2017年2月19日日曜日

武器輸出の実績がない日本、今後も道が険しいのか



The National Interest

Japan: The World's Next Big Arms Dealer?


February 17, 2017


武器輸出禁止を自ら課してきた日本だが安倍政権が2014年に国内メーカーの武器軍用装備輸出を解禁した。ただし日本が武器輸出主要国になるまでにはまだ時間がかかりそうだ。
  1. 2014年の措置は1967年にはじまった武器輸出三原則にかわるもので、積極的平和主義で日本の国益を確保する政策の一環として武器輸出も位置づけられているが、新しい措置でも国連禁輸措置の対象国や軍事紛争中の国には輸出できないとされる。また販売に関しては透明性を確保し、日本の知らない間に第三国への転売ができない。
  2. ただし新方針の前から日本は防衛協力・軍事技術の移転で小さい変更を加え、米国とは弾道ミサイル防衛を共同研究できるようになった。当時の民主党政権野田佳彦総理は日本国内企業に海外メーカーと共同開発研究ができる道も開き、防衛関連装備を人道を理由とした場合は輸出可能としていた。
  3. 狭義の軍事装備ではないが、日本はフィリピン、ヴィエトナムへ巡視艇を寄贈するにあたり海外援助予算を使った。またTC-90訓練機をフィリピンにリースで提供し、フィリピン海軍パイロット向け訓練も行った。
  4. 2014年の改訂で日本の武器メーカーはこれまでの足かせから自由になり、海外需要を取り込めるようになった。だが日本の武器輸出がこれで急拡大するのではなく、道は長くなるだろう。大口防衛装備の商談は一件も成立していない。インド太平洋には武器需要が大きい国がひしめく。
  5. オーストリア向け潜水艦商談は昨年失望のうちに終わったが、当初は採用は確実と見られていた。初の商談成約を期待していただけに大きな敗北とされる。だが商談の不成立で日豪関係が損なわれなかったとはいえ、日本側の政策立案部門には深いキズが残った。
  6. またインドには相当前からUS-2水陸両用飛行艇の販売交渉が続いており、2014年には成約の見通しが非常に高かった。だが現在でもコストと技術移転をめぐり、堂々巡りの状態に留まっている。商談は一時的に中断しているとの説明に一部メディアには「死に体」とまで評するものがある。
  7. 直近ではニュージーランドと哨戒機、輸送機の販売につながる商談を介している。商談は初期段階のままで、ニュージーランドは欧米メーカーもいれた競争評価方式を取るだろう。2015年にイギリスで同様の商機があったが、結局米国製装備に負けている。次のならいはタイ国で、P-1哨戒機とUS-2水陸両用機が対象になっている。
  8. そうなるとフィリピン、ヴィエトナム向けに巡視艇を寄贈したことを除けば、東南アジアでは成約案件がないままだ。その理由に価格があり、日本もこの分野では経験不足が否めない。また買い手からすれば実戦実績がない日本製装備には手を出しにくい。
  9. 武器輸出を調整すべく昨年末に大型政府機関が立ち上がっている。防衛装備庁がそれで、自衛隊隊員1,800名の他防衛省からも人員が移動した。国内最大の防錆装備調達機関として武器輸出の推進も目的となっており、国内最大の経済団体経団連も支援を惜しまないとしている。だが、日本は困難に直面したままだ。
  10. 国内の防衛装備メーカーにとって防衛需要は本業ではない。トップの川崎重工業、三菱重工業でも比重はそれぞれ15パーセント、11%にすぎない。その他企業に至っては1パーセントを割る状況だ。
  11. 戦後憲法で戦争を放棄した日本だが比較的裾野が広い防衛産業が生まれ、高性能の主要装備等を供給しているが、自衛隊用の国内需要だけを相手にしてきた。その結果、各企業は無競争状態で事業を進められた。日本企業が居心地よい環境を飛び出し、経験値が高い世界の大手企業に真っ向勝負するのは確かに楽ではない。企業の中には政府方針で競争入札の形にするため嫌々参加を付き合うものもある。また「死の商人」といわれたくないという企業もある。
  12. オーストラリアでの敗退、インドとの商談停滞から日本政府に経験が足りずしっかりした商談に向けた延暦方針が欠落していることが露呈した。この分野では十分魅力ある価格提示とともにしたたかな交渉力が必要だ。
  13. 日本にとって道はまだ長いようだ。
Purnendra Jain is Professor in the Department of Asian Studies, University of Adelaide, and a former president of the Asian Studies Association of Australia.
This first appeared in East Asia Forum here

2017年2月18日土曜日

★米中武力衝突は不可避なのか、でも尖閣諸島が理由ではたまらないというのが米国の考え方



日米安全保障の適用対象だと尖閣諸島問題を楽観視する向きがありますが、意味のない戦いにわざわざ米国が参入するとは考えにくいですね。尖閣さらに沖縄への中国の関心が気になりますが、西側陣営は中国の力が変な方向に行かないようにソフトな封じ込めが必要です。米側がすでに対中戦シナリオを検討しているのは明らかですが、結局そのような事態が発生しないよう祈るばかりです。ただし、自由と独立が侵される事態には黙っていられませんので、結局軍事衝突が発生するのでしょうか。考えられない事態にも備えておくべきですね。

The National Interest

Are the Senkaku Islands Worth War Between China, Japan and America?

More like World War III.
Japanese F-15DJ. Wikimedia Commons/Creative Commons/@Cp9asngf

