2021年11月15日月曜日

注目の機体 ロシアの新型AWACS,A-50Uはどこまで性能を向上させているのか

 

シアの早期警戒機A-50の量産が始まったと製造元のベリエフ航空機会社が発表している。

 

「当社はA-50U改良型長距離レーダー監視機材をロシア航空宇宙軍に引き渡した。同機は航空中軍が基地に移送した」

 

A-50Uとはソ連時代のA-50空中王偉警戒統制機 (AEW&C) の近代化機材で、大量生産されたIl-76の派生型としてリアナ監視レーダーシステムを搭載し、最大10機の標的を同時追尾できる能力を有する。

 

A-50Uの主な改良点は新型シュメル-Mレーダーで、高性能ソフトウェアハードウェアを活用すると製造元Rostecが宣伝している。

 

とはいえ「高性能ソフトウェアハードウェア」の性能はどうなのか。シュメル-Mは回転式レーダーでA-50Uはロシア軍内では「キノコの機体」として知られる。

 

A-50Uの機体寸法や形状はIl-76の原型を引き継いでいるが、製造元はシュメル-Mでは新設計部品を採用したことでレーダードームを軽量化したという。また同レーダーは空中で650km、地上なら300kmの探知が可能で、空中で40、地上の300目標を同時監視できる。

 

A-50Uで完全デジタルシステムを搭載し、旧型と大きく異なる。取扱いが簡単になり処理が高速化しながら操作員のエラーの余地が減った。その他機体内部の改良がある。

 

ロシア軍の新鋭機材の例にもれず、A-50Uもシリアに2018年まで投入されていた。実戦テストで同機は北部シリアでロシア軍を支援した。旧型A-50もシリアに2015年に投入され、ロシア空軍は両型式の性能の違いを実地体験できた。

 

A-50Uは機能、役割で米空軍のボーイングE-3セントリーに匹敵する存在だが、性能の違いを示す機会がない。原型のA-50では輸出仕様のA-50Iがあり、イスラエル製EL/W-2090ファルコンレーダーを搭載しインドが購入している。中国へも商談が2000年代初めにあったが、成立せず、中国はKJ-2000AEW&Cの国産開発に進んだ。

 

クレムリンが積極的に武器輸出を進めていることから、A-50Uの次の購入先にインドが想定されていることは十分にありうる話だろう。■

 

Russia's A50U Aircraft Means Business

November 5, 2021  Topic: Russian Air Force  Region: Europe  Blog Brand: The Reboot  Tags: A-50RussiaNATOSurveillanceMilitary

by Mark Episkopos

 

Mark Episkopos is a frequent contributor to The National Interest and serves as a research assistant at the Center for the National Interest. Mark is also a Ph.D. student in History at American University. This first appeared earlier this year and is being reposted due to reader interest.

Image: Reuters.


 

米空軍もE-7ウェッジテイル導入に踏み切る模様。E-3AWACS後継機として。来年に公式発表を期待するボーイング。

 


オーストラリア空軍供用中のE-7Aウェッジテイル空中早期警戒統制機。 (Royal Australian Air Force/Cpl. Melina Young)


空軍からE-7ウェッジテイル空中早期警戒統制機導入の発表が2022年に出るとボーイング防衛部門がドバイで11月13日に発言し、空軍が同機調達を次年度予算案に計上するとの観測を強めている。


「空軍がE-3後継機にE-7を選定すると自信を持っている」ボーイングの防衛部門営業開発担当副社長マイク。マナジルMike Manazirがドバイ航空ショー開幕前の記者会見で語った。


「2022年に発表があると見ている。E-7選定に傾いている」「同機の性能を同盟国と活用し米空軍の戦力維持に役立つ」


空軍はボーイング737が原型のE-7ウェッジテイル調達で31機ある早期警戒機E-3セントリーAWACSと交代機材として検討している。E-7はオーストラリア、英国で導入済みだ。


