤヌコビッチ大統領の反転は、プーチンが恐れていた通り、マイダン運動という民衆蜂起を引き起こし、最終的にヤヌコビッチ政権は倒れ、ウクライナは完全に親欧米の指導者の手に委ねられた。そこでプーチンはクリミア併合を決意する。

 プーチンは、セヴァストポリにロシア海軍の基地があり、地元住民のロシアへの支持も高い利点を生かし、計画を実行に移した。しかし、慎重に事を進めた。プーチンの戦略は、ロシアの攻撃的な動きを、保護が必要な人々の要望に応えたものに過ぎないと説明するもので、それ以降も踏襲している。そして、「リトル・グリーン・マン」と呼ばれる標準制服と装備の部隊を投入し、クリミアのロシア編入を問う住民投票を地元議会に呼びかけることに成功した。ウクライナや西側諸国が本気で挑んでくるなら、手をこまねいているわけにはいかないとプーチンは覚悟していた。しかし、ウクライナは国防相の臨時代理しかおらず、意思決定権がなく、欧米はロシアに対て限定的な制裁措置しかとらないなど混乱した状態だった。プーチンにとって、クリミア奪取は、ほとんど犠牲者を出さずに、欧米が傍観する中で、辣腕の最高司令官としての地位を確認するものとなった。

 しかし、プーチンは、この明確な勝利に満足することなく、その年の春から夏にかけて、ロシアをウクライナ東部のドンバス地方における難解な紛争に引きずり込んだ。東部の親ロシア感情が弱く、分離独立へ民衆の支持を広く示すことができなかった。モスクワは、分離主義者戦闘員は独自判断で行動していると主張し、紛争は急速に軍事化した。それでも夏には、ドンバスの親ロシア派の飛び地ドネツクとルハンスクの分離主義者がウクライナ軍に敗北しそうになると、クレムリンはロシア正規軍を送り込んだ。その後、ロシア軍はウクライナ軍を相手に苦戦することはなかったが、プーチンはそれでも慎重だった。分離主義者が望む飛び地の併合はせず、ミンスクでの取引を機に、飛び地を利用してウクライナの政策に影響を与えるつもりだった。

 西側観察者の中には、ロシアのドンバスでの戦争は、ハイブリッド戦のように見えた向きもいた。アナリストが説明するように、ロシアは正規軍と非正規軍、表と裏の活動を統合し、既存の軍事行動とサイバー攻撃や情報戦を組み合わせて、敵を追い込むことができた。しかし、この評価はロシアのアプローチの一貫性を誇張しすぎている。実際には、ロシアは、完全に共有できない目的のため、統制するのに苦労する個人により、予測できない結果をもたらす出来事を引き起こしていた。ミンスク合意は履行されず、戦闘は止まなかった。プーチンはせいぜい、紛争を抑え、ウクライナを混乱させながらも、欧米が過度に関与しないよう抑止することで、悪い仕事を最大限に生かしたというところだろう。クリミアの場合と違い、プーチンは指揮官として不確かな手腕を発揮し、ドンバスの飛び地はどの国にも属さない宙ぶらりんな状態になり、ウクライナは西側に接近し続けた。

 

迫力にかける戦力

2021年夏、ドンバス戦争は7年以上も膠着状態にあった。プーチンは事態を収束させるため大胆な計画を立てた。キーウに影響を与えるため飛び地を利用することに失敗したが、その窮状を利用しウクライナの政権交代を訴え、キーウが再びモスクワの勢力圏に入り、NATOやEU加盟を考えることがないようにしようと考えたのである。つまり、ウクライナへ本格侵攻を行うことだ。

 そのためには、膨大な兵力と大胆な作戦が必要だ。しかし、プーチンはシリアに軍事介入し、アサド政権を支えるのに成功したことや、ロシア軍の近代化に取り組んでいることで、自信を深めている。欧米アナリストは、ロシアの軍事力強化について、「極超音速兵器」のような新しいシステムや軍備を含め、印象的な響きを持つロシアの主張をほぼそのまま受け入れていた。また、ロシアの財政基盤は健全で、制裁を加えても効果は限定的だ。西側諸国は、ドナルド・トランプ大統領の就任後、分裂と不安の様相を呈し、2021年8月の米国のアフガニスタン撤退の失敗で確認された。

 プーチンがウクライナで「特別軍事作戦」と称する作戦を開始したとき、西側諸国の多くは成功するかもしれないと懸念した。欧米の観測筋は、ロシアがウクライナ国境に大規模な軍備増強を行うのを数カ月前から観察しており、侵攻が始まると、欧米の戦略家の頭の中には、ロシアの勝利でウクライナがロシアに編入される恐れが先走った。米国や英国など一部 NATO 諸国はウクライナへの軍需品提供を急いだが、その他の諸国はこの悲観論に従い、消極的だった。

 しかし、ロシア軍の増強は、規模の大きさにもかかわらず、ウクライナ全土の占領・維持にはほど遠いものであったことは、あまり知られていない。ロシア軍関係者でさえ、危険性を認識していた。2022年2月初旬、2014年作戦におけるロシア分離主義者のリーダー、イゴール・"ストレルコフ"・ガーキンは、ウクライナ軍は8年前時点より準備が整っており、「動員ずみ、あるいは動員中の兵力が十分ではない」と述べていた。しかし、プーチンはウクライナ問題の専門家に相談せず、代わりにロシア安全保障機構の最も近いアドバイザーである同志に頼り、ウクライナは簡単に占領できるというプーチンの見方に同調していた。

