2022年3月6日日曜日

ウクライナ戦、3月5日のまとめ。ロシア空軍機多数が撃墜された。プーチンは根拠ない発言を続けている。市民退避の安全回廊が機能していないなど。

 A screen shot from a video reportedly showing a shootdown of a Russian Mi-24/35 Hind helicopter flying over Ukraine.

SCREEN CAPTURE VIA TWITTER

 

戦後10日目となったが、ウクライナ上空で雌雄が決まらないままだ。その中でロシアが機材喪失を急増させたのが目立つ。ウクライナの軍、一般市民は抵抗し続けており、ロシアは主要都市包囲を強めている。3月5日の最新動向を見てみよう。

 

The Latest

POSTED: 1:30 PM EST—

 

ロシア軍が機材複数を喪失したのは確かだ。固定翼機、ヘリコプター、無人機多数をこの一日で撃墜されている。Oryx blogはオープンソース情報からロシアはSu-30SMフランカー1、Su-34フルバック2、Su-25フロッグフット2、Mi-24/Mi-35ハインド2、Mi-8ヒップ2、オリアン無人機1を喪失したとする。ロシアはウクライナ上空で多大な犠牲を強いられているようだ。

 

 

こうした撃墜の様子がオンラインで流出している。

 

未確認情報だが、撃墜されたSu-34の一機のパイロットはシリアで戦闘に従事していたという。このパイロットは脱出に成功し、ウクライナに身柄拘束されている。

 

ウクライナがロシア機材を撃墜した方法は明らかになっていないが、肩のせ発射式対空ミサイル、別名携帯型防空装備 (MANPADS)の存在が大きい。オンライン上で出回っている映像ではハインド攻撃ヘリコプターを MANPADSで撃墜する様子がわかる。ウクライナの元大統領ペトロ・ポロシェンコPetro Poroshenkoもビデオでウクライナ軍兵士がSu-30SMをMANPADSイグラで撃墜するのを伝えた。

 

 MANPADSには米製スティンガーもあり、ウクライナ向け発送で重要な装備品となっている。3月4日金曜日だけで各国の輸送機14機がウクライナ国境付近に着陸し軍事支援物資を運んできたとニューヨーク・タイムズが伝えている。

 

本日もキーフ西方の都市イルピンIrpinの住民退避を守るウクライナ軍がMANPADSを携行していた。

 

今週初めの交渉でロシアはイルピンを脱出する一般市民の安全回廊を認め、ウォノワハVolnovakha、マリウポルMariupolでも認めるとした。ウクライナはロシアが停戦の約束を破ったと非難し、マリウポルで避難ができなくなったとした。ロシアの攻撃でイルピンの鉄道も寸断され、市民は徒歩移動を迫られている。

 

クレムリンはマリウポル市当局が市民の退避を妨害し人間の盾として利用していると根拠なく非難している。英国筋の評価ではウクライナ国内でロシアが展開する無差別攻撃への批判をそらす狙いでの発言としている。

 

ウクライナ各地で戦闘が続いている。今週の交渉は休戦の道筋を示せなかった。ロシア軍に制圧された各地で抵抗運動、不服従運動が相次いで入るとの報道が増えており、南部ケルソンKherson、メリトポルMelitopolは無慈悲な弾圧も覚悟の上で抵抗している。

 

イスラエル首相ナフタリ・ベネットNaftali Bennettがモスクワでプーチンと会談し、ウクライナ事態を話題にしたとの報道がある。ウクライナがベネット首相に仲裁役を要請しているとの報道もある。

 

金曜日午前にプーチンのテレビ中継でロシアのエアライン各社の客室乗務員に会見する様子が伝えられた。各社は厳しい国際制裁の影響を受けている。プーチンは制裁措置はロシアへの宣戦布告と同じだと発言した。その関連でロシア国内に戒厳令を布く予定はないとし、NATO含む国際機関がウクライナ上空を飛行禁止地区に指定すれば戦闘当事者とすると述べた。前日にNATOは正式にウクライナの引く禁止空域扱いのウクライナ要請を却下した。

 

また、プーチンはウクライナが核兵器開発を目指しているとの根拠ない主張を繰り返した。クレムリンはウクライナ侵攻が必要となった理由と主張している。■

 

The Russian Air Force Just Had A Terrible Day Over Ukraine


The Russian Air Force Just Had A Terrible Day Over Ukraine

Russia looks to have lost multiple combat jets, helicopters, and a drone in just the past day or so.

