2021年9月15日水曜日

C-130とスカンクワークスの関係とは。輸送機に攻撃手段、センサーを搭載する分散戦術のねらいとは。

こういう柔軟な思考ができるのであれば米空軍の将来を悲観しなくてもよいでしょう。問題はその通りに実施する力であり、相手となる中国の動きに対しこの構想が有効なのかを実地で試す機会が生まれるかでしょう。米海軍でも輸送艦等も武装を施す分散武装の構想がありましたね。




ッキード・マーティンで有名なスカンクワークス部門はU-2スパイ機、F-22戦闘機や初のステルス機F-117ナイトホーク等の実現で有名だが、特殊部隊向けにC-130輸送機でも大きな役割を演じていることは意外に知られていない。


C-130とスカンクワークスの接点


C-130は半世紀以上前に登場し、以後一貫して性能を向上しつつ各種の改修を受けてきた。


空軍は既存航空機材の役割を見直し、ミッション範囲を拡大しようとしており、同機もその対象となっている、そのため新技術やソフトウェア改修を投入している。


ここにC-130とロッキードのスカンクワークスの接点がある。特に重要なのが他機との強い接続性を実現し、戦闘ニーズ、脅威情報、作戦要求を満たしながら、新技術の登場を待ち迅速に導入することだ。


「C-130も元々はスカンクワークスが手がけており、今日に至るまでスカンクワークスが新機能の統合で支援しており、第一線のニーズに焦点を合わせつつ、活用方法を全く新しく考えている」とスカンクワークス®の統合システム部長レネー・パスマンがNational Interestに語っている。


C-130が長期間供用されており、数々の改修を受けた機材であること、また空軍がミッション範囲の見直しをここ最近展開していることから、同機がスカンクワークスによる改修の対象になった。


スカンクワークスは1950年代設計の同機供用期間を80年

超とすべく同機に関与を続けており、改修内容は以下を含む。


  • 新型プロペラ

  • 通信装置

  • グラスコックピット、タッチスクリーン画面

  • デジタル式エイビオニクス

  • 衝突回避装置

  • 「ウィングボックス」強化型


C-130改修と相当基準時間の関係


C-130供用を続ける中で同機の改修がどこまで必要なのか見極めるべく、空軍は「相当基準時間」equivalent baseline hoursを指標として使う。


C-130機体の疲労、亀裂は機体ごとに異なり、さらにミッション内容でも大きな差が出てくるし、投入環境の地形や天候条件でも違いが生まれると空軍は説明する。



重要な補給物資、兵器、兵員の空中投下をミッションを過酷でハイリスク地で展開するC-130は低高度運用可能で滑走路が未整備の場所でも運用されることが多い。


空軍はC-130のエイビオニクス近代化事業を実施し、8.33無線機、コックピットにボイスレコーダー、デジタルデータレコーダーを追加した。


だが改修は搭載済み装備品にとどまらず、武装の搭載やミッション範囲の拡大を目指した内容にまで広がっている。


その例としてC-130から爆発物搭載のミニ無人機多数を展開し、一帯を圧倒する数で偵察や攻撃を加えたり、パレット貨物投下式の爆弾兵器を運用する構想がある。


輸送機が攻撃手段になる


空軍では戦闘機材の定義を更新しようと、輸送機にも爆弾、機関銃、ミサイル、攻撃用無人機運用を導入し、ミッション範囲をこれまでの輸送用支援機から拡げようとしている。


「従来型兵装品をこれまでと違う形で運用し、機動性機材の新しい任務を実現する。これまで通りの考え方を脱却し、高度な機動部隊に変身させる」と航空機動軍団司令ジャクリン・ヴァン・オヴォスト大将がミッチェル研究所のインタビューで語っている。


輸送機を武装化すれば敵の攻撃になるとの疑問に、ヴァン・オヴォスト大将は「今でも標的になっている。敵は給油機や輸送機を狙い、補給線を寸断しようとする」と答えている。DARPAのグレムリン構想ではC-130で無人機多数を発進させ、空中回収するが、ヴァン・オヴォスト大将は輸送機がスタンドオフ発射地点に留まれば攻撃機として機能でき、重度防御地点への攻撃が実現すると指摘した。


