2016年10月9日日曜日

まだまだ現役、B-52の現状と今後の改修の方向性


まだまだB-52は供用されそうですね。エンジン換装が実現すれば一層その効果を発揮するでしょう。良い投資だったことになりますね。

The National Interest


Why America's Enemies Still Fear the B-52 Bomber

October 2, 2016


9月26日、大統領候補討論会でドナルド・トランプはヒラリー・クリントンから核戦力について聞かれこう答えた。

「ロシアの戦力増強で装備は近代化している。それに対し米国は新型装備配備が遅れている。
「先日の晩にB-52が飛んでいるを見たが皆さんの父親より古い機体で祖父の世代が操縦していた。このようにほかの国に追いついていない」

つまりB-52は老朽機で米空軍が世界から特にロシアから大幅に遅れを取っていると言いたかったのだろう。

でも本当に古い機体なのでは?

B-52ストラトフォートレスの初飛行は1952年で生産は1962年まで続いた。現在運用中のB-52H合計76機より高齢のパイロットは皆無に近い。トランプ発言は「祖父」というところまでは正確であり、B-52乗員の中には三世代続けて同機に搭乗員という家族がすくなくとも一組存在する。

その機体が今でも有益なのかが疑問となっているわけだ。

BUFFのニックネームが付くB-52は当初は核爆弾を上空から投下してソ連を攻撃するのが役目だった。だが地対空ミサイル、空対空ミサイルの登場で想定した任務は1960年代末に自殺行為となり、今でも同じだ。

では何に使うのか、米空軍がまだ運用しているのはなぜか。

B-52は湾岸戦争以降ほぼすべての戦役に投入されている。その理由は何か。

B-52には二つの大きな利点がある。大量の爆弾、ミサイルを搭載できること、遠距離に運べることだ。空中給油なしでも8,800マイルを飛べる。また性能向上用のスペースは機内に豊富にある。

同機は爆弾、ミサイルの長距離配達トラックということか。

防空体制を整備されあt標的にはどうするか。AGM-86空中発射式巡航ミサイルを最大20発を搭載する。核・非核両用の同ミサイルはスタンドオフ攻撃用だ。

だが高価な巡航ミサイルをB-52は発射していない。敵対勢力のタリバンやISISに強力な防空体制がくB-52は高高度を上空飛行できるからだ。

B-52はGPS方式のJDAM誘導爆弾12発あるいはGBUレーザー誘導爆弾を4から10発積んで戦闘地区上空で待機し、近接航空支援の要請を待つことがある。もちろんジェット戦闘機でも同じ仕事はできるが、戦闘機は上空飛行待機時間も限られる。アフガニスタンのタリバン討伐作戦を開始した2001年当時はB-52やB-1が米本土から飛来し爆撃していた。当時は近隣に米空軍が運用できる基地がなかったためだ。現在もB-52はタリバン、ISISを相手に作戦を展開している。

ISISへ絨毯爆撃していると聞いたが

絨毯爆撃では数百から数先発の非誘導型爆弾を投下し標的を爆撃する。無差別攻撃となりそのショック効果は大きい。B-52はこのために最適な機材で500ポンドから750ポンド爆弾なら51発を搭載できる。あるいはクラスター爆弾なら40発となる。イラク軍が砂漠地帯に陣取った1991年の湾岸戦争で低レベル絨毯爆撃を行っている。

ただし今日の空軍は絨毯爆撃には関心がない。空軍が同機を投入するの高密度目標だけだが敵側にそれだけの標的がないのが普通だ。付随被害も発生するので民間人居住区の近隣で実施できない。

BUFFは他にどんな任務に役立つの?

長距離飛行性能は海洋上空の監視飛行に最適だ。南シナ海の広大さと中国が覇権を狙っていることを想起してもらいたい。

B-52には海軍用機材が搭載するセンサーはないが、一部機材にライトニング、ドラゴンズアイの水上監視用レーダーポッド二種類が搭載され水上艦船の識別に使える。また別にAGM-184ハープーン対艦ミサイル8発搭載用に改修された機材もあり、160マイルの射程を誇る。このため水上戦闘でもB-52は威力を発揮できる。

ミサイルトラックとしてのB-52をもう一歩進めて空飛ぶ弾薬庫とする構想もある。その場合対空ミサイルも搭載するだろう。

戦闘機では空対空ミサイル搭載数に限りがある。特にステルス戦闘機でこの傾向が強い。そうなると数の上で優勢な敵との対決で不利だ。そこでステルス戦闘機の特性を活かし、アクティブ電子スキャンアレイレーダーにより接近してくる敵を探知させ、データリンクとネットワーク技術でデータを友軍機に送らせる。「弾薬庫」機としてB-52やB-1に長距離空対空ミサイルを多数の搭載させる構想がある。

現時点では理論にすぎず、制約もある。だがペンタゴンは構想を真剣に検討している。

ミサイル以外にB-52をどう活用できるだろうか。力の誇示で目立つ機材だ。弾道ミサイルとの比較では航空機は核兵器運搬手段として脆弱性が避けられない。だが地上配備、海中配備のミサイルはその存在が見えにくく、、一方でB-52は危険地帯近くへ飛ぶことができる。上空飛行で明白な力のメッセージを伝えることが可能だ。

B-52が南シナ海上空や核実験直後の北朝鮮付近を飛行する様子を伝えるニュースを耳にしただろう。ロシアのTu-95ベア爆撃機がイングランドやカリフォーニア沖合を飛行して嫌がらせをするようなものだが、B-52の上空飛行の方が政治的に大きな意味を有する。

だが機体の金属部品が疲労しないのか。また旧式エイビオニクスやエンジンはどうするのか。

その点は考慮ずみで心配は不要だ。空軍はB-52は2040年までの飛行供用は可能としさらに延長の可能性もあるとしている。B-52の設計が堅固かつ保守的であるのが理由で、その後登場した高性能機よりストレスへの許容範囲が高い。空軍は大規模投資でB-52の飛行性能を維持向上している。

だが搭載エイビオニクスは旧式だ。ニューヨーク・タイムズは油圧系統と配線が旧式でコンピュータも故障が多い旧型のまま機内に搭載されていると指摘している。

そこで空軍は11億ドルでBUFFにCONECTエイビオニクス改修を加え新型ディスプレイ、通信装置、データリンクによるネットワークを導入する。また兵装庫改修で誘導爆弾を追加搭載させる。現在はJDAMなら8発搭載可能だが、小型空中発射おとり(MALD)ミサイルも搭載し敵防空体制を混乱させる他、レーダージャミング装置も搭載する。

B-52のTF-33ターボファンエンジンは効率が劣る。一時間3,000ガロンの燃料を必要とする。そこ空軍はエンジン換装で整備コストともに経済性の向上を検討しているが予算がない。そこで浮上してきたのが民間会社に保守整備を信用払いで委託し、新エンジン換装で浮いた運用経費で費用を賄う支払い方法だ。

欠点はあるものの、B-52は今でもしっかりした仕事をしており、空軍も評価しているのは明白だ。ただし古ければすべてよし、というものでもない。

2015年にB-52一機を事故で喪失した空軍は13百万ドルで有名な航空機の墓場(アリゾナ州)からB-52H一機を代わりに復帰させた。13百万ドルで新型爆撃機は調達不可能だ。(なお、墓場にはB-52Hがあと12機温存されている。)

後継機種はないの?