BY JOSEPH TREVITHICK MARCH 5, 2022

 


2022年3月5日土曜日

ウクライナ戦争 3月4日(9日目)の状況、NATOが飛行禁止区域設定を拒否。ロシア軍の進度は相変わらず鈍い。民間人死傷者が増加。

 

 

 

クライナ侵攻開始が9日目となり、ロシアは国境付近に配置していた全戦力の投入に向け、動き続けている。この間、ロシア軍の首都キーフに向けた前進が予想に反し遅々として進んでいない。NATOは、ウクライナ当局からの飛行禁止区域設定の要請を正式に拒否し、紛争は主要都市での戦闘を中心に長期化し、その結果、民間人の犠牲が増加してきた。2週目に入った戦闘の現状は、以下の最新情報で十分にご理解いただけるだろう。

 

POSTED: 12:15 PM EST—

イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、本日未明、ベルギーのブリュッセルにある同盟本部での記者会見で、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定しない決定を明らかにした。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領含むウクライナ当局は、飛行禁止区域設定を繰り返し要求してきたが、繰り返し拒否されている。

 

「NATOは紛争の当事者ではないし、エスカレートしてウクライナから広がらないようにする責任がある」とストルテンベルグは述べた。「NATOは絶望的な状況を理解しするものの、飛行禁止区域を設定すれば、より多くの国々とより多くの苦しみを伴う本格的な戦争がヨーロッパで展開するとも考えている」。

 

 

NATOがウクライナ上空を飛行禁止区域とすれば、同盟はロシア軍機撃墜の意志を示し、自軍機への地上の防空脅威へ行動を明確に求められる。ここに、ロシアとNATO加盟国間の深刻な紛争を引き起こす危険性がある。このような戦争は、核兵器の使用や、ヨーロッパ他の地域の荒廃につながる恐れがある。

 

米国政府はロシア軍は制空権を獲得できておらず、ウクライナ軍は空中戦闘能力と防空能力を維持しているとの評価を変えていない。米国防総省高官によれば、ロシア軍は現在、空軍基地や防空関連施設に向け弾道ミサイルや巡航ミサイル500発以上を発射している。

 

一方、ウクライナ側は、、能力維持で負担を感じていることを公の場で明らかにしており、軍事援助に戦闘機や地対空ミサイルシステムの追加を求める声が上がっている。最近、EU加盟国からソ連時代の戦闘機をウクライナ空軍に移管する可能性が浮上したものの、現在はほぼ消えたようである。

 

米国はじめNATO加盟国や欧州各国の武器など軍事援助は、ウクライナに流れ続けている。米軍によると、戦闘機のような高価な装備ではなく、ウクライナ軍ですぐに使えるシステムに援助の重点が置かれている。米軍によると、ロシア軍が輸送を妨害しようとした形跡は今のところない。

 

航空優勢と無関係に、ロシア軍はキーフ等主要都市に前進している。他部隊が迂回したように見えるため、部隊は人口密集地を包囲している形になった。

 

米国防総省高官によると、キーフ北部の大規模なロシア軍輸送隊は依然停滞したままだ。先頭部隊への攻撃と橋の破壊が、この部隊の前進を妨げていると米軍は評価している。ロシア軍は現在もさまざまな攻撃を加えている。

 

 

