2021年10月31日日曜日

中国の新型極超音速兵器は60年代の米X-20ダイナソア宇宙爆撃機計画の焼き直し?X-37との関連はどうか。ナチドイツの研究成果も関係している。

 

 

中国の新型極超音速兵器は米国の1960年代の宇宙爆撃機構想に通じるものが多い


10月はじめに米情報機関が中国が新型極超音速兵器の実験におおむね成功し、大気圏再突入し、標的から外れたものの直撃に成功したと明らかにした。


中国が高性能極超音速ミサイルを開発したとの見出しが世界にひろがったが、事実は異なる。中国がテストしたのはミサイルではなく、新技術でもなく、実態はソ連が冷戦時に運用したのと類似の兵器システムで、米国が1960年代に運用一歩手前まで進めた極超音速準軌道で移動する宇宙爆撃機に近い。


今回の中国テストはFOB部分軌道爆撃システムと呼ばれるものでロシアの空中発射式キンザルミサイルより米空軍が秘密裏に運用するX-37B無人軌道機と比較すべき存在だ。FOBs の作動原理を説明した図 (WikiMedis Commons)


FOBは低地球周回軌道でスラスターで飛翔軌道を変え、大気圏再突入のタイミングも変えられる。これは米国にとって深刻な脅威となる。米ミサイル防衛ではICBM発射を早期探知してから慎重に軌道計算して初めて迎撃可能となるからだ。中国の新型FOBは軌道を変更しつつ極超音速滑空体を使うため迎撃手段で対抗できなくなり、南極周りの軌道を取れば米防衛網の対応能力ははるかに低くなる。


FOBが実現すれば相当の戦力を有する装備品となる。このため米国も同様の技術を開発しようとしていたがソ連は先にスプートニクを軌道に乗せた。だが、核の相互破壊保証の時代に新規の核兵器運搬手段は必要ないとされた。


現在の地政学環境は変わったが、構想は今でも有効かつ1950年代同様にしっかりしている。


X-20ダイナソアの誕生

第二次大戦中のドイツがニューヨーク爆撃機として開発した技術をもとに生まれたボーイングのX-20ダイナソアは単座機でロケットで打ち上げる構想だった。


第二次大戦中のドイツがニューヨークを爆撃し、そのまま太平洋方面に移動する研究成果から生まれたのがボーイングX-20ダイナソアで、単座でロケットで打ち上げる構想だった。


大気圏ギリギリの高度まで到達し、跳びはねながら移動し、ソ連上空でペイロードを放出する構想だった。当時の世界は冷戦の盛りだった。一部筋は同機が実際に実現したら機能していただろうと話す。


ペーパークリップ作戦、冷戦のはじまり

第二次大戦終結で米ソ両国の関係は気まずいものになっていた。ドイツが大陸各地を席捲した背後にドイツの先端軍事技術があったが米ソは冷戦の幕開けを目の当たりにし、次の大規模戦闘で生き残る策の模索のほうが重要度が高いと認識していた。


ナチ技術でドイツは軍事面で優位性を獲得し、米ソは技術に携わった科学者が戦後の責任追及を逃れようとするとわかっていた。両国とも新技術による戦略優位性の重要性がわかっていたため、ナチに協力した科学者技術者の確保に走ったの。米国はドイツ科学者確保をペーパークリップ作戦と呼び展開した。


ペーパークリップ作戦はドイツ科学者技術者等およそ1,600名を戦後の米国に移動させ、米国での技術開発に参加させた。NASAでサターンVロケット開発にあたったウェルナー・フォン・ブラウンがこの中で最も有名だが、ほかにワルター・ドーンバーガーとクラフト・エーリケもいた。


ナチ関係者からベル技術者へ転身

両名はベル航空機に職をみつけ、垂直発射式の爆撃機ミサイル一体化構想を提案した。ドイツではジルバエルフォーゲル(銀鳥)と呼んでいた。今日でも同構想は極めて理にかなっていると言える。機体はロケットで打ち上げて大気圏外の準地球周回軌道高度まで進み、大気圏に向け滑空し再び「跳ね返され」高度を上げる。これを機体の主翼により実現する。