AWACSには1970年代製造の機体もあり、部品の陳腐化で維持経費が上昇し、稼働率は40%台に低下している。


このため、航空戦闘軍団トップのマーク・ケリー大将Gen. Mark Kelly や太平洋空軍司令ケネス・ウィルスバック大将かGen. Kenneth WilsbachらAWACS機材更新を強く求める声が出ており、予算が付けば早期にウェッジテイルに交代させるべきとしている。


両大将に加え空軍長官フランク。ケンドールFrank Kendallと参謀長CQ/ブラウン大将Gen. CQ Brownもウェッジテイルへ関心を示しているが、2023年度予算案の発表前でもあり、同機導入の意向はだれも公式に発言していない。


ただ空軍が同機導入の方針に近づいている兆候はあった。E-7関連の解析業務をボーイングに随意契約の形で10月に交付し、空軍独自の仕様のためどこを改修すべきかを解明していた。


マナジールは空軍と「密接な協議」を行っており、ウェッジテイル販売につなげるとの発言もあった。


ボーイング民生機部門は737 Maxの飛行停止措置ならびにCOVID-19パンデミックによる航空宇宙業界の打撃を受け低迷したままだが、マナジールは「防衛部門は安定、予測可能で底堅い」と述べている。


同社は今後10年の防衛部門需要を2.6兆ドルと試算している。そのうち中東での販売は今後5年で340億ドルの防衛宇宙関連製品の販売を見込む。


マナジールは具体的な販売先名を示さなかったが、ボーイングの戦闘機各種、AH-64アパッチ攻撃ヘリコプター、CH-47輸送ヘリコプター、KC-46給油機のほか衛星関連が中東の関心を集めていると語った。■


US Air Force will buy E-7 Wedgetail in 2022, Boeing exec claims

By   VALERIE INSINNA

on November 13, 2021 at 9:51 AM


2021年11月14日日曜日

ドバイ航空ショーでの注目機。スホイのチェックメイトは廉価版のSu-57フェロンなのか。宣伝文句通りなら超お買い得のステルス戦闘機になるのだが。

 

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TASS

 

ロシアは新型機チェックメイトを軽量戦闘機と呼ぶが、事実と異なる。

 

ホイ・チェックメイトの広報資料がドバイ航空ショーに先立ち公表された。同機は公式に存在が発表されて4カ月がたった。同機には軽量戦術航空機LTSの意味のロシア名称がつくが、想像よりも大型でSu-57フェロンに匹敵する大きさのようだ。二機を並べると、謎に満ちたチェックメイト事業の実態が浮かび上がり軽量戦闘機でなく中型機であることがよくわかる。


 

単発のチェックメイトと双発Su-57を比較すると共通点が目につく。なかでもSu-57が重戦闘機のスホイフランカーファミリーの系列を引き継ぐのに対し、公式には軽量戦術機とされるチェックメイトも全長57フィート、翼幅39フィートはフェロンの66フィート、48フィートとそん色ない。

 

両スホイ機は低視認性を意識し「バランスの取れた」最適化措置を受けている。ともに機体主翼一体型構造で揚力を生む機体形状で、主翼前縁部の根元を延長するLERX構造になっているが、Su-57のほうが大きく、フラップも大きくなっている。これに対し新型機の主翼形状もフェロンに似ており、LERXの特徴が見える。

 

チェックメイトのエンジン型式は不明だが、公開された機体に実際のエンジンが搭載されていたかも不明だが、排出口だけは実際のもののようだ。エンジンはイズデリエ30の派生型といわれ、Su-57も同型エンジンを搭載する。他方で公表データではチェックメイトのエンジン推力は14,500-16,000 キログラムとされているのでイズデリエ30より一段低い定格なのか、同エンジンをダウングレードしたのだろう。設計では操縦機動性を重視しており3D推力偏向機能がついているか、取り付け可能なのだろう。

 