ウクライナ東部のハルキフ市、北部のチェルニヒフ市などの人口密集地も、ロシア軍に包囲され、砲撃を受けている。米国政府は、クレムリンが主張する南部の都市ケルソンがロシア支配下にあるかどうかについて肯定も否定もせず、アゾフ海の港湾都市マリウポルはまだ陥落していないとした。

 

欧州最大のウクライナのザポリジャーZaporizhzhia 原子力発電所をどちらが支配しているか米軍は自信を持って評価できず、事態が懸念されるとした。施設周辺の戦闘で前日に火災が発生したが、その後幸いにも鎮火し、放射能漏れの兆候はない。隣接するエネルゴダール Energodarもロシア軍が占領したかどうかは不明。

 

米軍によると、黒海沿岸のオデッサ付近でロシアの海軍活動が報告されているものの、揚陸強襲攻撃が迫る明確な兆候は引き続き見られない。国防総省高官は、クリミアから陸路で進攻する部隊と連携しての揚陸作戦は、十分にあり得ると述べた。

 

これと別に、ロシアのウクライナ侵攻に反対する欧州の結束度合いを示すものとして、NATOは現在、同盟非加盟のスウェーデンやフィンランドと日常的に協議している。本日の飛行禁止区域の協議には、スウェーデンとフィンランド両国の代表が出席した。

 

NATO Officially Rejects Appeals For Ukraine No-Fly Zone

A no-fly zone over Ukraine would require NATO to be willing to shoot down Russian aircraft, presenting a real risk of sparking a wider conflict.

BY JOSEPH TREVITHICK MARCH 4, 2022



ロシア侵攻でやはり大損害を受けていたAn-225の惨状。世界最大の巨人機は文字通り夢に帰した。

 

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AN-225 destoryed Hostomel airport

YOUTUBE SCREENCAP

 


(メディア関係者の皆様へ。当ブログではロシア語発音由来のキエフではなく、ウクライナ発音に近いキーフを採用しています。また、An225という機材は存在しないのでご注意ください。)

 

否が心配されていた世界唯一のアントノフAn-225ムリーヤ(夢)の状況を示す画像が出てきた。ひどい。

 

 

巨人機はほぼ全壊で、機首、主翼、エンジンが大きく損傷している。機体後部は損傷がないようだが、実態は不明だ。数日前の衛星画像では尾部は無事で、ホストメル空港Hostomel Airportの巨大格納庫の下に隠れていたことがわかったのが唯一の朗報だ。

 

TWITTER SCREENCAP

 

同空港にアントノフエアラインズは拠点を置いていたが、ロシアの侵攻で戦闘の舞台になってしまい、戦いは先週を通じ展開した。その過程で空港施設や機材が大被害を受け、ムリーヤも例外ではなかった。同空港はキーフ近郊で北西に位置する。

 

PLANET LABS

ホストメル空港の衛星画像 February 28th, 2022.

 

ウクライナがロシアを撃退したら、同機で無傷な部分を使い、An-225の未完成胴体と組み合わせることになるのか、まさに「夢」である。

 

機体、建築物や艦船は再生あるいは更新できる。だが今回の戦闘による被害の拡大、なかんずく死亡者の増大は真の悲劇だ。生命はとりかえしがきかない。

 

だからといって、貴重な航空機が本来起こるはずがなかった無意味な戦争で喪失されたことに怒りを悲しみを覚えないわけには行かないのである。

 

This Is Our First Tragic Look At All That's Left Of Ukraine's Giant An-225 Cargo jet

 

The entire front of what was the world's largest operational aircraft is totally destroyed and its wings and engines are badly damaged. 