February 12, 2017


  1. 大規模戦闘は時として小さな事件から始まる。第一次大戦ではドイツの「鉄血宰相」オットー・フォン・ビスマルクが欧州大戦は「バルカンでの馬鹿げた出来事」から勃発すると正確に予見していた。そのとおり王族の暗殺事件をきっかけに欧州で大戦が始まり、世界規模に拡大した。
  2. 発足したばかりの米共和政がカナダ国境をめぐる主張で英国を脅かしメキシコ派兵で領土権を主張した。成熟度を増した米国はその後フィリピン独立勢力と長い戦闘を繰り広げ、米西戦争で獲得した新領土を守ろうとした。
  3. 同盟関係から戦争への道が早まることもある。ロシア、ドイツの支援を当て込んだセルビアとオーストリア・ハンガリー帝国は無謀にも1914年夏に妥協の余地を見せなかった。柔軟性を示したところで開戦は避けられなかったが、同盟を後ろ盾に柔軟性をなくせば開戦は確実だ。
  4. 歴史を見ればアジア太平洋地区の領土争いに危険がひそんでいることがわかるが領土主張の対象地点で開戦に値するものは皆無だ。それでも一世紀前のサラエボのような発火点になる可能性はある。ジム・マティス国防長官は日本訪問で米政府が日本の主張をしっかりと賛同していると示し危険度を引き上げた。
  5. 尖閣諸島を中国(PRC)は釣魚諸島と呼ぶが無人の岩だらけで無価値の場所だ。だがその位置から漁業、航海、資源上での効果が期待できる。国民感情も増大している。日本政府が実効支配中だが中国も権利を主張している。北京の言い分は南シナ海の場合よりは理にかなっていると見るが、日本は領土問題そのものが存在しないという立場だ。
  6. このためPRCが自らの「権利」を主張すると対立につながる戦術しか道が残されていない。日本政府の2012年尖閣の直接管理で国家主義者の抗議に先回りした格好だが、当時でも緊張が高まっていた。翌年に中国が防空識別圏に同島を入れたものの、今までのところADIZは象徴的に留まっている。PRCは近隣で漁業・石油掘削もおこなっており、沿岸警備部隊を現地に送り中国の活動を守っている。
  7. 日本もオバマ政権時に安保条約で同地が含まれるとの言質をとり一安心し、譲歩の余地なしとの姿勢だ。マティス長官も同様に明確な発言をした。長官は日本防衛への米国政府の支援にとどまらず、以下発言している。「両国の長期政策のうえで尖閣諸島の位置づけを明確にした。米国は今後も日本による同島の統治を認め、日米安全保障第五条の適用対象であるとも認識する。」言い換えれば、日本の主張を米国が擁護するということだ。
  8. PRCは鋭い反応を示した。米国は「問題を複雑化し域内情勢を不安定化することは避ける」べきだと中国外務省報道官Lu Kang陸慷が発言した。同報道官は日米安全保障条約は「冷戦時の産物であり中国の主権および正当な権利を侵害してはならない」と述べた。
  9. ただでさえギスギスする空気にさらに火を注いでいるのは両陣営に開戦は避けられないとの見方があることだ。たとえば、一年未満前にトランプ陣営の戦略専門家スティーブ・バノンは「疑いなく」「南シナ海で今後5年から10年で戦争になる」と述べていた。バノンは中国側が「しゅんせつ工事で不動空母を作り、ミサイルを運び込んでいる」と不満を述べている。尖閣諸島は南シナ海の一部ではないが同じ原則が適用されるだろう。
  10. さらにレックス・ティラーソン国務長官は資格確認公聴会で開戦一歩前に聞こえる発言をした。長官は「中国には明確な意思を示す必要がある。まず人工島造成をやめさせ、次に各人工島へのアクセスもできなくさせる」と述べ、これを武力で行えば戦争行為となるのは明らかで米国も例外ではない。
  11. このような見解に政治上層部は態度を明確に示していない。中南海にいる中国最上層部は気軽に所見を放送で示さない。ただし、ユーラシア・グループのイアン・ブレマーの意見では「中国政府はトランプ政権との直接対立の危険に憂慮している」とし、習近平主席は容赦無い圧政をしても理屈が通る実際主義者のようだが中国の「中核」的権益を放棄するつもりはない。さらに国家主義者や古い考えのままの左翼勢力が経済政策では意見を異にしつつ米国への不信では共通している。
  12. 双方に見られる開戦が不可避とする考えが現実のものになる可能性はある。第一次大戦の勃発前にはヨーロッパの高官は戦争が近づいているとの実感があった。そのような層には1914年8月の開戦を受け入れることに抵抗はなく、勝利はすぐに手に入ると思っていた。
  13. 米中戦の場合は、そのような感情から軍事支出の増加にはずみがつきそうだ。トランプ政権は米国の重要権益に脅威がないにも関わらず軍事支出増を狙っている。むしろ軍の増強は中国を筆頭に他国への干渉を行う実力を増やすだけだ。
  14. そうなるとPRCもさらに反応を強める口実が生まれる。米国が自国の中核的権益を脅かしていると(立場が反対なら米国も同じことを言うだろう)主張する。米国が近隣に軍部隊を増強すればPRCも対応する。マティス長官の訪日のあとで中国は尖閣諸島に軍艦三隻を派遣している。危険な衝突の可能性もそれだけ増える。
  15. ワシントンにはもっと強い対応を主張する向きがあり、PRCは弱く米国は一層有利だとし、同盟国多数が強力な軍部隊を展開できるというのだ。このとおりなら軍事衝突は早期にでも発生するのが避けられなくなる。
  16. 武力対決が数年間に続くことになるかもしれない。米国は自国領土、国民、憲政、経済の仕組みを守ることが大きな関心事だが、中国はいまのところそのいずれでも脅威となっていない。米国は各同盟国の独立を守ることにも大きな権益を有しており、アジア太平洋の航行の自由でも同様だ。今のところPRCはいずれにも挑戦していない。
  17. ワシントンが東アジアでは中国国境までの支配を維持することを有利と考えるのは当然だろう。だがそれとアメリカ自身の権益を守ることは別だ。航行の自由と同盟各国との安全保障の維持にはそのような支配は絶対条件ではない。さらに重要なのは米国政策は中国の「中核的」国家権益ともろに衝突することだ。もし中国が米東海岸で同じような立場を表明し、カリブ海までを支配すると述べたら米国はどんな反応をするだろう。また中国を敗戦に追い込めるとの想定があっても助けにはならない。その代償が高すぎるのだ。中国は米国より急速にミサイルや潜水艦を建造できる。中国国民は本土防衛となれば一致団結するだろう。アメリカから見れば遠隔地での戦争に巻き込まれることを忌避したくなるのは当然で米政府の思い通りに展開しないかもしれない。
  18. さらに米国は直接影響のない地域の同盟国からの支援を頼りにする。日本は米国の「航行の自由作戦」には参加しないと明言している。稲田朋美防衛大臣は「マティス長官には日本は米国による航行の自由作戦を支援すると申しあげたが自衛隊の派遣はない」と述べている。
  19. 最後に米国が「勝利」しても同地には敵対感情が長期にわたり残るのは必至で将来再び衝突が発生するのは確実だ。大戦二回でドイツは世界秩序に組み入れられた。これを「わずか」二回と見るべきか、ただし二回目の終了でドイツは東西に分断されている。PRCが国家として崩壊する可能性はあるが、実際にはそうなりそうもない。軍事で敗北すると国民感情に火がついて結局中央集権体制が強化されることがある。
  20. 共産党支配の体制は崩れるだろう。だがその反動でもっと強圧的な政府が生まれるのであり、民主政は期待薄だ。また民主国家といっても国家主義や国民に媚びを売る政策に走る可能性の方が高い。不可避と言われる「第二次中米戦争」がワシントンに有利な形になるのかわからない。第三回目もありうる。戦闘とは犠牲多数で得る物は少ないことに米国は気づくだろう。それが戦争だ。こんな体験はアメリカとしても回避したいところだ。
  21. 米政府として開戦したら発生する犠牲を中国に自覚させ、領土問題に端を発する問題は平和的に解決すべきと伝えるべきだ。同時にトランプ政権は同盟諸国に自らの対処や場合によっては交渉そのものも不要にしかねない空小切手を切るべきではない。小切手を現金化すると大変な結果が生まれることがある。帝政ドイツがオーストリア・ハンガリー帝国を支援したことで欧州は第一次大戦の深みに入ったのだ。
  22. 尖閣諸島に日中両国にとって大きな重要性はないし、米国にとっても同様だ。だが地政学ゲームの度胸試しという危険な遊びの中心として日中戦争が再び始まる可能性はあり、その結果も悲惨になるはずだ。またもし事態が米中戦争に発展すれば、その結果は予め想定することもかなわない。ドナルド・トランプ大統領は中国の野望と力が増える中でこうした危険を忘れてはならない。■
Doug Bandow is a senior fellow at the Cato Institute and a former special assistant to President Ronald Reagan.
Image: Japanese F-15DJ. Wikimedia Commons/Creative Commons/@Cp9asngf



