2017年3月7日火曜日

★★これが北朝鮮攻撃のシナリオだ


文中では明確にしていませんが、韓国軍の役割が重要ですね。また日本の自衛隊がどう絡むのか、韓国が協同作戦を良しとするのか、それとも「国民感情」から拒絶するのか。滅亡が避けられないと悟れば北朝鮮は韓国も道連れにしようとするはずで文字通り国家存亡をかけた戦いになるのではないでしょうか。

The US is considering a direct strike against North Korea — here’s how it would go down

ミサイル発射実験、金正男暗殺を経て、米国は金正恩政権を狙う直接軍事行動の検討に入ったとウォールストリート・ジャーナルが伝えている。
  1. ドナルド・トランプ大統領は北朝鮮を最大の対外課題で最大の脅威と公言している。米国へ到達可能だと同国が繰り返し伝えるミサイルは「実現させない!」とツイッターで述べた。
  2. だが現実に北朝鮮の核開発能力を破壊すること、あるいは金正恩政権の除去は米軍の最良装備でも危険な任務だ。
  3. そこで Business Insider は Startfo rのシム・タック主任研究員(北朝鮮専門家)から対北朝鮮作戦がどんな形になるのか聞いみることにした。
開戦の決定

  1. 対北朝鮮軍事行動は簡単にはいかない。韓国の、場合によっては日本の一般市民ならびに太平洋地区の米軍に死者が生まれるだろう。作戦が一番円滑に行ってもこれは避けられない。
  2. 米大統領が軽々しく決断できる内容ではない。
  3. 北朝鮮核施設と地上部隊の全面的破壊をめざすのか、最重要核施設に絞った奇襲攻撃を加えるのかの選択を米国は迫られるだろう。
  4. 全面攻撃となれば「米国は長期戦に引きずり込まれる」(タック)ので迅速かつ意味のある攻撃で北朝鮮核兵器の大部分を除去する選択を重視するはずだ。
  5. 潜水艦、水上艦艇をゆっくりと位置につけ、ステルス機も北朝鮮付近の基地に配備するが北朝鮮の警戒心を招くことは避けるはずだ。
  6. 時が熟せば、爆撃機が出撃し、艦艇は火力を解き放つ。その時点で米軍は相当の軍事力を集めているはずだ。「唐突に記事が出て空爆開始を知ることになるでしょう」(タック)
  7. B-2はミサイル製造工場を空爆する。30千ポンドの地中貫徹爆弾で地下施設を狙うB-2はグアムあるいは米本土から運用されるはずだ。

最初の標的は
  1. 最初の標的は原子炉、ミサイル製造施設、ICBM発射台だとタックは見る。
  2. 巡航ミサイル多数が海上から発射され、F-22は防空網を無効にし、B-2は判明しているミサイル施設を破壊する。
  3. またF-35やF-22は移動式ミサイル発射装置を必死に探すが、山地に隠れているはずだ。北朝鮮がミサイル発射すれば、米韓ミサイル防衛網により迎撃される。

北朝鮮の報復を制限する

  1. 核施設が灰燼に帰し、指揮統制機能がほぼ全部破壊されても「北朝鮮にはまだ選択肢が残る」とタックはいい、「大規模な通常砲撃を韓国に向けて発射するはずだ」
  2. だが下図を見てもらいたい。北朝鮮砲撃のすべてがソウルに到達出来るのではない。ソウルには大規模地下避難所が整備され、市民の保護は短時間で可能だ。とはいえ、都市機能に損害は避けられない。
North Korea artillery
  1. タックによれば北朝鮮砲撃隊は非武装地帯に照準をあわせ、北朝鮮部隊の南進を支援するはずだという。また射程範囲内には米軍部隊もある。
  2. 在韓米軍25千名も北朝鮮軍から深刻な危険にさらされる。
  3. ただし北朝鮮砲兵は最高の能力を有する部隊ではない。米軍撃滅と同時にソウルも狙うはずで長距離攻撃の威力も制約を受ける。火砲を発射すれば、上空の米軍機の格好の標的になる。
水中戦
  1. 北朝鮮には核弾道ミサイルの水中発射が可能な潜水艦が一隻あり、同艦が一旦出港しミサイル防衛網の有効範囲外に出れば米軍にも大きな危険要因となる。
  2. 幸いにも米海軍には最良の対潜装備がある。ヘリコプターから聴音ブイを投下し、駆逐艦が高性能レーダーを作動する中、米潜水艦は海中で異常な兆候はないか耳を澄ます。北朝鮮の旧式潜水艦は米韓日の海軍部隊の相手にならない。