空軍にはより近代的な爆撃機が二機種ある。B-2スピリット・ステルス爆撃機とB-1ランサーだ。だが両機種ともB-52の後継機種とはみなされていない。

B-2スピリットはステルス機で敵防空網の突破が期待されている。高度能力を持つ敵国に十分有効だが、20機しかない。運行は条件に作用され、飛行整備経費は一時間135千ドルとB-52のほぼ二倍だ。経費とともに搭載燃料・兵装量が少ないこともあり、爆弾トラックとして比較的安全な空域で毎日運用することは考えにくいし、海上監視機としても使いにくい。ただしステルス性能が効果を出すがステルスが外交的な力の誇示の目的には適さないことは明らかだ。

B-1BランサーはB-52と同様の効果が期待できる機体だ。搭載兵装量はより大きく、速度は25%も早く、レーダー探知も困難だ。だが今日の防空体制能力ではステルス機も探知されない保証はなく、迎撃を回避する速度も不足している。そこでB-52より性能が高いとは言え、空軍は同機を防空体制が整った空域に送りたくないはずだ。

そうなるとB-1(愛称ボーンズ)はレーザー誘導弾や巡航ミサイルを遠方から発射することとなり、B-52と同様になる。

B-1Bは高性能だが運用経費は一時間60千ドルとB-52より10千ドルも安い。ただし同機も63機と機材数が少ない。B-52がB-1の不足を補うことのか、爆撃ミッションを中止するのかとなり、このためB-52が今年はじめにISIS戦に投入されたのだ。
だがB-52に未来はあるのだろうか。空軍からB-21レイダーの調達を進めると今年発表が出た。これまで長距離打撃爆撃機と呼ばれていた機体だ。B-21はステルス機でB-2スピリットと形状が似ている。

B-21の設計思想は長距離爆撃機で遠隔地に飛び、敵防空レーダーに探知されずに飛行させることにある。中国、ロシアの低帯域レーダーはステルス機の探知にも有効と言われる。機体はB-2よりやや小さくなるだろう。

B-21の機体価格は5億ドルを超えるとされ、空軍としても新技術に真剣に対応しているというだろうが、ペンタゴンは最終価格でこっそりと交渉中と言われる。

ロシアには「最新性能」があるのか?

ロシアは三機種の爆撃機を運用中だ。高速のTu-22M3バックファイヤー、もっと高速のTu-160ブラックジャック、Tu-95ベアで冷戦時の機体設計だ。ただし、ステルス性能はなく、B-2や今後登場するB-21に匹敵する機材はない。

可変翼Tu-22M3はB-1より速度が70%も早いが兵装と燃料の搭載量を犠牲にしている。スピードが防御策にならないことは実証済みで2008年にジョージアで地対空ミサイルで一機撃墜されている。

巨大なTu-160は可変翼式でマッハ2とB-1よりはるかに高速だが兵装搭載量はほぼ同じだ。極めて高価な機体で製造、維持は大変だ。ロシアは16機を保有しているが大部分は飛行可能な状態にない。B-1同様にレーダー断面積は小さいが、敵防空網の突破は期待できない。

そこでTu-95SMとTu-142ベアがある。ロシア版B-52と言える機体で原型のベアは初飛行が1952年でB-52とほぼ同じ任務に投入されている。またうまく任務を実施している。だが何と言ってもプロペラ推進は低速で騒音がすざまじく、兵装搭載量はB-52の半分程度だ。

そうなると一定数の機材が運用されている唯一の重爆撃機は中国のH-6の120機で、冷戦時のTu-16を改修したものだが、飛行距離・兵装搭載量ともにB-52とは比較にならない。

ではトランプの言う「新能力」とは爆撃機以外のことを指しているのだろうか。ロシアにはたしかに新兵器が多数あるが、空の上で追いつくのに必死だ。Su-35はまだ生産が低調だがF-15より優位だといわれている。だがF-15は1976年初飛行で、Su-35はF-22ラプターには追随できない。

またT-50ステルス戦闘機の開発がある。現在の発注数は12機でラプターの一割にも満たない。米国にはラプターに加えやや性能が劣るがF-35も加わる。

地上兵力技術でロシアが進歩しているのは間違いなく、T-14アルマタ戦車には100両の発注がある。だが今のところはT-72戦車改良型数千両が主力で、米軍が1991年の湾岸戦争で粉砕した戦車の改良型だ。

一方でロシアのミサイルには畏怖させるものあり、これから登場するジルコン水上発射ミサイル、S-400地対空ミサイル、イスカンダル短距離弾道ミサイルが要注意だ。特に後者はロシアが航空機による効果に期待できない中で依存を高めそうだ。またロシアも米国同様に大陸間弾道ミサイルによる核戦力を保持している。

ロシアがここ数年で軍事力を増強しているのは明らかで、経済の停滞とは対照的だ。ただし、米国が2016年に投じた国防予算は597百万ドルに対しロシアは87百万ドルで7対1の差がある。多くの場合にロシアが有望な新技術を開発していても実際には十分な配備をする予算がないというのが実情だ。

そうなると…

B-52の愛称BUFFは「デカくて不格好な太っちょ野郎」という意味だ。

だが外観で判断してはならない。B-52にはセクシーさもステルス性能もなく、敵防空網突破やSAM回避はできないかもしれないが、地球の反対側に大量の兵装を投下することができ、ISISやタリバンの本拠地を壊滅することは可能だし、苦戦する地上部隊の援護にもかけつける。

新型機も同じ任務に投入できるし、より高性能機材も登場するだろう。だがB-52はこの時点でも後継機の必要がないほどの活躍をしている。古くても信頼性が高くしっかり仕事をこなす機体を廃棄する必要はない。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: A B-52H Stratofortress takes off after being taken out of long-term storage at Davis-Monthan Air Force Base, Arizona. Flickr/U.S. Air Force

