何度も当ブログに登場しているデプチュラ中将(退役)(現ミッチェル研究所所長)の寄稿文です。砂漠の嵐作戦の成功を体験しているだけに、その後アフガニスタン、イラク戦での地上作戦を見て、憤懣やるかたないのかもしれません。イランと開戦になる場合ではこれを避けなければならないと筆をとったようです。米国の航空宇宙戦力がここまで威力を発揮でき、ロシアや中国が干渉しなければ確かにこの成果は実現できそうですが、現実にはイランを内部崩壊させるほうが戦略としては賢明なのではと思います。
砂漠の嵐作戦でクウェートの石油油田が燃える上空を飛ぶF-16A, F-15CF-15Eの各機。2020年1月17日は砂漠の嵐作戦から29周年目となった。近代戦の転回点となったのが砂漠の嵐作戦であった。
米国とイラン間で敵意が高まる中、米国の権益を危険かつ不確実な世界で守るため軍事装備への資金投入の必要が高まっている。とくに第5世代機のF-22、F-35、今後登場するB-21爆撃機が中心だ。各機は米国に異次元の優位性を与え、兵力投射を容易に実現させてくれる存在だ。
イラン軍の戦力から作戦環境で困難な事態が生まれる。イランに軍事大国と直接対決で勝利した事例はないものの、各種装備に資金を投入し、有事の際には敵に相当の損傷を与える覚悟だ。中距離弾道ミサイルの整備も進めており、巡航ミサイル、遠隔操縦機、通常型戦闘機材に加え、サイバー戦の準備もある。イランは防衛面でも地対空ミサイルの更新など着実に戦力整備しており、軍事作戦の鍵を握る指揮統制施設、核研究施設やミサイル発射指揮所を分散させている。
イランと開戦になった場合の状況を明確にしておこう。米国はアフガニスタンやイラクで戦略を誤り戦闘が19年の長きにわたり展開した。数十万規模の地上部隊を派遣し、数年間も占領し、国家再建とゲリラ掃討作戦を展開した戦略はイランにはあてはまらない。むしろ1991年の砂漠の嵐作戦をモデルにすべきであろう。航空戦力を投入して43日間で集結した。うち地上部隊によるクウェート奪回に要したのは4日間にすぎなかったが、イランの場合はこの地上作戦は不要だ。米地上部隊の展開の必要はない。中東に駐留する米地上部隊がイランに侵攻すれば不要な「終わりなき戦争」になってしまう。迅速に求められる効果を実現することが目標だろう。
米国の安全保障政策では戦争といえば大量の地上部隊を展開するものという既成概念があり、これを捨てる必要がある。現在の航空宇宙兵力を適正に投入し、サイバー作戦の支援があればイランは経済、軍事両面で崩壊し、核開発も止めることができ、域内での影響力も消せる。イランで重要な石油精製能力、石油運搬ネットワークや配電網を短期間で使用不能にできれば、地上部隊のイラン展開は不要だ。
ただし、イランには大量のミサイルを周辺国に発射する能力がある。また領空の防空体制も充実しており、標的地点は国内に分散している。このため作戦遂行は容易ではない。米軍の目標はイランの周辺国への影響を消すことであり、軍事施設の中でも最も危険な箇所を攻撃することだろう。このため相当の情報収集が必要で、イランの標的地点に関しリアルタイムで情報を修正し決定することになる。なかんずく、攻撃部隊は強力な防空体制の中で生き残り、多数の標的地点を攻撃する必要がある。この最後の点が重要で、イランの戦略が周辺国へ被害を与えることを中心にしているためだ。
この要求を満たせるのは第5世代軍用機、および搭載する高性能兵装だ。F-22、F-35、B-21の各機はセンサー・シュート機能で精密度が上がっている。単なる新型機ではない。その中核はセンサー、処理機能、データ融合機能にあり、作戦環境をリアルタイムで示し、求められる効果を確実に実現しつつ自機を脅威から防御できる。各機の有するマルチドメインチーム効果を活かし、他の機材と組み、高度な連携で戦力増強効果が生まれる。低視認性ステルス設計と電子戦能力で敵防空網の脅威から守ってくれる。
各機で特筆すべきは機能すべてを機体に統合していることだ。高度なまでの効果を単独で実現するという設計思想だ。ステルス・電子戦双方の技術により強力な防空体制でも任務成功の確率は高い。情報収集センサーと処理能力からリアルタイムで状況認識が可能となり、任務達成はさらに確実となる。標的が移動式の場合にこうした機能は重要だ。
各機は他装備と安全なデータリンクでチームを組む。相手は機体、艦艇、衛星、地上車両でもよい。非ステルス機は最新の防空体制下では長く生き残れない。スタンドオフ兵器で防空体制外から攻撃するとしても防空網に突入した機体の協力がなければ機能しない。
こうした第5世代機によるあらたな作戦を求める声が大きいが、政策決定層はこうした機材の数が圧倒的に足りない現実で苦労することになる。F-22は187機調達で終了し、要求数の半分しかない。F-35の量産実現は遅れ、B-21の実戦化は2020年代後半だ。B-2は初期の第5世代機で、ステルス性能、長距離性能、大量ペイロードが有効だが、20機足らずしかない。
解決策は明らかだ。F-22とB-2の生産ラインは閉鎖されており、F-35が現在生産中でB-21生産は2020年代中頃だ。各機の生産は優先事項扱いとし、十分な機数の確保が求められる。F-35の機体価格が最新契約では80百万ドル未満まで下がっており、同機生産を戦力確保の視点で進めるべきだ。B-21の詳細は極秘で不明だが、開発段階はうまく進展していることが判明している。
結論を述べれば、現有の航空宇宙戦力から他国では不可能な選択肢が米国に生まれており、安全保障上の課題に対応可能だ。イランのような危険状態が展開すれば、残された選択はその時点で投入可能な装備の性能に依存する。我が方に非対称的な軍事優位性があるだけに準備は周到に行うべきだろう。現代の状況は複雑であり、効果を上げるのにも時間がかかる。F-35やB-21を増強する決定があれば米国は今後も安全保障面で安泰となる。■
David Deptula, a member of the Breaking Defense Board of Contributors and retired Air Force Lt. General with over 3,000 flying hours, planned the Desert Storm air campaign, orchestrated air operations over Iraq and Afghanistan, and is dean of the AFA’s Mitchell Institute for Aerospace Power Studies.
この記事は以下を参考にしました。
War With Iran Could Be Sharp & Short With Fifth Gen Aircraft: Deptula
on January 23, 2020 at 12:40 PM
>現在の航空宇宙兵力を適正に投入し、サイバー作戦の支援があればイランは経済、軍事両面で崩壊し、核開発も止めることができ、域内での影響力も消せる。イランで重要な石油精製能力、石油運搬ネットワークや配電網を短期間で使用不能にできれば、地上部隊のイラン展開は不要だ。
返信削除またアホなことを、堂々と・・・
石油も配電網も防空システムも食料も持ってない北朝鮮に、ご自慢の航空宇宙兵力を投入しない(できない)理由を、このオッサンはどう説明するのかね。