Diagram of the planned X-20 Dyna-Soar (WikiMedia Commons)


今でこそ再利用可能な宇宙機を準周回軌道に打ち上げるのはごく普通に聞こえるが、ドーンバーガーとエーリケ提案は1952年でソ連が初の人工衛星を打ち上げる5年前のことだ。ペーパークリップ作戦ではドイツ科学者を使い米国の先端軍事装備開発を一気に進展させる狙いがあり、倫理的観点は二の次でとにかく成果を追求していたことが理解できる。


スプートニクの影

1957年10月1日にソ連がスプートニク1号打ち上げに成功し、人類初の人工衛星が誕生した。直径わずか23インチの小型の金属球で無線アンテナ四本でソ連や世界へ信号を送信してきた。これが西側世界で「スプートニクショック」を引き起こした。


第二次大戦が終わり軍事経済両面では米国が事実上のリーダーだったが、スプートニクの成功で米国の優位性に疑問符がついた。ソ連は米核兵器に追いつこうと原爆実験を1949年に行い、水爆実験は1953年に成功していた。今度は米国を追い越し、ソ連がリードをとってしまった。


ウェポンシステム464L

ドーンバーガーとエーリケの構想を米国は三段階で実現しようとしていた。ロケットブースター(RoBo)、長距離偵察機(ブラスベル)、極超音速兵器研究である。スプートニク1打ち上げを受け直ちに米国は事業を一体化させウェポンシステム464L別名ダイナソアにした。


Artist’s rendering of the X-20 Dyna-Soar (NASA)


新たにダイナソアとなった事業では三段階で技術成熟化を狙った。ダイナソア1は研究用機体。ダイナソア2は偵察機能を付与する。ダイナソア3では爆撃機能を実現する。第一段階は1963年までに無動力滑空テストを開始し、翌年に動力飛翔テストを行うとした。その段階でダイナソア2でマッハ18を実現する予定だった。ダイナソア用のミサイルは1968年に供用開始し、宇宙機は1974年の運用開始をもくろんでいた。


(U.S. Air Force image)


ベル、ボーイング両社が提案を出した。ベルが先を進んでいたが、ボーイングが契約交付を受け、X-20ダイナソアとなる装備の開発開始のめどがついた。


ダイナソアの実現

(Boeing photo)



1960年に同機設計はおおむね完了し、デルタ翼に小型ウィングレットをつけ尾翼の代わりととして機体制御する構想だった。大気圏再突入の超高温に耐えるため、熱耐性が高いレネ41超合金を機体に採用し、機体下部にはモルブデン、グラファイト、ジルコニアで熱遮断を図った。


空軍公式歴史家リチャード・ハリオン博士は「ニッケル超合金で高温に耐える構造だった」とし、「主翼前縁部に特殊合金を採用し能動冷却効果をねらった」と解説している。


同年に同機の搭乗員が選出され、その一人は30歳の海軍テストパイロット兼宇宙技術者で名前をニール・アームストロングといい、その後1962年に同事業から去った。


当時の技術でも実現可能だった

同年末に制式名称X-20がつき、ラスベガスで一般公開された。B-52が空中投下式のX-20大気圏内飛翔テストの母機に選ばれ、ロケットブースターによる高高度投下テストも初めて行われ成功した。


同事業は当時としては時代の先を行くものだったが、当時の技術でも十分実現可能だった。1960年代初頭には米国に宇宙爆撃機が生まれると見られていた。


X-20ダイナソアのモックアップが完成し、全長35.5フィート、翼幅20.4フィートになった。着陸には三点式引き込み脚を使った。自機にもA-4あるいはA-9ロケットエンジンを備え、大気圏外軌道に乗る構想だったが、ミッションの大部分は滑空飛行で大気圏まで降下して揚力を稼いでから跳躍で高度を上げ、大気圏をかすめながら移動するとした。最終的に速度が落ちてからパイロットがスペースシャトルのように地表に向かう。