2016年10月8日土曜日

空母ギャップ----定期大修理が遅延し、米新政権に頭の痛い事態が発生か


空母打撃群一個が下手な国の空軍力海軍力を凌駕する規模ですが、それだけに空母の運用には大きな負担が発生します。そこでお約束の予算削減、国内産業基盤の問題が工事を遅延させています。さらに記事では出ていませんが、新型フォード級空母の就役も遅れる見込みなので、「空母ギャップ」の発生は必至でしょう。来年1月発足の新政権にはつらい状況が生まれそうで、米国の敵対勢力は虎視眈々と様子を見ているのでしょうね。

US Carrier Delays Continue — And Another 'Gap' Could Affect The New Administration

By: Christopher P. Cavas, October 7, 2016
WASHINGTON -- ワシントンで新政権が発足すると、米国に対抗する各国がアメリカの意思を試す動きに出るのはほぼ確実だ。ロシア、中国、イラン、北朝鮮、ISIS、アルカイダが新大統領に圧力をかけ、指導者の資質を確かめようとするだろう。問題が来年発生すれば、新指導層が「空母はどこにいるのか」と尋ねるのは必至だ。
  1. 残念ながら国民が耳にしたくない答えが少なくとも新政権発足直後に出てくるだろう。
  2. 空母USSドワイト・D・アイゼンハワーはペルシア湾を哨戒中で米中央軍で唯一の強力な装備となっている。ISIS勢力をシリア、イラク国内で数ヶ月に渡り空爆したあと、同艦は来年一月にUSSジョージ・H・W・ブッシュと交代する予定だ。アイクはその後ノーフォークへ帰港し7ヶ月間の航海を終える。ここまで長い配備は海軍の目標どおりで、配備がさらに9から10ヶ月と長くなると人員、装備ともに消耗が激しくなる。
  3. だが問題がある。ブッシュの配備は予定より遅れており、保守点検期間が伸びたことが原因だ。ノーフォーク海軍工廠での工期は六ヶ月の予定だったのが13ヶ月になった。その間、乗員と搭載航空部隊は訓練を積み、12月にアイゼンハワーとの交替に備えていた。だが当初の10ヶ月訓練期間は2ヶ月短縮され、さらに4ヶ月削られている。
  4. 海軍当局はブッシュ打撃群は十分な練度を確保しているがこの遅れを取り戻す対応が間に合っていないようだ。
  5. 派遣が遅れたことでアイゼンハワーの哨戒活動を延長する必要が生まれたが、アイクが予定通り帰港していたら中央軍、欧州地域で空母ギャップが生まれていただろう。これはロシア、ISIS、アルカイダ、イランが挑発の動きを示しかねない中でいかにも望ましくない状況だ。
  6. ブッシュ派遣でも太平洋には影響は出ない。太平洋艦隊所属の空母各艦は中央軍任務を大西洋配備の打撃群に任せ、西太平洋や南シナ海に専念できるようになったためだ。
  7. ブッシュの大修理が大幅に遅れた原因には海軍工廠が予算削減の影響で人員を減らしている事があり、太平洋、大西洋の各部隊にも影響が今後出てくる。10月5日にUSSニミッツがピュージェットサウンド海軍工廠(ワシントン州ブレマートン)で20ヶ月の工事を完了し海上公試に出発した。これも予定より4ヶ月の遅延となった。ただし遅延現象が西海岸配備の空母に今後も影響を与えるかはまだわからない。
  8. この問題は新しい現象ではない。2014年10月に艦隊部隊本部からアイゼンハワーの大修理は2013年から2015年までの予定と発表していた。またUSSハリー・S・トルーマンがアイクが使えない間をカバーするとしていた。アイゼンハワーの再就役は結局2016年6月1日になった。
  9. 海軍工廠は四ヶ所あり、ノーフォーク、ピュージェット・サウンド、パールハーバー、ポーツマスの各所で海軍はここ数年間問題があると訴えている。上層部は予算削減で四箇所全てで作業員が減員されているとし、予算手当も遅れがちだという。そうなると艦隊は悪循環に陥る。作戦テンポが高まると艦艇は定期点検修理を先送りする。海軍工廠にやってくる艦船は予定より作業量が増えるので他艦の作業がそれだけ遅れることになる。訓練計画も影響を受け、艦の投入時期が数ヶ月遅れる。
  10. 海軍海洋システムズ本部(NAVSEA)が海軍工廠の管理元であるが、この問題の存在自体を認めていない。
  11. 「ブッシュの供用再開が遅れた大きな理由は海軍工廠の作業量が能力を超え、作業で難題に直面したため」とNAVSEA広報官ローリー・オコナーは語る。
  12. 「海軍工廠四ヶ所の作業量はここ数年増加傾向にある。海軍は人員増を量ったが作業量の伸びに追いつかず、ノーフォーク海軍工廠は優先順位をつけて投入資源を割り振った結果、人員不足が発生し作業が日程から遅れた」
  13. 同様の状況がピュージェット・サウンドでも発生しUSSニミッツに影響が出た。
  14. 「ニミッツの場合も工廠の対応能力不足で影響が出た。配備期間が延長され当初予定になかった作業が必要となったこともある」(オコナー)
  15. オコナーは四ヶ所で人員増を図っているという。それによると2013年以来、「海軍はおよそ14千名もの新規作業員を採用した」としている。
  16. ノーフォーク、ピュージェット・サウンド両工廠の民間人作業員は残る二箇所の二倍程度の規模となてとり、2013年から増加している。ノーフォークでは1,425名採用して10,542名に、ピュージェット・サウンドでは2,549名増で13,425名になっている。
  17. ただ人員増で問題が解決するほど簡単ではない。「採用しても訓練が必要」とオコナーも認め、「経験を積むのには時間が必要」という。
  18. そのため各海軍工廠では原子力潜水艦の定期修理作業を民間に外注することとし、これまで原子力関連の大修理はすべて海軍工廠で行ってきたのと大きく変化している。実施はジェネラルダイナミックスのエレクトリックボート事業部(コネチカット州グロートン)およびハンティントン・インガルス・インダストリーズ(HII)のニューポート・ニューズ造船(ヴァージニア州ニューポート・ニューズ)で四隻が作業中あるいは今後作業を開始する。
  19. 大修理の遅れは作業内容の困難度だけが理由ではない。他にも計画作業の問題もある。総じて各海軍工廠は年間実施計画を立てて、必要な作業内容を把握し、工程を編成し、必要な部品資材を先に発注し、作業員を確保する。ここで人員減が計画を狂わせる要因となるし、熟練度が想定より低いことも影響する。
  20. ノーフォークではブッシュの2015年から2016年にかけての作業を予定していた。一部筋によれば計画の一部がHIIに移管されて問題が発生したという。HIIでも問題が発生していたのだとする。
  21. HIIはジェネラル・ダイナミクス傘下のNASSCOとブッシュ工事の相当部分を請負ったが契約は個別作業別だったという。
  22. だがオコナーによればノーフォーク工廠が一貫して工事を統括していたとする。
  23. ノーフォークでは「ブッシュの工期計画作成を2014年に開始し、管理していた」とオコナーは説明。「HIIはじめ民間企業がノーフォークの作業量の一部を受け持ち、個別具体的な作業を担当した」
  24. HIIは23.8百万ドル契約を2015年6月に公布受け、「原子量推進系統はじめ複雑な改修作業を受け持ったが工期管理は対象外だった」とオコナーは説明している。
  25. GD NASSCOは42.4百万ドル契約でブッシュ工事を請け負った。
  26. 海軍工廠が空母工事の完了で遅延し2016年までずれ込んだことで艦隊戦力本部が訓練期間を短縮する選択をしたのかは不明だ。
  27. 艦隊戦力本部(USFFC)には空母部隊を緊急時に増強することを図る案があり、最適艦隊即応案 Optimized Fleet Response Plan (OFRP) で空母打撃群の配備準備に必要な装備、部隊を調整するとしている。
  28. ただUSFFCはブッシュの工事状況については同艦がノーフォークを出港した7月23日以降沈黙したままでそれまで喧伝していたOFRPが機能したのかも言及していない。海軍筋によれば8月に会議がありブッシュ打撃群の今後を検討したというがその結果は一切公表されていない。
  29. USFFC,NAVSEA、ノーフォーク工廠はブッシュ大修理期間中に定期的に連絡していたはずと同筋は説明している。ただ大修理完了後の配備日程ははっきりしていない。USFFCがブッシュ修理の延長でも状況に対応できなかったのではとの観測は否定しているが、関係者はこの問題を公に検討することを拒否している。
  30. ブッシュは洋上訓練ののち10月3日にノーフォークに帰港している。海軍筋によれば同艦の一部不具合がまだ解決していないという。次回長期訓練と合同訓練艦艇演習がないと乗員と艦上装備の即応体制は認証されず、航空部隊や随行する水上艦艇でも同様だ。
  31. 海軍は同艦が空母派遣のギャップができないように派遣してアイゼンハワーと交代できるのか明言を避けている。非公式ながら消息筋によればブッシュは2017年早々には派遣可能となるというが、アイゼンハワーの派遣期間を延長する決定はまだ出ていない。■