金正恩殺害
  1. 「斬首」あるいは金正恩政権排除は北朝鮮専制体制に大打撃となる。
  2. 金正恩は陰惨な方法で政府高官の処刑していると言われる。犬に食わせる、迫撃砲で殺害する、対空砲を発射する等だがねらいは単純で中国とのつながりを有するものを狙っているとタックは指摘する。
  3. 金正恩が中国との接点をもつものを排除できるのは自身の国内権力が堅固になっているためだ。
  4. 指導者不在で北朝鮮軍の戦意も影響は避けられないが、それでも戦闘は中止しないだろう。
  5. 「技術的にいえば北朝鮮は『永遠の指導者』金日成の指導下にある」とタックは解説し、「斬首作戦を実行しても指導層以下が崩壊する保証はないが、後釜につくものには面倒な状態になるだろう」
  6. 北朝鮮は指導者消滅を黙って見ていないだろう。攻撃の兆候を知れば、金正恩は地下深くに身を隠し、国民に猛攻を命じるはずだ。

米軍が防御に回る

  1. ただし北朝鮮が大打撃を受けても黙ったままと見る向きは皆無だ。
  2. 非武装地帯には大規模な地下トンネル網があり、北朝鮮は地上部隊を韓国へ送ろうとするはずだ。
  3. 「地上戦は大きな要素です。可能性がいちばん高いのはDMZ地帯での戦闘で米軍は北朝鮮越境より韓国内で防御を固めるでしょう」
  4. 北朝鮮空軍は小規模かつ旧式だが、壊滅すべき存在だ。

米特殊部隊の投入

  1. 米特殊作戦部隊は北朝鮮防空体制の崩壊を見てからパラシュート降下し、移動式ミサイル発射台含む攻撃手段の破壊を目指す。
  2. 米側には大きな難題が控える。200基以上のミサイル発射装置の所在を北朝鮮全土でどうやって突き止めるのか。一部には軌道がついており山地に入れば米偵察機でも探知困難になる。
  3. そこで特殊部隊の出番となり、北朝鮮軍の動きを監視し米軍機に情報を伝えるのだ。

結末
  1. 北朝鮮の狙いは謎のままだ。核保有に至っても国際社会が介入しないと読んで事実そのとおりとなったがその読みが不作為につながる可能性もある。
  2. 北朝鮮がサイバー攻撃を加え、米国あるいは同盟国の電力網を止める可能性があるが、米サイバー軍団も備えを固めているはずだ。
  3. 北朝鮮は米軍施設の破壊、ソウル攻撃をねらいミサイルを発射するだろうが、米国は同盟国とすでに待機している。
  4. そうなると戦いは厳しく犠牲の多い展開になりそうだが、プロパガンダに慣れきった北朝鮮でさえ自国の置かれた状況がどれだけ不利かが身にしみて判るはずだとタックは言う。
  5. 壊滅的な攻撃を受けた後でも北朝鮮核兵器の一部は隠れたままになっており、北朝鮮は報復攻撃を試みるかもしれない。
  6. 「大規模報復を狙えば、戦闘はさらに伸びて結局北朝鮮は勝利をめざせなくなります。そもそも北朝鮮が米韓日に勝てると見る向きは皆無です」(タック)■


2017年3月6日月曜日

台湾が原爆開発を断念した理由



原爆開発の件は台湾ではよく知られた話なのではないでしょうか。核兵器は使えない兵器のままにしておくのが賢明だと思いますが、全く常識の通じない国家がそばにあることが東アジアでは不幸の種ですね。北朝鮮の核兵器に異議を唱えても、中国の核兵器が日本にも照準をあわせている事実に都合良く目を塞ぐのはなぜでしょう。