BY TYLER ROGOWAY MARCH 4, 2022


2022年3月4日金曜日

ロシアのウクライナ侵攻は統合抑止では防げなかった。台湾が心配だ。バイデン政権は軍事力での抑止効果を強化すべきとの意見が米議会に出ている。

 

M1エイブラムス主力戦車含む装備や車両をドイツのグラーフェンヴェール訓練場に事前配備装備から運び、ジョージア州フォートスチュワートからドイツへ展開する第3歩兵師団第1機甲旅団戦闘チームに支給する。(Maj. Allan Laggui/U.S. Army)

シアによるウクライナ侵攻は、台湾の武装強化の重要性を米軍と議会指導者に示すものと発言した下院議員が3月3日公聴会に現れた。

ウィスコンシン州選出のマイク・ギャラガー共和党議員Rep. Mike Gallagherは、米国と同盟国協力国が全体で取り組む「統合抑止」コンセプトがロシアに対し有効だったか、中国に対し機能するか疑問を呈した。

「今回は統合抑止の最初のテストで、現実のテストで、そして失敗した。我々は学ぶ必要がある」とギャラガー議員は下院軍事委員会公聴会でロシアについて発言した。

統合抑止はバイデン政権で重要な焦点となっている。全領域における統合的な軍事脅威、国務省、財務省、国土安全保障省など連邦政府全体が実施する制裁、外交交渉、金融措置、さらに世界各地の同盟国協力国の力を結集して、侵略が始まる前に抑止する構想だ。

国防次官(政策担当)のコリン・カールColin Kahlは昨年、このコンセプトは「われわれが行うほぼすべてに影響を与える」と述べた。「統合とは、通常兵器、核兵器、サイバー、宇宙、情報など、領域を超えての統合、という意味」と述べた。「また、競争や潜在的な紛争の舞台を越えて統合され、高強度戦からグレーゾーンまで、紛争のスペクトラムを越えて統合する」

カールは、ロシアがウクライナやジョージアのような非NATO諸国を奪う、中国が台湾を奪うシナリオに言及し、米国の政策の鍵として統合抑止力の必要性を説いている。

「潜在的な敵対勢力が考えている迅速な既成事実づくりのシナリオを否定できる能力と概念が国防総省に必要だ」

しかし、ギャラガー議員は公聴会で、現在の政策が非軍事手段に重点を置きすぎているのと主張した。

「偏った意見かもしれないが、抑止力発揮には、プーチンや習近平のような人物に有効なハードパワーが必要だ。抑止したい。私たちはNATOへの侵攻が発生してから対処したくない。台湾をめぐる紛争に対処したくない」。

「ただし、統合抑止がハードパワーへの投資を削すための煙幕であり、10年後やその先まで待っても実用化されない技術や、同盟国、ダボス会議や国連での発言がハードパワーの代わりになると信じているなら、抑止の失敗は続く」と発言した。

ギャラガー議員は無人システムなどの将来技術の資金を確保するために、海軍水上艦艇を縮小する計画を批判していた。

同議員はプーチンの「進路に」投入するハードパワーの内容について言及を避けたが、ロシアの侵攻が現実のものとなった今、ウクライナに追加の兵器を持ち込むことが困難になったと嘆いた。

「今回の教訓は、別の舞台、つまりインド太平洋軍である。教訓は、台湾をどのように武装させておくべきだったかという点だ。問題になってからでは支援増強は難しくなる」とギャラガー議員は述べた。

「我々は、中国を抑止する過程にある。だが制裁の脅威や国務省報道官の厳しい言葉のツイートでは、習近平を抑止できない」

また公聴会では、サウスカロライナ州の共和党議員ジョー・ウィルソンRep. Joe Wilsonが、ウクライナの主要な港湾都市オデッサに向かうロシア海軍への懸念に言及した。黒海に入れないが、ウクライナ第三の都市の安全を守るため、米海軍にできることはないのかと質問した。

トルコは、地中海と黒海をつなぐ海峡2つを支配しており、本拠地に帰るロシア軍艦を含むすべての軍艦に海峡通航を閉じる決定をしている。

海軍作戦副部長ウィリアム・レッシャー大将Adm. William Lescherは公聴会で、黒海の標的を攻撃したり都市の防衛では海軍装備が黒海に展開する必要はないと述べた。