X-20ダイナソアの終焉

(U.S. Air Force)


X-20構想は当時の常識を超えた存在だったが、技術面では実現可能性が十分あり、初期テスト結果からダイナソアは宣伝文句通りに機能するとわかっていた。ただし、事業経費があまりにも高く、新設のNASAはジェミニ計画に中心をおき、政府トップもソ連に対抗し実際の宇宙機の運用を早く希望していたものの、国際的な地位を高める点では貢献度が低い兵器体系の実現は二の次とされた。


ハリオン博士は「U-2同様にブラックワールド事業で進めていれば、実現したかもしれない。事業を止めるような技術的問題はなかった」とする。


大気圏内を滑空するX-20の想像図(WikiMedia Commons)


だが1963年12月10日、X-20事業は終了した。米国は4.1億ドルを開発に投入し、2021年のドル価格では35億ドルに相当する。その時点でダイナソアは宇宙爆撃機への道がまだ道半ばだった。ハリオン博士の記述ではX-20の開発状況は実機完成は2.5年先で追加3.7億ドルの投入が必要だったとある。宇宙爆撃機は世界全体を活動範囲に入れるが、米空軍は1957年にB-52で世界一周飛行を実証しており、高価なロケットを使うまでもなかった。


X-20事業を終了させ、残る予算は有人軌道実験室事業に転用され、ジェミニ宇宙機を使い、地球軌道上に有人軍事プレゼンスを実現するとされた。


ただし、X-20はそのまま飲歴史にみ込まれたわけではない。同事業の一部はNASAのスペースシャトルに応用され、そして宇宙軍の極秘宇宙機X-37BにはX-20を思わせる要素がある。X-37Bは宇宙爆撃機ではないとされ、たしかにそのようだが、再利用可能宇宙機であることに変わりない。米国が運用する最高性能の偵察機材であることは確かだ。■

 

X-20 Dyna-Soar: America's hypersonic space bomber

Alex Hollings | October 24, 2021


2021年10月30日土曜日

中国からステルス戦闘機二型式が登場。J-20複座型とJ-31艦載型。

  

 

 

J-31 ステルス戦闘機は瀋陽FC-31としても知られ、2014年の珠海航空ショーに登場していた。(Johannes Eisele/AFP via Getty Images)

 

 

国にステルス戦闘機の二型式が登場した。航空ショーに登場したのは艦載運用のようだ。

 

 

J-20複座型

 

成都航空機の工場外で撮影されたのはJ-20ステルス戦闘機の複座型で長年の噂を裏付けた。

 

中国SNSに掲載された写真映像では同機のタンデムコックピットがわかり、離陸に備え地上移動する様子を捉えている。

 

後部座席の役割は明論理的に考えて兵装システムズ士官WSOで同機のレーダーや兵装を担当する。

 

複座型J-20の制式名称は不明だが、無人機統制の母機の見方もある。中国版の忠誠なるウィングマンあるいは別の形の戦闘用無人機UCAV用かもしれない。

 

別の可能性としてJ-20のWSOがセンサー操作を担当し、他のネットワーク下の有人機との調整を図るかもしれない。中国の航空産業筋からはJ-20をステルス空中早期警戒機に転用できるとの発言が以前あった。この場合はJ-20数機を同時に運用しセンサーネットを形成する。

 

 

新型艦載戦闘機

 

もう一つ珠海航空ショーで新型艦載ステルス戦闘機が初飛行した。

 

同機の制式名称も不明だが、やはり下塗り塗装のままの同機は瀋陽FC-31ステルス戦闘機の開発段階の機体でJ-31とも呼ばれ、輸出仕様といわれてきた。

 

同機の写真では機首降着装置がカタパルト発艦用の仕様で主翼には折り曲げ用のヒンジが視認できる。飛行甲板を有効に使うため艦載機でよくある構造だ。

 