The National Interest

China's Greatest Nightmare: Taiwan Armed with Nuclear Weapons


March 4, 2017

台湾が原子爆弾保有を公言していれば戦後アジア最大の危機状態が生まれていただろう。台湾にとって原爆保有は数の劣勢を挽回する手段だ。中国から見れば台湾侵攻の口実となる。1960年代から80年代にかけ台湾は原爆開発をめざしていたが、米国の外交圧力に屈し最終的に断念した。
  1. 台湾の原爆開発は1964年に遡る。同年に中華人民共和国が原爆実験に成功した。実験は台湾の悪夢が現実になったことを意味した。中台の海軍、空軍部隊は度々小競り合いをし、いつ全面戦争になってもおかしくなかった。突如として台湾は核戦争に展開する可能性に直面した。台湾に核爆弾が一発でも投下されれば、メリーランド州ほどの面積の同国に民間人多数が犠牲となる大惨事が生まれる。
  2. 台湾の視点から見れば核武装は国家主権の究極の保障手段だ。米国が台湾を見限っても(現実にそうなった)、台湾の核兵器は人民解放軍侵攻を食い止める効果があり、抑止力として有効だ。あとになってわかったことだがこの構想には十分成功する見込みがあった。北朝鮮の核兵器で米韓両国は北の軍事挑発にも簡単に対抗できなくなっているのが好例だ。
  3. そこで台湾は1967年に中山科技研究機関内に核エネルギー研究所(INER)の隠れ蓑で原爆開発を開始した。1969年にはカナダが研究用の重水原子炉を売却、民生用原子炉の拡販をカナダが期待したが、トリュドー政権がPRCを1970年に承認したことで続きはなくなった。同原子炉は台湾研究用原子炉と呼称され1973年に臨界となり、台湾は兵器級プルトニウムの蓄積を開始した。
  4. 台湾核研究を米国が注意深く監視していた。ただしワシントンは台湾原爆で中国が不必要に挑発されるのを恐れ、1966年になると原爆製造をさせない方針に変わる。ワシントンとしては台湾が国際原子力エネルギー機関のガイドラインに従い、核燃料の兵器製造への転用防止を期待した。
  5. だが台湾の狙いはそもそも兵器製造にあり、台湾が抵触するのは避けられなかった。1975年のCIA評価では「台湾政府は兵器開発を明白に目標とし小規模核開発を進めており、今後5年程度で核爆発装置を完成させるだろう」とある。その時点で米国、ドイツ、フランス、ノルウェー、イスラエルの各国が台湾を支援していた。重水は米国より、ウラニウムは南アフリカから確保していた。
  6. 1976年から77年にかけてIAEAが軍が主導するINERを査察し台湾の言っていることと行動の食い違いを発見する。1976年に米国が核兵器開発を抗議した。対応として台湾は「今後一切の再処理工程は進めない」と約束させられた。
  7. 1977年に米国は台湾研究機関に疑わしい兆候を探知し、国務省が台湾に研究活動の変更を求め、平和的利用を求めたものの、研究開発活動の全面中止までは要求しなかった。1978年に米国は再び秘密研究の兆候がウラニウム再処理で進展していることをつかみ、台湾に中止させている。
  8. 何回も妨害を受け台湾の核兵器開発は休眠状態に入る。1980年代中頃に再開したが、今度はINERがウラニウム処理施設を作っていることが判り、以前の公約に違反しているのが明らかになる。1987年にINER副所長で長年CIA情報源のChang Hsien-yi大佐が米国亡命し、台湾核兵器開発の証拠を持ち込んだ。極秘情報扱い資料を突きつけられ、台湾政府は1988年に核開発を全面中止した。なお同大佐の亡命時点で原爆は1-2年で完成する段階にあったと考えられる。
  9. では台湾はどんな原爆を開発するつもりだったのか。2つ可能性があり、低出力戦術核弾頭と高出力都市破壊兵器だっただろう。戦術弾頭は本土の港湾、空港、司令部の除去に有効で中国軍の侵攻をさせない効果をねらったものだ。補給活動を狙えば侵攻は止まる。その運搬手段はChing Feng短距離戦術ミサイルだったはずだ。
  10. もう一つの可能性は台湾が大型都市破壊兵器で、開発していればもっと深刻だ。これは北京政府を直接脅かすことが目的で、強力な抑止力をねらっていた。北京までは1,800マイルあり、原爆を到達させるのは台湾海峡を飛び越えるのとわけがちがった。イスラエルでさえこれだけの長距離で原爆を運搬するミサイル、航空機の技術は提供できなかった。
  11. 台湾の核兵器開発には理解できる点もあるものの、無分別といわざるをえない。台湾中国が核で対決すれば地域全体の安定が損なわれていただろう。そもそも台湾は核開発で自国防衛を一層確実にしようとしていたので皮肉な話だ。核装備が実現しても結局のところ軍事ジレンマの解決はできなかったと思われる。中国攻撃に成功しても中国が核報復を加えてくるのは避けられなかったはずだ。
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009, he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.