2016年10月7日金曜日

なぜこの時期に? 憶測を呼ぶ米空軍の模擬核爆弾投下演習

たしかにこの時期に模擬弾とは言え核運用の実験をおおっぴろに行うのは腑に落ちません。記事はロシアを意識とありますが、実は北朝鮮ではないでしょうか。まず北朝鮮の核開発能力を奪う【外科手術」攻撃を行うのではないでしょうか。

The US Air Force Just Dropped Two Fake Nukes

A B-2 stealth bomber drops an inert B61 nuclear bomb.
  • BY MARCUS WEISGERBER
OCTOBER 6, 2016

米空軍所属のB-2爆撃機二機編隊が700ポンドの模擬核爆弾をネヴァダの砂漠に投下し、このたびペンタゴンが情報を開示している。

ペンタゴンの10月6日付け報道資料では「今月始めに」B61核爆弾の模擬弾2発が投下されたとある。B61は1960年代から配備の核爆弾だ。うち一発は「地中貫徹弾」で地下目標物を標的にしたもの、もう一発はB61の戦術用途改良版だった。ともに実弾は搭載していない。

今回のテストの目的は実戦に近い状況で信頼性、正確性、性能のデータを入手することにあったと国家核安全保障局(エネルギー省の一部で核実験を担当)が明かしている。「このようなテストは兵器体系の供用期間延長とともに実効性を確認する一貫として行っている」

だがなぜこの時期に行ったのか。ロシアとの緊張がこれまでより高まっていることが関係しており、ロシアとの核軍拡競争が始まるのではとの恐れが増えている。今週始めにロシア政府は市民を対象に核戦争想定の大規模演習を実施すると発表していた。

同時にペンタゴンとしては配備後相当の期間が経過している核兵器を運搬手段と合わせて更新したいのだろう。総額数千億ドルになるとみられる。この内空軍は新型大陸間弾道ミサイルと核巡航ミサイルの必要性を訴えており、空軍協会主催の会合ではボーイングがミニットマンIII の次期ICBMを売り込んでいた。

新型ICBMを巡っては論争があり、空軍は地上配備戦略抑止力と呼称するがウィリアム・ペリー元国務長官は不要だと主張している。巡航ミサイルには長距離スタンドオフ兵器との名称がついているが、B61の改良型が2020年代に供用開始となることで無駄だとの声が出ている。

空軍は8月に各社宛に新型ICBM及び新型核巡航ミサイルの技術提案を求める通知を送った。その際に空軍戦略装備部門の核兵器センサー司令官スコット・ジャンソン少将は長距離スタンドオフ兵器を「米核抑止力体系で不可欠な装備」と表現していた。

空軍はノースロップ・グラマンへ新型長距離ステルス爆撃機B-21レイダーの生産契約を交付しており、将来的には核兵器を搭載するはずだ。海軍はコロンビア級原子力潜水艦を建造しオハイオ級に替えて核ミサイル運用を狙う。

新型核兵器体系をすべて整備すれば今後20年間で3,500億ドルから4,500億ドルの支出規模になるとの試算がある。■

もし戦わば⑥ 日中開戦と米軍介入のシナリオ


このような事態が発生しないためにも適正な抑止力が必要であり、日米同盟をしっかり機能させなければなりません。技術面では中国等の装備を一夜にして無意味にする新装備が登場すれば一気に安全保障の地図が変わるでしょう。でもその前に北朝鮮関係がきな臭くなってきたのが気になりますが。


