2021年9月12日日曜日

同時テロ9/11から20年、襲撃への怒りからアフガニスタン等で多大な犠牲を払った米軍にどんな変化が生まれたのか。自分の家族のため、社会のため身を張って本国を防衛した戦士に国家が感謝を表するのは当然のことだろう。批判派が簡単に無駄な戦争と片付けるのは看過できない。


 

 

「テロ襲撃に怒りを感じ、こんなことを再発させてはいけないと意気揚々となった」

 

「その時点以降、高度な訓練を受けた仲間がミッションを正しく実施しようと懸命に動いた。さらに罪を償わせてやる気持ちもあった。全員が等しく同じ気持ちでミッションに向かった。こんなことを繰り返してはいけないという気持だった」

 

「二度と米本土を攻撃させない。全員が同じ気持ちだった。これを20年間守りとおした」

 

その価値はあったのだろうか。

 

「ではこう言おう。最悪の事態だった当時がアメリカ最高の瞬間だった」とガーステンは力を込めて語ってくれた。

 

「全員がはっきりと違いを出した」とレッドマンが付け加える。

 

「自由を手にしたアフガン人は多い。自由の味を覚えれば手放せなくなる。9/11後のアメリカの状況では、このことに再度注目すべきと思う」

 

「特殊部隊の仲間たちにはこの20年間の実績に栄誉と誇りを感じてほしい。本の末尾の一文で本全体を書き直すことにはならない」とコロン-ロペスも言う。

 

米軍部隊がアフガニスタンを完全撤退してすべて終わったのだろうか。

 

「特殊部隊の任務は今後も減ることはないが、特殊部隊だけを消耗することがないようにバランスが必要だ。20年戦争でここ数年は特殊部隊が酷使されてきたと思う」(レッドマン)

 

 

軍上層部の見方

 

ジョー・ダンフォード大将は9/11当時はキャンプペンドルトンにあり、その後イラク派遣海兵隊の指揮をとり、アフガニスタン駐留米軍司令官を2年つとめたあと、その後4年間統合参謀本部議長だった。

 

 

「アフガニスタン撤退をもっと前にしておくべきだったと言う人がいるだろう」と語る。「当時現地で毎日のように言っていたのだが、我々は米本国を守る保険の役割だったのだ」

 

「暴力的な過激主義者集団からわが国が9/11攻撃を受けたことを忘れてはならない。その教義はまだ残っている。またアフガニスタンでの最近の事態から過激主義の動きは世界各地で広がることは間違いない」

アフガニスタンから最後の撤収が完了して数日後に統合参謀本部議長マーク・ミリー大将は9/11を振り返り、20年の経過を回想しスペインのロタでこう語った。

 

「アメリカ合衆国へのその後の攻撃を防げた。複雑な気持ちがあるが、それは事実だ。痛みと怒りの混じった気持ちが軍に勤務した全員でが同じはずだ」

 

「軍の全員にある痛み、怒り、挫折感の入り混じった気持ちは現実のものであり、共有したい。軍での勤務は決して無駄ではない。貢献が重要であり、軍は軍服を着る全員を重要視してきた」■

 

 

How 9/11 changed the US military and how it fights

An Air Force vet and a former Navy SEAL tell how 9/11 transformed U.S. defense – and their lives

By Jennifer Griffin | Fox News


9月の自民党総裁選挙は日本のみならずアジア太平洋の重要政治イベントになる。初めて日本が日米関係で主導的役割を果たす可能性が出てきた中で、新首相選定は極めて重要。

 

日米関係さらに南シナ海、台湾については今回の自民党総裁レースでは争点になっていませんが、安部路線を誰も簡単に変更できないということですね。記事では高市の名前がありませんが、日本ウォッチャーにとっても全くのダークホースということでしょうか。この記事だけ見れば論理的に高市という選択肢が一番安心できることになるのですが。中国や国内メディアが警戒していることでそれは明白です。はて、同じような構造がトランプの大統領選でもあったような気がしませんか。National Reviewの記事からです。それにしてもいまだにモリカケ桜が争点になると信じている反対党の皆さんの世界観の欠如には嘆くしかありません。




米国との同盟関係を維持し、域内安定が確保できるかはワシントンではなく、日本の次の政治トップに左右される。


本の政権政党で中道右寄り姿勢の自民党はで9月17日から新しい総裁選びに入り、実質的に次期首相を選ぶことになる。現職の菅義偉は立候補しないと発表ずみだ。自民党員が選ぶ人物のもと、次回総選挙で勝利となる見込みで、その人物に米日同盟のみならずアジアの将来をゆだねることになる。