ロシアTASS国営通信が発表したデータでチェックメイトの性能がわかり、最高速度は2,200km/h (1,367mph) 、航続距離は2,800km (1,740 miles)とあり、これまでの発表より低くなっている。航続距離は外部燃料タンクを搭載したものだ。

 

チェックメイトは武装搭載量を7,400kg (16,314lb)として機内にハードポイント五か所を設け、機外にさらにパイロン六ケ所がある。

 

こうしてみるとチェックメイトは中型戦闘機であり、軽量戦闘機ではないことがわかる。燃料搭載量が多く長時間の戦闘任務に対応しながら、ステルス性能を発揮できるのが最大のセールスポイントだ。

 

TASS

チェックメイトの機内兵装庫は三か所あり、機外にもパイロン四か所がある。

 

コックピットとレドームにも類似性が見られることから両機種のエイビオニクス装備やレーダーが共通の可能性がある。このことは同機が初登場した段階で想定していた。開発費用の削減のみならず飛行テストの負担も減るからだ。また両機種の費用節減効果も期待できる。TASS配信では搭載システムや一部要素が共通化され、整備も容易になるとあった。

 

ROSTEC

チェックメイトは今年7月に公開された。.

 

もう一つ興味深いのはTASS記事にスホイがチェックメイト設計にシリアでの戦訓を使っているとあることだ。シリアでロシア軍はあらゆる機種を投入し、Su-57も評価用に登場した。シリアの戦訓から設計陣は「軽量単発機を2016年に設計していたが、シリアでの攻撃機材の運用実績を解析し、双発攻撃機の投入は過剰だと判明した」とチェックメイト主任設計者ミハイル・ストレレツMikhail StreletsがTASS取材に答えている。

 

このチェックメイトが11月14日からのドバイ航空ショーで初めて国際舞台に登場するが、同機の輸出について関係者がすでに話題にしている。また将来の発展形もヒントが出ている。

 

スホイ設計局を傘下に収める合同航空機会社(UAC)の総支配人ユーリ・スリュサールYuri Slyusarはが以下発言している。

「同機はもともと各種航空機ファミリーの基本形としてつくったものだ。現在は有人機で無人運用も可能な機体の実現を目指している。

「無人機化で時流に乗ろうというのではなく、実際にすでに初期段階に進んでおり、ネットワーク化軍事作戦での投入を想定している。同機は情報を共有し、その他機材無人機に指示を出し標的にムカワエル。無人機型の投入で全く新しい戦術が生まれる」

 

下はTASSが配信した同機無人機型の想像図だ。

 

TASS

 

その他派生型の話題が出ており、複座型は最近登場した中国のJ-20ステルス戦闘機でも同様だが、こちらは実際に試作型が飛行可能となっている。

 

こうした計画も顧客がつかなければ絵に描いた餅になるだけだ。これまでのところロシア国防省の反応は低調なようで、軽量や中型の戦闘機への関心はここ数年間低いままだ。

 

そのことを念頭に、新型戦闘機に顧客が必要だ。ロステック国営企業総支配人のセルゲイ・チェメゾフはTASS取材に語っている。「このクラスのマシンには世界で需要が高い。飛行性能と戦闘量をお求めやすい価格でまとめたほかに例のないロ伊佐正単発戦闘機は国際市場で人気を集めるはずだ」

 

TASS

 

チェックメイトの機体価格は30百万ドルと発表されており、F-35共用打撃戦闘機は90百万ドルが比較対象だ。新規製造のF-16と比較しても半額程度とTASSは伝えており、もともと「無駄を省いた」JF-17サンダーの55.33百万ドルよりも安い。ただし価格は仕様により変動するのであくまでも基本形の価格を比較した。スホイがこの価格帯で同機を近い将来納入できる理由が謎だ。

 

購入可能性のある顧客は中東、アジア太平洋、ラテンアメリカだ。

 

これまで公開されたチェックメイトは実寸大のモックアップで実機構想を示すだけが目的だったのか。ただし、展示機の現実度が高いことから何らかの実証機でエンジンを搭載すれば地上走行は可能だとする向きもある。

 

ドバイショー会場で同機を近くから観察しエンジンが搭載されているのか、その他重要装備がついているか検分できると期待され、機体の詳細を実際に目にできよう。

 

一方でチェックメイトのハードウェアはしっかりと地に足をつけているように見える。

 

Latest Images Of Russia's Checkmate Fighter Shows Us Just How Big It Really Is (Updated)

Russia has billed the Checkmate as a light fighter, but that isn't really the case. 