 侵攻が始まるとすぐに、ロシア作戦の弱点が明らかになった。計画では、初日にウクライナの数カ所で決定的な前進をする短期決戦の想定だった。しかし、プーチンと側近たちは楽観的で、精鋭部隊による迅速な作戦を中心に計画を立てた。兵站や補給線ほとんど考慮されていなかったため、いったん失速したロシアの攻勢を維持する能力には限界が生じ、食料、燃料、弾薬など必需品はすべて急速に消費され始めた。事実上、進撃の軸が複数あることで、同時に別々の戦争が戦わされ、それぞれが独自の課題を抱え、それぞれ指揮系統を持ち、各方面間を調整する適切なメカニズムがない状態のままだった。

 プーチンの計画通りに物事が進んでいないことを示す最初の兆候は、キーウ近郊のホストメル空港だった。抵抗が少ないと言われ、輸送機受け入れのため派遣された精鋭空挺部隊は、逆にウクライナの反撃に遭い、撃退されてしまった。結局、ロシア軍は空港の奪取に成功したが、その時点で空港は損傷しており、何の価値もなかった。このほかにも、ロシア軍の強力な戦車部隊が、ウクライナ軍の軽装備部隊に阻まれた。ある証言によると、キーウに向かうロシア軍戦車の大列を、わずか30名のウクライナ兵が夜間に四輪バイクで近づき、先頭の数両を破壊するのに成功し、残りは狭い道路で動けなくなり、さらに攻撃を受ける可能性があったということだ。ウクライナ軍はこの他多くの地域でも同様の待ち伏せに成功した。

 ウクライナ軍は欧米支援を受け、精力的に改革を行い、綿密な防衛計画を立てていた。また、なぜそこにいるのか理解していないロシア軍と異なり、モチベーションも高かった。対戦車兵器やドローン、火砲を駆使した機敏なウクライナ部隊は、ロシア軍の意表を突いた。結局、戦争の初期段階は、数や火力ではなく、戦術、コミットメント、指揮の優劣で決着したのだ。

 

エラーの複合状態

侵攻当初から、ロシアとウクライナの指揮系統の違いは際立っていた。プーチンは、ウクライナを反ロシア活動を行う敵対国であると同時に、ロシアの力に対抗する能力もないと考えたことが、そもそもの戦略的誤りだった。侵攻が停滞する中、プーチンは新しい現実に適応できず、作戦は予定通りに進んでいると主張した。ロシアメディアは、多数のロシア軍戦死者や戦場での度重なる失敗に言及することを封印し、政府の戦争プロパガンダを執拗に強化した。一方、ロシア作戦で最初の標的となったウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米国はじ西側諸国からの「亡命政権樹立に安全な場所に連れて行く」との申し出を一蹴していた。結局、生き延びただけでなく、キーウに留まり、自国民を鼓舞し、西側諸国に財政的、軍事的支援を求め続けた。ウクライナ国民が自国を守る圧倒的な決意を示す中でゼレンスキーは欧米諸国にロシアへはるかに厳しい制裁を課し、武器や軍需物資をウクライナに供給するよう促した。プーチンが「特別軍事作戦」の失敗を頑なに繰り返す一方で、ゼレンスキーは自信と政治的地位を高めていった。

 プーチンの影響力は、ロシアの他の重要な戦略的決定にも及んでいた。一つは、最初の挫折に続いて、ロシア軍がチェチェンやシリアで用いた残忍な戦術の採用を決定したことだ。病院や住宅など民間インフラを標的とした攻撃だ。この攻撃は多大な苦痛と苦難をもたらし、予想通りウクライナの決意を強固にした。この戦術は、別の意味でも逆効果だった。ブチャなどキーウ周辺でのロシア軍による戦争犯罪が明らかになったことと合わせ、ロシアによる非軍事目標への攻撃は、西側諸国指導者に、プーチンとの妥協的解決は無意味だと確信させた。欧米諸国は、ウクライナへ武器供与を加速させ、防衛だけでなく攻撃的な装備品も重視するようになった。これは、モスクワのプロパガンダが主張するロシアとNATOの戦争ではなかったが、急速にそれに近いものになりつつあった。

 連綿と続く指揮官としての判断ミスにより、プーチンに残された選択肢はほとんどなかった。

 ロシアは3月25日、キーウ占領という最大目標を放棄し、代わりにドンバス地域の「完全な解放」に集中すると発表した。新たな目標で、東部にさらなる悲劇をもたらすことを約束するものではあるが、より現実的であり、これが侵攻の最初の目的であったなら、なおさらそうなっていただろう。クレムリンはロシア軍総司令官を任命した。この総司令官は、整然としたアプローチをとり、砲兵を追加し、装甲車と歩兵が前進する前に地ならしをしようとした。しかし、プーチンが迅速な成果を求め、ロシア軍に回復と第2ラウンド準備の時間を与えなかったため、戦術変更の効果は限定的となった。