「これまで実施した整備により、戦闘指揮官に複数海域から必要な効果をもたらす機会が実現している」と、同提督は米欧州軍について語った。

レッシャー大将は、トルコが海峡封鎖の決定を下したことについて、「米海軍、統合軍、政府全体による統合抑止が非常にうまく現れており、同盟国やパートナーを通じて行われている」と評価した。また閉鎖は、明らかに、ロシア艦艇の黒海展開能力に影響を及ぼしていると述べた。■

Congressman argues US deterrence strategy failed to protect Ukraine and could fail Taiwan too

By Megan Eckstein

 Mar 4

https://www.defensenews.com/congress/2022/03/03/congressman-argues-us-deterrence-strategy-failed-to-protect-ukraine-and-could-fail-taiwan-too/

 

 

 

 

南シナ海へ水没したF-35Cの回収に成功。中国ロシアの手に渡らず安堵する米海軍。事故原因調査と並行し機密漏洩で内部処分も進む。

 F-35C_RECOVERED_SOUTH_CHINA_SEA

U.S. NAVY

 

海軍は、今年初めに空母カール・ヴィンソン(CVN-70)の着艦事故で喪失したF-35C共用打撃戦闘機を南シナ海で回収に成功した。同機は深度約12,400フィートから引き上げられた。

機体は米第7艦隊の任務部隊75(潜水・サルベージ)と海軍海洋システム本部(NAVSEA)のサルベージ・潜水監督官(SUPSALV)により回収された。合同チームは、民間潜水支援工事船(DSCV)「ピカソ」に乗船した。同船は2月23日に沖縄を出港し、墜落現場に向かっていた。

 

海上保安庁発行の告知から、引揚げ作業地点はフィリピン・ルソン島の西方約170マイルだった可能性がある。海軍は詳細な場所を発表していない。

 

回収作業には、CURV-21(Cable-controlled Undersea Recovery Vehicle 21)と呼ぶ通常は海底調査に使用するテザー式の遠隔操作船(ROV)が使用された。CURV-21は、ソナーやカメラを搭載し対象物の位置を特定が可能で、今回は事故機に専リグとリフトラインを取り付けた。

 

艤装品とリフトラインで固定したF-35Cは、船内クレーンのフックで海上に吊り上げられ、ピカソに移送された。第7艦隊の公開写真では、機体は保護用のプラスチックに包まれ輸送されているようだ。

 

タスクフォース75責任者であるガレス・ヒーリー大佐Capt. Gareth Healyは、「迅速かつ有効な指揮・統制・通信機能、機敏なロジスティクス、有機的なセキュリティ、タスクフォースの専門性を選択した」「最終的に、慎重に事件発生から37日で回収作業を行えた。この問題のユニークな特性とNAVSEAのユニークな技術力で達成可能なスケジュールにできた」と述べている。

 

海軍は、事故機の残骸は今後、「調査のため軍事施設に運ばれ、本国輸送の可能性を評価する」と発表した。

 

残骸の大部分が回収されていなかったことがわかり、国防総省や共用打撃戦闘機のコミュニティは安堵するだろう。残骸の一部または全部が敵対する国(中国かロシア)により調査されたり、墜落現場から持ち出される可能性が非常に高かった。

 

「我々はF-35の価値を、あらゆる点で留意している」と、事故直後に国防総省のジョン・カービーJohn Kirby報道官は述べた。「さらに機体回収では、安全を第一に考えつつ、国家安全保障上の利益を考慮して行う」

 

昨年11月に空母HMSクイーン・エリザベスで離陸時の事故で地中海に沈んだ英国空軍F-35Bステルス機を浮上させる作業と同様のパターンで回収されたようだ。

 

今回のF-35Cは、着艦時に飛行甲板後部に衝突し、その後、転覆して着水した。パイロット含む7名が負傷したが、パイロットは脱出後、水中から救出された。

 

F-35Cは空母の4本のアレスティング・ワイヤーをすべて引きちぎり、甲板上に破片を散乱させたが、ヴィンソンの飛行業務はわずか45分以内に再開された。

 

