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対中戦で米海軍が空母を派遣すれば自殺行為だ


日本では考えたくない問題に目をつむる傾向があり、『想定外』の一言で片付けることがよくあります。台湾を巡る危険も同様で、米中の軍事衝突は避けられないとワシントンは見ているのに、ええ、そんなに深刻なの、と日本では温度差がありそうですね。さて、以下『1945』の記事ですが、まるで戦前の大艦巨砲主義の繰り返しで空母ありきの米海軍が潜水艦重視に切り替える必要があるとの主張ですが、潜水艦は年間2隻建造がやっとの状況で、一夜にして増えるというわけではありません。中国の戦略思考が米国の戦術思考を上回っている気がします。

 

DF-26中国の砂漠で模擬攻撃を受けるアメリカ海軍の航空母艦のイメージ図。

 

ンド太平洋における中国の脅威に対抗し、空母で対応する標準的な米軍の計画は愚かとしか言いようがない.

 

空母の何が問題なのか

台湾をめぐる中国との紛争は、ますます可能性が高まっている。

 

アメリカは地政学的、道徳的な理由から台湾の独立に(少なくとも書類上で)コミットしている。一方、中国共産党は、地政学的な理由だけでなく、イデオロギーの理由からも、台湾は中国の一部だとする主張に執着している。

 

時間が経つにつれてワシントンが弱体化すると北京は考えている。ワシントンは、中国が強くなった今、衝突の危険を冒すしかないと考えている。

 

台湾をめぐり中国と戦争になれば、アメリカ海軍は中国に対抗する槍の先端になる。

 

中国にとっては、人民解放軍海軍(PLAN)が侵攻の先頭に立ち、台湾海峡を越えて中国軍を台湾に送り込むだろう。また、アメリカの台湾防衛には、アメリカ空軍とアメリカ海兵隊が欠かせない。これが、オバマ時代の「エアシーバトル」構想の本質だった。

 

中国封じ込めには潜水艦を優先すべきだ

米国が台湾をめぐり中国と直接戦争するリスクを冒さないとしても、ワシントンが採用する可能性のある別の戦略として、「オフショア・コントロール」がある。これは10年前から浮上しているコンセプトだ。中国は膨大な量の重要物資を輸入しなければならないため(そして中国経済の多くが輸出主導型であるため)、ワシントンは海軍力を使いPLANの手が届かない主要航路を封鎖できると考えている。

 

中国経済の締め付けを意図した封鎖を実施することで、ワシントンの政策立案者は、中国の指導部は経済を動かし続けなければならないので、台湾侵攻を遅らせたり、止めたりすることができると考えている。

 

封鎖は中国経済の健全性を損なう。しかし、国際法上で封鎖は戦争行為となる。中国は長年にわたり、太平洋や南シナ海、東シナ海など、自国の領海と主張する地域で、米海軍に対抗する能力を高めてきた。

 

具体的には、北京はDF-21Dミサイルの大規模な部隊を構築し、南シナ海の人工島に代表される前方展開位置に配備している。この兵器は、メディアでは「空母キラー」と呼ばれ、不吉な存在となっている。これは、アメリカの巨大空母を追跡し、破壊するため特別に設計された装備だ。

 

北京は、航空母艦がアメリカ海軍の基幹だと知っている。空母は兵力投射の究極の形だ。

 

都市といってよい浮遊飛行場は、残念ながら、中国の空母キラーミサイルへの防御力は低い。乗組員の数や、建造と維持にかかる費用を考えると、巨大艦を1隻でも失えば、アメリカの動きが止まること中国は理解している。

 

中国は、台湾侵攻シナリオで米国の軍事支援が遅れれば、中国の侵攻軍が台湾の防衛を破り、台湾併合を完了できると考えている。

 

このため、インド太平洋における中国の脅威に対して、空母で対応する米軍の標準的な計画は愚かなのである。

 

第二次世界大戦の海戦が、当初の主役想定の戦艦ではなく、空母に支配されたように、中国との海戦が空母により定義されることはないだろう。代わりに、潜水艦が海戦をリードすることになるだろう。

 

というのも、米国は、中国との戦争を戦いながら、世界のその他地域での義務を果たすだけの潜水艦を保有していないからだ。

 