 すでにロシアからウクライナへ勢いが移っており、プーチンの予定に合わせる逆転はすぐにできない。5月9日の「大祖国戦争」(ロシアがナチス・ドイツに勝利した日)に向け、プーチンが勝利と呼べるような何かを望んでいたのではないか、と分析する向きもいる。しかし、プーチンは、ウクライナが米国や欧州の新兵器を受け入れる前に、東部で領土を確保したいと考えたのだろう。その結果、ロシア軍司令官は北方から撤退したばかりの部隊を東方の戦闘に投入し、兵力補充や初回作戦で見られた失敗を改善する時間がなかった。

 4月中旬から本格化した新たな攻勢では、ロシア軍は成果を上げられず、ウクライナの反撃で陣地が蝕まれた。さらに、ウクライナの大胆な攻撃で黒海の旗艦モスクワが撃沈されるなど、困惑の連続だった。5月9日のモスクワに祝賀ムードはなかった。開戦以来、ロシアが容赦なく攻撃し、瓦礫と化した沿岸部の都市マリウポリでさえ、完全占領できたのは1週間後だった。そのころには、西側推定では、人員、装備ともにロシアの初期戦闘力の3分の1が失われていた。プーチンは祝日を利用して、軍の人手不足に対応するため総動員令を発表するとの噂が流れたが、発表はなかった。ロシア国内で不人気なのは確かだ。また、徴兵や予備役兵が戦地に赴くのに時間がかかっており、装備も慢性的に不足している。

 指揮官としての判断ミスが連発し、プーチンは万策尽きた。ウクライナでの攻防が3カ月目に入ると、多くのオブザーバーが「ロシアは負けられない戦争から抜け出せなくなった」と指摘するに至った。西側諸国政府やNATO高官は、この先、数カ月、あるいは数年間、紛争が続く可能性があると語り始めた。それは、ロシア軍の指揮官が低士気で消耗した部隊で戦いを続けられるかどうか、ウクライナが防御的から攻撃的な戦略に移行できるかにかかる。おそらくロシア軍は、この状況でもまだ何かを救い出すことができるだろう。あるいは、プーチンは、ウクライナの反攻に奪われる前に、戦争初期の利益を得るため、失敗を認めることになるが、ある時点で停戦を呼びかけるのが賢明であると考えるかもしれない。

 

目的を欠いたままの軍事力

独自の特徴を有する戦争から教訓を引き出す際は、特に、全容が明らかになっていない戦争の場合は注意が必要だ。アナリストや軍事計画家は、ウクライナ戦を軍事力の限界の一例としてこれから何年も研究するはずであり、強大な空軍と海軍、新装備を有し、成功した戦闘経験を持つ世界最強・最大の軍隊が、なぜあれほどひどい失敗をしたかについて説明を試みるはずだ。侵攻前のロシアの軍備とウクライナの小規模で劣勢の防衛軍を比較したとき、どちらが優位に立つか疑う者はほとんどいなかった。しかし、実際の戦争は質的、人的要因で決まるものであり、鋭い戦術を持ち、政治的最高レベルから下級の現場指揮官まで、目的に適った指揮系統でまとめられていたのはウクライナ側だった。

 プーチンのウクライナ戦争は、何よりも最高指揮系統の失敗事例といえる。最高司令官がどのように目標を設定し、どのように戦争を開始するかによって、その後の展開が決まる。プーチンの失敗は特殊なものではなく、自らのプロパガンダを鵜呑みにする独裁指導者が犯す典型的なものだ。プーチンは、勝利は容易に得られるとの楽観的な仮定を検証しなかった。自国の軍隊が勝利をもたらすと信じていた。ウクライナが、チェチェン、ジョージア、シリアでの作戦とまったく異なる規模の挑戦であることを理解していなかった。しかも、硬直した階層的な指揮系統に依存していたため、現地情報を吸収し適応することができず、肝心のロシア軍が状況変化に迅速に対応できなかった。

 権限委譲と現場イニシアティブの価値は、今回の戦争で得られたもう一つの重要な教訓だろう。しかし、これらの実践を有効にするためには、軍部隊が条件4つを満たす必要がある。第一に、上層部と下層部の間に相互の信頼関係がなければならない。最高司令部は、部下が厳しい状況下でも正しい行動をとる知性と能力を備えていると確信し、部下は、最高司令部が最大限のバックアップをしてくれると確信しなければならない。第二に、戦闘を続けるために必要な装備と物資を、戦闘部隊が入手できなければならない。ウクライナ軍は携帯型の対戦車兵器や防空兵器を使用し、本拠地に近い場所で戦っていたことが救いだった。しかし、それでも物流システムが機能する必要がある。

 第三に、最下級の指揮官による質の高い指導が必要である。ウクライナ軍は欧米の指導のもと、装備の整備から実際の戦闘準備まで、移動する軍隊の基本的要求を確実に満たす下士官部隊を育成しようとしていたが、下士官部隊の育成が遅れた。実際には、動員で復帰した者の多くが経験者で、何をすべきかを自然に理解していたことが、大きな意味となった。