同様に大型でステルス性がなく、本来なら脆弱なC-130が「運動性脅威の有効射程外からスタンドオフ攻撃で無人機多数を運用しながら空中指揮統制機となる。


空軍ではパレットによる爆弾投下をC-130で試行しているが、ヴァン・オヴォスト大将の発言に新しい意味が含まれる。輸送機からミサイルを発射し対地攻撃ができるのではないか。


「SOCOM(特殊作戦司令部)のモデルに注目しており、JASSMを機体後部から投下する。いったん空中に放出してから点火し、標的を狙う」(ヴァン・オヴォスト大将)


C-130はフレア他対抗手段も装備しており、地対空ミサイル攻撃をかわし、前線基地での運用を想定する。では、爆弾投下や攻撃型無人機の指揮統制、さらに空中ミサイル発射機能を付与すればどうなるか。


センサー、攻撃用兵器


なかなか優れた発想だ、とヴァン・オヴォスト大将も認め、輸送機多用途機は今後も高度技術を駆使する大国相手の戦闘を想定し改良していくと述べた。


あらゆる機材が武装軍用機となり、センサー、EW兵器、耐以降手段や攻撃手段を搭載できる。ミッチェル研究所で、ヴァン・オヴォスト大将は航空機動軍団はこれからも輸送機、多用途機の共同マルチドメイン戦への活用を目指し改良を続けると述べた。


「考え方を変える必要がある。今は中心をハイエンド戦に移す段階にある。機動力だけの実現では不十分で、共同部隊の戦力を充実させるべきだ。体制を整え、将来に備える。従来の枠組みを超えた考え方が必要だ」


例としてヴァン・オヴォスト大将は空対地兵器を輸送機に搭載する、攻撃型無人機をC-130やC-17に搭載し、爆弾投下する案に触れ、空中指揮統制機能を持たせるとも発言。


「C-17の各種アンテナを使える。機体の大きさ、重量、出力ともに有効活用できる。ポッドにC2機能を任せ、データ処理し発信する」という。


スカンクワークスは将来を見据えた基本研究や技術革新で有名だが、同時に既存装備に新技術を搭載し、機能を向上させる対策も展開している。ここから空軍がC-130武装化に大きく踏み出している理由がわかり、空対空、空対地ミサイルの運用も同機で実現しそうだ。■


Skunk Works Keeps C-130 War Ready: Here's How

The Lockheed Martin Skunk Works team created the U-2 Spy Plane, F-22 and C-130

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN

UPDATED:SEP 9, 2021ORIGINAL:SEP 9, 2021




 

(再出)西太平洋第一列島線で大型原子力潜水艦の代わりに小型ディーゼル艦を多数建造すべきか。ヴァージニア級の延長戦のフルスペック原子力潜水艦構想に一石を投じる

 







米海軍はフルスペックの大型艦を次期攻撃型潜水艦として想定しているようだが....

 

 

海軍はヴァージニア級の後継となる攻撃型潜水艦の企画を開始した。

 

SSN(X)の呼称で2030年代初頭の建造開始を想定し、既存艦の延長ではなく画期的な新型艦とすべきとジェイムズ・ホームズ(米海軍大学校教授)が解説している。

 

新型艦は小型になる可能性がある。無人潜航艇と共同作戦を展開する可能性もある。原子力推進にならない可能性もある。米海軍がディーゼル電気推進型艦を導入するとこれまでにない戦略戦術の可能性が開く。

 

ホームズは「超長距離精密攻撃手段、無人航空・水上・水中装備の登場で海軍力に大きな変革が進みつつある。さらに地上部隊が対艦攻撃能力を獲得したことも変化の要因だ。潜水艦戦も革命的な変貌から例外ではない」

 

 

米海軍は現在65隻の潜水艦を保有する。すべて原子力推進だ。うち14隻のオハイオ級弾道ミサイル潜水艦「ブーマーズ」は新鋭コロンビア級12隻に交代する。

 

オハイオ級では最古参4隻が巡航ミサイル潜水艦に改装されており、2030年代以降に「大ペイロード潜水艦」と交代する。

 