2017年3月4日土曜日

★米国は北朝鮮攻撃に踏み切るのか 考えるべき4つの要素



キチガイに刃物。北朝鮮が常軌を逸した行動に出ているのはそれだ危険を感じているからでしょう。人類史上の汚点、とよくぞ言ってくれたと思いつつ、トランプが強い姿勢を見せつつ対話に金正恩を引きづりおろせるのかきわめて疑問です。本人は米軍攻撃を恐れて逃げ回り、過食でストレスを解消しているとのことですが、オサマ・ビン・ラディン同様に仮に特殊部隊が狙えば、個人崇拝をたちきるためにも写真を撮影した後遺体は処分されるでしょう。当然北朝鮮攻撃に踏み切れば日本も無傷ではいられないはずですが、これまで放置してきた代償と考えるべきかもしれません。


The National Interest Would America Really Invade North Korea?


March 3, 2017


  1. トランプ政権は北朝鮮攻撃を本当に検討中なのか。
  2. どうもそうらしい。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば「ホワイトハウス内部で対北朝鮮戦略の見直しが進んでおり、軍事力行使あるいは政権交替により核脅威を取り除く可能性が浮上していると内部事情に詳しい筋が語っている」
  3. 国家政権の交替を始める方法はいろいろあるが、こと対北朝鮮軍事作戦に関する限り、選択肢はひとつしかないようだ。平壌は世界経済とつながっておらず、制裁措置で屈服させるのは不可能で、国際社会が非難を強めたところで効果は薄い。そうなると現時点では効果の上がる手段は軍事力しかないようだ。
  4. ではDPRK相手の軍事作戦はどんな形になるか。現代戦で確実なことはないのが事実だが、一つ確かなことがある。北朝鮮を攻撃し、世界最悪の政権を除去しようとすれば大災害発生はあきらかだ。
  5. 2014年に指摘しているが、政権転覆を目指し北朝鮮を攻撃すれば正気の沙汰ではない4つの理由がある。
  6. まず、金正恩はこの20年の歴史を勉強しているはずだ。
  7. ワシントンが平壌の悪漢を処分する決定をしたらどんな進展になるだろうか。北朝鮮の軍事装備の大規模破壊で始まるだろう。空母打撃群複数が投入されるはずだ。地上侵攻を狙い、韓国に部隊が集結するはずだ。地上運用の航空機が増強され、韓国、日本、米軍基地のミサイル防衛が強化される。多くの点で1991年の湾岸戦争の前例が注目され、攻撃部隊を増強してから敵を圧倒する。いかにも簡単である。
  8. 問題はこれだけの規模の軍事力は秘密裏に集結出来ないことだ。北朝鮮は即座に状況を知るはずだ。平壌は生存をかけ猛攻撃を仕掛けてくるはずだ。サダム・フセインの愚かさは連合軍が世界最強の軍事力を自分の足元で編成するのを許したことだが、金正恩は唯一の可能性は軍事力増強の事実を知った段階で全力で攻撃することだとわかっているはずだ。
  9. 二番目に北朝鮮が核攻撃に踏み切るのは必至だ。
  10. エチオピアより貧しい国が巨額予算で核兵器取得に走る理由は何か。答えは単純だ。政権転覆を狙う勢力にリスクを感じさせることだ。ワシントンが真剣に北朝鮮転覆を狙うのなら、平壌がそのまま静観するはずがない。北朝鮮ミサイルに米本土を確実に攻撃できる性能や精密度があるのか議論があるが、ソウルや東京なら十分攻撃できるとみられる。そうなれば原子の惨状が生まれる。金正恩は連合軍侵攻には勝てないことを十分承知しており、できるだけ多くを道連れにする決定に走るだろう。
  11. 三番目に金正恩は我々が忘れている別の大量破壊兵器を投入する可能性がある。
  12. 米国防総省の2012年度報告では「北朝鮮は化学兵器(CW)開発を長年に渡り進めており、神経ガス、びらん剤、血液剤、窒息剤の製造備蓄能力を有している。北朝鮮は通常兵器に手を加えCWを投入できるはずで火砲、弾道ミサイルを利用するだろう」 一部報告書では北朝鮮の化学兵器備蓄を5,000トンと試算している。
  13. では生物兵器はどうか。評価はわかれるが、同報告書は可能性が高いと指摘しており、「北朝鮮はバクテリア、ウィルス研究を続けており、攻勢の際に投入することを想定している。同国には必要な施設と軍需産業がすでにあり、生物戦の実施能力は高い」
  14. 悪夢のシナリオとなる化学兵器あるいは生物兵器の投入可能性が皆無とは言えない。少量でも投入されればソウルではパニックが発生し、その規模は9/11どころではない。民間人相手に恐ろしい攻撃が加えられることは回避しなければならない。
  15. 四番目に予知出来ないことがあまりにも多すぎる。
  16. 北朝鮮潜行工作員がシャルリ・エブドのような襲撃事件をソウルにとどまらず日本でも実行することがある。あるいは軍部が核ミサイルで対象地区を汚染することだ。北朝鮮再建の費用推定は考えるだけで恐ろしいが、中国には事態に介入する強い理由があるはずだ。
  17. 北朝鮮は人類史の汚点であり、抹消すべき存在だ。だが北朝鮮政権はこれまで60年以上も侵攻に備えている。このことは忘れてはならない。
  18. 公正な立場で言えば、トランプ政権は以上の選択肢を示してなんらかの対話を金正恩に求めるべきだと思う。まさしく取引を目指す「ドナルド流」だ。これにはアジア各国も異論はないはずで、朝鮮半島の緊張緩和はだれもが望むところだ。2017年にこれが実現するよう祈る。北朝鮮で危機状況が発生すれば考えるだに恐ろしい。
Harry J. Kazianis (@grecianformula) is Director of Defense Studies at The Center for the National Interest and Fellow for National Security Affairs at the Potomac Foundation. Kazianis also serves as Executive Editor of The National Interest.