新型機は003型空母に搭載されそうだ。空母建造は上海で進行中で、中国空母で初めてカタパルトを搭載し、大型機運用も可能となる。想定されるのが西安KJ-600ターボプロップ艦載空中早期警戒機だ。

 

衛星写真から江南造船所で建造中の003型空母はカタパルト三基が搭載され、艦容は米海軍のジェラルド・R・フォード級に匹敵する大きさだとわかる。■


New variants of Chinese stealth fighters break cover

By Mike Yeo

 Oct 30, 01:12 AM


USSコネティカットの衝突事件を材料に米国を非難する中国はまるで日本の立民・共産党のようだ、同艦の損傷は深刻ではない模様

The Seawolf-class attack submarine USS Connecticut

米海軍のシーウルフ級攻撃型潜水艦USSコネティカット US Navy


  • 中国関係者は米潜水艦の衝突事件を隠ぺいしていると米国へ非難の声を強めている

  • ペンタゴンはこれを一蹴し、事件発生を公表したことこそ透明性の証明だとする

  • 事件は米中の対立が目立つ南シナ海で発生した


国が南シナ海で今月初め発生したなぞの潜水艦事件の真相発表を繰り返し米国に求めている。米国が情報を「出し惜しみ」し、隠ぺいを狙っているとの非難だ。米側はその主張は当てはまらないと応酬している。


10月26日、中国外務省報道官趙立堅Zhao Lijianは1米国が「無責任」に「情報隠匿」しているとし、中国は事件の詳細を公表しない米国に「重大な懸念」を抱いていると発言した。また詳細情報開示がないことから「米国に対し真実と意図を尋ねるのは当然だ」とした。


「USSコネティカットが南シナ海で極秘裏に何をしていたのか。何と衝突したのか。そもそも衝突はなぜ発生ししたのか。放射能漏れで海洋環境汚染は発生したのか」


趙報道官の発言は同人の10月11日内容と全く同じで、米国が事件のもみ消しを狙い情報を隠していると批判していた。直近発言には米国が潜水艦事故をもみ消そうとしており、「透明性の欠如」だと批判した中国国防省報道官Tan Kefei に通じるものがある。


ペンタゴン報道官ジョン・カービーはもみ消しを狙っているとの中国発言をとらえ、「報道発表を公開しているのにも隠ぺいと言われるのは心外だ」と述べた。


潜水艦事件について米太平洋艦隊からの報道機関向け声明文はは衝突発生の5日後に出たもので、公表を遅らせたのは作戦の保安で懸念があったためだ。逆に中国は遅れを利用し、疑惑を印象付けようとしている。


米海軍によれば同艦の衝突地点は公海で、乗組員の生命に危険な結果は生まれず、艦は安定状態にあり、原子力推進関係は無傷だとした。


中国の問いかけは米国に情報開示を求めるもので、南シナ海での米潜水艦活動の状況を明らかにさせようとしている。とくに中国が戦略的な同海域に潜水艦基地を置いているため、コネティカットが監視偵察行動に従事していた可能性がある。だが中国政府の発言には別の角度も見られる。


米国は事あるごとに中国が南シナ海の軍事化を進めていると批判し、中国が域内諸国を力で威圧していると主張するほか、中国の主張に国際法の裏付けはないとしている。逆に中国は米国こそ南シナ海に軍事プレゼンスを展開することで不安定さを増長していると非難してきた。コネティカット事件を利用しているように見える。


26日の報道会見でZhaoは米軍のプレゼンスを批判したうえで米国が「南シナ海で最大の軍事的存在」と中国外務省が繰り返している表現を使った。


南シナ海に軍事拠点を整備した中国への糾弾を米国は繰り返しており、中国の軍事力拡張は地政学的な権益のためとし、米国が主張する自由で開かれたインド太平洋の理念と対照的だとする。