 しかし、これが第4の条件につながる。どのような指揮レベルであれ、効果的に行動するには、ミッションへのコミットメントとその政治的目的の理解が必要だ。ロシア軍が想定した敵は、直面した敵ではなかったし、ウクライナ住民は、言われていたのとは逆に、解放されることを望んでいなかった。戦いが無駄であればあるほど、戦う部隊の士気は下がり、規律も弱くなる。このような状況では、現場のイニシアチブがあっても、脱走や略奪に終わるだけだ。それに対して、ウクライナ人は、領土を破壊しようとする敵から自らの領土を守っていた。モチベーションの非対称性が、最初から戦闘に影響を及ぼしていた。ここで、プーチンの最初の決断の愚かさに立ち戻ることになる。妄想で軍隊を指揮することは難しい。■

 

 

Why War Fails: Russia's Invasion of Ukraine and the Limits of Military Power

Why War Fails

By Lawrence Freedman

July/August 2022


ウクライナ戦の最新状況(現地時間6月15日現在) セベロドネツク包囲網が閉じつつある


ドンバスの状況。(ISW)



シアのウクライナ侵攻112日目となった。セベロドネツクの戦いは3週目に入り、水曜日、ロシア軍はセベロドネツク全域の攻略にあと一歩まで来ている。


セベロドネツク包囲網が閉じる

ロシア軍は現在、ウクライナの戦略的都市瀬ベロドネツクの大部分を支配し、ドンバスの西部と結ぶ残っていた橋を長距離射撃で破壊した。

 しかし、ロシア軍が都市を完全に包囲できなかったため、ウクライナ軍は人員と物資を都市に移動させることができた。

 セベロドネツクのウクライナ軍の大半は、アゾット化学工場に避難している。


 「ロシア軍はアゾット工場の支配をめぐる戦いを続けており、セベロドネツクとリシヤンスクの間の橋をすべて破壊したため、市内に残るウクライナ人守備隊は連絡線から孤立する可能性が高い」と戦争研究所は戦争に関する最新情報で評価している。

 一方、セベロドネツクの北西(イジウムとライマン)と南西(バフムト)のロシア軍は、セベロドネツクを後方から切断するべく進軍を進めている。

 その他の前線では、ウクライナ軍砲兵隊がロシア国内の目標を攻撃できるようになったことから、ロシア軍がハルキウ北東部で局所的に反撃し、ウクライナ軍を押し返そうとしている。

 南部では、ウクライナ軍がケルソン方面へ反攻を続け、ロシア軍を守勢に追い込んでいる。


ロシア軍の損失

ウクライナ軍は毎日、ロシア軍の犠牲者数を発表している。公式の数字であるが、個別に検証されてはいない。

 しかし、西側の情報機関の評価と独立した報道は、ウクライナの主張する死傷者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、600両以上のロシア戦車を破壊または拿捕したことを目視で確認しており、この評価は英国国防省によって確認されている。

 他のウクライナの主張のほとんどについても、同じような独立した検証が存在する。つい最近、米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆる種類の戦闘車両数千台を失ったことを認めた。

 さらに、西側情報機関の関係者を引用した最近の報道では、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の死者を出したという。

 実際の数字を確認するのは、現地にいないと非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近いという。

 水曜日時点で、ウクライナ国防省は以下のロシア軍損失を主張している。

  • 戦死者32,750(負傷者、捕虜は約3倍)

  • 装甲兵員輸送車3,528

  • 車両および燃料タンク2,485

  • 戦車1,440

  • 大砲722

  • 戦術的な無人航空機591機

  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 213

  • 多連装ロケット(MLRS) 230

  • 攻撃・輸送用ヘリコプター179

  • 巡航ミサイル129

  • 対空砲台96

  • 架橋装置などの特殊装備55

  • ボート・カッター13

  • 移動式弾道ミサイル「イスカンダル」4


ウクライナ軍の次の手

ドンバスでの継続的な圧力と攻撃作戦が続いているにもかかわらず、ロシアの死傷者割合は大幅に減速している。このことは、2つのことを示唆している。1つ目は、ロシア軍の指揮官が攻撃作戦に慎重になっていること、2つ目は、ウクライナ軍の戦闘力や弾薬が不足していることで、これは3カ月以上にわたるロシア軍との戦いで予想されることである。最近の現地からの報告によると、この2つの要因はいずれも事実であり、戦いの疲労が双方に追いついてきているようだ。

 先月はスロビャンスク、クリビヤリ、ザポリジャー周辺で激しい戦闘が続いたため、ロシア軍の死傷者が最も多かった。日が経つにつれ、激しい戦闘はスロビャンスクの南東にあるバフムト方面、ウクライナの重要な町セベロドネツク、ライマン周辺に移行していった。

 その後、ヨーロッパ最大の原子力発電所があるザポロジジア周辺でのウクライナ軍の反攻により、最も多くの犠牲者が出た場所は、再び西に移動した。

 水曜日、ウクライナ軍は、ロシア軍が進攻しセベロドネツクを後方から遮断しようとしているセベロドネツクとバフムト付近でこれまでで最大の死傷者を出した。

 ロシア軍の東部再攻撃の目的は、ドネツクとルハンスクの親ロシア派の離脱地域を完全に支配し、これらの地域と占領下のクリミアの間に陸上回廊を作り、維持することにあると表明している。■


Your daily tactical update on Ukraine (June 15) - Sandboxx


Stavros Atlamazoglou | June 15, 2022



 

2022年6月15日水曜日

PLAN003型大型空母の進水式が近づく状況を捉えた衛星写真を御覧ください。6月15日は習近平誕生日だが.....