理由として第二次大戦終結後で初めて日本が主導的な立場になり、中国のインド太平洋での覇権拡張への対抗や、米国が70年にわたり守ってきたアジア民主体制のもとで自由と繁栄を維持できるかが問われるからである。


これまでの米日関係では米国が日本に積極防衛策を取れ、アジアでの影響力を強めろと求めてきたのが常だったが、日本は消極的に応じてきた。だが今回のアフガニスタンをめぐる混乱で敵味方問わず、海外でのコミットメントが問題となることを露呈し、バイデン政権は安易に切り捨て逃避する選択を取った。今度は日本が同盟関係を軌道に乗せるべく主導的な立場となる。特に中国の脅威への対処が中心だ。


幸いにも菅の前任安倍晋三首相が日本が積極的に国益を守るべく国防に関与すべき時がきたと国民に明確に示してきた。このため日本の国防費は第二次大戦後で最高水準となり、米国とともに中国のアジア覇権に対抗する積極策に出るようになった。


安部はトランプ大統領という熱烈な支援者を得て、従来より積極的な姿勢に出た。トランプと安部によりいわゆるクアッドが米国、日本、オーストラリア、インドに成立し、単なる構想にとどまらず健全な戦略立案の基盤が生まれた。海洋民主国家間の「戦略ダイヤモンド」が「自由で開かれたインド太平洋」(これも安部のお気に入りの表現)を支える構造になった。安部は防衛技術協力を米国と進め、世界最先端の技術大国同士が将来の兵器開発に向かっている。これを中国は恐れる一方でアジア内の同盟各国は勇気づけられている。


ところが安部は体調不良を理由に2020年6月に首相の座を辞任し、トランプは2020年大統領選挙で落選した。安部の退場があったものの日本では何も変化していない。菅の後任がだれになっても、岸田元外相、河野前防衛相、あるいは国民に人気が高い石破でも、安部がとった親米防衛姿勢は大きく変わるものではない。


これに対し、バイデン政権は日本側がトランプ退場後に危惧した通りの展開を見せて、オバマ時代へ回帰そている。「後方からの指導力」や「戦略的忍耐」が良いこととされている。


「外圧」とはある国から他国へ考え方や方向を変更させる圧力の日本語表現だ。日本の外交は米国の外圧で動いてきた。沖縄の米軍基地問題、イラク=アフガニスタンへの自衛隊派遣がその例だ。今度は次期首相が外圧をかけてバイデンチームに正しい選択を強いる番となる。これは口だけの話ではなく台湾防衛や南シナ海での中国主張への対応もあり、同時に中国が日本の主権に東シナ海で同様の主張をしているがこれも否定する必要がある。


米日関係で何が日本の強みになるのか。日本から見て米国に毅然たる姿勢が欠けていれば、米国が維持してきた核抑止力は空虚な言葉と受け止められる。これまでも日本関係者から追い詰められれば独自に核武装に走るとの発言が出ており、日本の技術力なら数カ月でこれを実現できる。


こうなれば域内で核武装競争が始まり、南朝鮮のみならず台湾までも選択すれば、誰もが臨まないシナリオが現実のものとなる。いずれにせよ、米日関係は域内の平和安定の礎であり、インド太平洋を中国の支配から守る必要がある。日本の指導部がこの行方は左右する。ワシントンではない。次の首相が誰になるにせよ、歴史に残るミッションに直面する。米日両国に死活的なミッションとなる。■



Japan Foreign Policy: Alliance with US Crucial

Why Japan’s Next Prime Minister Matters

By ARTHUR HERMAN

September 9, 2021 6:30 AM

ARTHUR HERMAN is a senior fellow at the Hudson Institute, a Pulitzer Prize finalist, and the author of, most recently, The Viking Heart: How Scandinavians Conquered the World (Houghton Mifflin, 2021). @arthurlherman


2021年9月11日土曜日

戦史に学ぶ フォークランド戦争、空母以外に航空機運搬手段が必要だ。英商船をにわか仕立て運搬船にしたものの、ミサイル攻撃を受けた悲劇。

 英本土とフォークランドの距離と尖閣諸島=日本本土の距離は比較にならないくらい異なりますので、直接参考にならないかもしれませんが、1982年の事例と同様に追加機材を輸送する手段が必要となるかもしれません。長距離フェリーでは平時から一部に防衛省との契約がある船舶があるようですが、機材を搭載できそうなコンテナ船ではどうでしょうか。温故知新ではないですが、いろいろ考えさせられる事例であります。



 

 