2017年3月2日木曜日

★空母打撃群を再編せよ、CSBA提言に注目



先日のF-14の話題はここから来ていたのですね。ブライアン・クラークは元海軍士官の研究員ですね。ここではふたつの艦隊構想Deterrent ForceとManoeuvre Force(空母打撃群あらため)があり後者を機動部隊と訳しています。これまでに大戦中の帝国海軍の機動部隊に対し米海軍のTask Forceも機動部隊とされてきましたが、今後は区別が必要ですね。

US think-tank calls for stealthy, carrier-based UCAV
28 FEBRUARY, 2017
SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
BY: STEPHEN TRIMBLE
WASHINGTONDC
  1. 米有力シンクタンクが海軍攻撃部隊の将来構想を発表し、各群を空母二隻、支援艦、110機で構成するとしている。機材では無人航空機(UAS)、有人機を組み合わせ空対空ミッションを重視するとしている。
  2. 2月28日に戦略予算評価センター(CSBA)が発表した報告書にはジョン・マケイン上院議員(軍事委員会委員長)が賛同している他、トランプ政権共和党指導層も注目している。
  3. ブライアン・クラークよびピーター・ヘインズが中心となったCSBA分析では現行の空母打撃群が2030年までに適切でなくなり、高度装備を有する敵勢力との戦闘では数日しか持続できなくなるとする。
  4. そのため、報告書は「米海軍力復興」“Restoring American Seapower”と題し、新発想の「機動部隊」“manoeuvre force” として空母打撃群二個を単一部隊に再編し、運用機数を現在の60機から110機に増やすと提唱。合同部隊は航空作戦を高度な敵相手でも継続実施しつつ十分な防御力をで敵の長距離対艦ミサイルにも対抗できるとする。
  5. 報告書の想定シナリオでは奇襲攻撃を受ける想定で、ロッキード・マーティンF-35Cを配備した
  6. 空母が一隻の場合の場合、戦闘二日目までに戦域を撤退することになるが機動部隊が救援に駆けつけるとしている。
  7. 抑止戦力部隊が撤退を余儀なくされても敵にプレッシャーを与えるため、CSBA報告書ではステルスUAVをノースロップ・グラマンB-2に類似した全翼機形状で想定し、機動部隊から最長2千カイリまで敵防空網を突破する性能を提言している。このステルスUCAV(無人戦闘航空機)は攻撃に特化し、空中給油や偵察機能は無視する。ただしその他任務の必要もあるので別途多用途UAVで空中給油をF-35Cに与え、機動部隊ないし抑止力部隊から最大1千カイリ範囲を警戒させる。
  8. 機動部隊には制空任務に特化させた新機材が必要としている。米海軍がボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネット後継機の要求内容を変更していることを受け、CSBA報告書は長距離対艦巡航ミサイルを積んだ敵爆撃機、戦闘機を撃墜できる機体が必要だとしている。■