 A satellite image showing China's still-under-construction Type 003 aircraft carrier at the Jiangnan Shipyard in Shanghai on June 14, 2022.

PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION.

 

新しい衛星画像で、中国待望の新型空母が進水式に近づいており、装飾され、乾ドックに注水しているのがわかる。

 

 

The War Zone が Planet Labs から入手した衛星画像で、中国の最新鋭空母「003型」の進水が近いことがわかる。

 

画像は、協定世界時(UTC)6月14日午前7時21分、上海現地時間午後3時21分に撮影された。

 

6月14日、江南造船所で撮影された中国の建造中の「003型」空母。乾ドックには海水が入っているのがわかる。PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

下の写真は上海で建造最終段階に入った003型空母が注水したドックで撮影したもの。カタパルトの装飾、アイラインドや側面に掲げられた国旗、飛行甲板の外周の国旗がはっきり見える。中国の空母や軍艦の進水式で見られる装飾と同じだ。

 

6月14日の衛星画像では、003型空母艦上の装飾がはっきりと確認できる。The decorations on the Type 003 carrier are clearly visible in the June 14 satellite image. PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

 

2010年代半ばに江南造船所で建造が始まった003型の進水日が大きな憶測を呼んでいる。専門家やオブザーバーは、上海の海上安全局が商業船5隻を、空母を建造中の造船所のから移動させると公言しており、進水式イベントが設定されたのでと推測していた。

 

シンガポールの南洋理工大学付属S.ラジャラトナム国際問題研究所のコリン・コーCollin Koh研究員はツイッターで、003型の進水予定の6月15日は習近平国家主席の誕生日にあたり、「非常にふさわしい贈り物」と指摘している。

 

2013年以来中国を率いる習近平は、人民解放軍の近代化と拡張を極めて重要な時期に監督し、特に台湾と米国に対しますます攻撃的な外交政策をとっている。

 

003型空母で、中国政府は軍事力全体を拡大・向上させるだけでなく、国境を越えて兵力投射する能力を高めるため重要な目玉となる。同艦は、中国海軍で供用中の空母2隻と根本的に異なる先進的なカタパルト支援離着艦バリア回収(CATOBAR)設計を採用している。

 

001型遼寧は、未完のソ連のクズネツォフ級「ヴァリャーグ」から誕生したが、002型山東はその現地派生型となった。ともに短距離離陸、バリアフリー回収(STOBAR)タイプで、航空機発艦用のカタパルトの代わりに「スキージャンプ」式の前部飛行甲板を備えている。カタパルトを使用すると、発艦する航空機のペイロードが劇的に増加し、新型空母搭載機の可能性を開くなど、多くの利点を生む。

 

003型では、カタパルトだけでなく、電磁式航空機発射装置(EMALS)を搭載すると広く報じられている。すでに述べたように、本艦の3基のカタパルトは、今日の衛星画像では目立つように装飾されており、重要性を強調している。

 

EMALSは、少なくとも原理的には、出撃率の向上や発艦力の微調整が可能など、さまざまなメリットがある。EMALSは、航空機発艦で、航空機の消耗を減らすのに役立つ可能性がある以外に、利用機種を増やすことも可能となる。また、小型無人機など、従来の空母よりさらに小型・軽量な機体を搭載できる可能性がある。

 

Recent photo of the J-35/FC-31 navalized variant.

 

003型は、遼寧型や山東型の艦載機と比べ、まったく新しい航空翼を搭載することは間違いない。新型空母の建造が進むにつれ、中国の国営航空産業は、F-35風の FC-31/J-35 ステルス戦闘機の海軍バージョンや、米海軍の E-2 ホークアイに相当する KJ-600 空中早期警戒管制機など新鋭空母搭載機の開発にも着手してきた。

 

J-15T戦闘機やJ-15D電子戦機など、フランカーの改良型も003型の甲板から飛来する可能性がある。このような既存機と新型機の組み合わせは、米海軍の空母航空団で予想される構成とよく似ている。PLANは、すべての空母やその他の艦船に各種無人装備を導入する明確な野心を持つ。

 

さらに、台湾危機や南シナ海での活動支援など、PLANの作戦計画で空母は今後も重要な要素である一方、空母含む水上行動部隊を海外に展開する動きも活発になってきた。

 

昨年、米軍当局者は、アフリカの角の国ジブチにある中国の海軍基地が、既存空母の訪問を支援できるよう拡張中と評価したことを明らかにした。同施設は、現時点で中国唯一の海外海軍基地だが、少なくともカンボジアのリーム海軍基地へのアクセスの実現を図ろうとしている。中国政府は、同基地の拡張に資金援助している。カンボジア当局は、同基地の新設が中国共産党の使用に限定されるとの米政府の主張を一貫して否定している。

 