コネティカットはグアムでドック入りしており、The War Zoneが損傷を受けた同艦の衛星写真を掲載した。衛星写真は艦の一部のみ映しているが、深刻な損傷ではないようだ。■


China Isn't Letting a US Submarine Incident in the South China Sea Go

Ryan Pickrell Oct 27, 2021, 2:41 AM


 

2021年10月29日金曜日

修正版)中国の台湾侵攻は本島より周辺島しょ部になるのでは。中国の既成事実づくりに日米が対抗できるか。同じ懸念は日本の遠隔島しょ部にもあてはまりそう。

 

Military helicopters fly over National Day celebrations in Taipei on Oct. 10. (Chiang Ying-Ying/AP)

 

 

 

現在の我々は過去の足跡の上を歩いているに過ぎない。

 

 

戦初期に米中両国が開戦一歩手前まで進んだのは中国沿岸の小島をめぐってのことだった。1955年、1958年と二度にわたり中国と米国は金門島Quemoyと馬祖島Matsuをめぐり危険な事態に進展した。ともにPRC本土沖の小島で1955年の危機は台湾が占拠する両島をPLAが大規模砲撃して発生した。これに対し米国は核兵器使用を脅かした。アイゼンハワー政権は台湾領土の一部分でも喪失すれば中華民国政府は崩壊につながると恐れた。

 

二回目が1958年で前回を上回る危険度となった。中国は凍頂烏Dongdingの占領を狙ったものの撃退され、PLAは怒りにまかせ台湾軍500名を殺害した。ここに航空部隊も投入され中国MiGと台湾F-86セイバーが対決した。ミサイル技術でまさる台湾が15対1のキルレシオを達成した。同年10月に米国が対象島しょ部分の防衛に関与する意向を表明するとPRCは引き下がった。台湾と中国は砲撃を気まぐれに展開し、これが1970年代まで続いた。

 

新アメリカの安全保障センターが行ったウォーゲームでは中国が台湾の島しょ部を占拠する事態を想定し、金門島馬祖島でなく東沙諸島Pratas/Dongsha Islandsを強襲するとした。南シナ海で台湾の南西に広がる地点だ。中国の海軍空軍力の大幅拡充によりこの作戦実行が十分可能となっている。ウォーゲームでは中国海軍が占領し、守備隊500名を降伏させ、既成事実とした。

 

法と政治の観点ではこの占領に有利な点がある。同島しょ部はすでに中国領だからだ。PRCは長期にわたり同島しょ部の領有を主張し、台湾による占拠を非難している。また領有を主張する国は台湾以外にない。このため南シナ海周囲の各国さらに世界各国は中国による同島占領を消極的とはいえ受容しそうだ。

 

政治面での優位性もある。ワシントンは台湾防衛に真剣になっているが、どこまでの防衛に踏み切るか疑問だ。米国は外縁部の島しょ占領に反応しても冷静な態度のままだろう。台湾住民17百万人には戦う価値があっても、南シナ海上の小島に犠牲を払う価値はない。同センターのウォーゲームでは日本の介入も想定したが、日本政府も比較的重要度が低い領土をめぐる紛争に巻き込まれるのを歓迎しないはずだ。

 

1950年代の台湾海峡危機に際し、米国は中国へ軍事優位性がある想定だった。ソ連はPRC支持に熱心でなく、アイゼンハワー大統領も蒋介石政権存続を願う国内圧力に直面していた。当時の中国と米国の間に経済、外交両面で接触が皆無だったため軍事面以外の結果が発生する可能性はなかった。このため、米国は軍事作戦実施に移りやすく、毛沢東が引き下がるまで強硬な態度を取った。

 

今日の状況は全く異なる。そのため今回のウォーゲームが関心を集める。米国に海上空中での優位性は消え、PRCとの対戦で勝利を収める保証もない。中華民国は国内体制を固めており、崩壊の兆しはない。外縁部島しょをめぐる戦闘を米国は真剣に考慮していない。確かにPRCには危険な賭けになるが、ワシントン、東京ともに経済上の代償を北京に払わせるはずだ。だがPRCが状況を一変させようと動けば、米国に予防策はなく、事態の逆転も困難だ。■

 

The Taiwan Crisis You Are Missing: A Chinese Invasion of Quemoy and Matsu

ByRobert Farley

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Robert Farley is a Senior Lecturer at the Patterson School at the University of Kentucky. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020).