This is what a war between China and Japan would look like

Oct 4, 2016 3:21:09 am


日中両国の間には長く激しい対立の歴史があり、深い不信が根付いており、近年は両国は西太平洋の二大大国として一歩間違えば第三次大戦の引き金になりかねない事態に向けた対応準備をしている。
東シナ海をめぐり両国が武力衝突する危険性をDefense Oneが9月に報じているが、両国が戦闘状態に入ればどうなるのか。
Japanese soldiers with the Japan Ground Self-Defense Force move the F470 Combat Rubber Raiding Craft off the beach during a beach raid as part of training for Exercise Iron Fist 2016, at Marine Corps Base Camp Pendleton, Calif., Feb. 24, 2016. Iron Fist is a five-week-long exercise focusing on advanced marksmanship, amphibious reconnaissance, fire and maneuver assaults, staff planning, logistical support and medical knowledge sharing, fire support operations, including mortars, artillery and close air support, and amphibious landing operations. (U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Ryan Kierkegaard, 1st Marine Division Combat Camera/Released)
陸上自衛隊隊員がF470戦闘強襲用ゴム製舟艇を動かす。アイアンフィスト2016演習の一貫としてカリフォーニア州の海兵隊キャンプペンドルトンで。Feb. 24, 2016. (Photo: U.S. Marine Corps Lance Cpl. Ryan Kierkegaard)
中国の軍事力は日本を規模、実力ともに上回っている。常備軍2.3百万名と予備役2.3百万名が控え、航空機3千機、戦車装甲車両14千両、艦船714隻を保有する。
その中で中国軍のプレゼンスは日中が衝突しそうな箇所全てで増強されている。南シナ海含む太平洋は日本経済の要だ。島国の日本は中国が通商路を遮断すれば即座に食料他資源が枯渇する。
chinese tanker soldier
人民解放軍の戦車兵。瀋陽の戦車訓練施設にて。Mar. 24, 2007. (Photo: U.S. Department of Defense Staff Sgt. D. Myles Cullen)
だが日本は傍観しているわけではない。祖国防衛のため300千名が迅速に集結するだろう。また戦車装甲車両3.5千両、航空機1,590機、艦船131隻が支援する。中国の数字には及ばないとはいえ、本国防衛では相当の戦力であることに変わりはない。
中国が本気で日本を封鎖しようとした場合に日本に不幸なのは海上交通路を維持する軍事力がないことだ。だが日本には切り札があるから比較的小規模の軍事力の維持で十分なのだ。米国との相互防衛協定である。
日本軍の背後にはアメリカがおり戦闘が長期化すれば米国が参戦する。米軍事力は世界最高水準であり遠征戦に向け訓練を積み重ねている。
南シナ海で戦闘が発生すればこの遠征能力が鍵となる。米海兵隊と海軍は海兵遠征部隊を重要地点に送り込むだろう。遠征部隊は海兵隊員数千名規模で猛烈な戦闘力を発揮するだろう。さらに兵站活動と装甲車両や航空戦力が支援に回る。
What-you-need-to-know-about-North-Korean-threats
第22海兵遠征部隊が海岸強襲作戦を演習中。Feb. 2014. (Photo: U.S. Marine Corps Sgt. Austin Hazard)

米海軍は空母打撃群一個を派遣し、追加航空支援で海兵隊を助ける。さらに電子戦装備、監視偵察能力含む攻撃力は相当なものだ。
一方で米陸軍は4千名の旅団規模戦闘チームをアラスカから戦略拠点に空輸し、海兵隊の増派部隊とするか中国軍の侵攻の前に拠点確保させるだろう。
空挺部隊は空軍と共同で敵占領下の航空基地を奪取し、防衛隊を掃討し施設を米軍作戦に活用する道を開くだろう。

soldiers marching in Alaska
第25師団第四旅団戦闘チームの落下傘隊員がアラスカでの演習を終え集合地点に向かう。Aug. 2016. (Photo: U.S. Air Force Justin Connaher)

米陸軍はアラスカ駐留部隊の第25師団第四旅団戦闘チームを縮小する方針だったが、北極地方および日本、韓国への脅威が高まっていることもありそのまま保持することに方針転換した。背後に中国の脅威があるのは明白だ。
だが中国は守りを固めており米軍の介入は高い代償を求められるだろう。まず、南シナ海の人工島を軍事化しており、島しょ間の支援網を整備している。中国が防御を貫徹すれば攻撃側は相当の被害を覚悟しなければならないだろう。
それでも日米両国は勝利を収めそうだ。少なくとも今後数年間の間は。た出し中国が軍事支出を引き続き増強し、産業スパイ活動も続けた場合、中国が米軍の実力にどんどん近づいてくる。そこでRAND研究所は2025年に米中開戦となった場合には両陣営とも完全な勝利は得られず、相当の被害を被ると予測しているのだ。
戦争にはなるはずがないとの楽観意見がある。ピュー研究所の世論調査では日中両国が深い相互不信があるのがわかるが、両国の貿易関係は大規模だ。加えて両国の軍事力は相当なのでり武力衝突は相当の流血の事態となり得るものより失う物が大きく上回るはずだ。■
筆者は元米陸軍落下傘部隊員で第82空挺師団の第四旅団戦闘チームに所属していた。


2016年10月6日木曜日

★そうりゅう級潜水艦がオーストラリアに採用されなかったのは航続距離の不足が理由なのか



なるほどオーストラリアの求めた長距離性能が現行型では不足して、居住性でもケチを付けられていたわけですか。でもそんなことはオーストラリア版改修設計で対応できていたはずなので、選外となったのは別の理由があるのでしょうね。