003型は進水後も、本格的な運用開始に数年かかる可能性が高いということに留意するこべきだ。CATOBARの運用コンセプトへの移行は大規模で、実用化に時間がかかる。米軍は同艦の就役時期を2024年と公言している事が多い。

 

近い将来の登場がほぼ確実な003型空母の進水は、PLAN空母能力の拡大とあわせ、中国が世界規模で軍事力の投射能力を高める重要な一歩になる。■

 

New Chinese Aircraft Carrier's Dry Dock Is Flooded, Launch Imminent

 

BYJOSEPH TREVITHICKJUN 14, 2022 2:56 PM

THE WAR ZONE


中国が原子力発電の安全性、経済性向上で大きな進展を示した模様。中国は今後150基の原子炉を建設。原子力廃止の主張勢力はエナジー危機にどう釈明するのでしょうか。

 This is not China's new particle accelerator, of which images do not seem to be publicly available. It is the DESY HERA particle accelerator at Hamburg, Germany.

ドイツ・ハンブルグにあるDESY HERA 粒子加速器 SIMONWALDHERR

 

 

使用済み核燃料をリサイクルし、より安く、より危険の少ないものにできれば、中国がエエナジー自立にちかづく。

 

国科学院現代物理研究所が最近完成させた試作型「粒子ビーム砲」は、SFに聞こえるかもしれないが、原子炉から発生する危険な廃棄物をリサイクルする斬新な新技術だ。中国が原子力エナジーシステムへ莫大な投資をしてきた成果の画期的技術で、中国はエナジー自給に向かい、天候にやさしい技術での世界的リーダーシップがさらに強固になる。

 

 典型的な核分裂炉では、ウラン235のような重い同位体原子がばらばらになり、エナジーを放出する。その際、余分な中性子も放出され、これが他の原子と衝突し、連鎖的に原子をバラバラにする。壊れた原子は使用済み燃料となり、数年間冷却され、数世紀にわたり慎重に保管される。しかし、今回の「大砲」、つまり陽子加速器を使う新型原子炉では、使用済み燃料をリサイクルし、安価で安全な電気を作れる。

 加速器駆動システムaccelerator-driven system(ADS)は、陽子を発射する陽子加速器、核分裂させる重元素を入れる核破砕ターゲット、核分裂させる燃料を入れる未臨界炉の3部分で構成し、陽子加速器から発射される陽子と核破砕ターゲットで核分裂を発生させる。陽子加速器は、使用済み燃料と新しい核分裂性物質(トリウム232またはウラン238)のブランケットに囲まれた重元素(ビスマスが多い)に陽子を発射する。標的は分裂し中性子を放出するが使用済み燃料に吸収され、核分裂性の重い同位体、つまり新しい核燃料に変わる。

 重要なのは、このプロセスが自己完結型であり、連鎖反応やメルトダウンの危険性がないことだ。現代物理学研究所の加速器プロトタイプの完成は、ADS実用化に向かう大きな一歩であり、先進的な原子力エナジーシステムへの中国の巨額投資が、技術革新という配当をもたらした典型例と言える。

 原子力を完全放棄した多くの国と異なり、中国は核分裂を未来への鍵と見なしている。原子力は風力や太陽光より効率が良く、化石燃料とは異なり、温室効果ガスや粒子状大気汚染物質を排出しない。石油消費量が世界第2位の中国は、エナジーをより多く必要としており、不安定な立場に置かれている。中国の石油の70%は、主に中東輸入に頼っており、海上交通の要所多数を通過しなければならない。中国は2035年までに4400億ドルを投じ、原子炉を少なくとも150基増設する。中国がADS技術開発を続ければ、原発から出る廃棄物を有効利用し、増大するニーズに合わせてさらに多くのエナジーを生産する再利用が可能となる。

 中国は安全な新システムを開発することにより、放射性物質の漏出や制御不能な連鎖反応の可能性を低減しようとしている。福島とチェルノブイリの原発事故は、最も有名な最悪の例だが、中国も2021年6月、広東省泰山原発で燃料棒破損による放射能漏れが発生し、問題に直面した。中国は、新世代の海洋浮体式原子力発電所に100億ドル近くを投じる計画で、核分裂より安全な方法として核融合も模索している。

 中国は原子力分野では米国を圧倒している。2009年以降、米エナジー省DOEが原子力のインフラと耐障害性を向上させるため支出した額は9億ドル未満にすぎない。DOEが、燃料サイクル研究開発への2400万ドルを含む、原子力大学プログラムへの4880万ドルの追加を発表したことは、米国の原子力コミュニティの基準からすれば、大きなニュースだった。DOEの200億ドル規模のクリーンエナジー実証室の原子力プロジェクトに、さらに資金が投入されるかもしれない。

 米国ではジョージア州ウェインズボロ近郊のボグル3・4号機の2基が新設され、もう1基のニュースケール炉は計画段階だ。それ以前の米国最新の原子力発電所は、それぞれ1996年と2016年に開所していたが、原子炉21基が廃炉になっている。全米電力に占める原子力の割合は20%前後を維持しているが、2050年のエナジーポートフォリオ予測では、原子力の割合が著しく低下するとある。

