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プーチンが消えたあとのロシアはどうなるか----もっと厄介な事態に世界が直面するだけ

 

Ukraine

Russian President Putin.


プーチンさえ消えれば、ウクライナに平和が来ると信じる向きが多い。欧米には、プーチンを追放できれば、ロシアにやっと民主主義が実現すると空想する人さえいる



シア・ウクライナ戦争は1年以上にわたり激化し、終わりが見えない。ウクライナ人は自分たちの土地で勇敢に抵抗を続けているが、ロシアは簡単に消えてくれない。それどころか、戦争は拡大している。ロシアの強権者プーチン大統領を大統領官邸クレムリンで何者かが、無人機で暗殺しようとした(誰がやったかは定かでない)。


プーチンは暗殺されていない

今回の事件は、ウクライナ戦争の拡大を正当化するためのプーチンによる偽旗と推測する人さえいる。しかし、その可能性は低いと思われる。ウクライナが無人偵察機に投資していることを考えると、ウクライナか同盟国がロシア独裁者の暗殺を試みた可能性は高い。

 ウクライナでは戦争が激化しており、すぐに収束することはなさそうだ。戦争が長引けば、両陣営は絶望的になっていく。プーチンは2022年にキーウのウクライナ指導部の斬首をねらった。ウクライナ側は、そのお返しをしようとしているのだろう。しかし、ウクライナの要因がなくても、プーチンが命の危険にさらされているという懸念はプーチンの側近から何カ月も前から出ている。

 プーチンがシロビキの不満分子に殺害されようが、ウクライナがプーチンに一矢報いできようが、ポスト・プーチンの世界になる可能性がある。暗殺の可能性は忘れてください。プーチンは70代である。現在のロシア人男性の平均寿命をすでに超えている。そのとき、ロシアと世界はどうなるのだろうか。


プーチンを放逐すれば、もっと怖い事態に

プーチンは、ロシアの古い概念である「Silnaya Rukaシルナヤ・ルカ(鉄拳)」の体現者だ。

 これは、ロシアの初期からロシア人に共有されている信念で、国を強くし、団結させるためには、中央の強い権威、独裁者が必要だというものだ。プーチンは今、ロシアでその役割を担っている。プーチンは何年もかけて、代替となる権力者を封じ込め、共倒れにしてきた。

 ロシアのエリート層は、プーチンを排除すればロシアの国家崩壊を促進すると恐れ、プーチンに逆らおうとはしない。


現代ロシアの皇帝の後継者は誰か?

率直に言って、プーチンはライバルとなる人物を一掃することにこの10年間費やしてきたため、その指導力はあまり深くない。ロシアは、長い歴史を持つ広大な国土(なんと11の異なる時間帯にまたがる国土面積が最大の国)だ。

 ロシアとは中央の遠心力が重力の井戸のように国家を維持する国だ。中央の権威が弱くなったり、消えれば、ロシアは遠心力で引き裂かれる。

 もちろん、プーチンの後釜になりそうな人物もいる。よく出てくるのはメドベージェフ元大統領Dmitri Medvedevだ。彼は、西側諸国との平和を願いつつ、一方では核戦争を予告している。

 プーチンの外交政策顧問であり、元KGB幹部でKGBの後継組織FSBのトップでもあるニコライ・パトルシェフ Nikolai Patrushevもいる。この男は、ロシアの死体のほとんどがどこに埋められているかを知っている。

 そして、地政学者アレクサンドル・ドゥーギンAlexander Duginに代表されるロシアの右派民族主義運動がある。最近、ドゥーギンは命を狙われ、成人した娘を亡くし、震え上がったと報道されている。ドゥーギンの娘を狙った自動車爆弾の背後に誰がいるのか、多くの噂が飛び交った。

 ドゥーギンは、ウクライナの「侵略」に対するプーチンの対応が弱いと批判する発言を何度もしていたため、ロシア治安当局が関与したとの見方もあった。

 しかし、この暗殺事件以来、多くの人がウクライナ人の仕業と結論付けている。ドゥーギンはロシアのエリートで非常に影響力がある。本人の著作や演説は、少なくとも2世代にわたりロシアの軍事、政治、外交の指導者に影響を与えてきた。もし、欧米がプーチン追放に成功すれば、ロシアが政治的に分裂する中でドゥーギンの側近が政権を握る可能性が高い。

 つまり、より若く、より暴力的なロシアの独裁者が誕生する。


ロシア分解に何を望むのか

欧米の新聞では、ロシア連邦の分裂を予想する記事が続々と掲載されている。こうした記事を、モスクワでは西側諸国の意図のあらわれと受け止めている。

 もうひとつ、一貫して語られてきたのは、モスクワでの政権交代だ。クレムリンへの無人機攻撃は、計画の一部かもしれない。プーチンがいなくなれば、ウクライナに平和が訪れると信じられている。プーチンを追い出せば、ロシアにようやく民主主義が支配できると妄想する欧米人さえいる。

 だがこうした考えはすべて空想だ。プーチンが失脚して、最も可能性の高い2つは、プーチンの後任にもっと厄介な独裁者が誕生し、ヨーロッパでより血なまぐさい事態が発生すること、あるいは、もっと厄介なのは、ロシアをまとめられる強力な指導者があらわれず、国全体がバラバラになってしまうことだ。

 核兵器や生物・化学兵器がばらまかれ、軍閥主義や内戦がロシアを支配する。突然、ロシアは大中華圏のようになり、ロシアの巨大な大量破壊兵器を誰が管理するのか、西側諸国は恐怖に苛まれる。

 ポスト・プーチンのロシアに良い選択肢はない。プーチンは米国の外交政策指導者にとって悪魔かもしれないが、少なくともわれわれ全員が知っている悪魔である。彼は、いずれにせよ死ぬ。しかし、欧米が明らかにしようとしているように、その運命を早めれば、今でも不安定なロシアの状況をさらに不安定にし、今後数十年にわたり世界に悪影響を及ぼす、最も予測不可能な結果を招く危険を冒すことになる。

 プーチンのような皇帝志願者に率いられて復活したロシアより恐ろしいのは、構成要素に崩壊し、自分自身と戦争するロシアだ。プーチンが権力の座から降りれば、まさにそれが起こる。自分自身や近隣諸国と戦争し崩壊したロシアから発生する混乱を抑えるのは不可能だろう。■


What Happens When Putin Dies? - 19FortyFive

By

Brandon Weicher



A 19FortyFive Senior Editor, Brandon J. Weichert is a former Congressional staffer and geopolitical analyst who is a contributor at The Washington Times, as well as at American Greatness and the Asia Times. He is the author of Winning Space: How America Remains a Superpower (Republic Book Publishers), Biohacked: China’s Race to Control Life (May 16), and The Shadow War: Iran’s Quest for Supremacy (July 23). Weichert can be followed via Twitter @WeTheBrandon.





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