  • アルゼンチンにフォークランド諸島を占拠された英海軍が奪回作戦を1982年開始した

  • だが空母が不足し、英海軍の航空作戦実施に支障をきたした

  • そこで英国は臨時母艦でヘリコプターやジャンプジェット運用をねらった



1982年の英海軍は同年3月にアルゼンチン軍が占拠したフォークランド諸島の奪回作戦にあたり、懸念事項があった。占領部隊への空爆が必要だし、アルゼンチン潜水艦や地上部隊を警戒しヘリコプターの運用も必要で、アルゼンチン本土から英機動部隊に向け飛来する機体へ迎撃機の出撃も必要だった。


だが英海軍の空母インヴィンシブルはシーハリアー8機、シーキングヘリコプター12機しか搭載しておらず、そもそも同艦はオーストラリア向け売却が決まっていた。もう一隻の空母ハーミーズはシーハリアー12機、シーキング20機を搭載していた。


4月下旬に交戦が始まると、ハリアーは早速その真価を発揮し、アルゼンチン機を20機撃墜したが、地上砲火と事故で喪失も発生した。


だが英海軍は15千トンのG2級ロールオンロールオフコンテナ貨物船アトランティック・コンヴェイヤーを民間借り上げ船舶(STUFT)として4月14日に徴用していた。


あたかも第二次大戦中の英米の護衛空母のように民間船舶を即席空母に改装し、ヘリコプターやハリアーの運用に使おうとした。

Sea Harrier approaches the container ship and aircraft carrier Atlantic Conveyor

シーハリアーが改装なったシーコンヴェイヤーの運用テストで接近した。Royal Navy/Imperial War Museums via Getty Images



同船は最小限の改修を受け、機体運搬を主に行う想定となった。これも第二次大戦中の空母と同じで、陸上運用戦闘機を遠距離運搬することになり、コンヴェイヤーは英空軍の地上運用ハリアーをハーミーズ、インヴィンシブルの両空母に届けることになた。


改修は工期わずか9日で行い、イアン・ノース大佐の指揮のもとで4月25日に海上運用可能となり、アセンション島で英海軍809飛行隊のシーハリアー8機、英空軍のハリアーGR.3を6機搭載した。


合わせてウェセックスヘリコプター6機、英空軍チヌークへリコプター4機も運んだ。チヌークは米国から輸入したばかりだった。船内にはミサイル、クラスター爆弾、迫撃砲弾、航空燃料、大切な発電機や航空機燃料共有装備を搭載していた。


機材多数はプラスチック「バナナ包装」されていたものの、ハリアー1機だけは離着可能な状態とされ、警戒に当たった。


姉妹船アトランティック・コーズウェイも5月5日に徴用され、航空燃料の取扱い用に大幅な改修を受けた。


ともに間に合わせの改装だったが、重要な機能が一つ欠落していた。全方位捜索レーダーと短長距離での防空装備だ。もともと商船であり、こうした装備は見送られたのだが、搭載していれば工期はさらに伸びていただろう。


アトランティック・コンヴェイヤーはフォークランド海域に5月19日到着し、積み荷のハリアー14機をハーミーズ、インヴィンシブルの二隻に届けた。


搭載ヘリコプターは5月26日に地上部隊合流の予定だった。特にチヌーク各機は英特殊作戦部隊での投入が期待されていた。ローターの組立が船上で進み、稼働が近づいていた。


だが5月25日にアルゼンチンのシュペールエタンダール2機編隊が低空ぎりぎりの飛行で英機動部隊へ北西から接近してきた。


23マイルまで近づくと、機体を上昇させAgave標的レーダーを稼働し英艦隊を捕捉した。急ぎエグゾセ対艦ミサイルを発射し、帰投した。HMSアンバスケイドがミサイル発射を探知し、チャフ放出でミサイルを妨害した。エグゾセは標的を逃した際は付近で最大の標的を狙うようプログラムされており、コンヴェイヤーを狙った。


コンヴェイヤー船長は比較的耐じん性が高い船尾を向けようとしたものの、そもそもレーダー警戒装備や近接防御装備がない。ミサイル一発が左舷Cデッキに命中した。


爆発が弾薬燃料の発火につながり、制御不能な火災が発生、少なくとも乗組員三名が死亡した。アンドリュー王子がその時点で空母ハーミーズからシーキングヘリコプターを操縦しており、大きな水柱が立っていたと当時を回想している。


商船構造のコンヴェイヤーにはダメージコントロールの構造になっておらず、攻撃を耐えられなかった。直撃30後にノース艦長は30分で総員退去を命じた。


その後三時間にわたり、ヘリコプターも動員して救助活動が続き、駆逐艦HMSアラクリティが軍民137名を救助した。アンドリュー王子のシーキングもここに加わった。ノース艦長他8名は救助を待つことなく海上で死亡した。


