数の力に頼る中国に対し、広大な太平洋地域で、かつ限りのある機材数でどう対応するのか考えて出てきた米空軍の作戦構想です。中央集権に凝り固まった中国ではこうした発想は生まれないでしょう。広大な防空圏を有する日本にも参考になりそうです。なんといっても空港の数は100箇所近くあるのですから。その中でも那覇、石垣、宮古、下地島などが重要ですね。
太平洋空軍司令官チャールズ・ブラウン大将は小規模の編隊を域内基地に迅速に移動させ敵陣営を混乱させると述べ、敵陣営つまり中国が米軍通信の妨害に出るのを前提としているとも明らかにした。
「機材の迅速移動方法が問題だ」とブラウン大将は述べ、「有事の際に通常の通信は維持できなくなり条件は厳しい」とした。
ブラウン構想はなんら新しいものではない。空軍、陸軍、海兵隊の情報部門で温められてきた考え方だ。
部隊分散とあわせ独立した指揮命令系統を両立させる構想から見えるのは、大規模基地施設に依存せず柔軟性と復元力を米空軍力にもたせる考えだ。上位司令部が細部に至るまで管理する考えも排したいとの思いも見える。すべては中国軍事力への対抗手段だ。
新発想がF-22の機数不足から生まれたのはなんとも皮肉だ。
アラスカの第3航空団が2013年にF-22の効率的な運用方法を編み出した。ラプターで最新ソフトウェア・兵装を搭載した「戦闘対応可能」機材は全180機中で120機程度しかない。
20機編成の各飛行隊を常時展開する骨の折れる苦労の代わりに、F-22の4機編隊と支援用C-17輸送機一機を太平洋各地に24時間以内に派遣できるよう準備することとした。
第3航空団では構想を「ラピッド・ラプター」と名付け、空軍上層部に売り込んだ。有事には第3航空団はF-22を各地の基地に分散させ、中国の弾道ミサイル攻撃に対応させる。
すぐに最前線にあるF-22部隊の六個飛行隊がラピッド・ラプター構想を採用した。2016年にフロリダの第95戦闘飛行隊がF-22の2機を東欧の事態沈静化に派遣した。当時、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切っていた。
2017年3月にC-17一機がF-22の二機を支援しオーストラリアに移動した。地上でF-22はC-17の主翼タンクから給油を受けた。
2017年7月には空軍コマンド部隊が過酷条件基地でF-15の燃料補給、兵装再装備が迅速に実施できるかを英国で試した。空軍特殊部隊がMC-130輸送機で前方基地での再装備、燃料補給をするFARPを試したのはこれが初めてだった。
この際の「ラピッド・イーグル」演習に航空団三個が参加した。英空軍レイケンヒース基地駐留の第48戦闘航空団とRAFミルデンホール基地駐留の第352特殊作戦航空団と第100空中給油飛行団だ。
このうち352SOWのMC-130Jがレイケンヒースに飛び、整備要員、弾薬類を搭載しミルデンホールに戻り、人員貨物を降ろしてから非公表地点に移動しFARPをレイケンヒース基地所属のF-15C4機に行った。
米空軍ではラピッド構想を他機種にも応用するとし、HH-60救難ヘリコプター、F-16戦闘機、KC-46給油機が対象と言われる。2017年にラピッド構想は「敏捷戦闘展開」方針に盛り込まれた。
一方で、空軍は太平洋各地で基地拠点候補を探している。
このうちテニアンでは老朽化した滑走路が再整備され、B-52がオーストラリア・ダーウィンから定期移動を開始した。「想定外の地点や時期に米空軍力を誇示できれば、同盟国協力国に大きな効果が生まれ、潜在敵国勢力への抑止効果につながる」(カーライル大将)
ただし既存の指揮命令系統構想で戦闘機部隊を分散させると衛星通信への依存度が高まる。
中国が衛星を妨害あるいは破壊すれば、ラピッド展開後に通信が孤立する。そのリスク低減のため、空軍は分遣隊司令に独立自運用をさせる。「指示を待たず適正判断できるかが課題」とブラウン大将も認める。
これに対し陸軍、海兵隊が一つの答を提示している。イラクで占領部隊を分散させた海兵隊で「分散作戦」構想が生まれ、100名程度の海兵中隊に独自運用を認めた。指揮命令系統から下される抽象的な指令を下級指揮官が独創力で解釈する力が鍵となった。
米陸軍にも「ミッションコマンド」と独自に呼ぶ構想があり、「命令を実施するに際し、指揮官の意図を守りつつ現場指揮官に権限を与え、陸上作戦を統合実施する」とある。言い換えると大佐から尉官へさらに軍曹へ達成すべき内容を伝え、あとは各自の実施を信頼することだ。
必要に迫られ生まれた構想だが、「中国の脅威増強のペースを見ると、こちらも考え方を変えないと」とブラウン大将は述べた。■
この記事は以下を参考にまとめたものです。
This Is The Air Force's Plan To Take The Fight To China
A plan to make the military less vulnerable.
by David Axe
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