中国の宇宙極超音速ミサイルに米国はどう対抗するのか。AI技術の導入で核戦争シナリオが一変したようだ。抑止効果が生まれるのは米国が同等の技術を実戦化してからになる。

An earlier model of Chinese hypersonic missile, the DF-ZF, was on display at a 2019 parade.

 

中国の極超音速ミサイルDF-17の初期型が2019年の軍事パレードに登場した。ZOYA RUSINOVA\TASS VIA GETTY IMAGES

 

 

国が今夏打ち上げた極超音速ミサイルは「地球一周した」と米関係者がDefense Oneに教えてくれた。ペンタゴンは今回の驚くべきテストの意味を解析中だ。

 

7月27日打ち上げられたとまずフィナンシャルタイムズが伝え、米国がアフガニスタン問題に忙殺されている間に実施された。

 

10月27日Bloomberg Televisionの取材に応えたマーク・ミリー統合参謀本部議長はこの打ち上げについて「スプートニク並みの衝撃はないが、かなり近い意味がある。全力を挙げて注視している」と述べた。

 

中国外務省は平和目的の宇宙機だったと公表している。

 

フィナンシャルタイムズ記事は複数筋を引用し、核弾頭搭載可能の極超音速ミサイルが地球周回軌道を取り標的に向かったと伝えていた。

 

アリゾナ州選出民主党下院議員ルーベン・ギャレゴは今回の打ち上げで米国防優先事項の見直しが必要なことが明白と述べている。

 

「パニックになってはいけないが、再考の必要が確かにある」と述べるギャレゴは海兵隊出身でイラク戦争に出征し、現在は下院軍事委員会に所属している。

 

「軍事委員会は極超音速技術、研究の投資で遅れていることに気づかされている。急いで追いつきたいが、今回の事態で情報収集の遅れが露呈し、確認に時間がかかった」(ギャレゴ)

 

今回の打ち上げでペンタゴン高官の間に米国がソフトウェアや人工知能で中国より遅れているのかとの議論が高まっているとミリー議長も認めている中で、空軍のソフトウェア部門トップが先月辞任している。

 

American Enterprise Instituteの客員研究員ジョン・フェラーリ(元陸軍少将)は今回の打ち上げで重大な問題が表に出たと述べている。

 

「AIが今回の打ち上げと飛行制御に使われていることが関心の的だ。核をめぐるゲームが一変した可能性がある」「問題は防衛がこれに対応できるか、あるいは攻撃を正しく行えるかだ」

 

この形で核攻撃を想定しあらゆる標的を防御しようとすれば米国は破産を免れないとフェラーリは言う。

 

「技術面では互角にする必要がある。AI技術で極超音速ミサイルを阻止することが可能とならないと打ち上げの阻止につながる技術は実用化できないだろう。特に宇宙から発射された場合に」

 

同等の技術が実用化されれば米国は中国への抑止力が実現する、あるいはその他国が同様にミサイルを開発しても対応でき、核戦争の相互破壊が確実になり抑止力が実現したのと同じ状況になるとフェラーリは述べる。

 

米国は各種極超音速ミサイルを開発中だ。先週はヴァージニアのワロップス島から極超音速ミサイル三本の打ち上げに成功したが、四本目はブースターの作動不良により失敗した。■

 

‘It Did Circle the Globe’: US Confirms China’s Orbital Hypersonic Test

 

Tara Copp

BY TARA COPP

SENIOR PENTAGON REPORTER, DEFENSE ONE

OCTOBER 27, 2021

 