全焼となったコンヴェイヤーはまだ浮いており、曳航しようとしたが、5月28日に沈没した。


コンヴェイヤー搭載のヘリコプターのうち、残存したんはウェセックス、チヌーク各一機で攻撃時点で滞空したため難を逃れた。ヘリコプターによる地上部隊移動は実施できなくなり、部隊は徒歩で移動した。


ただチヌークのブラボーノーヴェンバーは延べ2,100名の地上部隊、捕虜を搬送し、105mm榴弾砲3基を運んだ。


コンヴェイヤーは戦没したが、姉妹船アトランティック・コーズウェイは5月27日に運用を開始した。


同船もヘリコプターを届けたが、アルゼンチンの攻撃を受けた輸送艦の負傷者をヘリコプターで収容した。本来コーズウェイはヘリコプターを送り届ける任務だったが、結果として4千回もの着艦を見ることになった。


コーズウェイは6月17日まで戦闘水域に残り、その後商業運用に復帰し、四年後に廃船となった。■


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British Navy Used Impromptu Aircraft Carriers to Recapture Falklands


Sebastian Roblin , 19fortyfive Sep 2, 2021, 11:16 PM

Sébastien Roblin holds a master's degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

Read the original article on 19fortyfive. Copyright 2021. Follow 19fortyfive on Twitter.


今週の気になる航空宇宙関連ニュース 9月4日-10日

カール・ヴィンソン空母打撃群が南シナ海へ展開

横須賀を出港したUSSカール・ヴィンソンは巡洋艦USSレイク・シャンプレイン、駆逐艦USSチャフィー、戦闘艦USSタルサをともない、各種演習を南シナ海で展開する。


エアインディアのA319計6機をAEWに改装

インド政府はC295輸送機計56機の購入を承認した。あわせてエアインディアで使用したA319旅客機計6機を空中早期警戒機へ改修する案も承認された。C295の40機はエアバスがインド国内でタタと生産する。


イスラエルIAIがベトナム軍事衛星調達を受注

イスラエル航空宇宙工業がエアバス、タレスとの競合を経て、ベトナムの軍事衛星を受注した。


海自P-1が滑走路逸脱して着陸

9月7日、P-1が着陸時に航空自衛隊岐阜基地の滑走路を逸脱し緑地帯で停止した。機体は川崎重工で修理を受けていた。


米空軍が新型電子戦ポッド「Angry Kitten」を演習に投入

新型電子戦用ポッドはジョージアテックリサーチが開発し、ノーザンライトニング2021演習で試用された。これはデジタル無線周波数記録技術を利用し、脅威に迅速対応するもので、必要に応じジャミング信号を修正するもの。

https://www.53rdwing.af.mil/News/Article/2754024/test-milestones-reached-at-northern-lightning/


米、印で空中発射式UAVの共同開発を合意

インド空軍、米空軍が空中発射式UAVの共同開発に合意した。これは米印防衛技術通商構想の枠組みの一部となる。米空軍は空軍研究本部(AFRL)、インドは国防研究開発機関(DRDO)が担当する。

https://www.af.mil/News/Article-Display/Article/2764056/india-us-sign-air-launched-uav-co-development-project-agreement/


ACC司令官がF-15EX操縦資格を取得

米空軍航空戦闘軍団司令マーク・ケリー大将がF-15EX操縦資格を取得し、F-15EX・F-35A両機の操縦可能なパイロット二人目となった。

https://www.53rdwing.af.mil/News/Article/2764257/acc-commander-completes-f-15ex-eagle-ii-qualification/


カタール、トルコがカブール空港運用再開を支援

A technical team from Qatar arrived in Kabul, Afghanistan on Sept. 1 to help the Taliban reopen the city’s airport, AFP reports.

カタール技術チームが9月1日、カブールに到着し、タリバンを支援して空港運航の再開をめざす。

https://www.channelnewsasia.com/world/qatar-turkey-work-taliban-reopen-kabul-airport-2152851



 

2021年9月10日金曜日

イスラエルが米中央軍の管轄に入ったことの何が重要なのか。米=イスラエル=アラブ主要国の対イラン包囲陣が生まれる。

  

イスラエルのアイアンドーム対ロケット弾防衛装備と米製ペイトリオット対ミサイル防衛装備が米=イスラエル合同軍事演習で並んだ。 March 8, 2018. (Jack Guez/AFP via Getty Images)

 

 

中央軍から9月1日発表があり、イスラエルが中央軍CENTCOMの担当地域に入る。この展開の背景にアラブ=イスラエル間の関係で変化が生まれ、米=イスラエル=アラブ連合軍の軍事力が向上し、イランおよびテロ集団のイラン代理勢力への抑止効果が高まる可能性が出てきた。