その他には1980年代建造のロサンジェルス級下攻撃型潜水艦35隻、1990年代のシーウルフ級攻撃型潜水艦3隻、ヴァージニア級攻撃型潜水艦13隻がある。2017年時点で米海軍はヴァージニア級の設計変更をしたうえで2040年代末まで同級の建造を続けるとしていた。

 

だが2019年版の米海軍30年建艦計画ではこれが修正されており、ヴァージニア級の改良ではなく完全新型艦SSN(X)を建造するとある。新型艦の就役開始を2034年とし、シーウルフ級、初期ヴァージニア級と交代する。その時点でロサンジェルス級は全艦退役している。

 

SSN(X)はヴァージニア級(8,000トン)より大型になると言われ、9,000トンのシーウルフに近い艦容とされる。「海軍は次世代攻撃型潜水艦を高速、ステルスに優れ、ヴァージニア級を上回る魚雷本数を搭載すると説明している」と議会予算局資料(2018年10月)にある。

 

だが、これはまずい考え方だとホームズは指摘する。「今ちゃんと動いているものを改良するほうがよい。ヴァージニア級、シーウルフ級はともに攻撃型潜水艦として性能は実証ずみだ。そのためSSN(X)は現行艦の改良型になる。だが新型艦は米国の海洋戦略に適合すべきであり、特に作戦環境に最適化すべきだ」とし、以下述べている。

 

 SSN(X) は海軍がこれからの戦場と位置付ける「限界海域」marginal seasでの作戦を想定する。つまり、ユーラシア大陸外縁部であり、新型潜水艦はこうした海域での作戦遂行を求められる。

 

米軍事戦略として第一列島線で「チェーンの締め上げ」つまり中国の動きを抑止し、圧力を加える事態を想定しよう。米国・同盟国所属の潜水艦部隊がこの戦略の先鋒となる。中国の水上艦潜水艦の航行を阻止する手段として、魚雷、ミサイルを搭載した潜水艦が列島線を遊弋する潜水艦以上の選択肢はない。

 

そうなると潜水艦の設計では任務で必要となる機能を問い直す必要がある。不必要な性能はこの際無視すべきだ。

 

列島線海域で運用する潜水艦は小型でよい。ヴァージニア級は大きすぎる。シーウルフは論外だ。あるいはディーゼル電気推進式でもよい。または原子力推進でもコストを下げる必要がある。日本あるいはフィリピンに配備する潜水艦は常時潜航する必要はない。短期間で基地に戻れる。

 

新方式の推進力を既存艦に搭載する国もある。発注元の意図があれば米国内建造所もその実現を図るのは間違いないだろう。米潜水艦部隊が全隻原子力推進でいいのかを真剣に問うべき時期に来ている。

 

小型通常型推進方式の潜水艦を導入すれば副次効果が期待できる。大型原子力推進艦より建造費が低くなることだ。

 

ヴァージニア級建造は年二隻のペースで進められ、攻撃型潜水艦の減少を食い止めようとしている。2016年12月に海軍は攻撃型潜水艦66隻が必要と試算していた。だが攻撃型潜水艦部隊はこのままでは2028年に42隻に減少する。

 

「減少分を補う新型艦の建造が間に合わない」と米海軍作戦副部長だったビル・メッツ中将は上院でこう発言していた。

 

米海軍が小型艦による戦術構想を完成させ、利点を活用できれば、戦力が縮小しても水中戦で優位性を維持する道が開ける。ディーゼル電気推進方式艦の建造費は原子力艦よりはるかに安価ながら短期間で多数の建造が可能となる。

 

新型小型艦部隊が水中ロボット装備とともに展開すれば中国の西太平洋での野望を食い止める有望な手段となろう。

 

ホームズは「SSN(X)をそのまま今後も活用する見込みは暗い。では水中戦の主力を現行の潜水艦のままとするのか、新しい状況に合わせた新規の水中部隊を編成するのかが問われる。SSNsが無人装備と連携運用されれば、単独で行動する現在の運用効果と全く違う結果が期待されよう」と述べている。■

 

 

Smaller Submarines Might be the Answer the the Navy's Problems

by David Axe 

September 14, 2021  Topic: Submarines  Blog Brand: The Reboot  Tags: U.S. NavyMilitaryTechnologyNavySubmarines

 

                Image: Flikr.