 中国の粒子線加速器と ADS研究は、同国の産業、エナジー戦略、そして技術から気候変動に至るまで、広範かつグローバルなリーダーシップで重要となる技術だ。米国も技術革新へ投資を続ければ、同様に新しい選択肢や技術が実現可能になるかもしれない。   

 ADSで可能となる先進的な原子力エナジー源は、従来よりはるかに安全であり、気候変動に関する目標を世界が今後数十年で達成するため重要になるというのが、大半の専門家の意見だ。

 中国がエナジー・リーダーシップに向け疾走しているのは確かだが、中国だけが利益を得る構図にしてはならない。■

 

China's 'Particle Beam Cannon' Is a Nuclear-Power Breakthrough - Defense One

By THOMAS CORBETT and PETER W. SINGER

JUNE 13, 2022 10:19 AM ET

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Thomas Corbett is a research analyst with BluePath Labs. His areas of focus include Chinese foreign relations, emerging technology, and international economics. 

P.W. Singer is Strategist at New America.


ラインメタル自社開発の新型主力戦車パンサーに注目。独仏共同開発の次期MBTはどうなる。

 KF41_PANTHER

Rheinmetall

ドイツのラインメタルが発表した「KF51パンサー」は独仏の新主力戦車計画を混乱させる可能性を秘める。

クライナ戦が激化し、戦車戦が再び注目が集まる中、ラインメタルは本日、130mm口径主砲を搭載した最新主力戦車「KF51パンサー」を発表した。ドイツ陸軍で広く使用されているレオパード2の後継機種を目指す設計だが、好戦的なロシアの脅威に対抗するべく装甲部隊の再編成を進めるその他ヨーロッパ諸国の関心を引く可能性がある。

KF51パンサーは、第二次世界大戦中のナチスドイツの伝説的戦車を思い起こさせる名前で、本日パリで開催されたユーロサトリ陸上防衛展で、ラインメタルのアーミン・パッパガー Armin Papperger CEOにより発表された。

これまで同社は、この新型MBTとその仕様について、ほとんど情報を公開してこなかった。重量は約65トンと伝えられる。これは、最新2A7V型で70トン強のレオパルド2より軽い。同じ1,475馬力ディーゼルエンジンを搭載するため、パンサーは現行車両より機動性が向上しているはずだ。パンサーは、現在の西側MBTの多く、特にアメリカ製のM1エイブラムスの後期バージョンより軽く、戦闘時総重量は70トンを超える。設計者がハイブリッドパワープラントなど、現代的な推進装置を選択しなかったことのは驚きであるが、開発・生産は迅速かつ容易になるはずだ。

新型MBTは、レオパルド2の120mm主砲から130mm口径滑腔砲になり、火力も増強された。これは、戦車兵装の大口径化への関心を反映したもので、砲そのものはラインメタルが以前から開発してきたものだ。パッパーガーCEOによると、130mm砲はレオパード2の砲より「50%以上効果が高い」し、「はるかに長い射程距離を実現する」という。運動エナジー式サボタージュ弾とプログラム可能爆発弾の両方を発射する。

その他武装としては、12.7mm同軸機関銃とオプションの遠隔操作式ウェポン・ステーションがある。また、対空機関砲については今のところ言及されていないので、おそらく局地防空用のHERO 120滞空弾、ドローン、未公表のミサイル用の発射装置も用意されるだろう。

防御に関して、情報は皆無に近いが、ラインメタルは、乗員はレオパルド2よりも保護され、アクティブ、リアクティブ、パッシブの各防御技術の恩恵を受けると明言している。ラインメタルのストライクシールド・アクティブプロテクション・システムは、対戦車兵器や自爆ドローンなどの脅威からの防御として装備される。APS-Gen3として知られていたストライクシールドは、この種のシステムで初めて、独立機関による厳しい安全性評価に合格している。友軍や罪のない傍観者に大きなリスクをもたらすのではという顧客の不安を和らげるのに役立つはずだ。

レオパルド2の乗員は4名だが、パンサーは主砲給弾に自動装填を導入し、3名(車長、砲手、運転手)に絞られた。また、必要に応じ4人目の乗員を加えることも可能で、例えばスペシャリストや小隊長などを追加できる。

乗員が戦場でより効果的に活動できるようデジタル・ネットワーク機能を備え、各乗員はすべてのセンサー、武器、パワーパック、その他のサブシステムのデータにアクセスでき、必要に応じ呼び出すことができるようになる。各乗員が他の乗員からタスクを引き継ぐことができるため、同戦車は将来的に無人砲塔を搭載するのにも適しており、おそらく完全無人化バージョンもあり得る、とラインメタルは述べている。

KF51パンサーのアーティストコンセプト。 Rheinmetall

また、NGVA(NATO Generic Vehicle Architecture)と呼ぶオープンアーキテクチャーシステムにより、センサーや兵器の迅速な統合が可能となり、他のプラットフォームと相互運用性が向上するため、全体的な効率性も向上する。