ただし墜落直後に、水中の事故機の写真と、艦内のアイランドカメラ室が撮影した動画2点がSNSにアップされるという驚くべき手順違反が発生した。海軍はその後、すべて本物であると確認した。

 

海軍は、こうした機密漏洩がなぜ起こった原因を究明したいとはずだ。海軍士官1名と上級下士官4名を戒告処分にしており、これらの者は裁判によらない処分を受ける見込みである。同時に、海軍は墜落事故の原因究明を続けており、期待されていた海軍F-35Cによる最初の作戦行動に影を落としている。

 

Navy's Crashed F-35C Recovered From The Bottom Of The South China Sea

Recovery of the jet after its carrier landing mishap allays fears that it could have fallen into the wrong hands.

BY THOMAS NEWDICK MARCH 3, 2022

 


2022年3月3日木曜日

ウクライナ戦争3月2日の状況。ロシア軍は補給支援活動など不備を露呈。ただし、克服をめざしつつさらに攻勢を強める予測。プーチンは苦境と感じていない。

 


Russian military vehicle burns in Ukraine

ウクライナ・ハリキフで炎上するロシア軍装甲兵員輸送車は放棄されている February 27, 2022. AP Photo/Marienko Andrew


  • ロシア軍はウクライナの思わぬ抵抗に手こずっているが、プーチンは消耗しきっていないとペンタゴンは見ている

  • ロシア軍のウクライナ侵攻が失速しているのは補給問題とあわせウクライナ側の抵抗が激しいため

  • 米関係者はロシア軍が状況に適応し、ウクライナへ圧力をかけ目標を達成すると見ている



シア軍は補給問題やウクライナの抵抗に苦しんでおり、ウクライナ全土への進軍が妨げられているが、モスクワに選択肢がないわけではないと、米国防高官は記者団に3月2日に語った。


水曜日時点で、ロシアはウクライナ周辺に配備した戦力の約82%を投入したようだ。これは、火曜日時点の80%を超えているものの「追加戦闘能力の豆乳として大規模」ではなかったと、同高官は述べた。


ウクライナの空では争いが続いている。モスクワの主張と裏腹に、ロシアはウクライナ全土の制空権を「獲得」していないという。「ウクライナの防空・ミサイル防衛能力は無傷で存続している」


ロシア軍はウクライナ都市複数に進攻しているが、大多数で進展がないように見える。ロシアは南部の都市ケルソンを占領できたが、戦闘開始以来、主要都市で占領できたたのは同市だけである。


ウクライナの抵抗は「効果的でかなり独創的」であり、ロシアは部隊への燃料・食料の供給に苦労している。


ロシア側は問題を認識しており、解決しようとしている。しかし、ロシア側は引き続きこれらの物流と維持の問題に悩まされている」と言うのがこちらの評価だと当局者は述べた。


ここ数日、首都キーフに進撃するロシア軍支援のため40マイルに及ぶ輸送隊が向かっているように見えたため、国際的な関心が集まった。この輸送部隊は停滞しているようだと同高官は述べ、米国はウクライナ軍が「場所と時間によっては」輸送船団を標的にしたとの「兆候」を得たと付け加えた。


「また、キーフ北側で士気に問題があり、作戦がうまくいかなかったと考えられる」と付け加えた。同高官は以前、ウクライナの他の場所で進撃が遅れている要因として、ロシアが「自国の航空機とパイロットで高いリスクを取る」ことに消極的だと指摘していた。


アナリストや専門家は、ロシアの軍隊投入に疑問を投げかけている。モスクワは、ウクライナ軍をすぐに制圧でき、抵抗に直面しないと誤って考えている、という指摘だ。


ロシアの小部隊は重要拠点の制圧に突進したが、ウクライナの軍や民間人の守備により動きが鈍くなったり、撃退されている。


CNAのロシア専門家で元CIA軍事アナリストのジェフリー・エドモンズJeffrey EdmondsはInsiderに対し、混乱の兆しを見せている部隊があり、後続の支援なく行われた空爆作戦や待ち伏せされた輸送隊など、「作戦上の不手際」が発生していると述べた。