BY THOMAS NEWDICK AND TYLER ROGOWAY NOVEMBER 13, 2021

THE WAR ZONE

Contact the authors: thomas@thedrive.com and tyler@thedrive.com



2021年11月13日土曜日

主張 台湾の積極防衛戦略は中国侵攻に対し有効に作用すると期待。

 

Image: Creative Commons.

 

ャパンタイムズが台湾国防部が隔年発行する軍事戦略報告の最新版を報じた。(同紙が先行印刷分を入手したのは明白だ。台湾国防部の公式ホームページでもまだ掲載されていない。)以下は同戦略の骨子だ。「何といっても開戦阻止が第一で、外部からの軍事脅威の阻止が肝要で、わが方の防衛力を全面行使しても本土を防衛する」とあり、台湾海峡を挟んでの強襲揚陸作戦の「リスクと負担に対応する」。

 

文書ではさらに中国軍の「弱点は海上移動段階にある」とし、台湾の防衛部隊は「台湾海峡という自然障壁を最大限活用し、粘り強く戦う」とする。「海峡移動が完了し上陸するまで湾海峡の反対側で敵軍が港湾や飛行基地に終結するまで座して待ってはいけない」

 

これは健全な戦略だ。受動的な防衛体制は敗北を招き、敗北は台湾の破滅を意味する。

 

ある意味で台湾防衛軍は敵を模倣することになる。人民解放軍(PLA)は「積極防衛」を中国共産党(CCP)の創立者毛沢東から引き継いでいる。劣勢の部隊が積極防衛を取れば忍耐力を試される。敵より弱い戦力という事実を受け入れ、時期尚早の攻撃は避ける。決戦を挑んでも勝つ見込みがないので、小規模の奇襲攻撃でしつこく攻撃し敵を弱体化させながら、自軍の戦力を蓄える。敵を弱体化させ自軍を強化する積極防衛は弱い側でも忍耐強く当たれば勝利が手に入ると教える。

 

台湾軍はこの積極防衛をめざすべきだが、はるか昔の英国人サー・ジュリアン・コーベットの著作『海洋戦略の諸原則』を参照すべきだ。コーベットは海洋国家英国は最盛期に海外で限定戦を仕掛ける条件として地理条件で孤立していることをあげ、領土をめぐる戦いの条件として敵による「無制限の反撃」の本土上陸作戦を阻止することをあげた。言い換えると限定戦には戦闘を対象地の地上戦に限定し、敵による占領を回避しつつ非対称的な攻撃を加えるべきと説いたのだ。

 

台湾は中国が狙う目標地だ。コーベットの限定戦論では台湾軍はPLAに封鎖される事態を回避すべき、あるいはCCP体制に強烈な打撃を与えるべき、またはその双方となる。後者では台湾政府に実施手段がないので前者に全力で取り組むべきだ。侵攻部隊を海上で撃退できれば、地上戦準備に時間を稼げる。さらに台湾周辺の空域海域を維持できれば、台湾海峡は防壁になり、米国や日本の救援部隊が海空で大きな犠牲を出さずに現場に移動できるよ。

 

そこで前線での戦闘が結果を左右すると台湾の新軍事戦略で特記している。台湾は人員物資面の不利のまま大きな優位性を発揮できる。台湾はPLAを敗北に導き、台湾の意思を本土に強いる必要がない。毛沢東流の考えで勝利を収める必要もない。台湾に必要なのはPLA海軍による海峡制圧を回避することだ。制海権がないままではPLAは兵員重装備の上陸作戦の実施で強硬な防衛軍を制圧できなくなる。PLAの作戦が破綻すれば、台湾は「海上制圧」戦略の勝利となり、戦闘の代償に見合う結果を手に入れることになる。