2017年2月17日金曜日

F-35Bの岩国へ移動中に空中給油一機あたり10回という事実 


海軍海兵隊の給油方式が違うため、今回サポートにあたったのはKC-10でしょうか。はやくKC-46を供用開始しないといけませんね。中国が狙うのがまさに給油機等の支援機で主力機の運用を狭めることが目的なのには要注意です。
Aerospace Daily & Defense Report

How Often Does The F-35 Need To Refuel?

Feb 14, 2017 Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

Sgt. Lillian Stephens, USMC

米海兵隊のロッキード・マーティンF-35飛行隊がアリゾナから日本まで長距離移動をしたが同機の大洋横断飛行に空中給油の回数でペンタゴン内部で静かな論争が続いている。
  1. ユマから岩国までの飛行にF-35Bの10機編隊は7日をかけた。民間旅客機なら24時間未満の距離だ。これだけの時間がかかったのは多くの要素が絡んだためだ。軍用戦闘機をA地点からB地点に移動させる際には途中の地形やパイロット疲労度など考慮すべき点が多い。ただし空軍が採用する安全重視の空中給油モデルを適用し、海兵隊機は総合計250回の空中給油が必要となった。これについて海兵隊パイロット部門のトップが海上横断飛行で本来効率がよいはずなのに多すぎると不満だ。
  2. 「同機は追加タンクを搭載したF-18より足は長いのに、どうしてここまで空中給油が必要なのか。こんなにいらない」とジョン・ディヴィス中将(海兵隊航空総監)は述べる。「必要以上だった。多分二倍だろう。もっと効率良くできたはずだ」
  3. ディヴィス中将によればJSF向け空中給油の想定が「必要以上に慎重だった」が、空軍が決めることで海兵隊航空隊として変更を求めるつもりはない。
  4. 航空運用で見落とされれがちだが、給空中給油が地球規模の作戦展開の前提条件だ。戦闘機は燃料を大量に消費し、F-35も例外でないと空軍報道官クリス・カーンズ大佐は言う。1月18日から25日にかけての岩国への渡洋移動飛行は給油機を9機動員し、計766千ポンドを合計250回の給油した。一機あたり25回とカーンズ大佐は説明した。
  5. 海兵隊にも給油機があるがKC-130のため、今回の空中給油は空軍機しか利用できなかった。
  6. 空軍のスコット・プレウス准将に言わせれば海兵隊機に何回も空中給油をしたのは当然だったことになる。空軍は洋上移動飛行では最悪の場合を想定し、空中給油が失敗した場合でも安全に着陸できるようにしているとプレウス准将は説明。たとえば今回のF-35Bは給油用プローブを伸ばしたまま飛行して抗力が大きく増えたが、これはプローブを格納できなくなった場合をシミュレートしたのだという。
  7. 「そこまで想定して立案し、最悪の風の影響、機体の最悪の状況も配慮して最悪の場合どうなるかをいつも考えています」と自らもF-16パイロットだったプレウス准将は述べている。「生死がかかるので慎重にならざるを得ません」
  8. これまでの空軍の大洋横断飛行では「ほぼ連続」方式で30分から40分おきに空中給油しているとプレウス准将は説明。F-35Bの搭載燃料は空軍仕様のA型より5千ポンド少ないため、空中給油の回数は多くなると言う。
  9. プレウス准将はデイヴィス中将の主張を退け、空中給油の時間間隔を伸ばせばパイロットのリスクが高まるだけと主張。
  10. ただし有事シナリオでは空軍は全く違う計算で動く。6時間ミッションなら空中給油は二回か三回と空軍関係者は述べる。ミッション前に燃料を満タンにしておくことが重要なのは給油機が戦闘区域で脆弱な存在だからだ。
  11. 戦闘機ばかり脚光を浴びることが多いが、空中給油機も国防上で同様に重要な存在で、給油機がなければF-35は地球規模の活躍は無理だとカーンズ大佐は強調する。
  12. 「F-35や計画中の次世代戦闘機や爆撃機の要求性能から給油機も次世代機に更新しないと迅速に世界各地への移動ができなくなります。事態は分秒きざみで流動しますからね。戦闘機部隊を拡充すれば、世界規模で給油機需要も増え、敵も給油機を狙ってくるはずです」■