2017年3月1日水曜日

★★もし戦わば⑩ 日中海戦がいまあれば、勝者はどちらか



改革開放を始めたばかりの「素朴な」中国が三十年ほどでここまで「敵意むき出しの」脅威になったのは驚異です。ただ一国の海軍力は装備だけでは語れない部分があります。果たして本当にPLAN部隊が効力を発揮するのか、その実証の機会が来ないことを祈るしかありません。なんといっても海自の本分は抑止力にあるはすで望むらくはもう少し攻撃力を増やしてもいい気がしますが

The National Interest

Why War Between Japan and China Could Be the Ultimate Naval Clash (And Maybe World War III)


February 27, 2017


  1. 日中間の海上戦がここまで現実に近づいたのはごく最近にのことだ。1980年代の中国は沿海防御しかままならない海軍力だった。まして兵力投射を数百マイル先に行うなど想像でしかなかった。反対に日本はその時点でも新鋭駆逐艦部隊を運用し、数千マイル先の通商路の防御にあたることができた。日本は中国がいかなる対抗策を繰り出しても容易に対処できたはずだ。
  2. この状況は変わってしまった。四分の一世紀に渡り国防力整備を続けた結果、現在の中国軍事費は当時の10倍規模になった。中国国防費は2,000億ドルで、日本の防衛費430億ドルの5倍近い。このため海上自衛隊(JMSDF)には装備整備と訓練が深刻な課題になっている。
  3. 日中間の海軍戦の想定では、両国海軍の指導原理を検分する必要がある。海上自衛隊はほぼ純粋な防衛力であり、船団護衛、対潜戦、弾道ミサイル防衛、人道救難で訓練を積んでいる。兵力も防御中心で、対艦ミサイルは少数で巡航ミサイルは皆無だ。攻撃的な作戦は領土奪還の強襲揚陸を除き耳に入ってこない。これでは戦闘を日本に都合よい形では終了させられないだろう。
  4. 対して人民解放軍海軍(PLAN)に制約は少ない。PLANは攻撃手段をより多く配備しており、その好例が空母だ。さらに国内にはYJ-18対艦ミサイルがあることで艦載ミサイルを攻撃、防御に振り分ける柔軟活用ができる。またDH-10巡航ミサイルを艦載し、対地攻撃も可能だが、JMSDFにはこれがない。
  5. このため将来に両国海軍部隊が対決した場合、中国が攻勢、日本は防御にまわるはずだ。PLANは大規模任務部隊数波を東シナ海に派遣するはずで001A型空母二号艦を中心にするだろう。水上戦闘群ニ個の中心は052D型駆逐艦になる。各群に052B型C型駆逐艦、054Aフリゲート、056コルベットも加わるだろう。また093G型巡航ミサイル潜水艦も戦隊に加わる。
  6. では日本側はどうか。日本も三個の戦闘任務部隊を編成するだろう。内1つは「ヘリコプター護衛艦」かがを中心にに、残り2つはこんごう級駆逐艦をたかなみ級、あきづき級汎用駆逐艦を護衛に配置する。日本もそうりゅう級攻撃潜水艦を配置するはずだ。
  7. では勝者はどちらか。PLANは対艦ミサイルの数で勝り、攻撃力は大きい。ただし、防空と対潜を犠牲にしている。PLAN指揮官は海自水上艦、潜水艦または航空機を脅威と認識し、艦載ミサイル格納数に上限がある中で攻撃力を重視する。そうなるとPLANは空母と潜水艦を攻撃力の中心に置くはずだ。水上戦闘群ニ個は陽動作戦をしながら二次攻撃を加えてくるだろう。
  8. PLAN任務部隊には日本攻撃の選択肢はまだある。J-15「空の鮫」飛行隊が海自部隊の配置を探知する。12機ほどのJ-15飛行隊は対艦ミサイルを搭載し、海自防空網を制圧する。同時にPLAN潜水艦が海自部隊を攻撃すれば理想的だ。PLANには日本国内の自衛隊基地をDH-10巡航ミサイルで攻撃し、燃料補給等を妨害する選択肢もある。
  9. 日本側は一方的に攻撃を受けるだけではない。かがは対潜駆逐艦としてSH-60Kシーホーク対潜ヘリ7機を運用し、PLAN潜水艦を食い止めるだろう。こんごう他あたご級駆逐艦には強力な防空能力があり、Mk. 41垂直発射ミサイルサイロ96個でSM-2対空ミサイルやASROC対潜ロケットを運用する。中国攻勢を日本が無力にする可能性は高い。
  10. 攻撃で日本の選択肢は限られる。海自駆逐艦はハープーンまたは90式対艦ミサイルを8発しか搭載していない。四隻で構成する水上戦闘群で対艦ミサイルが32発にとどまるが、海自艦が中国の攻撃射程に入ってしまう。そうなると001A型空母の攻撃はそうりゅう級ディーゼル電気推進潜水艦に任せるのがよいだろう。PLANが対潜能力に劣るのは周知の事実で、潜水艦攻撃は成功の可能性が高い。
  11. 日中海上衝突は以前のような一方的な勝負にならない。両国の海軍力がここまで近づいたことはこの100年間ではじめてだ。そうなると勝敗を決するのはその他要因の影響が強くなる。たとえば陸上基地から運用する航空機、弾道ミサイル、宇宙装備、サイバーだろう。もちろん米海軍の強力な第7艦隊もある。だが、海自部隊に立ち向かう能力は中国で増える一方だ。空母がさらに増え、巡航ミサイル潜水艦を追加し、訓練を強化すれば、(いずれも十分実現可能だ)現在の不安定な日中間バランスは中国側に大きく有利に傾くだろう。
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009, he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.