台湾への中国侵攻は本島より周辺島しょ部になるのではないか。中国の既成事実づくりに日米がどこまで対抗できるか。同じ懸念は日本の遠隔島しょ部にもあてはまりそう。

Military helicopters fly over National Day celebrations in Taipei on Oct. 10. (Chiang Ying-Ying/AP)

 

 

 

現在の我々は過去の足跡の上を歩いているに過ぎない。

 

 

戦初期に米中両国が開戦一歩手前まで進んだのは中国沿岸の小島をめぐってのことだった。1955年、1958年と二度にわたり中国と米国は金門島Quemoyと馬祖島Matsuをめぐり危険な事態に進展した。ともにPRC本土沖の小島で1955年の危機は台湾が占拠する両島をPLAが大規模砲撃して発生した。これに対し米国は核兵器使用を脅かした。アイゼンハワー政権は台湾領土の一部分でも喪失すれば中華民国政府は崩壊につながると恐れた。

 

二回目が1958年で前回を上回る危険度となった。中国は凍頂烏Dongdingの占領を狙ったものの撃退され、PLAは怒りにまかせ台湾軍500名を殺害した。ここに航空部隊も投入され中国MiGと台湾F-86セイバーが対決した。ミサイル技術でまさる台湾が15対1のキルレシオを達成した。同年10月に米国が対象島しょ部分の防衛に関与する意向を表明するとPRCは引き下がった。台湾と中国は砲撃を気まぐれに展開し、これが1970年代まで続いた。

 

新アメリカの安全保障センターが行ったウォーゲームでは中国が台湾の島しょ部を占拠する事態を想定し、金門島馬祖島でなく東沙諸島Pratas/Dongsha Islandsを強襲するとした。南シナ海で台湾の南西に広がる地点だ。中国の海軍空軍力の大幅拡充によりこの作戦実行が十分可能となっている。ウォーゲームでは中国海軍が占領し、守備隊500名を降伏させ、既成事実とした。

 

法と政治の観点ではこの占領に有利な点がある。同島しょ部はすでに中国領だからだ。PRCは長期にわたり同島しょ部の領有を主張し、台湾による占拠を非難している。また領有を主張する国は台湾以外にない。このため南シナ海周囲の各国さらに世界各国は中国による同島占領を消極的とはいえ受容しそうだ。

 

政治面での優位性もある。ワシントンは台湾防衛に真剣になっているが、どこまでの防衛に踏み切るか疑問だ。米国は外縁部の島しょ占領に反応しても冷静な態度のままだろう。台湾住民17百万人には戦う価値があっても、南シナ海上の小島に犠牲を払う価値はない。同センターのウォーゲームでは日本の介入も想定したが、日本政府も比較的重要度が低い領土をめぐる紛争に巻き込まれるのを歓迎しないはずだ。

 

1950年代の台湾海峡危機に際し、米国は中国へ軍事優位性がある想定だった。ソ連はPRC支持に熱心でなく、アイゼンハワー大統領も蒋介石政権存続を願う国内圧力に直面していた。当時の中国と米国の間に経済、外交両面で接触が皆無だったため軍事面以外の結果が発生する可能性はなかった。このため、米国は軍事作戦実施に移りやすく、毛沢東が引き下がるまで強硬な態度を取った。

 

今日の状況は全く異なる。そのため今回のウォーゲームが関心を集める。米国に海上空中での優位性は消え、PRCとの対戦で勝利を収める保証もない。中華民国は国内体制を固めており、崩壊の兆しはない。外縁部島しょをめぐる戦闘を米国は真剣に考慮していない。確かにPRCには危険な賭けになるが、ワシントン、東京ともに経済上の代償を北京に払わせるはずだ。だがPRCが状況を一変させようと動けば、米国に予防策はなく、事態の逆転も困難だ。■

 

The Taiwan Crisis You Are Missing: A Chinese Invasion of Quemoy and Matsu

ByRobert Farley

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Robert Farley is a Senior Lecturer at the Patterson School at the University of Kentucky. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020).