2017年2月16日木曜日

★T-X競合の最新状況:ボーイングは受注失敗で勝つことになるのか



要はメーカーとしての旨味のない契約になるのなら最初から参入しないということでしょう。まだ残る各社も受注してもあとが大変と見ているかもしれません。これでは要求どおりの機体が実現しないではないでしょうか。どこか間違っていますね。まず、米空軍の要求内容が米国でしか通用しない、世界市場を意識していないこと。これは純粋のアメリカ製自動車にも通じますね。次に練習機、軽戦闘機、軽攻撃機、ISR機のわくぐみにとらわれない低価格、低運行費用をめざしグローバルに需要を喚起できる機体を想定していないのが問題ではないでしょうか。それをボーイングだけに期待できるかと言われば株主の手前、無理でしょう。したがってT-Xはだれも幸せにならない事業になりそうです。

Aviation Week & Space Technology

Opinion: T-X Is Lockheed’s To Lose, And Boeing’s To Win

Feb 14, 2017 Richard Aboulafia | Aviation Week & Space Technology


  1. 米空軍のT-X練習機受注を巡る競争でノースロップ・グラマンが完全新型試作機まで作りながら参入しないと先月に社内決定した。レイセオンレオナルドのM-346原型のT-100で競合する予定だったが共同事業から降りてしまい、レオナルドは単独で非米国企業として参入するとみられる。
  2. 1月1日には4社が競う形だったのに今や二社が残るのみだ。ロッキード・マーティン韓国航空宇宙工業(KAI)のT-50Aを、ボーイングSAABと共同で完全新型設計で臨む。シエラ・ネヴァダが加わるかもしれない。ボーイングとロッキード・マーティンで事情が異なる。
  3. 脱落組には理由がある。T-Xの提案要求(RFP)最終版は昨年12月に発表されたが、基本的に価格競争になり、KC-X給油機競合の際と大差ない構造だ。RFPでは性能が優れていれば価格調整が可能となっているが、最大でも400百万ドルしかなく、総額160億ドル以上といわれる契約規模に比してきわめて少額だ。整備費で改善効果があるといっても評価されにくい。ライフサイクルコストの最大値が明記されているが、それを下回っても評価されない。
  4. T-Xでは開発費が超過してもある程度までは契約企業の自己負担となる。KC-Xがこの方式を採用して結果はボーイングはKC-46で15億ドルの損失を計上している。
  5. この条件で受注を狙う企業は既存機種を使うか、戦略的な選択を迫られる。ロッキード・マーティンは前者で、ボーイングは後者だ。ノースロップ・グラマンは新型機を持ち出し、一方でB-21の重要な契約を抱えながrそのどちらでもなかった。レイセオンはホーカー・ビーチクラフトを10年以上前に吸収合併したものの新型機は製造しておらず、レオナルドの既存機M-346で参入を目論んだが、入札は無理と判断した。
  6. T-50とボーイングT-Xは優秀な機体になるが、性能上での差がつけにくい。RFP内容からは特にそうなる。両機種はGEのF404エンジンで共通し、ともに他の候補機に比べ性能上の差別化はむずかしい。ロッキード・KAI連合の優位性は開発費をまるまる入札価格に入れなくて良い点だ。T-50は既存機種でリスク関連での価格調整の恐れが少ない。
  7. ボーイングの場合は完全新型機の開発費用をどこまで償却できるかで決まり、需要がどこまで期待できるかが肝心な点となる。経常外費用はSaabと分担するはずだが、Saabもある程度の裁量はほしいだろう。
  8. 開発費用を15億ドルとすると、また調達規模が350機だとすると、一機あたり4.3百万ドルの追加費用に相当する。T-Xの機体単価自体は20百万ドル未満と見られ、この追加分は相当の規模となる。RFPで想定するリスク調整の糊代が小さいことが気になる。だがボーイングが総需要を1,000機と想定すれば超過分は1.5百万ドルの範囲に収まり、管理可能だ。
  9. 問題は1,000機需要が想定にすぎないことだ。ボーイングは機体をT-X事業に最適化しており、超音速高等練習機の世界需要は小さい。軽戦闘機の需要はたしかにあるが、機体構造と練習機としての特徴からボーイングT-Xが軽戦闘機として有効に機能できるか不明だ。T-50もFA-50軽戦闘機としての採用実績があるものの、需要が小さいことに苦労している。ボーイングがT-X650機を世界各地で販売できるかといわれればきわめて困難だろう。
  10. したがってボーイングに大きな疑問がついてまわる。同社が本当に米空軍契約の受注をめざすつもりなら、コストを非現実的な規模の機数に広く織り込む必要があり、将来的には欠損も覚悟しないといけない。これをしない場青、ロッキード=KAI連合が受注することになるが、同連合も相当の価格提示をしてくるはずだ。そうなるとロッキードが受注して損を覚悟し、ボーイングは受注しないことで勝つことになる。
  11. 米空軍の立場で見れば、T-XのRFPチームは当初の有力4社をすでに二社に絞り込んで着々と仕事をこなしている形だが、それでも残る二社による競合が期待できる。空軍は予想より見返りが少なくなりそうな案件の交渉を進めることになりそうだ。■
Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington.
The views expressed are not necessarily those of Aviation Week. ​



★★ボーイングが売り込むブロック3のスーパーホーネットはステルスより攻撃力、通信力を重視した健全な方向性



いかにも商売上手なボーイングですね。しかしF-22といいF-35といい通信仕様が他機種と違うためデータ共有が難しいというのは問題ではないでしょうか。軍用機の世界は機体供用期間の延長に進んでいきますね。新規製造機体はますます少なくなっていくのでしょうか。
Aviation Week & Space Technology