CENTCOMは1983年に生まれたが、イスラエルは米欧州軍司令部EUROCOMの責任範囲とされてきた。これは地理と無関係にイスラエルがアラブ諸国と政治的に切り離された関係にあったためだ。これまでCENTCOMが多国間演習を実施する際もイスラエルが域内で孤立して実施調整を難しくしていた。

アラブ=イスラエル間の関係改善で共通の脅威に対応する基盤が主要国にできた。関係改善を生んだ原因はイランで、核兵器開発を長年にわたり模索していることにあわせ、中東全域でテロ集団の代理勢力を育成する同国の行為だ。

イランの強硬な動きが理由で、米国が仲介した形でエイブラハム合意がイスラエル、バーレーン、アラブ首長国連合間に昨年成立し、政治経済文化面の協力関係で互恵効果への道が開いた。軍事協力関係の伸展で域内安定度が増す効果が生まれそうだ。

今年五月にはガザ地区でイスラエルとイラン支援を受けるテロ集団との交戦が発生した。テロ集団は4,300発ものロケット弾をイスラエルに向け発射し、無人機、無人水中機、対戦車兵器まで展開された。

こうした攻撃自体はイスラエルにとって脅威ではないが、イランやイラン代理勢力がイスラエル攻撃に投入する装備が米軍やアラブ同盟国に向けても使われている。

2019年5月から現在に至り、米軍陣地へのロケット弾、迫撃砲、無人機攻撃100回近くの背後にイラン支援を受けた戦闘員集団があったと考えられ、今年だけでも27回の攻撃事例が報告されている。米軍等は2019年のサウジアラビア石油精製所攻撃の背後にイランの関与を糾弾しており、無人機や巡航ミサイルの投入で世界の石油生産精製に少なからぬ影響を与えた。

イランは米国、アラブ、イスラエルの権益を海上でも標的にしている。無人機、高速ボートを使いペルシア湾で米艦艇を狙い、イランはタンカーを拿捕すし通商の自由な流れを阻害し、アラブの隣国に被害を生じさせている。イスラエルとつながるタンカーに無人機攻撃も実行した。

イランはテロ集団に各種兵器を供給する以外に、兵器の現地生産をガザ、レバノン、イエメンで支援している。このため米国、イスラエル、アラブ中核国の協力が一層必要となった。

イスラエルをEUCOMからCENTCOM指揮下に移したことで直ちに域内の安全が強化される結果が生まれるわけではない。CENTCOMはこれまでもイスラエルと緊密に動いてきた。CENCOM司令官ケネス・マッケンジー大将は指揮権移管はエイブラハム合意の「運用面」で効果を発揮すると今年初めに発言している。

その一つに米国、イスラエル、アラブ諸国間の合同軍事演習や訓練の実施があり、CENTCOMはイスラエルに対しエジプト、アラブ首長国連邦を次回のノーブル・ダイナ演習に招くよう求めている。CENTCOMはアラブ首長国連邦に対し次回アイアン・ユニオン演習にイスラエル国防軍の参加に合意するよう求めている。またCENTCOMはEUCOMと連携しギリシアに働きかけ、エジプト、ヨルダンとともにイスラエル、アラブ首長国連邦他を次回ギリシャ主催のイニオコス演習に招くよう働きかけている。

こうした動きを通じ、各国の即応体制が強化され、共同作戦への準備も強まる。さらにイランやテロ集団の代理勢力に強いメッセージとなる。

今回の発表は前向けかつ良い結果を生む。ここからが正念場で米、イスラエル、アラブの権益の防衛を高める作業が始まる。■

Why Israel's transfer to US Central Command could help deter Iran

By Bradley Bowman and Behnam Ben Taleblu

 Sep 8, 12:50 AM

Bradly Bowman is the director of the Center for Military and Political Power at the Foundation for Defense of Democracies, where Behnam Ben Taleblu is a senior fellow.


JDAMで対艦攻撃が可能となった。第四世代戦闘機にさらなる攻撃力が生まれる。中国海軍をにらんだ安価な攻撃方法を目指す米空軍。

 


 

GBU-31

F-15Eストライクイーグル三機が第85試験評価飛行隊からQUICKSINK共用性能技術実証テストに投入された。 Aug. 26, 2021. (U.S. Air Force photo by 1st Lt Lindsey Heflin)

 

GBU-31の試射で共用直接攻撃弾を「移動中並びに静止海上目標」に投入する道が開いた。

 

第85試験評価飛行隊のF-15Eストライクイーグル3機が2,000ポンドGBU-31JDAM改修型のテストを2021年8月26日に実施した。

 