西太平洋第一列島線で大型原子力潜水艦の代わりに小型ディーゼル艦を多数建造すべきか。ヴァージニア級の延長戦のフルスペック原子力潜水艦構想に一石を投じる


米海軍はフルスペックの大型艦を次期攻撃型潜水艦として想定しているようだが....

 

 

海軍はヴァージニア級の後継となる攻撃型潜水艦の企画を開始した。

 

SSN(X)の呼称で2030年代初頭の建造開始を想定し、既存艦の延長ではなく画期的な新型艦とすべきとジェイムズ・ホームズ(米海軍大学校教授)が解説している。

 

新型艦は小型になる可能性がある。無人潜航艇と共同作戦を展開する可能性もある。原子力推進にならない可能性もある。米海軍がディーゼル電気推進型艦を導入するとこれまでにない戦略戦術の可能性が開く。

 

ホームズは「超長距離精密攻撃手段、無人航空・水上・水中装備の登場で海軍力に大きな変革が進みつつある。さらに地上部隊が対艦攻撃能力を獲得したことも変化の要因だ。潜水艦戦も革命的な変貌から例外ではない」

 


 

米海軍は現在65隻の潜水艦を保有する。すべて原子力推進だ。うち14隻のオハイオ級弾道ミサイル潜水艦「ブーマーズ」は新鋭コロンビア級12隻に交代する。

 

オハイオ級では最古参4隻が巡航ミサイル潜水艦に改装されており、2030年代以降に「大ペイロード潜水艦」と交代する。

 

その他には1980年代建造のロサンジェルス級下攻撃型潜水艦35隻、1990年代のシーウルフ級攻撃型潜水艦3隻、ヴァージニア級攻撃型潜水艦13隻がある。2017年時点で米海軍はヴァージニア級の設計変更をしたうえで2040年代末まで同級の建造を続けるとしていた。

 

だが2019年版の米海軍30年建艦計画ではこれが修正されており、ヴァージニア級の改良ではなく完全新型艦SSN(X)を建造するとある。新型艦の就役開始を2034年とし、シーウルフ級、初期ヴァージニア級と交代する。その時点でロサンジェルス級は全艦退役している。

 

SSN(X)はヴァージニア級(8,000トン)より大型になると言われ、9,000トンのシーウルフに近い艦容とされる。「海軍は次世代攻撃型潜水艦を高速、ステルスに優れ、ヴァージニア級を上回る魚雷本数を搭載すると説明している」と議会予算局資料(2018年10月)にある。

 

だが、これはまずい考え方だとホームズは指摘する。「今ちゃんと動いているものを改良するほうがよい。ヴァージニア級、シーウルフ級はともに攻撃型潜水艦として性能は実証ずみだ。そのためSSN(X)は現行艦の改良型になる。だが新型艦は米国の海洋戦略に適合すべきであり、特に作戦環境に最適化すべきだ」とし、以下述べている。

 

 SSN(X) は海軍がこれからの戦場と位置付ける「限界海域」marginal seasでの作戦を想定する。つまり、ユーラシア大陸外縁部であり、新型潜水艦はこうした海域での作戦遂行を求められる。

 

米軍事戦略として第一列島線で「チェーンの締め上げ」つまり中国の動きを抑止し、圧力を加える事態を想定しよう。米国・同盟国所属の潜水艦部隊がこの戦略の先鋒となる。中国の水上艦潜水艦の航行を阻止する手段として、魚雷、ミサイルを搭載した潜水艦が列島線を遊弋する潜水艦以上の選択肢はない。

 

そうなると潜水艦の設計では任務で必要となる機能を問い直す必要がある。不必要な性能はこの際無視すべきだ。

 

列島線海域で運用する潜水艦は小型でよい。ヴァージニア級は大きすぎる。シーウルフは論外だ。あるいはディーゼル電気推進式でもよい。または原子力推進でもコストを下げる必要がある。日本あるいはフィリピンに配備する潜水艦は常時潜航する必要はない。短期間で基地に戻れる。

 

新方式の推進力を既存艦に搭載する国もある。発注元の意図があれば米国内建造所もその実現を図るのは間違いないだろう。米潜水艦部隊が全隻原子力推進でいいのかを真剣に問うべき時期に来ている。