The National Interest

Why Japan’s Soryu-Class Submarines Are So Good

October 1, 2016

  1. 第2次大戦で日本が得た教訓はふたつ。そのうち自ら開戦すべきでないという教訓はしっかりと生きているようだ。もうひとつが戦時中の連合国による海空の封鎖体制で日本は飢餓一歩手前まで追いやられたことだ。資源に乏しく耕作地も限られた日本にとって次の戦争を生き残り、海空の交通路を確保することが必須であり、そのため日本は第一級の海空部隊を保持する必要がある。
  2. 戦後の日本潜水艦部隊は世界有数の実力を備えるに至っている。海上自衛隊の潜水艦部隊は22隻までの潜水艦を保有を許され、隻数も世界有数の規模だ。すべて国産で三菱重工業と川崎重工業が神戸で建造している。
  3. 日本の潜水艦は反復建造が特徴で新型潜水艦がほぼ20年サイクルで現れるまでは既存型の建造を続ける。現在のそうりゅう級はおやしお級のあとに出現し、二型式だけで潜水艦部隊を構成する。そうりゅう級は自動化を高めたのが特徴で、乗員数も幹部9名科員56名と以前のはるしお級から10名の削減が可能となった。
  4. そうりゅう級は潜行時排水量4,200トンで9隻が在籍中で戦後日本最大の潜水艦だ。全長275フィートで全幅はほぼ28フィードである。航続距離は6,100カイリで最大深度は2,132フィートと伝えられる。そうりゅう級の特徴にX型尾部があり、一説では海底近くでの操艦性を高める効果があるという。このため浅海域で運動が優秀となり、日本への侵攻ルートに想定される主要海峡を意識しているのだろう。
  5. 各艦には電子光学式マストとZPS-6F水上監視・低高度対空レーダーを備える。ただし潜水艦として主センサーはソナーでヒューズ・沖電機によるZQQ-7ソナーは艦首のソナーアレイと、艦側部につけたアレイ四本活用する。また曳航式ソナーアレイも装備し艦尾方向の探知に活用する。
  6. 533ミリ魚雷発射管6門を艦首につけ、武装は89式大型ホーミング魚雷で射程27カイリあり、実用上は2,952フィート深度で発射できる。魚雷発射管は米国との強い関係で共通化しており、そうりゅうはUGM-84潜水艦発射方式のハープーンミサイルも運用できることになる。Combat Ships of the World では各艦は兵装30本の搭載可能と未確認のまま掲載しており、旧型の20本より多くなっている。
  7. また自艦防御装備も充実し、ZLR-3-6電子対抗装置および3インチの水中対抗装置発射管二本で音響装置を放出する。パッシブ防御として艦体は音響タイルで覆い、艦内騒音の漏出が減るとともに敵のアクティブ・ソナーにも効果を発揮する。
  8. 推進方式でも注目を集める。浮上時13ノット、潜行時20ノットを出す。動力には川崎重工製12V 25Sディーゼルエンジン12基と東芝製タンデム配置電動モーター一式を利用する。静粛潜行にはスターリングV4-275R Mk大気非依存推進システムをスウェーデンのライセンスで搭載し、最大2ノットでの潜行中移動が可能だ。最終号艦ではリチウムイオン電池の搭載が噂されている。
  9. ただし、そうりゅう級も完璧とは言い難い。一つの問題がオーストラリア潜水艦調達競合で明らかになった。作戦航続距離が比較的短いことだ。6,100カイリという性能はもともとそうりゅう級が日本近海の防衛任務の想定であったためだ。
  10. オーストラリア向けそうりゅうはオーストラリアから台湾まで3,788マイルを移動する想定のため途中一回は燃料補給が必要となる。おそらく2回になっていただろう。オーストラリア向け商戦では乗員の快適度ならびに航続距離を延長するため全長を6メートルないし8メートル伸ばすことになっていた。ただしオーストラリア向け仕様改修は日本に逆効果だっただろう。
  11. 長距離ステルス性能、センサー性能、最新型魚雷やミサイルを組み合わせるとそうりゅう級は高性能ハンターキラーになる。ただし特化したハンターキラーでオーストラリアにとってはいささか取扱に困る艦となっていただろう。
  12. 後継艦の建造が今後数十年に渡り始まると見られるが、日本は無人水中潜行機の可能性を模索しており、水中通信や水中無線電力送電技術も検討いているのだ。そうりゅう級の後継艦がどんな形になるのか注目したい。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
Image: Japan Maritime Self Defense Force submarine Hakuryu arrives at Joint Base Pearl Harbor-Hickam for a scheduled port visit. Wikimedia Commons/U.S. Navy



2016年10月5日水曜日

★インド向けUS-2販売で日本が柔軟性を示す構え



なかなか進まない商談にはインド側に問題があるようですが、本案件はなんとか成約させたいものです。ライセンス生産が可能なのかわかりませんが、ノウハウの詰まった同機の技術情報をどこまでブラックボックス化できるかが重要ですね。

Japan promotes 'flexible' US-2 sale to India

Jon Grevatt, Bangkok - IHS Jane's Defence Weekly
04 October 2016

  
インドは新明和US-2i水陸両用機を導入し、捜索救難用に運用したい考え。 Source: Japanese Maritime Self-Defence Force
  1. インド向け新明和工業US-2の価格で日本が柔軟な姿勢を見せており成約を狙う。
  2. 両国政府はここ数年に渡り同機販売を交渉中でインド海軍(IN)へのUS-2i12機の納入は総額16億ドル程度といわれる。
  3. 9月末に日本の防衛省広報官はIHS Jane'sに対しインド要求には「柔軟に」対応して成約を急ぐと述べている。柔軟性とは機体価格だけでなく、インド産業界を機体生産に関与させることも含む。
  4. ただし同報道官からはインドからUS-2i調達方針が明確に示されていないため商談が停滞していると明らかにした。INは完成機2機を新明和から導入し、残る10機はライセンス生産したいとの意向を示していた。
  5. 「日印防衛当局間では検討を急ぐことで合意している」と報道官は語っている。「ただし協力の具体的協議のためインド側が可能な限り迅速に調達方針を示すよう防衛省は期待している」
  6. また報道官は「インドが調達方針を決定次第、当方もインド側要望に柔軟対応し両国間協力を具体化していきたい」と述べている。
  7. US-2i輸出案件は2015年12月に両国間で合意されており、インド政府によれば「防衛装備・技術の移転」と関連し「機密防衛情報の保護」も盛り込まれている。■


2016年10月4日火曜日

★★日本が2030年代供用開始を狙う無人ウィングマン構想を発表



自動車で自動運転(自律運転ではありません)が意外に早く実現しそうで、航空機へも波及して装備庁が考えるロードマップは加速化されるのではないでしょうか。ただし、機体やエンジンの技術開発が追いつかないとアンバランスな機体になってしまいますから結局2030年代まで待つ必要があるのかもしれません。

Aviation Week & Space Technology

Unmanned Wingmen For Japan’s Piloted Force Planned For 2030s

Japan lays out a plan for pilotless combat aircraft to help fighters
Sep 23, 2016 Bradley Perrett | Aviation Week & Space Technology