米国防当局者は2日、ロシア軍が歩兵、装甲、砲兵、空軍を複合的に使って抵抗を制圧していないと指摘し、専門家はロシア軍のドクトリンからの逸脱を指摘している。


「この規模、複雑な作戦なら当然と思われる程度まで、複合戦力の統合が進んでいないと見える」と、同高官は述べた。


「空では対地支援の統合的な活動はあまり見られない」と同高官は付け加え、統合的なウクライナ軍の防空・ミサイル防衛能力の掃討や、地上軍移動に先立つ航空支援の欠如を指摘した。


同高官は、ウクライナの抵抗が効果的になっているのは、複数要因によるものとした。


ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は引き続きウクライナ軍を指揮中で、軍は「装備資源を非常によく結集している」と述べ、ウクライナ人の「戦う意志は非常に強い」と付け加えた。米国はじめとする各国の安全保障支援も継続しており、ウクライナ政府関係者はその活用を示唆している。


ロシアは依然として質的にも量的にも軍事的に優位で、抵抗を克服するべく強力で無差別火力を投入する多面的攻撃を仕掛けてくると予想される。数百人の民間人がすでに犠牲になっているとの報告もあり、ウクライナからはロシア軍の各種兵器が民間人を襲う映像も出てきた。


ロシア軍は「学ぶだろう。適応し、これまでの困難や不手際を乗り越えるはずだ。我々はその動きを予断なく見るべきだ」と米国政府高官は述べた。


準備した部隊の82%を投入しても、プーチン大統領が「消耗した」ことにはならない、と同高官は付け加えた。「それどころか、彼は選択肢を増やし続けている」し、「利用可能な戦闘能力に関して言えば、まだ極限状態ではない」とした。■


Russia's military is 'bedeviled' by its own problems and Ukrainian resistance, but the Pentagon says Putin isn't 'spent'

Christopher Woody 

https://www.businessinsider.com/russia-faces-own-military-problems-ukraine-resistance-but-isnt-spent-2022-3


ロシア語が由来のキエフではなく、キーフに変更しています。


ウクライナ危機を横目に世界の安全保障環境に対応能力不足を痛感する米軍は、内部改革により軍能力を引き上げる必要を認識。ただし、時間があるのか。

 

 

シアによるウクライナ侵攻を受け、欧州に兵力を投入する中、米軍は、即時性、深刻性、危険性で程度が異なっても、同時に複数の課題に対応が求められている。

 

ウクライナやアジアの紛争により安全保障環境が悪化している今、国防総省は官僚組織を整理すべき時期に来ており、2つの事実を直視するのが出発点だ。まず、国防総省は敵のスピードに呼応した革新と投資を行っていない。第二に、国防総省と上下両院議員多数は、長期的な競争力と引き換えに短期的なリスクを受け入れることには消極的だ。

 

前国防次官(政策担当)のミシェル・フローノワMichèle Flournoy は今週、議会で「(国防総)省全体のイノベーションへの刺激で一定の進展があったものの、ペースや規模は必要なレベルに至っていない」と述べたが、控えめに言っても、これが事実だろう。

 

新興・先端軍事技術全般で米国は遅れをとっており、競争優位性を失う危険性があると国防指導者は警告してる。空軍で初のソフトウェア担当官だったニコラス・チャリアンNicolas Chaillan は国防総省が全領域統合指揮統制(JADC2)で予算措置を欠き、米軍が「関連性のあるペースでタイムリーに能力を提供できる」よう機敏に行動する能力が阻害されているとして昨秋辞任した。

 