米海軍は潜水艦を最優先させるべき

海軍には潜水艦を優先する再編成の動きはない。これは前回の戦間期における戦艦と空母の論争でも起こっていた。当時、海軍はフラットトップよりも戦艦を好んだ。

 

当時の海軍の文化もあり、空母は偶然の産物と思われていたためでもある。日本軍の真珠湾攻撃が起こり、戦艦の大部分を失い初めて、アメリカは残された空母を優先させた。

 

同様に、中国との戦闘で1隻でも空母を失うまで、潜水艦を優先することはないだろう。

 

戦略的に深刻な問題は、中国の台湾侵攻に対応すべく配備した空母を中国のDF-21に沈められる可能性に気づき、手を止め、あるいは手を引くかもしれない事態だ。

 

アメリカの防衛態勢を根本的に変えるべき時だ。インド太平洋では、海軍は潜水艦を最前線に据えるための効果的な戦略を開発するべきだ。インド太平洋に配備された潜水艦は、台湾海峡を通過する侵攻部隊に壊滅的な攻撃を仕掛けることができる。必要であれば、中国本土の攻撃も可能である。

 

潜水艦は、中国艦隊の動きを秘密裏に監視するために使用することができる。さらに、潜水艦は台湾の守備隊に少人数の兵員や武器の補給を密かに上陸させることができる。さらに、潜水艦は最終的には無人偵察機の発射装備に転用することもでき、台湾防衛で重要な戦力増強装置として機能する。

 

空母が海戦のリーダーであった時代は、少なくともインド太平洋地域では終わりを迎えた。中国と戦争に突入する可能性がある以上、「サイレント・サービス」がその役割を果たさなければならない。


Sending U.S. Navy Aircraft Carriers To Fight China Is Suicide

By Brandon Weichert

 

https://www.19fortyfive.com/2023/05/sending-u-s-navy-aircraft-carriers-to-fight-china-is-suicide/


WRITTEN BBrandon Weichert

Brandon J. Weichert is a former Congressional staffer and geopolitical analyst who recently became a writer for 19FortyFive.com. Weichert is a contributor at The Washington Times, as well as a contributing editor at American Greatness and the Asia Times. He is the author of Winning Space: How America Remains a Superpower (Republic Book Publishers), The Shadow War: Iran’s Quest for Supremacy (March 28), and Biohacked: China’s Race to Control Life (May 16). Weichert can be followed via Twitter @WeTheBrandon.



 

コメント

  1. ぼたんのちから2023年5月7日 21:36

    PLAによる台湾侵攻部隊の渡海阻止、あるいは侵攻部隊上陸後の兵站の途絶を目的にするならば、DF-21D/26を恐れて空母部隊を退避させた状態で実現困難であるのは明らかだ。その代わりの潜水艦、及び陸上基地からの航空機、及び遠方からの艦載機での攻撃による目的達成には限界がある。損害も多分大きい。よって大きな効果は期待できないにしても長距離ミサイルが主な攻撃手段になるだろう。
    PLAは、日米潜水艦に対して、数的優位にある潜水艦と機雷網で待ち構えると推定する。空軍についても台湾上空の制空権を得るのは困難でなく、より広く西太平洋全体を活動範囲とするだろう。さらにこれらの海空軍の支援の下、PLAN艦艇が展開しようとするだろう。これが実現すると厳しい戦いになる。
    このようなPLA展開の対策は、①DF-21D/26対抗手段、②濃密な中長距離地対艦ミサイル、及び地対空ミサイル網の形成、そして何よりも③台湾海峡封鎖のための機雷網の設置が鍵となる。特に③機雷は数が有効であり、PLANの掃海能力はそれほど大きくない。潜水艦による攻撃よりも、機雷設置の方が効果的かもしれない。
    機雷等を使用した台湾海峡封鎖は、台湾上陸阻止ばかりでなく、PLANを分断する戦略に極めて有効であり、実行すればPLANは痺れてしまうだろう。
    ところで、空母をはじめとする大型の艦艇は、非常に大きな攻撃能力を持つものの、ミサイル等による攻撃にますます脆弱になっており、米海軍の海洋戦略、及び戦術は早晩行き詰ると予想する。次にどのような海洋戦略、及び戦術を編み出すかにより、台湾侵攻の行方も左右し、現在はその過渡期にあると考える。

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