 

小型通常型推進方式の潜水艦を導入すれば副次効果が期待できる。大型原子力推進艦より建造費が低くなることだ。

 

ヴァージニア級建造は年二隻のペースで進められ、攻撃型潜水艦の減少を食い止めようとしている。2016年12月に海軍は攻撃型潜水艦66隻が必要と試算していた。だが攻撃型潜水艦部隊はこのままでは2028年に42隻に減少する。

 

「減少分を補う新型艦の建造が間に合わない」と米海軍作戦副部長だったビル・メッツ中将は上院でこう発言していた。

 

米海軍が小型艦による戦術構想を完成させ、利点を活用できれば、戦力が縮小しても水中戦で優位性を維持する道が開ける。ディーゼル電気推進方式艦の建造費は原子力艦よりはるかに安価ながら短期間で多数の建造が可能となる。

 

新型小型艦部隊が水中ロボット装備とともに展開すれば中国の西太平洋での野望を食い止める有望な手段となろう。

 

ホームズは「SSN(X)をそのまま今後も活用する見込みは暗い。では水中戦の主力を現行の潜水艦のままとするのか、新しい状況に合わせた新規の水中部隊を編成するのかが問われる。SSNsが無人装備と連携運用されれば、単独で行動する現在の運用効果と全く違う結果が期待されよう」と述べている。■

 

 

Smaller Submarines Might be the Answer the the Navy's Problems

by David Axe 

September 14, 2021  Topic: Submarines  Blog Brand: The Reboot  Tags: U.S. NavyMilitaryTechnologyNavySubmarines

 

2021年9月14日火曜日

北朝鮮が発射テストに成功した巡航ミサイルで判明している事項をまとめた。核兵器を搭載できるかが今後のカギになりそう。探知困難な巡航ミサイルの登場で日本の防衛体制に新たな課題が追加された。

 


 

上発射の巡航ミサイルを北朝鮮国営通信KCNAは「大きな意味のある戦略兵器」と表現し、テストは成功裏に終わったと報じた。新型巡航ミサイルは北朝鮮が開発してきた各種ミサイルの系譜にあらたな追加となり、低空を飛翔するスタンドオフ兵器として同国に新たな攻撃力を提供する存在になる。南朝鮮各地のみならず日本まで射程に収めそうだ。「戦略級」とは核兵器を指す用語だ。

 

KCNA報道では土曜日から日曜日にかけ型式不詳の巡航ミサイル数種類を試したとあり、北朝鮮のミサイル開発では去る3月に短距離弾道ミサイルのテスト以来となった。

 

 

 

北朝鮮国営通信の説明では今回の巡航ミサイルは930マイルを飛翔してから北朝鮮領海内に落下したとあり、飛翔時間は126分におよび、「楕円、八の字状の飛翔経路」を飛んだとある。新型兵器開発の所要期間は2年間以上と伝えられる。

 

KCNA配信記事では週末のテストで「わが国の安全を高い信頼度で保証する抑止手段がさらに追加されたことは戦略的に意義があり、敵対勢力の軍事活動を強く封じ込める」機能が実証されたとある。

 

北朝鮮労働党の公式労働新聞に掲載された写真二枚ではトラックに搭載した移動起立発射機(TEL)からミサイルを発射した場面と、巡航飛翔するミサイルの姿が見える。見たところロシアのKh-55系の巡航ミサイルにとくに尾部が酷似しているし、全体としては米トマホークに似ている。

 

これに対し米インド太平洋軍(UNINDOPACOM)は簡潔な声明文を発表した。

 

「DPRK(北朝鮮)が巡航ミサイルを発射したことは承知している。状況を注視しつつ、同盟国協力国と密接に協議していく。今回はDPRKが軍事力開発を進めている現況を改めて示した。また同国の動きは周辺国や国際社会へ脅威となっている。米国は大韓民国並びに日本の防衛への責任を今後も堅持する」

 

日本では加藤勝信官房長官が政府は今回報道された事態を「憂慮している」とし、米国、南朝鮮と密接に対応し状況の把握に努めると述べた。南朝鮮も米国と協力して状況を解析すると述べた。