無人ウィングマン構想

  1. 人工知能には航空戦闘での機体操縦は攻撃任務より難易度が高い。このため自律飛行可能な軍用機開発を目指す各国は対地攻撃任務から着手するのが普通だ。
  2. だが日本人にとって無人機による攻撃はあまりにも乱暴に聞こえるので、同国の防衛企画部門は一気に空対空の自動化を提案しているのだろう。この課題を実現すべく、有人戦闘機とともに飛行し、支援する高性能無人機の提案が浮上している。パイロットの指示を前提とする。機体は戦闘支援無人機またの名を無人ウィングマンと呼ばれ、まずセンサー搭載機材として前方を飛行し、その後攻撃任務を実施するはずだ。
  3. 機体はファミリー構成で2030年代に登場するとの技術ロードマップを防衛省の外局である防衛装備庁(ATLA)が発表した。防衛省は以前にも無人ウィングマン構想を検討していたが、今回はさらに前進させている。ロードマップには弾道ミサイル防衛用の機材も2030年代に供用開始するとある。
  4. 構想では無人機を五種類に分類し、まず二型式が最も簡単な構造で小型で運搬可能な見通し線外の通信用で日本はすでに供用中だ。三番目はまだ完成していないが、衛星通信の中継用の機材で米国にはジェネラルアトミックスMQ-1、MQ-9やノースロップ・グラマンQ-4の各種がこの任務を実施している。その後に控えるのが無人戦闘航空機で最後に長時間飛行用の軽量機や太陽光動力機がある。
  5. ATLAはこの内第三種と第四種に資源を集中配分するとし、優先順位がミサイル防衛と航空戦闘にあることがわかる。
  6. 同庁はこのうちBMD用途の無人機が武装するか明らかにしていない。むしろセンサー搭載機として2007年にテスト済みのエアボスシステムから赤外線探知機を派生させるようだ。ATLA作成のロードマップでは高高度長時間運用の機材に典型的な機体構造を示しており、極端に細い主翼とプロペラ推進式双発構造のようで、ボーイングが1980年代末に開発したコンドルに類似している。センサーは機首上部のタレットに搭載している。
  7. 防衛省技術研究本部(TRDI)が無人ウィングマン構想を検討開始してから少なくとも6年経過している。同本部はその後、2040年代に供用開始で、提国産新型戦闘機F-3の性能向上型と一緒に運用するとしていた。F-3初期型は2030年ごろに供用開始の見込みだ。
  8. ATLAは「高度自律飛行技術による無人ウィングマンがF-3で利用可能となるのは15年から20年後」と見ているが、2035年より前には実用化にならないだろう。と言うのは同庁が技術実証を2029年から2033年になるとの見込みを出しているからだ。F-3に無人ウィングマンとの共同運用に向けた改修が必要となる。
  9. 無人ウィングマンの最初の型式はセンサー機だろう。ATLA発表の概念図では戦闘機の前方を飛行し、データリンクを確立するとしている。この実現は15年から20年後だろう。
Japanese defense ministry concept of unmanned wingmen aircraft
防衛省が想定する無人ウィングマン編隊は敵ミサイルをおびき出し、敵標的を探知する Source: Japanese Defense Ministry

  1. 20年以上先に二番目の機種が同じ機体とエンジンを共有し武装運用可能な機体として登場するだろう。また20年後にはセンサー搭載型は敵ミサイルを吸収するスポンジの役目を果たすはずだ。センサー搭載型のウィングマンは敵ミサイルの価格を上回るので、敵ミサイルの命中を受けることは受け入れがたい。ATLAはスポンジ任務で敵攻撃を不調に終わらす構想で機体操縦制御とともに電磁対抗措置を活用する。
  2. ATLAは無人ウィングマンの構想図を二通り公表している。一つは広胴で主翼が胴体と一体化されており、45度から50度の後退角がつく。もう一つの構想図は全長が細長く、後退角は60度と高速機のようだが、機首近くについたポッドで抗力が大きく、ステルス性は乏しいようだ。レーダー搭載ポッドだろう。これは明らかにセンサー搭載専用機材だ。
  3. これに対し無人ウィングマンはF-3パイロットが制御しつつ、単独戦術行動が可能となるだろう。パイロットはおそらく一般的な指示で探査あるいは攻撃すべき場所を与えると無人機が自動的に最適行動をとるのだろう。また有人機では不可能な仕事もこなすと防衛装備庁は説明しており、人体が耐えられない高G操縦で敵ミサイル攻撃に対応できる。
  4. 探査から攻撃、さらに回避行動まで取らせるのは日本国外での無人機の発展と同様で人工知能技術の向上で飛行行動の選択肢の広がりを期待しているのだろう。
Japanese defense ministry concept of unmanned aircraft for ballistic missile defense.
弾道ミサイル探知用の無人機は2030年代に実用化されるとみられる。 Source: Japanese Defense Ministry

  1. Saabは選択式に有人操縦となるグリペンE/Fが現在の高度維持自動機能や自動航法から「基本航空移動性能」や離着陸まで自動化できるように進展するとの技術推移の姿を公表している。その後に同戦闘機は自律運用で基本飛行制御をこなし、編隊長(有人機)から一定の位置を維持したまま飛行できるようになる。この考えは日本が無人ウィングマンにセンサー任務を期待するのと同じだ。
  2. 次の段階にはSaabはローリングやルーピングのような高等操縦、さらに編隊長に合わせた戦術旋回飛行があるとしている。そして最終段階は最も困難な視程外戦闘で例としてクランキングやパンピングがある。日本も無人機による敵機攻撃や敵ミサイルをおびき寄せ回避する想定で同様の飛行性能を想定しているはずだ。
  3. 無人ウィングマンの動力、推進系の研究は2019年度(平成31年度)から始まる。日本がねらう技術は高びんしょう性、メタ素材(天然には存在しない特性)によるステルス性、機体の変形技術とバイスタティック方式レーダーだろう。
  4. このレーダー技術では送信機と受信する機体は別になるが、防衛装備庁は具体的な運用方法を述べていない。可能性としてはセンサー任務のウィングマンが発信し攻撃任務のウィングマンが受信役にまわるのだろう。有人機が受信するか、無人機の後方から安全に発信して無人機に気づかれないように接近させ敵撃墜を狙うことも可能だろう。
  5. F-3の作戦行動半径は無人ウィングマン機をはるかに上回りそうだ。センサー任務の無人機は大型機になるだろうが、運用上は戦闘空域の近隣で運用させるか、空中発射とすればよい。ATLAは2011年にジェット推進式無人機の開発を完了したと述べており、空中発射式で滑走路に着陸できるとしていた。F-15Jは二機を搭載でき、各機は自重750キロだ。
  6. 別の方法は空中給油をミッションごとに数回繰り返すことだ。疲労を覚えるパイロットがいないことで無人機は戦闘空域に何回も往復移動して短時間しか戦闘空域に留まれない欠点を補うのだろう。
  7. F-3構想の最新版は2014年に改定され長距離飛行と大武装を重視する一方で機敏な操縦性は犠牲にしている。
  8. F-15から発射する無人偵察機は富士重工業が製造し、日本では同社が無人機では主導的なメーカーだ。無人ウィングマンの製造でも同社が有利な立場になるとみられる。対抗する三菱重工業が戦闘機の製造では高い知見を有する。■