その後のインタビューでチャリアンは、「今後15年から20年は、中国に勝てない」と結論づけた。中国との戦いはすでに終わっている。国防総省の統合人工知能センターの責任者マイケル・グローエン中将Lt. Gen. Michael Groenは、軍の人工知能ツール活用は、今の所敵対国に勝っていると主張し、反論した。しかし、同中将は、革新と企業買収のペースが憂慮すべきものと認め、「軍内部で価値観の変化を起こす必要がある」と述べた。

 

国防総省の極超音速兵器開発計画も、中国やロシアに遅れをとっている。1月、米宇宙軍のデビッド・トンプソン大将Gen. David Thompson は、国防総省は「多くの面での遅れをきわめて迅速に取り戻さなければならない」と強調している。

 

中国は核兵器近代化を進めており、元統合参謀本部副議長のジョン・ハイテン大将Gen. John Hytenは「今ある(大陸間弾道ミサイル)サイロ400基の近代化に10~15年かかる」「ただ、中国はほぼその数を一晩で建設している」と警告している。

 

各軍が同様な問題に苦しんでいる。海軍では、海軍情報部隊の責任者であるケリー・エシュバック中将Vice Adm. Kelly Aeschbachが今月初め、「適応速度が不十分で心配」と述べ、海軍組織に「本当に革新的に変わるチャンス」が与えられていないと語った。

海兵隊は中国との戦略的競争に向け再編成の取り組みが評価されているが、戦闘開発・統合担当の新任のカーステン・ヘックル中将Lt. Gen. Karsten Hecklも警鐘を鳴らしている。「もし、今の対応が十分に速いと見る人がいれば、それはおかしい」と、彼は2月の会議で述べた。

 

フランク・ケンドール空軍長官Secretary of the Air Force Frank Kendallは、「現有のレガシーシステム維持にこだわると、十分に資源を有する戦略的な競合相手には勝てない」と警告している。ケンドール長官は、議会と協力し進むべき道を見出したいと前向きだ。

 

しかし、長官が相手とする議会は、期限から半年近く経っても連邦政府の通常予算を通過させられない議会だ。

 

目まぐるしく変わる安全保障の動きと、急変する敵の増強を前に、国防総省が、緩慢に動くのでは言い訳がつかない。

 

ハイテン大将は、成功が確実でない限り、高リスクや新しい取り組みを進めない文化が国防総省にあるのを憂慮している。同大将は、制服組に権限を与えることを第一の解決策とした。「賢いリスクを冒すのを許容しなければならない」と同大将は昨年秋述べた。

 

ケンドール長官もこの考え方に賛同しており、「中国やロシアの抑止には、必要なリソースと、現時点のリスクバランスを取ることで将来の大きなリスクを回避する意思がなければ、米国は1チームとして勝てない」と述べていた。

 

米国は同盟国やパートナーは、各地で戦略的競争相手に直面している。ロシアによるウクライナ侵攻は正当化できないが、欧州安全保障の秩序を乱しており、米軍は遅れを取ったり、鈍い反応を示す余地がなくなっていることを思い知らされている。■

 

How the Ukraine Crisis Could Make the US Military Stronger - 19FortyFive

ByMackenzie EaglenPublished2 days ago

 

 

Now a 1945 Contributing Editor, Mackenzie Eaglen is a resident fellow in the Marilyn Ware Center for Security Studies at the American Enterprise Institute. You can follow her on Twitter: @MEaglen.

More about Mackenzie Eaglen: While working at AEI, Ms. Eaglen served as a staff member on the National Defense Strategy Commission, a congressionally mandated bipartisan review group whose final report in November 2018, “Providing for the Common Defense,” included assessments and recommendations for the administration. Earlier, Ms. Eaglen served as a staff member on the 2014 congressionally mandated National Defense Panel, established to assess US defense interests and strategic objectives, and in 2010 on the congressionally mandated bipartisan Quadrennial Defense Review Independent Panel, which evaluated the Pentagon’s defense strategy. She is also one of the 12-member US Army War College Board of Visitors, which offers advice about program objectives and effectiveness.