 

これまで出ている報道内容と写真から今回の巡航ミサイルは戦略任務用で核弾頭搭載可能と思われる。そのため北朝鮮が初めて開発に取り組む装備品となり、今回公表されたのだろう。

 

ただし、北朝鮮が核兵器の小型化にどこまで成功しているのか不明だ。これまで核弾頭の小型化に取り組むとの報道がたびたび出ているが、巡航ミサイルの弾頭部分は相当小さくここまでの小型化となるのと容易ではない。昨年10月の軍事パレードでは中距離対地攻撃型巡航ミサイルの姿が見られ、1月にも再度姿を目撃されて、トレーラーでけん引されていた。ただし、今回の発射に関連して同時発表の写真では改良型TEL車両が見えるが、以前目撃されていた大口径誘導ミサイル用の車両と関連があるようだ。発射管やアクスルに違いがあり、発射管は以前は4本だったが今回は5本になっている。

 

金正恩は今年一月に「中距離巡航ミサイル」を開発したと労働党大会で発表していた。

 

今回の巡航ミサイルテストの発表のタイミングは米国、南朝鮮、日本の代表が北朝鮮の核開発阻止の行き詰まりを東京で協議しようとする前という巧妙な計算の上に実行された。核兵器開発中止の代償として制裁措置を解除する期待での米朝会談は2019年からとん挫したままだ。

 

週末のミサイルテストが米韓軍事演習への対抗として実施された可能性もある。労働党中央委員会副部長の金与日は米韓演習を「危険な戦争に向けた演習」であり、「状況をさらに不安定にする」と非難していた。

 

1月にも北朝鮮は巡航ミサイル試射を行っており、ジョー・バイデンの大統領就任直後だった。ただしこの時のミサイルに核兵器運用能力がないのはあきらかで、ロシアのKh-35対艦ミサイルが原型といわれる。

 

北朝鮮の通常弾頭巡航ミサイル開発には制約はない。これは国連安全保障理事会決議(UNSCR)でも明らかだ。核弾頭を搭載した巡航ミサイルはUNSCR決議違反になるのかで議論の余地がある。ただし、UNSCR決議はそもそも核兵器運搬手段をすべて禁止しているという解釈が一般的だ。

 

核交渉がとん挫し、北朝鮮は核兵器開発を全面的に進めており、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射式弾道ミサイル(SLBM)が相次いで登場した。さらに国際原子力エナジー機関(IAEA)から北朝鮮が原子炉運転を再開したとの発表が先月出ている。同原子炉は核兵器用のプルトニウム生産が目的といわれる。

 

北朝鮮が本当に核搭載対地攻撃用巡航ミサイルを開発しているのなら、弾道ミサイルと並び重要な攻撃能力が新たに生まれることになる。巡航ミサイルの飛翔速度は弾道ミサイルより低いが、移動し隠すことは簡単で、かつ発射の探知は困難だ。また、誘導装置に左右されるが、巡航ミサイルは敵防空網を突破する可能性が高い。この種の兵器には防空指令所や通信施設、ダム、橋梁など重要標的の攻撃を想定することが多い。さらに大型艦船を狙うこともあり、米国や同盟国にとって防衛が頭痛の種だ。

 

武力衝突シナリオでは巡航ミサイルで敵防衛体制を飽和させる想定があり、突如として多方向からミサイルを大量に撃ち込む。しかも巡航ミサイルが通常弾頭なのか核弾頭付きなのか不明のため、混乱が拡大する。高機動性の北朝鮮巡航ミサイルが多数あれば、本来なら北朝鮮を無力化する南朝鮮空軍部隊の相当の部分を釘付けにできる。

 

核弾頭付きの巡航ミサイルを発射すれば北朝鮮に新たな優位性が生まれる。ただし、北朝鮮が弾道ミサイル攻撃の最終段階で核装置を起爆できるのか不明だ。超高速度のまま複雑な手順をぬかりなく進める必要があるからだが、巡航ミサイルではこの複雑さは不要となる。

 

さらに実用に耐える対地攻撃巡航ミサイルなら他の用途も可能となる。なかでも海軍用あるいは空中発射式への転用が考えられる。海軍では水上艦や潜水艦からの発射が想定される。