2021年10月28日木曜日

建造中の中国新型空母003型はフォード級に匹敵する艦体と判明。海南島で運用用ドックの建造も進行中。PLAN空母部隊の整備に警戒が必要だ。

 

Capella Spaceによる直近のレーダー衛星画像で003型空母の建造中の姿が確認できた

海南島で建造が進むドックは003型空母に対応する大きさだ。ここから今後建造する空母もこの大きさとなることがわかる。

 

国海軍拡張の象徴が航空母艦だ。建造中の超大型空母の姿が上海郊外でみられる。レーダー衛星画像から同艦の規模が判明した。


 

中国海軍の拡張ぶりは信じられないほどだ。PLANはわずか20年前には取るに足らない存在だった。その増勢の中で最も重要なのが航空母艦だ。

 

国防アナリスト陣がオープンソース情報(OSINT)を駆使している。だが衛星画像では空母建造施設に雲という自然条件が立ちふさがる。そこでNaval Newsは雲を貫通した画像を新型商用衛星から入手した。

 

カペラスペースCapella SpaceのSAR(合成開口レーダー)衛星で、空母建造の進捗がわかる。レーダー画像なら雲、夜間関係なく地上を見ることができる。

 

10年前にロシア技術を導入したことから始まり、中国の最新設計は米海軍の超大型空母に匹敵するまでに成長した。PLANはロシア設計をもとにした空母二隻を供用中だ。三隻目が003型で上海近郊で建造が進んでいる。その大きさは米海軍の最新鋭フォード級とほぼ等しい。

 

SAR画像で艦上にカタパルト三基あることがわかった。既存艦から大きな変化で、スキージャンプ式の既存艦ではJ-15フランカー戦闘機を発艦させてもKJ-600AWE&C機(空中早期警戒統制機)の運営は不可能だ。KJ-600はE-2ホークアイに匹敵する大きさがあり、E-2最新型並みの性能があるといわれる。

 

新型空母にはEMALS(電磁航空機発艦システム)が搭載される。同じ技術を米海軍はフォード級で初めて導入する。これによりKJ-600運用が可能となる。また新型ステルス機運用が想定される。

 

進捗状況はどうか。乾ドックには別の艦が見えたが、移動している。乾ドックの入り口をふさいでいたためで、空母の進水が近づいている証拠だ。

 

ただし、進水が近づいているわけではない。画像を見ると飛行甲板はまだ空いたままだ。艦内アクセス用に二つの大きな穴が見える。空母建造では通常のことで米艦艇でも同じ工程を経る。

 

一つ興味を惹かれるのが他に例のないセイルなし潜水艦が見られないことだ。アナリスト陣はひきつづきこの潜水艦を追っており、就航が近づいているのか、あるいは研究開発部門へ回航されたとみている。

 

さらに1,900 km南には海南島の三亚 Sanya で巨大な空母用乾ドック建造が続いている。南シナ海へのアクセスで戦略的な立地条件だ。002型空母山東が同地を母港にしており、原子力潜水艦部隊も同地を本拠地としている。

 

ドックは大きさから見て003型空母の利用が可能だ。

 

新造ドックの幅が80メートルあり、003型空母建造所のドック幅と同じなのが重要だ。003型の全幅はほぼ80メートルと推定されており、ドックは003型運用を前提としている、または今後建造する空母も全幅80メートル以内になる、ことが考えられる。

 

そうなると003型が中国が当面建造する空母として最大サイズとなのか。今後の空母が全長が伸びる、排水量が増えても今以上の全幅にはならないのだろう。より幅広の艦体を採用すれば別の施設が必要となる。

 

今後整備する空母部隊は中国海軍の大幅な戦力向上につながる。中国が目指す外洋作戦部隊の出現の一部となる。■

 

China's Massive New Aircraft Carrier Is As Big As It Can Be

H I Sutton  27 Oct 2021