 

コーベットも海上を移動する攻撃側が「防御に専念する防衛側を突破できなければ制海権を確保できなくなる」と考えた。海上制圧とは台湾が制海権を確保することを意味せず、PLAの航空機やミサイル攻撃の阻止にもつながらない。またPLA海軍の封鎖を破ることでもない。だが、コーベットの言葉を借りれば、敵の支配を否定する効果を「長期間にわたり行使すれば、敵は望む結果を得られず、対抗側は陸上防衛体制を確保する時間が稼げる」。台湾の戦いは台湾の陸上で雌雄を決することになりそうだ。PLAによる拠点確保を台湾軍が阻止できれば、台湾の民主体制は生き延びる。

 

そなると台湾に必要なのは海上支配や対抗作戦の実施ではない。必要なのはPLAを長時間食い止めることだ。また台湾の軍事戦略構想では台湾軍は台湾沿岸からどこまで遠い地点で中国侵攻部隊を叩けるかが問われることになる。沿岸配備の対艦対空ミサイル、ミサイル搭載哨戒艇、機雷がPLAに大きな損傷を与えることで戦闘は長期

 

ボクシング界の伝説的チャンピオン、ジャック・デンプシーなら台湾の戦略防衛構想を健全な攻撃的態度と呼ぶだろう。■

 

How Taiwan Could Stop a Chinese Invasion


ByJames Holmes

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Krulak Center for Innovation and Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.


オーストラリア:原子力潜水艦調達でインド太平洋での兵力投射効果拡大を期待。一方で東南アジアにAUKUSへの懸念も残る。では日本はどう関与するべきか。

 

 

Royal Australian Navy submarine HMAS Rankin

王立オーストラリア海軍のコリンズ級潜水艦HMASランキン。ダーウィン北方海域で行われた演習にて。

Royal Australian Navy/POIS Yuri Ramsey

  • AUKUS加盟国には課題として域内問題の解決はまったなしだ。

  • その中でオーストラリアは英米協力のもと建造する潜水艦の運用海域を想定している


英米三か国の安全保障同盟関係で潜水艦が中心になっているが、オーストラリアは運用想定を明確に認識している。


AUKUS同盟が9月に公表され、防衛技術面での協力が深化するが中でも8隻調達するオーストラリア向け原子力潜水艦で英米両国の支援が注目される。


関係者が同盟関係は特定国に向けたものではないと繰り返し説明しているものの、駐米オーストラリア大使アーサー・シノディノスArthur Sinodinosは域内安全保障環境の変化に呼応するものと強調しており、その大きな要因が中国である。


「相手側の軍事力、行動半径、物量が大切な要因だ」と大使は潜水艦取得に言及した。「防衛思想として戦略状況が悪化しても兵力投射効果を今後増強した。自国防衛に防衛力すべてを振り向けてはだめだ」


SSK and SSN time on station in Western Pacific

オーストラリアの原子力攻撃型潜水艦が展開を目指す重要地点を示した図。Center for Strategic and Budgetary Assessments


「これはわが国がどのように兵力投射を実施してその結果として安全保障環境をインド太平洋に構築していくかという課題だ」とシノディノス大使はハドソン研究所で講演した。


オーストラリアはディーゼル電気推進式コリンズ級潜水艦を6隻供用中で、各艦は1996年から2003年にかけ就役している。


バッテリー潜航の潜水艦は原子力潜水艦より静粛度で優れるものの、原子力推進により高速かつ長距離展開が可能となり、兵装搭載量も増え、長時間潜航を維持できる。インド太平洋の広さ、第一列島線の広がりを考えると重要な要素だ。