 

一方で南朝鮮で北を攻撃可能な兵器の開発が続いている。先週も南朝鮮がSLBMの水中発射実験に初めて成功したとの発表があったばかりだ。

 

南朝鮮軍に核装備はないが、北との開戦シナリオでは弾道ミサイル、巡航ミサイル、空中発射式ミサイルを運用するとある。南朝鮮の玄武-3巡航ミサイルは地上基地あるいは海上から発射が可能となっている。長射程型の玄武-3Cは930マイル有効といわれ、今回北朝鮮が発表したミサイルに匹敵する。

 

そうなると朝鮮半島では南北が巡航ミサイルを装備しての均衡が生まれ、核兵器を搭載すれば新展開となるが、相当の影響を生みそうだ。まず、行き詰まっている北との核協議への影響が注目されるし、米国が北朝鮮の戦略級兵力の整備にどう対応するかも今後の関心事だ。■

 

Everything We Know About North Korea's New “Strategic” Cruise Missile Test

A nuclear-armed cruise missile could significantly enhance the credibility of North Korea’s nuclear deterrent.

BY THOMAS NEWDICK SEPTEMBER 13, 2021

 

Contact the author: thomas@thedrive.com


ヘッドラインニュース 2021年9月14日号

 北朝鮮が新型巡航ミサイルの開発に成功

巡航ミサイルは国連制裁の対象ではないため、北朝鮮が制裁に違反したことにならないが、六カ月で初の新型ミサイルの登場となった。北朝鮮発表によれば同ミサイルは1,500キロ飛翔して所定の標的に命中した。テストは週末にかけて行われた模様。北朝鮮は米国が韓国向けミサイル性能制限を解除したことを警戒しており、韓国もSLBM発射に成功しており、朝鮮半島でミサイル開発競争のピッチがあがっている。



カザフスタンがエアバスA400Mを2機発注

カザフスタンの発注でA400M導入国は9か国、発注合計は176機になった。初号機は2024年に同国へ引き渡される。



インドネシアがC-130Jを導入

インドネシア空軍参謀総長がロッキード・マーティンのマリエッタ工場を9月7日視察し、同国がC-130Jスーパーハーキュリーズを調達することを公式に認めた。調達機数は公表していないが5機との予想がある。調達方法が民間商取引形式のため、これまで事実関係は公表されていなかった。インドネシアは初期型C-130Bを1960年代初期に導入しており、これまで長期間の供用を続けている。


台湾の新年度国防予算案

予算規模は170億米ドル。海軍関係の主な調達事業は①MQ-9Bシーガーディアン(空軍)でISRとともに攻撃能力の獲得(4機) ②康定(PFG-1202 Kang-Ding) 級フリゲート艦6隻の防空能力改良が目玉。後者ではSea Sword II (海劍二,TC-2N)ミサイルへ換装する。➂MH-60R対潜ヘリ10機の調達。④Wuchiu (烏坵) 基地の改修。同基地は金門島にあり、中国漁船の侵入に耐えかね、これまで手を入れてこなかった同基地の整備を進め、哨戒、輸送等の任務施設を拡充する。


新型練習機T-7の進捗遅れを米空軍が認める

ブラウン空軍参謀総長はT-38タロンの後継機となるT-7レッドテイルの主翼で「ロック」不良が見つかり、制御不能となるロールが発生する不具合が出ていると述べた。このため同機は本格生産に入る前の「マイルストーンC」がまだ達成できていない。量産決定は2023年へと当初より1年以上遅れる。


F-35向け新型エンジン検討が必要と米空軍が主張

ブラウン空軍参謀総長はたとえ実現しないとしても新型エンジンへの研究開発予算の投入が必要と強調。研究成果から原稿エンジンの運用効率改善の技術的知見も期待できると述べた。米議会からもF-35Aエンジンの改良見通しで説明を求めれており、ジェネラルダイナミクス、プラット&ホイットニーの両社が関係してくる。結果として現有F135エンジンの改良も可能となれば効果は大きいと空軍は見ている。