パンサーがフランスでデビューしたのは皮肉といわざるをえない。このMBTがフランスとドイツ両国の戦車部隊の将来に影響を与える可能性があるからだ。

仏独両政府は、MGCS(Main Ground Combat System)のもと、開発費約16億ドルを投じ、フランスのルクレールやドイツのレオパード2に代わる新型MBTを開発中だ。MGCSは、フランスのNexterとドイツの陸上システム産業のもう一つの巨人Krauss-Maffei Wegmann(KMW)の共同事業体KNDSを構築してる。ラインメタルもMGCSに参加する。ドイツメディアの報道によれば、同社はKNDSでの同社の地位に不満を持っているようだ。

そう考えると、パンサーは、MGCSの進む道への不満に対するラインメタルの回答である可能性が高く、独自に打って出ただけでなく、新型MBTを急速開発したことに意義がある。ドイツ政府とあわせ、東欧の治安情勢がここに来て悪化しているため、戦車隊の再構築を検討中のその他国にもシグナルとなる。

ラインメタルがMGCSと同等の火力を持つMBTを迅速に市場に投入できれば、国内受注と輸出顧客の関心を確保できるかもしれない。レオパルド2は、特にヨーロッパで成功を収めており、ラインメタルはそれを生かすことができるはずだ。アジア太平洋地域も、MBTで可能性のある市場だ。興味深いことに、ラインメタルは、少なくとも当初はドイツ市場を主ターゲットしそうだ。そうなれば、独仏共同のMGCSは明らかに弱体化する。

2018年にドイツ、米第7陸軍訓練司令部のグラーフェンヴェール訓練場で開催された「ストロングヨーロッパタンクチャレンジ」を前に点検中のフランス軍ルクレールとドイツ軍レオパルド2A6。U.S. Army

もうひとつの主要防衛プロジェクトである、やはりフランスとドイツが主役の「未来型戦闘航空システム(FCAS)」が苦戦していることが注目される。最近の報道によると、有人戦闘機が中心の航空戦力システムの整備が遅れているようだ。ダッソーCEOであるエリック・トラピエÉric Trappierによれば、2040年就航と予想されていた同機が実用化されるのは2050年になるという。一方、ドイツはF-35Aステルス戦闘機の購入計画を発表し、この動きにフランス政府関係者は落胆している。

ドイツ陸軍のレオパード2後継機が登場するタイミングは、運に恵まれているようだ。ウクライナ紛争に対応するため、ベルリンは軍の近代化に乗り出し、2022年度予算から1120億ドル超の「特別基金」が新装備購入のために計上されている。同時に、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、NATOの意向に沿って、国防費を国内総生産の2%に引き上げるという公約を強調した。

 

NATO前方展開強化戦闘群の一員として1000人以上のドイツ兵が駐留するリトアニアのアドリアン・ローンのキャンプで、ギタナス・ナウセダ・リトアニア大統領(左から3番目)と共に兵士と話すドイツのオラフ・ショルツ首相。Photo by Michael Kappeler/picture alliance via Getty Images

ウクライナで戦車戦が目立つため、新型MBTを購入することが議題に上る可能性がある。ここでパンサーは、2035年から就役する予定だったMGCSに対して優位に立つはずだ。MGCSプログラムの技術実証機として、ルクレールとレオパルド2のコンポーネントを組み合わせた「強化型主戦闘車」が2018年に公開されたものの、その後は進展は鈍い。

一方、ドイツ以外では、ロシア国境に近い国々も、モスクワの侵略を思いとどまらせるために、特に陸上戦力の強化を検討している。ドイツのメディアでは、少なくとも東欧の1カ国が新型MBTに関心を示していると報じた。同地域の数カ国、特にNATO加盟国にとって、新型装甲車両の必要性は緊急性を帯びている。ポーランドが一時MGCSを購入する可能性が示唆されていたが、米国製のM1A2SEPv3エイブラムス戦車250両を選択し、余剰のソ連時代のT-72をウクライナに納入した後、エイブラムス納入を加速させることを検討中だ。

ウクライナ戦争では、各国が自国の余剰戦車をキーウに提供したため、ヨーロッパ各地で戦車の譲渡や納入が相次いでいる。ドイツは中古MBTをウクライナに引き渡すのが著しく遅くなったが、欧州の他地域で戦車部隊の再編成が進んでおり、戦車の補充が必要になる可能性がある。例えば、チェコ共和国はウクライナに寄贈したT-72の代わりにドイツから余剰レオパルド2A4戦車15両を受け取っており、これに続いてレオパルド2A7+戦車50両を追加発注する可能性がある。この機会に他の国も新型戦車を購入する可能性があり、パンサーは候補のひとつとなる。

ウクライナ紛争を契機に、戦車全般の将来像が改めて議論されるようになった。重装甲が大きな役割を果たす一方で、MBTの各種兵器で脆弱性も浮き彫りになってきた。KF51パンサーは、ある意味で、そうした現実をさまざまな角度から解決するものにも思われる。全体として、現行MBTより軽量で機敏、大型主砲を搭載し、待機監視と滞空弾による攻撃能力を備える必要がある。

KF51パンサーは、非常に興味深い時期に登場し、最終的に、ドイツなど各国のMBT部隊の未来を形作る可能性がある。■

 

New KF51 Panther Tank Packs Big 130mm Gun Aimed At Aging Leopard 2

BYTHOMAS NEWDICKJUN 13, 2022 1:00 PM

THE WAR ZONE