Boeing’s Souped-Up Super Hornet Adds Smart U.S. Navy Firepower

Feb 14, 2017 Lara Seligman | Aviation Week & Space Technology

Boeing Super Hornet “Block 3” fighter
ボーイングは改修型スーパーホーネットの「ブロック3」の売り込みをねらう。Credit: Boeing
ドナルド・トランプ大統領がF-35CとF/A-18を組み合わせた2020年代以降の空母航空戦力の編成見直しを示唆したことで、ボーイングはスーパーホーネットの「ブロック3」改修案まとめを急いでおり、攻撃力を強化しながら米海軍の導入する次代ネットワークで有能性を発揮させるとしている。
  1. F-35C1号機が2018年にオンライン状態になる見込みの中、F/A-18 E/Fスーパーホーネットは2040年代にかけて空母航空戦力の半分を構成する見込みだ。課題はスーパーホーネットを今世紀中頃まで敵の高性能脅威に十分対応できるよう維持することだ。同機の原設計は1990年代である。
  2. スーパーホーネットの将来像はここ数年で内容が変わってきた。ボーイングは「発展型スーパーホーネット」を2013年に提案し、ステルス性を重視していたが、今回のブロック3では海軍の統合ネットワーク構造での最適化を目指しているとボーイングでF/A-18とEA-18を担当するダン・ジリアンは説明している。
  3. 空母航空戦力での2030年まで続く大課題はジリアンに言わせると「スーパーホーネットを進化させてE-2Dホークアイやグラウラーと補完しつつ空母ギャップ問題にどう対処させるか」だという。
  4. ボーイングは海軍はスーパーホーネット・ブロック3の調達案の詳細を2018年度予算要求の段階までにまとめると見ている。今春後半だ。2019年度の調達となればボーイングは生産ラインを2020年代はじめまで維持できるとジリアンは見ている。
  5. トランプ発言が出てから高性能版スーパーホーネットの話題が再び浮上してきた。ロッキード・マーティンにつらい状況になったのはトランプがボーイングに価格提示を求め、F-35と同等の性能をもたせたスーパーホーネットをF-35C代替策として想定したことだ。それを受けてジェイムズ・マティス国防長官も二機種の比較検討を省内で命じている。
  6. ただしジリアンもブロック3がF-35Cの代替として空母航空隊で運用できるのかは明確に述べていない。ボーイングの主眼は「補完能力」であり海軍が両機種の最適構成を決定するはずとだけ述べている。
  7. ジリアンはブロック3のスーパーホーネットはステルス機のF-35C、グラウラーの全スペクトラムジャミング能力、E-2Dの早期警戒能力と組み合わせて制空任務が全うできると見ている。長距離赤外線センサー(IRST)の追加によりブロック3機は相当の距離から敵を探知追跡できるようになる。機体一体型燃料タンク(CFT)により航続距離は100から120カイリ伸び、主翼下の追加燃料タンクは不要となるので重量軽量化と抗力が減り、その分ペイロードを増やせる。
  8. これで完全装備のブロック3スーパーホーネットはF-35とともに防空任務をうまくこなせるようになり、攻撃力も増える。
  9. 「F-35はステルス性を活かして敵地奥深く送り、スーパーホーネットに航空優勢を長距離で確保させる、あるいはスーパーホーネットにF-35が搭載できない大型スタンドオフ兵器を搭載させ、F-35に防空任務を担当させる」とジリアンは説明し、「ミッションの柔軟性が生まれ、航続距離が重要になります」
Boeing Super Hornet “Block 3”
ボーイング提案の最新版スーパーホーネットの売りは追加兵装搭載能力、長距離IRST、機体一体型燃料タンクだ。Credit: Boeing

  1. 2013年の提案内容には密閉型兵装ポッドや機体内部搭載IRSTセンサーがあったが、今回のパッケージでは省かれている。これはボーイングの分析でスーパーホーネットの「ステルス性は十分あり」完全装備で飛んでも残存性が期待できるからだ。ボーイング技術陣は設計上の妥協により同機のレーダー断面積を減らすことは可能だと判断した。例えばペイロードに制限をかけることがある。
  2. ブロック3ではコンピュータ性能を向上させて将来の空母航空隊に導入される高機能センサー装備の活用をめざす。コックピットは大画面ディスプレイを導入してユーザーインターフェイスを改良するため、強力な処理能力を持つ分散型目標捕捉プロセッサーネットワーク(DTPN)および大型データパイプで戦術目標捕捉ネットワークテクノロジー(TTNT)の情報を流す。TTNTはすでにグラウラー、E-2Dで稼働中で、グラウラーではDTPNも搭載済みだ。
  3. 「IRSTがあり、別のセンサーが空母航空隊で使用可能となると大量の情報を流す大型パイプが必要となり、コンピュータも高性能化し情報すべてを融合させることになる」とジリアンは述べており、「ブロック3スーパーホーネットはネットワーク上で有益なノードとなり、大量のデータを流し、ネットワークを介し他の機体と共有します」
  4. この高性能コンピューター構成によりスーパーホーネット、グラウラー、E-2Dは相互に交信し重要な戦術データを同じネットワークでで流すことができる。ただしF-35はTTNTを利用できず、かわりに帯域が小さいリンク16ネットワークで情報の送受信を第四世代戦闘機と行う。
  5. その結果、F-35Cは空母航空隊の他機と通信できても大量データのやりとりは簡単ではない。
  6. 第五世代機から第四世代機への接続の改善議論はまだ続いているが、「この課題はF-35を他の機体にどう接続するかでしょうね」とジリアンは述べ、「他の機体がみんなTTNTを使っているのなら答えは明らかですね」
  7. 海軍はTTNTをF-35のリンク16機能に追加するだろうが、同機はリンク16の波形でデータを送ればステルス性に目をつぶることになる。と言うのはリンク16は探知困難な波形を使っていないからだ。F-35は大量データを別のF-35にはステルス性多機能高性能データリンクを通じて行うが、他の機種では利用がほとんど出来ない形式だ。
  8. もう一つ今回の提案内容と2013年版の違いがある。ボーイングは9千時間以上の稼働が可能な機体を生産可能と主張している。現在進行中の既存機の耐用限界を現行の6,500時間から9千時間に延長する作業と相まって、海軍は同機の活用を続けることが可能となるとジリアンは説明する。
  9. 海軍はまだブロック3への態度を明らかにしていないが、ジリアンは新型の性能内容には海軍が多大の関心を示すはずと見ている。
  10. 「スーパーホーネットで進化が必要です。2020年代から2040年代まで稼働する機体ですからね。ブロック3スーパーホーネットで空母航空隊の能力ギャップを埋めながらF-35、E-2Dやグララウーと補完して活躍できる日が来ます」■


2017年2月15日水曜日

★B-21を大統領専用機に転用してはどうか



大統領専用車はテロ攻撃、化学攻撃に耐えるモンスターと言われていますが、専用機もその延長でB-21を改造すれば良いとの大胆な意見です。ただし、非軍事用途だと証明せずに各国の空港に乗り入れできるでしょうか。次代の大統領が「平和主義」なら搭乗に躊躇するのでは。また民生空港ではタラップも使えず、大統領の姿が屈辱的なかがみ込んだ姿で登場すれば大変です。(ここらは機体形状を改修して解決できるでしょう)実現すれば21世紀の大統領専用機らしくなり世界に知れ渡るでしょうが、可能性はどうでしょうか。日本は早々にB777を採用していますが、レガシージャンボのVC-25はまだまだこれからも飛ぶことになりそうですね。

