イマイチわかりにくかった自衛隊の対艦ミサイル整備の全体像がよくわかります。
防衛省は令和3年度予算で超音速対艦ミサイルASM-3Aの調達費用を計上したと2020年12月25日に発表した。一方でASM-3改を大量配備し、中国の海上兵力拡張に対抗する。同省は新型重要装備品選定結果の一部でさりげなくASM-3Aに触れている。
岐阜基地所属のF-2戦闘機がASM-3を2発搭載している。February 2020. Picture by local photographer Takeru Sugiyama.
XASM-3 まず航空自衛隊のF-2戦闘機搭載を想定したXASM-3ミサイルの開発が2010年度に始まった。XASM-3は空中発射式対艦ミサイル(ASM)で固体ロケットブースターとラムジェットエンジンを採用しマッハ3超で飛翔するとした。射程200キロ(108カイリ)だった。
防衛省が発表したASM-3 (改)の運用構想では射程距離の拡大によりF-2は敵防空手段の有効範囲外からミサイル発射できるとする。
ASM-3(改) ただし、新鋭中国水上艦で防空性能の高まったため、ASM-3調達は中断し、ASM-3(改)開発を決めASM−3の有効射程を延長するとした。
防衛省は三菱重工業にASM-3(改)の開発契約を89億円で2020年に交付した。ASM-3 (改)開発は令和2年度から7年度の予定。
開発の経費と期間を下げるためASM-3と同じ本体とし、重量軽減で射程距離の延長を狙う。
航空自衛隊岐阜基地のF-2に搭載されたXASM-3。February 2020. Picture by local photographer Takeru Sugiyama.
ASM-3A 今回発表のあったASM-3AはASM-3 (改)開発の知見を反映するとあるが詳細は不明だ。とはいえASM-3(改)の開発が今年はじまったばかりであり、有効射程は更に伸びると見られる。
ASM-3 (改) 開発は ASM-3A 生産と並行で進むに。このためASM-3Aは中国対策のつなぎと考えてよい。
対艦ミサイル三種類を運用する航空自衛隊 航空自衛隊は対艦ミサイル新型三種類を運用する。
F-35に共用打撃ミサイル(JSM)
改修版F-15J/DJ に長距離対艦ミサイル(LRASM)
F-2に長射程ASM-3A
ASM-3の試射.防衛装備庁.
各種ミサイルを運用する意味 自衛隊が各種対艦ミサイルを運用する理由として各ミサイルの特徴を活かした運用で敵防空体制を突破できることがある。たとえばJSMは海面すれすれを飛翔し敵レーダーでの探知が難しいものの、有効射程はミッションで異なるが100から300カイリと長くない。LRASMは432カイリと長射程だが飛翔は亜音速だ。ASM-3Aはマッハ3程度で敵防空網を突破するが有効射程がLRASMより短い。
ただし、2種類あるいは全部を投入すれば、敵側は各ミサイルの特徴に応じた対応に追われ、防御態勢を強固にする必要にかられる。
さらに陸上自衛隊向けに新型長射程ミサイル(2000キロ級といわれる)を防衛装備庁が開発中で極超音速対艦ミサイルあるいは高速滑空弾(HVGP) と呼ばれ、極超音速で高高度を飛翔する性能が加われば、対艦ミサイルが各種揃い、敵艦撃破の可能性が高まる。自衛隊は今後の中国海軍力の成長を念頭に対策を着実に打っている。■
この記事は以下を再構成したものです。日本にいながら防衛装備の開発状況が全体としてわからないのはおかいいですね。2021年は外国報道も使いわかりやすい情報提供に心がけたいです。
Japan to Field New ASM-3A Long Range Supersonic Anti-Ship Missile
Yoshihiro Inaba 30 Dec 2020
Story by Yoshihiro Inaba with additional reporting by Xavier Vavasseur
>日本にいながら防衛装備の開発状況が全体としてわからないのはおかいいですね。
返信削除日本語で読める、新鮮で信頼出来る情報を発信している軍事・防衛ニュースサイトなんて、無いですしね。
特に、一次ソースのインタビューや分析をやっているようなサイトは皆無です。
日本の防衛当局者のコメントが、ジェーンのインタビューでしか読めなかったりする始末。
オタクが作ったサイトでのオタク同士での討論は盛んなようですが、もちろん、そんなの無価値ですし。当面、防衛関連の調べものは英語を読むしかなさそうです。
まあ、ネットがない時代を考えれば楽になりましたけどね。ここみたいに、楽しめる場所もありますし。「記者」として参加したいぐらいですw(コンプラ的な疑問がなければ)