在日海兵隊航空戦力に二番目のF-35B飛行隊誕生

第一海兵航空団は海兵戦闘攻撃飛行隊242(VMFA-242、バッツ)がF-35Bで初期作戦能力を獲得したと発表。F/A18Dからの機種転換開始後、10カ月で作戦投入可能な状態になった。岩国基地にはVMFA-121、グリーンナイツが2017年から配備されている。VMFA-121はEABO 遠征航空基地運用の演習を展開している。


米海兵隊にMQ-9飛行隊が発足

海兵隊のMQ-9Aリーパーがユマ海兵隊航空基地(アリゾナ)で初飛行した。海兵隊がISR無人機を運用する第一歩となる。海兵隊は同機運用に備え、準備を進めてきた。これまでは民間企業に運用を委託してきた。だが民間企業では作戦実施に制約があり、海兵隊独自の利用に切り替える。新編成の飛行隊名称はVMU-1となる。


2021年9月13日月曜日

環球時報に見るCCPの思考。中国の脅威を騒ぎ立てる日本は憲法改正を狙い、域内の平和安定を乱すのは日本の右翼勢力だ(?!)

 環球時報の報道ぶりを見ればCCPの考え方がどれだけねじているかがわかります。領海侵入しているわけではないから文句を言われる筋合いはない、という強弁とともに、不遜な考え方、さらに日本で中国に対し騒ぎ立てているのは右翼勢力だとの主張を聞くと、親中派とされる自民党はじめ各界の「進歩的勢力」による鎮静化を期待しているのかなと思えてきます。高市候補が当選しては困る、というのでしょう。ならば喜んで右翼のレッテルを中国に貼られたいものです。

  

 

ご注意 この記事はCCP見解を代弁する環球時報英語版の趣旨を伝えるものです。当ブログの主張ではありません。部分は筆者によるものです。

 

9月12日日曜日、日本の防衛省から中国所属とみられる潜水艦が日本領海に接近したとの政治的な発表があった。

 

この背景に「中国の脅威」を騒ぎ立てたい日本の隠れた動機があり、同国の平和憲法を破る口実を模索している、と中国軍事専門家は指摘している。

 

AP通信は日本が南方領域で東シナ海に向かう潜水艦を探知したと9月12日に伝えた。

 

防衛省は052D誘導ミサイル駆逐艦一隻も付近にいたことから中国艦と断定したとAP電は伝えている。ただし、潜水艦、駆逐艦ともに日本領海に侵入していない。

 

中国の東シナ海での軍事活動へ日本神経をとがらせていることがわかるとAPは伝えている。

 

同海域での軍事活動に関し中国から発表はないが、一部中国筋から潜水艦の国籍を断定していない日本による推定に疑問の声が出ている。

 

国際法によれば、水上艦潜水艦ともに国際公海で自由に航行できる。したがって仮に中国軍艦だったとしても日本領海の外の航行に何ら問題はないと、中国軍事専門家Song Zhongpingは環球時報に解説している。

 

Song によれば日本が中国の海軍活動に目くじらを立てるのは「中国の脅威」を作り出し、平和憲法改正のきっかけにするためだという。

 

日本は人民解放軍の活動が活発になっていると繰り返し報道しており、ここ数週間だけでもPLA艦艇部隊が宮古海峡、対馬海峡、宗谷海峡を通過したと騒いでいるが、三地点とも国際公海である。

 

日本が発表した最新の防衛白書では台湾島の安定に初めて触れ、釣魚諸島の状況について騒ぎ立てている。台湾、釣魚ともに中国の領土である

 

日本はベトナムと防衛装備供与の合意を9月12日に結び、東シナ海、南シナ海双方で中国へ対処を狙っているとAPが同日伝えている。

 

中国軍備管理軍縮協会の上級顧問Xu Guangyuは環球時報に対し、日本の右翼勢力を抑えることが域内の平和安定につながると述べている。一方で、日本の軍事挑発行為にはいちいち神経を尖らせる理由は中国にないとし、その理由として日本には選挙含む国内課題があることを上げている。さらに、PLAは惑わされることなく対応力を整備していることもXuは指摘している。■

 

Japan hypes suspected Chinese submarine activity 'in attempt to break pacifist constitution'

By Liu Xuanzun

Published: Sep 13, 2021 12:06 AM