Aerospace Daily & Defense Report

Presidential Bomber? Report Touts B-21 For Air Force One

Feb 10, 2017 James Drew | Aerospace Daily & Defense Report

B-21の「大統領専用爆撃機」が太平洋上空を移行する想像図。
James Drew, Aviation Week

国防アナリストの検討会から米空軍がすすめるボーイング747-8原型とするエアフォースワンのかわりにノースロップ・グラマンB-21ステルス爆撃機の改修案あるいはボーイング737フリートを軍用にする案が浮上した。
  1. 検討はライト・ウィリアムズアンドケリー(WWK)(コスト管理ソフトウェア・コンサルティング企業)の依頼で、747-8二機ないし三機を軍用仕様の専用機に改修する費用が莫大になるとドナルド・トランプ大統領が問題意識をもっていることを踏まえ、軍用仕様そのものを見直せば費用を大幅に圧縮できると指摘。現時点の要求水準ではエンジン四発、随行員70名以上の収容を求めている。最新鋭航空機が双発でも十分に安全かつ信頼性が高いことを考慮し空軍は代替策を検討すべきであり、ボーイング747-8あるいはエアバスA380しか検討対象にしていない状況を変えるべきと主張。
  2. 昨年12月にトランプは大統領専用機代替事業(PAR)をこき下ろし、推定32億ドル費用に批判の目を向け「制御不能」とツィッターで述べた。ジェイムズ・マティス国防長官は抜本的見直しで費用削減を求めている。ペンタゴンの再検討では自律運用能力、機内発電容量、空調、残存性ならびに軍用・民生通信能力に中心を置いている。だが機体の変更はないのだろうか。
  3. WWK報告の主筆ダニー・ラムは報告書ではB-21と737を中心に捉えたと述べる。ボーイング767やエアバス、ボンバルディアエンブラエルの外国勢も検討したが、ロシア・中国製の機体は対象外。
  4. 安上がりにするのなら737多数を採用することだ。同機はすでに軍用用途に多数利用されている。このうち737-700が原型のC-40は米海軍、空軍で運用中だ。737はP-8Aポセイドン対潜哨戒機として海軍が飛ばす他、オーストラリア、インド、ノルウェー、英国が運用する。またオーストラリア、韓国、トルコは同機を早期警戒統制機に転用している。ボーイングはE-8C共用監視目標攻撃用レーダー機(STARS)、EC-130Hコンパスコール、RC-135リベットジョイント各機の後継機として737を提案中だ。
  5. CFM-56-7Bを搭載したC-40B型C型は米空軍では111名までの輸送が可能で、空中給油なしで5,000カイリまで飛べる。つまりアンドリュース共用基地(メリーランド)からフランス、ドイツ、英国、南アメリカ、北アフリカまで一気に飛べる。またトラビス空軍基地(カリフォーニア)で途中燃料補給すればハワイまで飛べるし、日本にも到達できるはずだ。P-8Aは737-800ERXを補強した形で完全装備の場合はそこまで長距離は飛べないが、空中給油装備があり、軍用無線交信データリンク装置をつけ、エアフォースワンとなる747-8の通信能力と遜色はない。
  6. 「747で必要な装備はすべて737で利用可能」とラムは指摘する。747を軍用に転用すると言っても同機は販売不振で生産中止になりそうな機体だ。「737原型なら必要条件はほぼ全部満足しつつ、安価にできる。737は今後30年間は飛行しているはずだ」
  7. 737はボーイング商用機で最小で小規模空港でも利用できるが、大型747-8ではそうはいかない。大統領を乗せるための改修内容は多岐に渡るが、海軍が核戦争の際に大陸間弾道ミサイル発射の指令コードを空中から送るボーイングE-6マーキュリーでも早晩後継機が必要となり、指揮命令機能を備えた新型機はオーストラリア、カナダ、ドイツ、日本、英国の各同盟国でも必要とされるかもしれない。
  8. ラムはより大型の767-2C(米空軍向けKC-46ペガサス給油機の原型)も検討価値がある。「だが民間機737の方が有利」という。
  9. B-21採用案の中心は安全性だ。ラムは高性能地対空ミサイルが普及しており、「非国家戦闘集団」がエアフォースワンの脅威となると747-8では脆弱だと指摘。
  10. 「747はレーダーで格好の標的でB-52と同じ大きさに写ります」といい、「B-21はステルス機で核爆発にも耐える重度防御を施しています。機内はかなり窮屈ですが、何と言っても残存性が高い。特に二機、三機を同時に運行する場合です」
  11. B-21の詳細は極秘扱いだが開発は昨年始めに始まっており、試作各型はその前に制作済みだ。就役開始は2020年代なかばとなる。747-8が現行の747-200B原型のVC-25大統領専用機材に交替するのは「2024年想定」と空軍は説明している。
  12. 報告書では大統領専用機に爆撃機の転用案を分析するにあたり情報公開の扱いのノースロップB-2スピリット爆撃機を基本にしたとラムは説明。同機の兵装庫他の部分を取り外し、数名の人員輸送用に改装する。B-21は長さ20フィート重量30千ポンドのボーイング性大型貫通弾を搭載する予定で、兵装庫の大きさを推定できた。
  13. ただし同乗者全員が乗れないため、737およびB-21両案では追加機が残りの政府関係者、軍支援要員や報道陣を運ぶ。最重要ではない要員は大統領専用機から一定の距離を保ち安全を確保した機体から暗号化データリンクで通信を維持できる。
  14. 大統領用ヘリコプターや装甲リムジンのような大型貨物は今でも軍用輸送機が運んでいる。ボーイングC-17グローブマスター、ロッキード・マーティンC-5ギャラクシーやC-130ハーキュリーズが使われている。空中給油にはボーイングKC-135ストラトタンカー、KC-10エクステンダー、KC-46を使う。
  15. 国家としての威信を示す意味ではラムは747「ジャンボジェット」では1970年代と同じ効果は挙げられず、747そのものが間もなく姿を消すと指摘し、エアバスA380「スーパージャンボ」も同様だとする。二機あるVC-25は全米で今も稼働中の747-200の唯一の例だ。ラムは両機を予備に確保し、長距離飛行用や北京やモスクワと言った米政府が高性能ステルス機の駐機は回避したいと思う場所への移動用に使えば良いとする。
  16. 「どんなイメージを伝えたいのでしょうか。製造中止になった機体を使いますか。気を抜けば戦争になりそうな国にも行くんですよ。これは政策で決めることとはいえ、米大統領を奇襲攻撃で死亡させようと企む勢力でもしっかり防御され重武装の機体が複数現れれば考え直すのではないでしょうか」
  17. エアフォースワンを運用するのは第89空輸飛行隊でアンドリュース共用基地を本拠とする。短距離ヘリコプター移動は海兵隊第一ヘリコプター飛行隊(HMX-1)によりシコルスキーVH-3D、VH-60N、ベル=ボーイングMV-22Bを運用しており、今後VH-92Aが加わる。ヴァージニア州クアンティコに基地がある。
  18. 1980年代製のVC-25各機は今年中に耐用年数の30年を超える。空軍は大統領の空輸ミッションでは「失敗が許されない」とし、移動中も大統領に国務、軍の指揮に必要な居住空間を確保し「世界中どこでも空にいながら」各国元首にも連絡できる環境を提供する。核戦争の場合でも運用が必要となるため機体は電磁パルス他の障害に耐えるべく強化されている。2013年9月に公表された要求性能内容について昨年12月合計21社が説明会に参加した。選定はボーイング、エアバスに絞られたが、エアバスは機体のみの提供に止めたいと希望し、主契約企業になる意向はなかった。空軍は2015年に747-8案を採用し、ボーイングに同年末に提案提示を求めた。すでに同社には空軍から170百万ドルがリスク低減用に交付済みで今年中に初号機の機体購入になるはずだったが、まだ正式契約になっていない。
  19. トランプはVIP飛行にはなれている。自身でボーイング757-200を「トランプフォースワン」と呼び特別改修しており、選挙運動中に各地を移動していた。「シェパードワン」はローマ法王が使うアリタリア航空のA321法王専用機のことで、2015年9月にワシントンに飛来している。
  20. その他メキシコはボーイング787-8ドリームライナー特別改装機を空軍に運用させている。オーストラリア首相は以前はボーイングビジネスジェットをリースで使っていたが、今は空軍のエアバスKC-30A多用途給油輸送機で移動している。■