域内各国に潜水艦調達の流れがここにきて活発化しており、運用能力の向上も進んできた。特に中国が劇的な戦力拡大を図り、近隣海域の調査も進めている。とくに台湾周辺やインドネシア=オーストラリア間で活動が目立つ。


三国は潜水艦案の検討作業を開始しており、12-18月かけ完成させるが、このままだと一号艦の就役は2030年代末になる。


シノディノス大使はスコット・モリソン首相が新規設計で「もてあそぶ」より「既存設計をもとに建造」をするほうが重要と「極めて明確に」述べていると発言した。


大使は合わせて暫定的な既存艦のリースあるいは購入案を除外しているようで、コリンズ級は供用期間延長を受け、AUKUSは「英米艦を使いまわす、あるいは建造中の艦を融通することはない」と述べた。


「南オーストラリアで建造する方針で、既存設計案をもとにわが国の事情及び対応対象の複雑な事情に合わせる」(シノディノス大使)


大使はAUKUSとは新たな同盟関係というよりは「戦力協定」であり、潜水艦はその一部に過ぎないと強調した。


「他にも重要なのが人工知能、機械学習、サイバー、量子コンピューティング、水中戦能力で、各種能力で首相は英米両国とのシナジー効果を期待している」


AUKUSで導入をめざすものに「長距離打撃戦力」があり、トマホークミサイルを駆逐艦に、また射程延長型対艦ミサイの戦闘機への搭載を目指す。


今年初めにオーストラリアは2,000億ドル超を今後10年に投入して新型装備導入を図ると発表し、米国支援で製造する誘導ミサイル、新型艦艇、F-35など戦闘航空機でオーストラリア軍の作戦をより密接に米軍と展開して効果を上げるねらいがある。


「国防予算は増額しGDP2.5%をめざしており、従来よりも前広に域内環境の形成を達成したいと考えているからだ」(大使)


「わが国周辺の戦略状況の変化を注視している」とし、オーストラリアは事態の進展に対応し、抑止効果を発揮し、「協力国と対応すべく調整する」とシノディノス大使は述べた。


だが協力国候補国には今回の協定への懸念も残る。中国が否定的反応を示したのは想定通りだが、フランスがオーストラリアが締結済み潜水艦建造をキャンセルしたことで反発しているのだ。


一方で中国に大きく懸念を占めているベトナムなどは国内では静観する態度があっても協定を歓迎しそうだ。インドネシア、マレーシアでは域内軍拡を心配しつつ、東南アジア連合の弱体化につながるとの懸念もある。


こうした懸念の解消には対話が必要だが、それでもとくにインドネシア・マレーシアで見解の不一致は残り、「域内情勢の見方が深部で異なっている」とシドニー大米国研究センターの主任研究員スザンナ・パットンが解説している。


とはいえそうした各国の反応は米豪両国が「利害を共有し、中国の役割が増大する地域でどのように共同行動するのか」様子見としているのだとパットンは説明している。■



Australia's new nuclear-powered subs are decades away, but it's already hinting about where it will use them

Christopher Woody 43 minutes ago

https://www.businessinsider.com/australia-aukus-nuclear-powered-subs-in-pacific-amid-china-tensions-2021-11

 

2021年11月12日金曜日

歴史に残る機体(32)ボーイング・バードオブプレイは実証機の域を脱しなかったが、低価格でも十分なステルス性を実現し、ボーイングに多大の貢献をした異様な形状の機体だ。


歴史に残る機体(32)ボーイング・バードオブプレイ


1990年代を通じ、マクダネル・ダグラスのファントムワークスがユニークなステルス戦闘機をエリア51で秘密理にに開発・テストしていた。この機体はBird of Prey猛禽として知られる。同機は「YF-118G」の名称で開発されたものの、元から運用を想定したものでなかったが、同機で得た設計面製造面の知見は今も政府の機密事業に活用されている。