ヘッドラインニュース 3月1日(水)


3月1日のヘッドラインニュース:T2

注目記事の要約を掲載しています。時差・掲載時間の関係でその後進展した内容と食い違うことがありますのでご了承ください

イスラエルF-16がハマスUAVをガザで撃墜
イスラエルは1月23日にハマス所属の無人機をF-16で離陸直後に撃墜したと発表。UAVは地中海に向け飛行しようとしていた。イスラエルF-16は同UAVがガザ地帯から離陸する前から監視体制にあった。UAVはイスラエル領空に侵入していない。

フィリピン向け海自TC-90の引渡し始まる
海上自衛隊はTC-90を2機フィリピンで3月27日に引き渡す。計5機がフィリピンへ供与されフィリピン空軍が監視活動に使用する。機体はリースで料金は年間合計28,200ドルを日本へ支払う。

P-1、P-8間の互換性確認演習
米海軍哨戒飛行隊10(VP-10)は厚木基地で第4航空群(Fleet Air Wing-4)隷下の第三飛行隊(VP-3)とP-1-P-8A間の作戦互換性の確認と訓練を2月14日から17日にかけて実施した。VP-10はジャクソンビル(フロリダ)から6ヶ月間第7艦隊に派遣されている。

プレデター退役へ
米空軍はMQ-1プレデターの運用を2018年で終了する。MQ-9リーパーに統一させるためで、今年から機種転換が始まる戦闘部隊が生まれる。MQ-1は当初RQ-1と呼称され武装は想定しなかったため現在の運用では制限がついてまわっており、大型のリーパーに機種転換し威力は増す。兵装ペイロードはMQ-1が450ポンドなのに対しリーパーは3,750ポンドもある。



2017年2月28日火曜日

ロシア次世代爆撃機PAK-DAは本当に飛ぶのか


いろいろ苦境にあるロシアでこんな機体が本当に実現するのかわかりませんが、米国の国防筋は同機の存在を脅威としてこれから大々的に騒ぎ立てて予算を獲得するのでしょうか。

Russia to start building its next generation flying wing stealth bomber to replace the Tu-22, Tu-95 and Tu-160 aircraft

Feb 27 2017 -
PAK-DA想像図(出展 militaryrussia.ru、スプートニクニュース提供)は公式な想像図ではなく、実際の機体と異なる可能性がある。