2017年2月14日火曜日

トランプ政権はISIS壊滅に向けてどんな動きを示すだろうか


トランプ政権が発足してから変化の流れが早くなっている気がします。以下ご紹介の記事でも前提としていたフリン補佐官が辞任してしまいました。ISISとの戦いはまだまだ続きそうですが、新政権の新思考で事態をうまく展開してもらいたいものです。

The National Interest

Here's How Trump's Pentagon Could Take On ISIS

February 7, 2017


ドナルド・トランプ大統領は国防長官および統合参謀本部議長にイラク・シリアのイスラム国(ISIS)に猛然と対決する案の作成を求めている。また大統領執行令では案の提出は2月末締切となっている。
電話一本で済む指示をわざわざペンタゴンまで足を運んで署名式を開催したのは大統領がISIS問題を真剣に捉えていることの現れだ。新政権の中東政策はまだ固まっていないが、いかなる政策になろうともISIS打倒が最上段に乗るのは間違いない。選挙運動中は「奴らをふっとばす」と主張していた大統領の公約はISISには海賊集団の末路を準備する(つまり壊滅)として政策に落とし込むとする。
ペンタゴン上層部にはオバマ政権時からの選択リストがあるが、前大統領も対ISIS作戦としては有効とは見ていなかった内容もある。ダンフォード統合参謀本部議長はISIS問題でトランプ大統領、ペンス副大統領と繰り返し会見しており、ホワイトハウスにもペンタゴンから出てくる提案内容は察しがついているようだ。いずれにせよ国家安全保障会議は今後30日間で考えられる選択肢全部を深く検討するだろう。
提案内容はおおむね以下に要約されるはずだ。
1. 戦術裁量権を拡大する
世界共通の交戦時の指揮命令系統の原則があり、武力衝突では敵側が民間人を利用する傾向がある際には特にこれが重要だ。ISISはこの戦術を多用している。モスルでのイラク攻勢が長引きイラク治安維持部隊に多大な損害が生まれたのはおよそ百万人の住民が戦闘の真っ只中にいたためだ。ISISは抜け目なく米軍は多数の住民がいれば空爆を実施しないと踏んだのだ。
ISIS掃討作戦をモスルで加速すべく、ペンタゴン上層部は交戦規則の変更を命じることができたはずだ。イラク治安維持部隊と共同作戦中の特殊部隊にもっと裁量を与えるとか、支援航空隊に現在は禁じられている民間人被害のリスクを承知で攻撃させるとかだ。残念ながら目標リストが拡大すれば民間人殺傷のリスクも増えることになるのは特に人口密度の高い都市部にあてはまる。トランプ大統領が米主導の空爆で数百名の現地市民の犠牲もやむを得ないと判断すれば、モスル解放はもっと早く実現し、作戦展開ももっと激烈にできていただろう。
2. 地上部隊を増強する
6千名の米軍隊員がISIS攻撃の顧問ならびに特殊部隊として現地にいる。これは2006年から2008年の最盛期の150千名体制とは大違いだ。当時はイラクはばらばらになりそうな状況だったがこれがオバマ政権で甘受できる最大値だった。オバマ大統領は国内政治の風向きからイラク・シリア派兵はこれ以上無理と判断していた。またオバマは千名単位で米軍を増派し、最前線近くに送っても効果は少ないと強く信じていた。現地友邦勢力を増強すればよいのであり、米兵が戦い命を犠牲にする必要があるのか。
ただしオバマ政権時の前提は消えた。保安官が変わり、新保安官は結果を求めている。しかも迅速に。CNN報道ではペンタゴンは12千名までの追加部隊をシリアに投入する提案をする可能性がある。ISISが自称する首都ラッカの陥落のためだ。米特殊部隊が攻撃の先頭に立つだろう。残りの部隊はラッカ近郊に展開し、航空部隊に攻撃目標を指示する。これで米軍がISIS領土深くに進軍することになり、前政権の方針とは大きく変わる。シリア民主部隊含む現地友邦勢力が米軍部隊を助けるだろうが、その逆はない。
3. クルド人部隊に武器をもっと供与する
米軍はシリア民主部隊のうちアラブ人部隊をシリア北部で何度となく空中物資投下で支援してきた。この根底にはシリア国内のクルド人勢力がトルコに衝突するのを回避する意義があった。トルコはシリア国内クルド人勢力を徹底して憎んでおり米国政府はあぶなかしいバランスをとってNATO主要加盟国のトルコを怒らせず、トルコ国内のインチリック空軍基地から米軍機を引き続き運用可能とし、地上で実力を三年間にわたり実証済みのクルド人勢力にも良い顔をしなければならない。トランプ大統領は外交上の配慮など無視するかもしれない。もしシリア国内のクルド人戦闘部隊がISIS地上作戦で一番有効な勢力だとわかれば、米国はクルド勢力が求める武器を配布するだけの思慮があっていいはずだ。
4. 敵の探知、捕捉、壊滅
スタンリー・マクリスタル、マイケル・フリン両将軍が特殊作戦、情報収集をイラク・アフガニスタンで指揮していたころ、米軍はテロリスト拠点への強襲作戦を毎晩実施していたものだ。強襲して大量の情報を回収し即座に司令部へ送り分析され、さらに強力な戦闘集団への作戦に応用されていた。この動きはF3EADと呼ばれ、find探知し、fix目標をおさえ、finish全滅させ、exploit情報を回収し、analyze分析し、disseminate次回作戦に応用するとの意味だ。このやり方でイラクのアルカイダは2010年にほぼ壊滅状態に追い込まれた。
マイク・フリンはこのF3EDづくりに一役買っており、今やトランプ大統領の国家安全保障担当補佐官である。一般閣僚が堆積したあとで大統領と直接協議できる立場だ。フリンはF3EADの復活を主張し、情報収集面を強調する形に変える可能性がある。その目的はISIS指導部を根本から壊滅することだ。
トランプ大統領はどんな選択をするだろうか。国内政治面での逆効果をあえて甘受しても数千名の追加派兵をイラク、シリアで命じ、米軍の死傷者増加を受け入れるだろうか。あるいは前任者の政策を継承し、地上戦は現地軍に任せ、米軍は空爆を強化するだろうか。最高司令官の検討課題は多いようだ。■
Daniel R. DePetris is a fellow at Defense Priorities.
Image: U.S. Marine Pfc. Garrett Reed during a security patrol in Garmsir, Afghanistan. Flickr/DVIDSHUB

