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2020年米国防力の現況 ②陸軍

米陸軍の現状:「大変革」を2020年に実現したいが、中東の緊張のため超大国間競合への対応準備が遅れそう。
 ず、郎報から。米陸軍の状況は一年前から好転している。まず、隊員採用で定員割れがなくなった。また部隊は十分な装備で柔軟運用をめざしており、まさしくマーク・ミリー統合参謀本部議長が陸軍参謀長在任中に思い描いた姿だ。だが、実現まで長い道のりとなり、「超大国間交戦」を太平洋地区で想定する国家国防戦略構想へ準備が整うのはまだ先の話だ。
その理由として陸軍が特殊旅団「保安部隊補助旅団」SFABsの整備を続けていることがある。SFABは世界各地の危険地帯展開を目的とし、六個部隊整備が目標だ。中央軍、南方軍、欧州軍、インド太平洋軍、アフリカ軍へ各一個配備する。これまで三個旅団が整備され、アフガニスタンへ派遣中だが、損耗が厳しい。だがこれも変わる。第一SFABの任務をアフリカ軍が引き継ぐと陸軍が発表している。
次は中国の裏庭への配備だ。国家安全保障戦略の「超大国」想定立案に歩調をあわせ、陸軍長官ライアン・マッカーシーは太平洋地区のSFABが早ければ今年10月に発足し、ワシントン州フォートルイスの第5SFABから顧問団がインド太平洋軍に加わり、その後フル装備の旅団が移動すると1月に発表している。まだ不明な点が多いが、戦闘部隊であることに変わりない。アフリカ、欧州、南アメリカ向けSFABが完全稼働を開始する日程について言及はない。
いずれにせよ、「SFABがアフリカや欧州想定の配備でもそのままアフガニスタンに展開するわけではない」とマッカーシー長官は述べ、「一部地域で戦力増強すれば別地域の部隊をもってこざるをえず、対象部隊の指揮官に不満が生まれるが、必要な場所に必要な部隊を投入せざるを得ない」
有事の場面に投入されるのはSFABだけではない。101空挺師団の第3旅団戦闘チームがケニアに派遣されたのは1月5日のアル・シャバブによる米軍基地襲撃のためだ。同部隊はアフリカ軍に編入され危機対応にあたった。別のグローバル即応部隊がクウェートにあり、3,500名の第82空挺師団隊員が中央軍区域に1月3日のイランのカセム・ソレイマニ将軍殺害のあとに進駐している。
最近の配備では隊員は私物のラップトップコンピュータや携帯電話の持参を許されていない。陸軍はマルチドメイン作戦として作戦立案・実施を宇宙、サイバー、空、海さらに陸軍の本来の活躍場所陸上を横断して実施している。すべてミリー大将が2018年に著した「ロシア、中国が戦略面競合により軍事指導教義や作戦面の分析で新技術を導入している...そのため米国の戦闘方式も進化が必要」との背後にある2028年までに戦闘のあり方を一変させる主張があり、野心的な目標だが、ミリーは「教義上の進化で最初の一歩となる」としていた。
新参謀長ジェイムズ・マッコンヴィル大将によれば今後待ち構える変革はダイヤル電話がiPhoneに変わるのと同様だという。マッコンヴィルは陸軍協会主催の講演でこのたとえを紹介し、2028年までにサイバー軍という名称を情報戦軍に変えると述べた。「武力衝突と別の次元で対抗するため」だという。
陸軍が2019年に掲げていた優先目標に有効射程の拡大、防空能力の向上があったが、一年経っても題目の域を脱していない。だがマッコンヴィル大将は「まもなく500キロ先から敵へ攻撃できる能力が確立できると確信している」と述べ、実現は早くて2023年とし、極超音速ミサイルの導入も示唆した。
「画期的な変革で今後の課題を克服し、自信を持って対応できる」「これで競合できる。抑止力にもなる。必要ならこれで将来の戦場で勝利できる」(マッコンヴィル)
太平洋地区での米陸軍運用を根本的に変えるため巨額予算を投じる。これが原因で陸軍長官、海軍長官で意見対立につながった。中国の玄関口で抑止効果を生み、戦闘の主導権を握るのはどちらかが論点だった。
「陸軍は前世紀に世界各地で陸上戦3例に携わった」「最大の抑止力は世界各地で同盟国と肩を並べ地上に配備した部隊であり、その効果はヨーロッパで実証ずみだ。また同じ効果を東アジアで今年拡大する」とマッカーシー長官は述べている。
一方で陸軍の課題は以下の諸点だ。
  • 武力衝突やミサイル攻撃を想定したイラン付近米防空部隊をいつまで配備するのか
  • イラク国会はソレイマニ殺害を受けて決議した米部隊の国外退去は現実になるのか。
  • ホワイトハウスはアフガニスタンのタリバンと協定を成立させるのか。
  • 2020年にアフリカでの米プレゼンスは減らされるの
  • 米韓交渉が決裂しても在韓米軍約17千名は来年にかけ現地にとどまれるのか
  • メキシコ国境地帯に展開中の数千名規模隊員はいつ原隊復帰できるのか

この記事は以下を再構成したものです。
The State of Defense----Army

By Ben Watson

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