スキップしてメイン コンテンツに移動

クレムリンへの無人機攻撃事件の真相は? ウクライナは関与を否定するが、同国の攻撃はモスクワに近づいていた。国内の引き締めにロシアが自作自演の可能性も。

 Drone Attack On The Kremlin In Moscow (Updated)

Twitter Screencap


ロシアで最も象徴的な標的への攻撃は、ウクライナの勝利となるが、プーチンも支持集めに利用できる



レムリンのセナツキー・ドヴォレッツドームをドローンが攻撃したと思われる動画が公開された。ロシア当局は、ウクライナから攻撃を受けたと主張し、報復を宣言しているが、ウクライナ大統領は事件へのキーウの関与を否定している。


映像では、ドローンと思われるものがドームに接近し、爆発し火の玉となり空を照らしている。このドローンはドームに衝突したのではなく、ドームのすぐ付近で爆発し、炎のような破片が落下したようだ。2機のドローンが連続してドーム攻撃した疑いがある。


別のビデオからキャプチャした静止画では、午前2時27分と午前2時43分の2回、ドローンが攻撃したようだ。





ロシア政府に近いのソーシャルメディア「Yakimanca Telegram channel」によれば、モスクワ住民には爆発音はモスクワ川の向こうから聞こえたという。


Yakimancaによると、「(爆発の)強さは雷のようだったと」、Serafimovicha通りの近隣住民が述べている。また、モスクワ川沿いの象徴的なブロック長マンション「堤防上の家」の住人は、空に火花が散り、クレムリンの壁の近くで懐中電灯を手にした人々を見た。クレムリンとクレムリン堤防のイルミネーションは「現在消灯中」。


「堤防上の家」の住民からは、「午前2時半ごろ、中央で強い音と煙が出た」との報告があり、Yakimancaが発言を伝えている。「数分後、破裂音は再び発生した」。


プーチンのプレスサービスは、攻撃でウクライナを非難した。5月9日の戦勝記念日を前に、ウクライナにとって大きな象徴的勝利と見なすことができる。クレムリンほど注目度の高い標的はない。一方、プーチンの戦争遂行を支援するためロシア国民を結集させるため利用される可能性もある。このため、今回の事件は計算されたロシアによる行動との憶測がすでに出ている。


また、映像には、ドローンの1機が爆発する直前にタワーに登る人々の姿が映っており、疑惑を生んでいる。


ロシアの公式報道機関は、「昨夜、キーウ政権はクレムリンのロシア連邦大統領官邸に対し無人機攻撃を試みた」と述べている。


「2機の無人航空機がクレムリンに照準を合わせた。軍と特殊部隊によるレーダーシステムを使ったタイムリーな行動により、この装置を無効化することができた。両機はクレムリン敷地内に墜落し、破片を散乱させたが、死傷者や損害は発生していない。


「我々は、これらの行動を、戦勝記念日や外国人賓客の出席が予想される5月9日パレードを前に行われた、大統領を標的とした計画的なテロ攻撃、暗殺未遂と見ている」。


プーチンは「このテロ攻撃で被害は受けていない。執務スケジュールは変更されず、通常どおりだ。ロシアはいつでもどこでも適切と思われる対抗措置をとる権利を留保している」と語った。


ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の顧問ミハイル・ポドリアックMikhail Podolyakは、キーウの関与を否定した。


クレムリン上空のドローンについては、「すべて予測できたことだ」とポドリアックはツイートで述べている。「ロシアは明らかに大規模なテロ攻撃を準備している。だからこそ、まずクリミアで破壊活動をしているとするグループを拘束する。そして、『クレムリン上空でのドローン』を実演している。まず第一に、ウクライナは防衛戦争を行い、ロシア連邦の領土内の目標を攻撃していない。何のために?これは、軍事的な問題を解決するものではない。しかし、RFに民間人攻撃を正当化する根拠を与えてしまう」。


ウクライナがロシア領土を攻撃していないというポドリアック発言も憶測に過ぎない。国境地帯のロシアの町やその先の目標が様々な手段で攻撃を受けている事件が繰り返し報告されている。


誰が悪いかは別として、ロシアは明らかに首都への攻撃を想定し、1月に国防省本部を含むモスクワの政府機関少なくとも2つのビル屋上にパンツィール防空システムを設置した。


しかし、ウクライナによるモスクワ近郊への攻撃は他にもあり、ウクライナ無人機はここ数カ月で首都にどんどん接近している。4月24日には、モスクワから少し離れた場所で、爆薬を積んだウクライナ無人機(UJ-22の可能性が高い)が発見された。


2月にはウクライナのドローンがモスクワから70マイル以内に接近した事件も発生していた。


今回の攻撃にもかかわらず、戦勝記念日パレードは敢行され、プーチンも参加すると、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官はTASSに語った。


プーチンは今日、モスクワ近郊のノボ・オガリョボにある自邸で仕事をしていると、ペスコフはRIA Novostiに語った。


この攻撃の結果、モスクワ市長は市内でのドローン飛行を禁止する命令を出した。


一方、ウクライナ国境から約100マイル離れたブリャンスク州では、またもやウクライナ軍の攻撃があった。


 「ウクライナ軍のUAVが5月3日夜、ブリャンスク州の軍事飛行場を攻撃した」と、ロシアのバザ通信はテレグラム・チャンネルで報告した。


それによると、合計5機のUAVが攻撃に参加した。「うち2機は小銃で破壊され、さらに2機は飛行場の領域で爆発した。もう1機のドローンは発見されなかった」という。


バザによると、この攻撃の結果、「非稼働」のAn-124貨物機が 「軽微な損傷を受けた」という。「死傷者はない」。


ウクライナと国境を接するブリャンスク州は、たびたび攻撃の標的になっている。


また、地元政府関係者によると、クリミアにあるロシアの石油施設に対するドローン攻撃の疑いもあった。


クラスノダールクライ州のVeniamin Kondratyev知事は、テレグラムチャンネルに「クバンのTemryuk地区の石油デポで起きた火災がケルチのMithridates山から見える」と書き、犠牲者はなく、一般市民への危険もないことを付け加えている。


火災対応は「最高ランクの難易度を割り当てられた。火災面積は1,200平方メートルであった。ドローンによる攻撃はまだ正式に確認されていないが、地元報道では、火災の前に爆発があったとされている」。村の住民は避難しなかったと、知事は語った。


これらは、ロシアの軍事ブロガー、イゴール・ガーキンが指摘したウクライナによる攻撃の疑いがある事件の一部にすぎない。


更新:午後2時20分(米国東部標準時


ウクライナのゼレンスキー大統領は、クレムリン襲撃事件への自国の関与を否定した。ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は、ゼレンスキー大統領の関与否定に同調した。


事件を受けて、ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は、ゼレンスキーとその内閣の暗殺を呼びかけた。「今日のテロ攻撃の後、ゼレンスキーとその陰謀団を物理的に排除する以外に選択肢はない」と、自身のテレグラム・チャンネルで述べた。


CNNによると、CIAのビル・バーンズ長官は、上院情報特別委員会でこの事件について説明する。■


Drone Attack On The Kremlin In Moscow (Updated)


BYHOWARD ALTMAN, JOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED MAY 3, 2023 12:14 PM EDT

THE WAR ZONE


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...