中でも最も貢献度が高い要素がコストだ。ステルス機は押しなべて高額なことで知られるが、同機は今日のF-35一機分の予算で設計から製造まで実現している。


ステルス機の革命


1983年10月にロッキードF-117ナイトホークが秘密裡に米空軍で供用開始し、世界初の実用ステルス機が登場した。同機には戦闘機の「F」の記号がつき、ステルス戦闘機と呼ばれるが、実は戦闘機ではなかった。レーダーも機銃も搭載せず、ペイロードも2千ポンド爆弾二発に限定されたF-117は戦闘機のふりをした攻撃機であった。ただ誤解を避けると、当時のいかなる機体とも異なる存在であった。


敵防空網突破のため高速で高高度飛行性能を追求する時代が続いたが、ナイトホークは航空技術および航空戦の考え方の転換点となった。同機はF-15やF-16より低速で取扱いも面倒な機体だったが、レーダー断面積が82平方フィートと米軍機で最小となり、敵レーダーで姿が見えない存在となった。


それから10年たらずでロッキードのYF-22とノースロップYF-23が空軍の高度戦術戦闘機への採用を巡り競合し、世界初の真のステルス戦闘機が生まれようとしていた。マクダネル・ダグラスもファントムワークスに独自のステルス戦闘機構想があり、実現のため人材を配置していた。


ステルス航空機の秘密の開拓者

Boeing Bird of Prey in flight (Boeing)


ロッキード、ノースロップの高性能ステルス戦闘機に国費が投入されたがマクダネル・ダグラスは自社資金で新型機開発を進めた。資金の有効活用を図るべく、同社はアラン・ウィークマンAlan Wiechmanをプロジェクトのトップに据えた。


ウィークマンはロッキードのスカンクワークスでHave Blue開発に従事し、後継機となったF-117ナイトホークの実現にも貢献し、シーシャドウつまりステルス海軍艦艇の開発にもあたった。マクダネル・ダグラスの高度戦術戦闘機提案が選定から漏れると、同社が招き入れその知見をファントムワークスで生かすことになった。


航空史でウィークマンの名前は伝説的技術者のクラレンス・「ケリー」・ジョンソンほど目立たない。Aviation Week はウィークマンのことを「もっとも存在感のない」技術者で「ステルス航空機の秘密開拓者」に位置付けているほどだ。だが認知度と実績は必ずしも一致しない。ウィークマンのステルス技術への貢献は多様で、国防産業協会(NDIA)が表彰したことが機密解除されている。


「ウィークマンの業績により米国は15年分の優位性を確保し、本人の設計作業・完成品の効果は戦闘場面で実証ずみ」と表彰文に記述がある。


1992年に無難に聞こえるYF-118Gとして作業は開始され、ファントムワークスのウィークマンチームは予算に配慮しつつ独自のステルス機設計に取り掛かった。当時としては画期的な迅速試作技法を投入した。ファントムワークスではコンピューターで設計、性能を再現し、当時の演算性能として最高水準を駆使した。試作機用の部品を完成機に近い形で実現し、従来の方法では実現できない水準へ引き上げた。


YF-118Gチームは機体製造にも創造性を発揮した。当時最先端の単品生産複合剤構造を採用し、ボディパネル接合を不要にしステルス性能を犠牲にしなかった。完成機体には継ぎ目がなく、ボディパネルの空隙もなくなりステルス機製造で最大の課題を克服した。一部では今日でもロシアがこの課題に苦しんでいるという。


だがウィークマンのチームはすべてを一から設計したわけではなく、既成品を多用してコストを下げながら設計業務を短時間で達成した。搭載したプラット&ホイットニーJT15D-5Cターボファンエンジンは推力わずか3,190ポンドでセスナのビジネスジェットに使われていた。射出座席はAV-8Bハリヤーから流用し、操縦桿・スロットルはF/A-18ホーネットのものを使った。操縦ペダルはA-4スカイホークから借用した。