およそ四年前ロシアの次世代ステルス爆撃機のコンセプト図が承認をうけていた。今や同機が現実のものになりそうだ。
  1. ツボレフ設計局が2009年から取り組んできたPAK-DA(高性能長距離航空機)はロシアが2023年に就役ををねらう新型爆撃機で既存のTu-95ベア、Tu-22M3バックファイヤー、Tu-160ブラックジャックの後継機をめざす。
  2. 国営スプートニク通信は新型戦略爆撃機の初飛行を2021年頃とし、その数年後に一号機を引き渡すとしているが、楽観的すぎる予測だ。
  3. いずれにせよステルス爆撃機は亜音速飛行の全翼機となる。米X-51、ファルコンHTV-2他が極超音速の攻撃機材を狙う中で、ロシアは超音速も視野に入れていない。スピードの代わりに高度ステルス性能、電子装備と人工知能による誘導ミサイルを搭載する。
  4. 「ミサイル搭載爆撃機を完全にレーダーから隠しつつ超音速飛行させるのは不可能。このためステルスを重視した。PAK-DAが搭載する人工知能ミサイルは射程7千キロに達し、状況から進路、高度、速度を自ら決定する。このミサイル開発はすでにはじまっている」とのロシア航空宇宙軍司令官ヴィクトル・ボンダレフ発言をロシア紙ロシスカヤガゼータが伝えている。
  5. このロシア全翼機は空対地ミサイル・空対空ミサイルを搭載の上、通常型および誘導式爆弾を運用する。2016年の報告書ではPAK-DAは6,740カイリの航続距離になるとしていた。兵装ペイロードは30トンだ。
  6. このPAK-DAから名称未定の「第六世代」戦略爆撃機が2040年代から50年代に登場すると噂されていたおり、昨年の資料によるとロシアは第六世代、第七世代の軍用機の開発に取り組んでいるという。
  7. ただしロシアが本当に新型ステルス爆撃機に加え第六、第七世代機を運用できるか断言できない。
  8. ロシアは現実には次世代ステルス戦闘機もAESAレーダーもまだ試験段階であり、実戦化していない。
  9. 第五世代戦闘機となるT-50 PAK-FAは各種の開発課題に直面したまま、費用も超過し、日程も遅れたまま未だに就役していないことを忘れてはならない。
  10. スホイはこのPAK-FAを原型に第六世代機をつくるといわれており、Su-27からSu-35を完成させた前例もある。
  11. ということはPAK-FAが5++世代機に発展する可能性があり、それが第六世代機に将来発展するかもしれない。
  12. 一方、PAK-DA想像図がインターネットに流布しているがその通りのクールな機体になるのかしばらく待とう。

2017年2月26日日曜日

★WC-135はノルウェー、バレンツ海に向け飛行



続報です。バレンツ海というのが気になりますね。ロシア原子力艦艇で事故があったのでしょうか。あるいは単に通過しただけなのか。全く別の地点に向かったのか。かなり大掛かりな話になってきました。

U.S. WC-135 nuclear sniffer airplane has left the UK heading towards Norway and the Barents Sea

Feb 22 2017 -

  1. 先にお伝えしたWC-135コンスタントフェニックスはRAFミルデンホール基地を離陸し、北部ヨーロッパおよびバレンツ海に向かった。興味深いのはRC-135Wスパイ機も同基地から同じ経路に向かったことだ。両機を投入したミッションは何なのか。
  2. WC-135C(機体番号62-3582)は英国ミルデンホール基地に2月17日に移動し「コブラ55」のコールサインで飛行している。コンスタントフェニックスが英国に展開するのはこれが初めてではないが、北欧でヨウ素131の検出量が急増し調査にあたるとの観測がある。
  3. WC-135は核実験探知以外に放射能探知にも投入されており、チェルノブイリや福島の原発事故の例がある。大気中の粒子を集める飛行は事故の数ヶ月後まで及ぶことがある。
  4. 今回のWC-135C配備の理由はまだ不明で、ヨウ素131検出量についても反対の内容の報道もあるが、WC-135はミルデンホールに到着してから本日(2月22日)現地時間11:50初めて離陸し、ノルウェー・バレンツ海にニム向かった。
Nuke sniffer - Constant Phoenix
Airborne from RAF Mildenhall
🇺🇸 US Air Force - WC-135C
Tracking over the North Sea
USAF Rivet Joint
62-4138 PULPY81
USAF Constant Phoenix
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  1. WC-135C(無線コールサイン「フローリ58」)にはKC-135給油機が二機(「クイッド524」「528」)支援につき、長時間ミッションだとわかる。また同じ飛行経路にRC-135Wリヴェットジョイント(「パルピー81」)ともう一機のストラトタンカー(「クイッド513」)も飛び、各機はスコットランド東沿岸上空を飛行している。
  2. これだけの機数を投入するミッションの中身を想像するのは難しい。報道されたようなヨウ素急増現象の調査なのか。ロシアの核活動の情報収集なのか。全く別の調査なのか。なんともいえない。
  3. 各機はスコットランド東のアバディーンに到達すると、トランスポンダーを切り、Flightradar24.comGlobal.adsbexchange.comのようにADS-B、Mode S、MLATで飛行中の機体を追うサイトでは見えなくなる。つまり、各機は作戦活動に入り、所在を知られたくない状態になったことだ。■