オーストラリア次期潜水艦建造でDCNS・ロッキード連合が開発契約交付を受ける


オーストラリア潜水艦選定問題ではストレスを感じた国内読者が多かったと思いますが、太平洋地区の重要なパートナー国のオーストラリア海軍の戦力整備は日本も関心を決して失っていては許されない問題です。引き続き、本問題の進展をフォローしていきます。


DCNS Satisfied With Australia's Pick of Lockheed for Sub Project

By: Pierre Tran, September 30, 2016


PARIS — DCNSがオーストラリ政府が同社およびロッキード・マーティンの設計契約を承認し、バラクーダ・ショートフィン1A遠距離攻撃潜水艦構想が前進することを歓迎する声明を発表。
  1. 「DCNSは第一段階契約がオーストラリア向け次世代潜水艦建造事業で締結に至ったことを歓迎し、ロッキード・マーティンが戦闘システム統合事業者として選定されたことも歓迎する」
  2. 設計および展開契約が調印されたことで事業着手に向かい、ロッキード社および現地業者との統合調整が開始されると同社は述べている。
  3. オーストラリア国防相マリーズ・ペインおよび国防産業相クリストファー・パインから9月30日に報道ではレイセオンが優勢といわれてきたものがロッキード・マーティンが選定されたと発表している。
  4. オーストラリア発表を受けて「長期間に渡るフランスの潜水艦部門での戦略的提携関係の大事な第一歩」とフランス国防相ジャン・イブ・ルドリアンも同日声明を発表している。
  5. DCNSの株式35%はタレスが保有しており、同社はソナー技術で独自の技術力を誇る。
  6. 「DCNSはオーストラリア政府、ロッキード・マーティン社ならびにオーストラリア国内産業界と長期に渡る戦略的関係を築くことに期待している」とDCNS会長兼CEOのエルヴェ・ジローは述べている。「今回の契約によりDCNSはオーストラリア向け次世代潜水艦建造の第一段階に進むことができる」
  7. 同社がインド向けに建造中のスコルペヌ型潜水艦の技術情報が漏洩した事件で国内メディアが表明した懸念は無関係とオーストラリアは主張するつもりなのだろう。
  8. フランス政府はDCNSを支援し、ドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズおよび日本政府が後押した三菱重工業・川崎重工業案を破り採用されている。■


A2/ADの用語を葬る米海軍


エアシー・バトルと同じくA2/ADの用語も過去のものとなるのでしょうか。米海軍は一般解よりも特定解を推奨するためにも足手まといになる用語を葬りたいのでしょうね。では中国を対象に構築する戦略をどう名付けるのでしょうか。さらに空軍他にも納得できる名称を低減できるのでしょうか。海軍作戦部長のお手並みに注目ですね。

CNO Richardson: Navy Shelving A2/AD Acronym

October 3, 2016 5:31 PM

160929-N-OT964-120 NORFOLK (Sept. 29, 2016) Chief of Naval Operations (CNO) Adm. John Richardson speaking at Naval Station Norfolk, Va. on Sept. 29, 2016. US Navy Photo
160929-N-OT964-120 NORFOLK (Sept. 29, 2016) Chief of Naval Operations (CNO) Adm. John Richardson speaking at Naval Station Norfolk, Va. on Sept. 29, 2016. US Navy Photo

WASHINGTON, D.C. — ペンタゴン用語の接近阻止領域拒否が各軍、軍事研究でかれこれ15年にわたり頻繁に使われている。だが海軍作戦部長のジョン・リチャードソン大将から海軍ではこの用語の使用を取りやめるとの発言が出てきた。

9月27日に米海軍協会とCSIS共催の海洋安全保障対話の中で同大将は海軍内ではA2/ADの表現の使用を控えさせると述べた。

「思考を明確かつ明瞭にするために...A2/ADは独り歩きしておりなんでもかんでもどこにでも誰にでも適用される言葉なのでもっといい表現に変える」

「課題は個別具体的で特定のものなので『一つで全部当てはまる』式の用語でミッションを表現すれば混乱を生むだけで、かつ明瞭でもない。代わりに戦略を論じるときは具体論で語り、対応する敵勢力との比較で能力についても論じていきたい。地理条件、作戦概念、技術内容の文脈の範囲内で語るべきだ」

特定の空域、陸地あるいは海域で敵の接近を拒否することは古典的な戦略であるものの、軍事上の概念として一般化した用語は1990年代末から登場し、2000年代初頭から略語として知られるようになった。これは精密兵器が敵側にも導入される中で米軍が直面する新しい脅威の表現だとブライアン・クラーク(予算戦略評価センター)は解説。

A2/ADの知名度が2000年代初頭に上昇したのはペンタゴンが中国の軍事力に注目したのが契機だ。

「長期に渡り中国が長距離精密攻撃能力を整備してきたことで西太平洋の軍事バランスが変動しはじめており、中国が次第に有利になれば中国がいつの日にか米同盟国側に侵略を試みることになりかねない」とアンドリュー・クレピネヴィッチとバリー・D・ワッツ共著のThe Last Warrior: Andrew Marshall and the Shaping of Modern American Defense Strategyにある。

それ以降クラークは「略語として多用され思ったより長く生き残った」という。

リチャードソン大将は誘導兵器や中国本土を取り巻く「赤い弧」での米軍の作戦が不可能となれば大変だと発言。
China's anti-access area denial defensive layers. Office of Naval Intelligence Image
China’s anti-access area denial defensive layers. Office of Naval Intelligence Image


「確かに新装備が普及してきていますが軍事上の課題はこれまでと本質的に変わりはありません」


「挑戦課題であることに変わりはありませんがA2/ADだけに目を奪われると次の課題を見失いかねません。根本的な変動がそこまで来ており、次の段階の競争競合が始まろうとしています」

その一例として「敵より優勢な地位を保つために何が必要か。世界中いかなる場所の状況がリアルタイムで監視可能でオンデマンドで画像が手に入る時代にです。これが間もなく実現しようとしています」登リチャードソン大将は述べた。

足手まといとなる用語を捨ててペンタゴンの活動を再構築することは決して新しい現象ではない。

昨年初頭に国防長官官房が論争を呼んだエアシー・バトル室の名称を変更している。同室にはA2/AD脅威をペンタゴン横断的に対応する策を考える役割が与えられていた。エアシー・バトルの新名称はグローバルコモンズ・アクセスおよび戦略各軍共用コンセプトJoint Concept for Access and Maneuver in the Global Commons (JAM-GC 発音ジャムジーシー)に改められ、同室は統合参謀本部に吸収されている。■