実施した第53航空団は空軍研究本部(AFRL)とともにF-15Eで改修型GBU-31運用の戦術、手順を編み出し、移動海上目標、静止海上目標の双方に試した。テストの目的は「空中発射弾を艦船に向け発射し、これまでの対艦攻撃の体系を変えること」だったという。

 

「大型で航行する艦船へ空軍は2,000ポンドレーザー誘導式GBU-24を主に使っている」と同飛行隊のウェポンズシステム士官アンドリュー・スワンソン少佐が説明している。「ただし、同装備は理想的と言えないだけでなく、運用機の生存性を下げてしまう。そこで今回はこれを一新できるか試した」

 

JDAMは誘導式空対地兵器で各種弾頭に変更できる。2,000ポンドのBLU-109/MK 84、1,000ポンドのBLU-110/MK 83あるいは500ポンドのBLU-111/<K 82を装着できる。誘導では尾部の制御機構とGPS式のINSを使う。航法制御では位置、速度ベクトルを機体から与える。

 

米空軍が公表したGBU-31の写真はGBU-31(V)1/BのようでMK-84に誘導キットを装着している。広報資料にある「修正」について興味深い点がある。JDAMで「移動海上目標」を攻撃する方法だ。というのはJDAMはレーザー誘導方式ではないためで、(ただし後で述べるレーザーJDAMは別にある)もともとは固定静止目標を念頭に開発されたからだ。

 

第85試験評価飛行隊は空軍研究本部とともにF-15Eストライクイーグルに改修型2,000ポンドGBU-31JDAMを搭載した。テストの目的は空中投下爆弾で艦船攻撃を可能とし、対水上艦攻撃の体系を一変させることにあった。

(U.S. Air Force photo by 1st Lt Lindsey Heflin)

 

 

LGBs(レーザー誘導爆弾)を水上航行中の目標に投入するシナリオは以前からあるが、LGBのシーカーヘッドは悪天候、霧、煙などに影響を受けやすい。そのため効果が減少しかねない。また内部シーカーで標的を追尾する設計だが、レーザーで照準を合わせる。赤外線が主に使われ、正確な軌跡で目標に向かう。

 

同兵器の飛翔経路は光に沿うもので、標的自体ではない。そのため標的を別光源で照射する必要がある。地上部隊や、攻撃機が搭載するポッド、あるいは別の支援機が必要だ。一部のLGBではバックアップのGPS誘導が使えるが、GBU-31ではGPS座標と標的座標を自動的に参照して誘導する。

 

標的座標は離陸前に機体にロードする。その後乗員が発射前に手動調整する。あるいは機内センサーを介し自動修正する。もっとも正確なモードを使えばJDAMは誤差5メートル以内で命中する。この場合はGPSデータが使えることが条件だ。だがGPSが妨害された状況では誤差が30メートル以内になる。

 

レーザーJDAMはレーザーシーカーを先端につけ、JDAMで移動目標対応を可能とするものだ。GBU-56(V)2/BではMK-84 2,000-lb爆弾とDSU-40/Bセミアクティブレーザー(SAL)とKMU-556/B誘導装置を組み合わせる。

 

いずれにせよ、第53航空団が行った昨年テストではB-52HストラトフォートレスがJDAM数発を投下して水上攻撃の効果を試したが、今回のテストはQUICKSINK共用性能技術実証として実施され、低コストで魚雷同様の対艦攻撃能力を実現するのが目的だ。米海軍潜水艦なら魚雷一本で敵艦を撃破する能力があるが、発射により自艦の位置を露呈してしまう。■

 

F-15E Strike Eagles Tested Modified 2,000-pound GBU-31 JDAMs On Maritime Targets

September 2, 2021 Weapons

DAVID CENCIOTTI


2021年9月9日木曜日

環球時報が米国の航行の自由作戦に対し強硬な反論を展開。西側は犯罪者の開き直りの論理とみるだろうが....中国の仕掛ける「思想戦」に対抗できる論理、表現の力が必要ですね。

 真実とは何か。事実とは自分の見たいもののことであり、この論理を使えば世界は自分の価値観で見ることになります。おなじみの環球時報英語版ですが、先にお伝えした米駆逐艦ベンフォールドの南シナ海航行でとうとうこんな主張を展開してしまいました。われわれとしては敵の論理を打破するためにまず相手の言い分を聞くというのが妥当だと思われますが、こちらの価値観をくずされないためにも強い信念が必要と考える次第です。ウイグル問題で中国非難決議を阻止した日本政界の有力者がいますが、今話題の高市候補が自民党総裁、さらに総選挙に勝利し首相の座に就けば、まっさきにこうした中国の論理をつぶしにかかるでしょう。このため、中国としては高市候補の当選はなんとしても阻止しなければなりません。日本の報道陣も理由こそちがいますが、同候補の存在を最小化しようとしていますね。