空軍テストパイロットのダグ・ベンジャミン大佐は「時計はウォルマート売り場から、空調制御はヘアドライヤーのものだった」とジョークをとばしていたほどだ。


ボーイング・バードオブプレイに搭乗したダグ・ベンジャミン大佐



開始後4年たった1996年に飛行可能な試作機が完成した。単発単座の技術実証機は全長47フィートでF-16よりわずかに長く、角度をつけたガル状主翼は他機と全く異なる様相で23フィートと、F-16より10フィートも短かった。だがなんといっても目立つのは従来の戦闘機の形状を脱却した主翼一体型の機体で尾翼がない姿だった。


設計にはステルスを全方位で考慮し、レーダー・赤外線・視認上の探知性に加え音紋も排するべく機体形状、隙間を徹底的埋める設計とし、エンジンを機体内部に埋め、曲線を付けた空気取り入れ口、赤外線・音響上の探知性を混乱させる排出口を採用した。


完成した同機の異様な形状と攻撃的な構えからスタートレックの好戦的種族クリンゴンを連想させ、劇中に登場するクリンゴン宇宙船のBird of Preyの名称がついた。



バードオブプレイの飛行ぶり

1996年9月11日、同機はグルームレイク(別名エリア51)で初飛行し、空軍大佐ダグ・ベンジャミンが操縦した。スタートレックのBird of Preyには不可視化装置がついていたが、ボーイング事業となった同機は高性能とはいえないもののステルス性能を駆使した。


Boeing


その後三年でチームは一機しかないバードオブプレイ試作機を37回飛行させた。操縦にはベンジャミンの他、ボーイングのテストパイロット、ルディ・ハウグとジョセフ・W・フェロックIIIがあたった。


無尾翼でガル翼設計の同機の最終飛行は1999年だった。


巡航速度はわずか300マイルの同機はC-130ハーキュリーズより低速で、上昇限度は20千フィートと第二次大戦時のP-51マスタングの半分程度だったが、F-117ナイトホークと同様にウィークマンは同機で当時の戦闘機を超える性能をねらわず、別の目標があった。


Boeing Bird of Prey in flight (Boeing)


ファントムワークスもステルス戦闘機製造が可能と実証した以外に、事業経費を67百万ドル未満に抑えた。インフレを考慮するとウィークマンのファントムワークスは設計、製造、飛行を一から始めて111百万ドルで実現したことになり、今日のF-35B一機分より低い。


「技術実証の早期投資となったバードオブプレイによりボーイングは業界が変身する中で地位を確立した」と2002年にボーイング統合防衛システムズの社長兼CEOだったジム・アルボーが評した。「当社は設計製造の姿を変えてしまった」


バードオブプレイの遺産

1999年に同機は飛行終了したが、物語はまだ続いた。同機から得られた知見から別の機体が生まれ、バードオブプレイの存在が公表された直前に初飛行にこぎつけた。これがX-45A無人戦闘航空機体である。


X-45Aもファントムワークスが手掛けたが、自律飛行の設計だった。X-45A設計にはバードオブプレイの影響が多くみられる。レーダー探知を逃れる角ばった形状や機体上部につけた空気取り入れ口などだ。ボーイングは同時にX-32にもBird of Preyの特徴を活用したものの、ロッキード・マーティンのX-35に敗れ共用打撃戦闘機の受注を逃した。


Bird of Prey in flight (Boeing)


今日ではアラン・ウィークマンが手掛けたバードオブプレイの系譜を引きつぐ機体はなく、冷戦末期からの米ステルス機開発レースで話題に上ることも少ない。だが1990年代にファントムワークスは予算を無尽蔵に使うことなく、二十年の遅延も発生させることなくステルス戦闘機の実現が可能だと実証していたのであり、これこそ米国が長年かけても実現できていない命題だ。


バードオブプレイ実機はライト‐パターソン空軍基地の米空軍博物館の近代飛行ギャラリーでF-22展示機の上に陳列されている。■


Bird of Prey: Boeing's lost budget-busting stealth fighter


Alex Hollings | November 10, 2021