北朝鮮の北極星2号ミサイルは日本に向けて発射されていた


どんどん技術を磨いていく北朝鮮には恐ろしいものがあります。国内の惨状には目をつむり国家財政を傾斜的にミサイル開発につぎ込める同国ですが、日本はじめ各国はどう対抗できるでしょうか。まず韓国は国内をしっかり固めて貰う必要がありますね。このままでは先制攻撃もできない事態が生まれそうで、政治部門には技術に目を向けて状況を把握してもらいたいものです。

The Pukguksong-2: A Higher Degree of Mobility, Survivability and Responsiveness


13 February 2017
A photo of North Korea's Pukguksong-2 pictured during a test on February 12, 2017 (Photo: KCNA).
The Pukguksong-2 pictured during a test on February 12, 2017 (Photo: KCNA).

  1. 北朝鮮が打ち上げた弾道ミサイルを米韓日が報道している。北朝鮮は今年初めから大陸間弾道ミサイル打ち上げを示唆してきたが、今回のミサイルはICBMではない。報道によればミサイルは高度550キロまで上昇して北朝鮮海岸線から500キロ地点の日本海に着水した。韓国聯合通信は韓国軍統合参謀本部の評価としてノドン中距離ミサイルと最初に伝えた後ムスダン弾道ミサイルに固体燃料エンジンを搭載した可能性があると報道した。だが北朝鮮の労働新聞が「Pukguksong北極星2号、固体燃料ミサイル」の説明で写真を掲載しており、外見はKN-11液体燃料潜水艦発射ミサイルに類似している。KN-11は昨年8月に水中発射に成功しており、北朝鮮は「北極星1号」と命名していた。
  2. 当ウェブサイトはその他可能性も検討した。ICBMテストとして失敗したか、第一段だけの部分テストだったのか、今回の軌道は以前の北朝鮮ICBMで判明している第一段発射のパターンと合致しない。ICBMの速度に達していないが、ICBMに搭載する再突入体やほかの技術実証には有効に活用された可能性がある。今回の発射地点はKusong(亀城)近郊の軍用飛行基地であり、以前からムスダン発射に使われている。今回の軌道からみて可能性があるのはノドン中距離ミサイルあるいはKN-11であり、北朝鮮はKN-11を地上から発射する様子を公開した。
  3. 韓国統合参謀本部による評価とは別にこのミサイルにはノドン、ムスダンとの共通点がほとんどない。ムスダンの性能はないようだが、もっと効率のよい軌道に乗れば1200キロの射程は確保できるだろう。これだけあれば韓国、日本への到達は十分可能だ。問題はこのミサイルの機動性が高いことで、残存性、即応性もノドンをうわまわることだ。北極星2号はコールドロンチ用キャニスターに搭載されキャタピラ付きの搬送打ち上げ(TEL)車両で運ばれており、国内を縦横無尽に移動できる点がノドンの車輪式TELと違う。固体燃料方式では燃料運搬車両が不要で、所在が見つけにくくなる。また燃料の事前補充も不要なのでおそらく5分で発射できるはずで、ノドンで30分から60分必要だったのと大きく違う。総合すると北極星2号の探知破壊ははるかに困難になる。
  4. 今回のテストには政治的な意図があり発射のタイミングが問題だ。北朝鮮がミサイルを日本に向け打ち上げ意図的に海中に落下させたのが日米首脳がフロリダで会談している当日だったというのが単なる偶然でないのは確実だ。北朝鮮技術陣は今回のテストから多くを得ただろう。結果は成功と判定されている。実用化にはテスト発射一回では足りない。新型ミサイルが実用化され十分な信頼度を確保するまでいつまでかかるか不明だが今後もテスト発射が続けば完成度の進捗を測る手立てになるだろう。■