   

 

 

ご注意 以下はCCPのメディア、環球時報の社説のご紹介です

 

駆逐艦USSベンフォールドが9月8日、南シナ海メイジ礁付近を中国の許可なく航行した。これに対し中国は航空機艦船を動員し、同艦に警告を与え、水域から退去させた。米側は第七艦隊の報道発表でUSSベンフォールドがメイジ礁から12カイリ内を航行したことを認め、航行の自由とともに通行権を主張した。また、メイジ礁は「国際法でいう領海を構成しない」とし、「埋立て、人為的な構築、構造物」を同礁上に作っても「国際法上の要件の変更はできない」と述べていた。

 

中米両国はメイジ礁起点12カイリの定義で意見が食い違っている。世界各地にも異なる見解がある。だが国際法ではいかなる国にも他国の主権に挑戦すべく軍艦を派遣することを許していない。特に米国は国連海洋法を批准しておらず、文句を言う権利はないはずだ。

 

米国の行為はむき出しの挑発行為以外の何物でもない。これはだれの目にも明白だ。メイジ礁には中国国民多数と施設がああり、米軍艦がここまで近くを航行したことで脅威を感じた。中国側も目をつむっているわけにいかず、対抗措置を取る。これは常識だ。

 

南シナ海に波を立ててヴィエトナムやフィリピンを行動させる米国の政策は空回りしている。軍艦を派遣し、いわゆる航行の自由を主張し、中国領の12カイリ以内を航行させたのは米国の焦りの証拠だ。

 

米国は遠隔地から軍艦を派遣し中国領近くで挑発行為を働かせた。これは米国が覇権主義を堂々と主張したのと同じだ。この選択が効果を上げるのは米国政府に必要な力がある場合のみで、中国は従来より国力を強化しており、上述の条件を無力化している。したがって米国が南シナ海で挑発するのは覇権主義を公にするだけでなく、中国を戦略的に圧迫する狙いがあるのだろう。こうした圧力が強まっても中国が国力に裏付けされた対応を取る中で、中米両国の海洋衝突の危険性が高まるだけだ。

 

ご注意 以下はCCPのメディア、環球時報の社説のご紹介です

 

では中国艦艇がアジア太平洋内の米軍基地に接近したらどうなるのか。また米同盟国の沿岸近くで偵察活動を展開したり、航行の自由を主張したらどうなるか。また、南シナ海に領有権を主張する各国も同様に他国の主張する島しょやサンゴ礁付近で作戦を展開すればどうなるか。世界の海洋秩序は好転するのか、悪化するのか。

 

米国に真実だけ伝えればよいと中国は考えているわけではない。中国は直接行動をとり、上記の接近偵察を展開するべく能力整備につとめる。中国の外洋艦隊整備がこれを実行可能とする。米国に苦い薬を飲ませることで米国並びにその同盟国の神経を高ぶらせ、さらに米国が南シナ海でいじめ行為を働いていることを西側世界に知らせることになる。

 

米国は南シナ海で巧妙な挑発行為を働くのなら、逆にPLAの展開する強力な対抗策を甘受すべきだ。両陣営のゲームは極限まで進みそうだ。米国は遠からぬ将来に自国すぐそばにPLA艦艇が現れる事態を経験することになる。中国と米国は制御不可能な事態に直面することになる。両国の艦艇、航空機が海上に展開し、緊張が高まれば、両国は引くに引けなくなる。

 

こうした状況が続けば、南シナ海で中米両国の衝突が遅かれ早かれ発生する。南シナ海の平和で最大の脅威が米国であり、域内の平和が同国により崩される日が来るかもしれない。これは決して大げさに表現して脅かそうとしているわけではない。

 

中国は海上で米国と競い合っているが、両国が事態を制御できなくなった場合に備え、軍事衝突に備えるべきだ。あるいは大規模軍事衝突がその後発生するかもしれない。状況が制御できなくなり、中米両国が軍事衝突の引き金を引けば、本国に近い方が圧倒的に有利となる。戦争に勝つのは中国である。■

 

ご注意 以上はCCPのメディア、環球時報の社説のご紹介です

 

China won't accept US hegemonic acts in the South China Sea: Global Times editorial

By Global Times

Published: Sep 08, 2021 11:39 PM


米空軍の第六世代機NGADのここがわからない。F-3との共同開発の可能性はあるのか。不明点が多すぎる。

 

NGAD試作機が初飛行したとの驚きのローパー発言から1年。高度の保安体制なのか、同機の情報はちっとも聞こえてきません。それとも従来の戦闘機開発と全く違う形態なのか。あるいは実はNGADはまだ存在しないのか。軍民の航空事情に詳しいアブラフィア氏に現時点でわかっていること、わからないことを整理してもらいましょう。Aviation Weekの記事からです。

