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戦艦のカムバックで中国に対抗せよ


21世紀の現在に戦艦? いえいえ、ここで言う戦艦とは攻撃力と防御力を兼ね備えた一定程度の大きさを持った艦艇のようです。ズムワルト級ぐらいの大きさでしょうか。大は小を兼ねるといいますが、果たして海軍当局が採用するかどうか。ところで時々CNNなどの同時通訳を聞いていてびっくりすることがあるのですが、どうもwarshipを戦艦と誤って訳しているんですね。軍艦ということばは死語になっているのでしょうか。

アトミックゴルフ


性能な装甲を備えた現代の戦艦があれば、危険な状況からも十分帰還できる艦艇が生まれる。
第二次大戦で日本海軍が投入した超大型戦艦、大和と武蔵は18.1インチ砲という史上最大の主砲を搭載しながら、1隻も米艦船を沈めていない。航空戦力が優勢となり、両艦は鋼鉄の恐竜と化した。
だが鋼鉄の恐竜を倒すのは容易ではなかった。大和は魚雷11本、爆弾6発の命中で沈んだ。武蔵には魚雷命中19本、爆弾17発が必要だった。戦略面で両艦は無益な存在だったが、撃破は極めて困難だった。
海軍艦艇の建造には数十年におよぶ計画が必要で、直近の戦闘事例に対応させてしまうリスクがついてまわる。第二次大戦終結後の米海軍は航空母艦中心に整備してきた。だが大規模戦闘は皆無に近く、別の任務が逆に増えた。中国の台頭に対抗すべく最も頻繁になっているのが航行の自由作戦(FONOPs)で、戦闘はまったく想定していない。
ここ数年の中国は根拠のない主張を南シナ海で強硬に繰り返している。対応して米国も定期的にFONOPsを実行し、中国の人工島沖合12カイリを米駆逐艦に航行させ、中国の領海主張を拒絶している。今の所中国は米作戦に真っ向から対抗する無分別さは示していない。
だが駆逐艦の艦体は脆弱だ。USSフィッツジェラルドがコンテナ船に衝突し乗員7名が死亡した事故があった。その後、USSジョン・S・マケインが石油タンカーと衝突し沈没寸前となった。この際は乗員10名が死亡した。タンカーには負傷者はなかった。二回の衝突事例から現在の海軍艦艇の根本的欠陥が見える。残存性が低い。海軍艦艇といえば石油タンカーを恐れさせる存在だったが、今や逆になっている。
米海軍には空母打撃群の攻撃力とならび誘導ミサイル駆逐艦も必要な戦力だ。だが攻撃を受けても航行を続けられる艦艇も必要ではないか。中国が精密攻撃能力を整備する中、そこまでの強靭さが重要になる。南シナ海で非装甲艦艇の航行が危険になる事態が生まれてもおかしくない。
攻撃を免れる手段にステルスがあり、米海軍はステルス駆逐艦の開発で先を進んでいる。だがステルスではFONOPsの目的を達しない。視認させないと意味がないのだ。古式ふるめかしい戦艦はまさしく姿を見せるのが目的でしかも威容を誇る。だが21世紀に昔同様の戦艦を建造する必要はない。まったく新しい形の戦艦を作れば良い。
現在の戦艦は高性能装甲素材と自動損傷復旧を組み合わせ、事実上の不沈艦とすればよい。攻撃手段は任務にあわせ選択すればよいが、鍵となるのは残存性だ。危険な状況に突入しても、帰還する可能性が高い艦となる。
この「未来型戦艦」があれば中国の接近阻止領域拒否(A2/AD) 戦略を否定し、米国は西太平洋での航行を維持できる。中国は沿岸部、沿海部、宇宙空間にセンサー網を整備中で、中国本土と日本、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線間を移動する全てを監視する体制が生まれるのは時間の問題だ。また精密攻撃手段の進歩により探知したすべてを攻撃する能力を中国は入手できる。
これに対する米国の戦術対抗案はエアシーバトル、JAM-GC、第3相殺とめまぐるしく変更された。各案で共通するのは最良の防衛策は最良の攻撃である、という点だ。中国のA2/AD攻撃からの防御ではなく、米国が先に指揮命令系統を破壊し、中国センサーによる精密攻撃を不可能にする。問題はこの場合は全面戦にただちにエスカレートすることだ。
そこで未来型戦艦が活用できる。限定紛争シナリオで防御という選択肢が米国に生まれる。たとえば未来型戦艦が中国の挑発に反応して中国の海中センサーを破壊したり、中国の海底ケーブルを切断したとする。同艦なら敵艦船が衝突を試みても残存できる。中国や北朝鮮箱の衝突戦術を多用する。また両陣営がミサイルを打ち合う事態になっても、同艦は危険地点で運用可能でその間に事態の変化を待てば良い。
米海軍が大艦巨砲主義に復帰することはないが、海軍艦艇における装甲の意義を再検討すべき時だ。将来型戦艦により米海軍に敵の完全敗北以外の選択肢が生まれる。FONOPsによりこの選択肢の必要性が痛感されている。A2/ADから、さらに危険なミッションが生まれるだろうが、頑丈な未来型戦艦は安全な艦艇として機能するはずだ。■
ベルリッツ

この記事は以下を再構成したものです。

Why The Battleship Could Make a Comeback (Thanks to China)

These aren't your grandpa's battleships.
February 23, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: BattleshipChinaA2/adNavyMilitaryTechnologyU.S. Navy
Salvatore Babones is an associate professor of Sociology and Social Policy at the University of Sydney. (This first appeared last year.)

コメント

  1. ズムウォルト級の船体が18mm鋼板の二重構造と言われますが、エグゾセクラスのミサイルでも50~70mmの鋼板を貫通できるそうです。
    さらにスクリューや舵を守る事を考えると、「事実上の不沈艦」は難しいでしょう。

    返信削除
  2. こういう「強装甲艦」のアイデアは昔から散見しますが、一向に形にはなりませんね。
    >この「未来型戦艦」があれば中国の接近阻止領域拒否(A2/AD) 戦略を否定し、
    いや~?
    亀のように強固な特殊艦を少数作っても、A2/D2を否定どころか肯定すると思いますけど。

    返信削除

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