 

U.S. Air Force’s NGAD program

Credit: Kenneth McNulty/U.S. Air Force

 

空軍が進める次世代制空(NGAD)が大規模な事業になるのはまちがいない。だが二つ不明な点が残る。実機はすでに飛行しているのか、またどの会社が主契約企業なのか。その他にも疑問点が5つある。

まず、昨年9月のこと、当時の空軍調達トップ、ウィル・ローパーが実寸大試作機の存在を明らかにし、飛行テスト中で「記録を数々破っている」とした。NGADをさしているようだったが、もともと同構想は進化系の機体で、試作機の完成度に疑問があったし、同機がNGADの最終目標とどこまで関連するのかは今も不明だ。だがNGADが事業として進展しているのは明らかで、R&D予算だけで2022年度予算要求に15億ドルが計上されている。ちなみに2021年度は9億ドルだった。

次に、試作機はどこが製造したのか。今年第二四半期にロッキード・マーティンが一株当たり0.61ドルを極秘事業収益とし、第一四半期実績で135百万ドルを極秘事業で売り上げたと公表している。同社はスカンクワークスに大型新工場を立ち上げた。同社は極秘偵察機を小規模製造しており、大規模かつ新規工場は不要なはずだ。となると新工場は新型戦闘機関連なのか。だが、ボーイングノースロップ・グラマンも競合企業のはずだ。

こうした点が見えない上に、さらにNGADをめぐり疑問が五点残ったままだ。

1. どんなタイミングになるのか。機体開発しミッションシステムを統合し、その他重要部品も搭載するのはテスト機組立よりはるかに大規模の業務だ。試作機が飛んでも作戦機材の製造は別の次元だ。ロッキード・マーティンYF-22の初飛行からF-22の引き渡しまで12年が経過している。X-35からF-35までも10年近くかかっている。デジタル化が工程を短縮したというが、実際に効果が出ている証拠はない。デジタル時代前のF-15とF-16では初飛行から引き渡し開始までそれぞれ2年、5年しかかかっていない。

2. 何機調達するのか。ローパーはデジタルセンチュリーシリーズとして、比較的小規模の調達で各種機材を連続開発すると言っていた。だが調達規模は時間と関係する。調達に10年もかかるような戦闘機なら少数機調達は著しく非効率となる。また敵も関係する。超大国が相手なら中短期的には現行モデルの生産継続のほうが次の戦闘機の完成を待つよりも賢い選択だ。

3. 各軍共用性をどこまで持たせるのか。海軍のF/A-XX事業はNGADより進展も予算確保も遅れているようだ。歴史を見れば、NGADを海軍仕様にしても要求水準を満足させる可能性は低い。共用打撃戦闘機は空軍、海兵隊が中心の戦闘機だ。海軍はF-35C調達は小規模にとどめる。F-14、F-15、F-16、F/A-18、F-22の各機で「共用運用性」はすべて失敗している。米軍で真の共用機材だったマクダネルF-4はもはや過去の存在で、米空軍は共用機材の実現に乗り気ではない。

4. どこまでグローバルになるのか。F-35には海外発注があり、F-22は政治的かつ経済的な理由で海外発注は皆無だった。F-15はハイエンド戦闘機輸出の成功例となった。NGAD生産が長期にわたり国際的な関心を集めれば、イーグル導入国への売り込みが期待される。その一つが日本で、NGAD共同生産は国産F-3ステルス戦闘機開発に代わる有力な選択肢となりうる

これはあり得るのでしょうか。F-3開発が急にNGAD共同開発になれば一大事です

5. 調達が本格化すればどんな影響が出るか。NGAD調達が拡大すれば予算面でF-35A、F-15EXの調達にしわ寄せが出る。後者は古い機材が原型で、調達ペースもゆっくりしているが、NGADの登場でF-15EXは終了になっておかしくない。また空軍参謀早朝チャールズ・Q・ブラウン大将はここにきてF-22を退役させ、F-35A、F-15、F-16、NGADで戦闘機部隊を構成すると発言している。

これに加え、新型機の性能が見えてこない。同機を配備した場合、中国との力の均衡にどんな影響が出るのか。NGADは無人機とチームを組んで西太平洋における軍事力不足を補えるか。この答えが出るのは数年先だろうが、米国の戦略地図を左右しかねない。■

The views expressed are not necessarily those of Aviation Week.

Opinion: Key Questions About USAF's NGAD Sixth-Gen Aircraft Program

Richard Aboulafia August 19, 2021

Richard Aboulafia

Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington.