2020年1月3日金曜日

ドイツ軍の即応体制の欠陥は解決されていないようです

自虐ネタではないのですからヨーロッパの雄ドイツにはNATO防衛体制の主力として責任を果たしてもらいたいものです。このネタはここ数年続いていますが、2030年代にやっと公約を実現するという政治決断にはなにか不健全なものを感じます。経済や安全保障で政権の正しい決断が必要だと改めて感じさせてくれます。緑の党でさえ、なにかおかしいと感じる状況は異常でしょう。日本も他山の石とすべきで、もし明日選挙があれば安全保障の決定を責任をもって下せる(下せそうな)政党を選択すべきでしょう。

Is Germany's Military Dying? ドイツ軍は機能不全におちいりつつあるのか

by David Axe 
January 2, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: GermanyArmyMilitaryNATO

2019年11月、ドイツ軍の新鋭攻撃・輸送ヘリコプターで戦闘投入可能なのは数機しかないとの報道があり、ドイツ軍の即応体制をめぐる状況の深刻さを示している。
現地報道によればドイツ陸軍が53機保有するタイガー攻撃ヘリで8機、NH-90輸送ヘリ99機で12機のみが実戦投入可能な状態だった。
各軍は主要装備の80%をいつでも出動できる体制に保つのが通例だ。米軍の戦闘飛行隊でも80%の目標を維持しようとしている。
高度なまで複雑な装備だとこれより低くても受容される。米海軍は11隻ある空母で危機状況発生後30日以内に6隻の展開をめざし、7隻目は90日後に出動させる。米空軍はB-2ステルス爆撃機20機のうち半分を急な事態展開に対応して出動させれば良いと考えているようだ。
これに対してドイツ陸軍ヘリコプターの即応体制は15%近くで低迷している。つまり作戦投入可能な機材が少ない。人員面にも影響が出る。「タイガーでここまで投入可能な機材が少ないとパイロット訓練にも影響が出る。この状況の放置は無責任だ」と語るのは緑の党のトビアス・リンドナーだ。
ドイツの即応体制の危機的状況は今始まった問題ではない。2018年には128機あるユーロファイター・タイフーン戦闘機のうち稼働可能な機体が10機しかない時期があった。同時期にトーネード戦闘爆撃機では93機中26機しか作戦投入できなかった。
タイフーン、トーネードの機数が確保できないとドイツ空軍はNATO加盟国として突発の危機的状況に対応すべく82機を高度即応体制に維持する義務が果たせない。ドイツ空軍参謀総長インゴ・ヘルハルツ中将も「ルフトヴァッフェは低潮な状態」と認めるほどだ。
問題は空軍だけではない。2018年度の議会宛報告書によればCH-53輸送ヘリコプターでは72機中わずか16機、A400輸送機15機では3機、レオパルド2戦車224両で105両、フリゲート艦13隻の5隻が即応体制にあった、とある。
最大の影響が生まれたのは潜水艦で、6隻のうち一隻も実戦投入できない状態だった。212型ディーゼル電気推進式潜水艦の一隻が軽微な事故に遭遇した。3隻は造船所で長期保守整備中で、2隻は港湾で係留され修理中だった。
ドイツ海軍関係者は補修部品の不足を嘆く。「冷戦中は新規装備導入と同時に部品セットを確保していたが、予算節約で今や部品在庫が全くない状態だ」とDefense Newsが海軍関係者の発言を伝えている。
アンヘラ・メルケル首相は防衛予算の対GDP比率をゆっくりと引き上げると公約しており、2030年代初頭にNATO目標の2%水準に達すると述べている。
その中でドイツ空軍が新型機の導入に向かうというのは現有機材の維持管理もできないなかで信じられない話だ。
ドイツ空軍はユーロファイター・タイフーン143機発注の最終号機を受領している。ただし、旧型機の更新用にタイフーンの追加発注となるかもしれない。
2019年末時点でドイツはタイフーン141機、トーネード74機を保有し、更にトーネードECRを30機運用していた。後者は特殊兵装とセンサーを搭載し危険な敵防空体制制圧つまりSEADミッションの機材だ。1980年代製のトーネードは後継機種が必要だ。タイフーンをこれに充てる案がある。新規生産分のタイフーンは旧型タイフーンの後を引き継ぐかもしれない。ドイツ政府がタイフーンを追加発注すればドイツのタイフーンは250機を超えそうだ。
ただし現在のような即応対応率のままでは実戦に投入可能な戦闘機が数十機になってしまいかねない。■
David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad.

2020年1月2日木曜日

次期CODとなるCMV-22オスプレイが完成

Behold The First Image Of A Navy CMV-22 Osprey That Will Replace The C-2 Greyhound C-2グレイハウンドの後継機CMV-22オスプレイが姿を現し始めた
The delivery of the first CMV-22B to the Navy for testing should occur soon, with the type slated to start its operational career in 2021.CMV-22B一号機はまもなく海軍に引き渡され、2021年に供用開始する

BY TYLER ROGOWAY AND JOSEPH TREVITHICKDECEMBER 10, 2019
THE WAR ZONE
CMV-22B Carried Onboard DeliveryBRADY KENDRICK



CMV-22Bオスプレイ空母艦上輸送機(COD)型開発が順調に進んでいる。長年活躍してきたグラマンC-2Aグレイハウンドがいよいよ退役に近づいてきた。代わってオスプレイがその役目を引き継ぐ。議論を呼んだ米海軍の決定だったが、そCMV-22Bの納入が近づいてきた。今回、海軍のCOD塗装を施したCMV-22B一号機の写真を入手した。写真はベルのアマリロ工場(テキサス)で航空写真家ブレイディ・ケンドリックが2019年12月10日に撮影したもの。

CMV-22Bで一番目立つ構造上の違いは燃料タンクが機体両側のスポンソン前方についたことだ。COD任務で必要な航続距離の実現のためで、空母打撃群が外洋に展開中でも対応する必要がある。


BRADY KENDRICK
機体改修の大まかな姿がわかる。


米海軍は2018年6月に39機を42億ドルでベルーボーイング共同事業体に発注し、CMV-22Bは順調に開発されてきた。さらにここに19機のMV-22Bが加わり、米海兵隊と日本向け、CV-22Bが米空軍向けに製造される。

2018年12月にCMV-22B初の運用部隊となる艦隊補給多用途飛行隊30(VRM-30)の編成式典をノースアイランド海軍航空基地(カリフォーニア)で行っており、搭乗員は海兵隊中型ティルトローター訓練飛行隊204(VMMT-204)で訓練を受けていた。

さらに2019年10月に艦隊補給多用途飛行団(COMVRMWING)がノースアイランドで編成され、海軍が予定するCMV-22B飛行隊三個を統括することになる。またVRM-40も編成に向かっており、VRM-50編成が承認されている。

ノースアイランドでは運用に当たり施設の改良が必要だ。滑走路、誘導路はオスプレイのエンジン排熱に耐える表面処理だ。すべてはC-2AグレイハウンドからCMV-22への機種転換検討で必要となり今後5年間かけて完成する。C-2A最終号機の用途廃止は2026年から2028年の予定。

CMV-22B一号機の納入が迫っているものの、同機の供用開始は2021年となり、海軍向けF-35CがUSSカール・ヴィンソンで供用開始するのと同じ時期となる。

「2021年の第一四半期を目標に安全運用ができるように飛行隊をまるまる使えるようにする」とVRM-30司令トレヴァー・ハーマン中佐が2019年6月にUSNI Newsに語っていた。

CMV-22BでF-35Cの空母運用を支援する必要があると海軍は一貫して主張してきた。C-2Aグレイハウンドでは共用打撃戦闘機のF135エンジンが搬送できないという。


USMC
F-135 を専用台車に載せて海兵隊のMV-22Bに搭載する実証が2015年に行われた。.


ここがCMV-22でC-2Aに交代させる構想で議論を呼んだ点だ。グレイハウンドではエンジンが運べないという海軍の言い分は正しい。ただし、CMV-22Bでの実施は複雑かつ手順で特殊器具も必要で誤差が許されない仕事になる。

また機内にスペースの余裕がないのも懸念材料だ。その他、艦上での機体取り回しや発艦・回収に時間がかかるため緊急時対応が心配だ。だがなんといってもCMV-22Bが自力で艦上を移動できないことが最大の懸念だ。

さらにグレイハウンドと異なりオスプレイは与圧がないため、上昇高度に限度があり、人員輸送時に制約が生まれる。悪天候を飛び越える飛行ができず、飛行経路が複雑となるし、天候のいかんにかかわらず発生する輸送任務にリスクが生まれる。

同時にCMV-22Bは空母以外の艦船からの運用も想定する点も、グレイハウンドと異なる。これまでのCODでは「ハブアンドスポーク」方式でCOD機で人員貨物を空母に運び、その後はヘリコプターで空母打撃群の他艦船に搬送していた。
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とはいえ、空母打撃群の補給活動ではC-2が姿を消し、CMV-22に交代することとなり、将来の空母艦上輸送機が姿を現し始めてきた。■

Contact the authors: Tyler@thedrive and Joe@thedrive.com

2020年1月1日水曜日

新年のごあいさつ:6百万PV突破、投稿数3.3千記事、そして2019年最も読まれた記事トップ5の発表です

恒例の年間最も読まれた記事のリストです。

2019年1月1日時点のPV合計は4,844,551でしたが、12月31日午後3時30分現在は6,077,821ですので概算1,233,270つまり延べ120万人の方にこのブログをご覧頂きました。ありがとうございました。ちなみに投稿件数は3,300件を超えています。

そこで2019年に最も読まれた記事トップ5の発表です。

第5位 $ロッキード株は買い? 小型核融合炉開発は遅れているものの着実に進んでいる#ロッキード・マーティン, スカンクワークス, 小型核融合炉CFR [4,128 PV]


第4位 次期戦闘機はNGFの呼称へ。日本独特の大型戦闘航空機になりそう#F-3, #NGF, #日本の安全保証 [8,172 PV]


第3位 ★F-15X構想は思ったより大規模になりそう ボーイングは二型式を固定価格で提案か#F-15. F-15X, #USAF, #ボーイング [8,854 PV]

第2位 あらためて日本のF-3開発状況をとりまとめてみましたが....#F-3, #日本の安全保障 [9,082 PV]

そして
第1位は.....

★★世界いかなる場所にも24時間以内に展開する「ラピッド・ラプター」構想の持つ意味とは#F-22, #USAF, ACC, F-22を対地攻撃に使う, ラピッド・ラプター [12,232 PV]

でした。


こうして見ると皆さんは戦闘機とくにF-3(NGF)、F-15EX、F-22へのご関心が強いですね。このブログでは翻訳の練習もありますが、日本では気づきにくい海外での動向とくに技術や地政学さらにISR機能について触れたいのですが、結果として皆さんのご関心にこびた投稿構造になっているのがわかります。

さあ、2020年はどうなりますかね。いままで2020年代が先に控える区切りだったのですが、これからは2030年代、2040年代という表現が中心になるでしょうね。次世代戦闘機は開発が遅れていけば、2040年代という言い方もでてくるでしょう。2040年代といえばB-52がこの頃にやっと退役するともいわれ、決してての届かない未来とは言えないかもしれません。

それはともかく2020年も一緒に動向を探っていきましょう。よろしくお願いします。









2019年12月31日火曜日

2019年最後の記事はやはり戦闘機! F-15EX導入を米国は後悔しないか

F-15EX導入は間違いだったのか、歴史を見ないとわかりませんが、
おかげで米国で次の戦闘機プロジェクトが遅れるのは確かでしょう。NGFが実現するとすれば、米国との共同作業がやはり一番現実的なのではないでしょうか。F-15Jでは今年は新しい動きもありましたね。ISRに主軸を起きたいのですが読者の皆さんはやはり戦闘機にご関心が高いようです。では皆様良いお年を。

Why Does Russia Want the United States to Buy the F-15EX Fighter? ロシアがF-15EX導入を米国に希望する理由とは

We shouldn't take Moscow's advice. モスクワの意見を聞く必要はない
by David Axe 
December 30, 2019  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15 EXF-15F-32RussiaRussian Air ForceU.S. Air Force

Key point: Non-stealthy F-15s will be unable to compete against peer competitors like Russia and China. 非ステルスF-15ではロシア、中国の現有機材に対抗できない
F-15EXイーグル戦闘機をボーイングから調達しロッキード・マーティンF-35を補完するペンタゴン決定はいまだに議論のまとだ。国防総省は空軍に対しF-15EX合計8機を総額12億ドルで2020年度予算要求に盛り込ませた。
空軍はこれに加え136機を2020年代中に調達する。新造イーグルは1980年代製F-15Cを運用中9個飛行隊に配備する。各飛行隊は概ね米本土の防衛任務についている。
Air Force誌が両機種を比較を掲載している。
機体単価は80百万ドルと同じだが、共通点はそこまで。F-35はステルスだが、F-15は航続距離、速力、兵装搭載量で上を行く。
ロシアのS-400防空システムはF-35を20マイル地点で探知可能だが、F-15EXは200マイル地点で捕捉する、とAir Force誌は推定。
F-35は兵装22千ポンドを搭載し、上昇限度50千フィート、670マイルまで進出し、最高速度マッハ1.6だ。一方、F-15EXは29.5千ポンドの兵装搭載で、60千フィート、1,100マイルの戦闘行動半径、最高速はマッハ2.5だ。
時間あたり運行経費はF-35が35千ドル、F-15EXは27千ドルだ。
ただし、新造イーグルの利点は既存F-15飛行隊が短時間かつ安価に機種転換できることだ。
「F-15EXは製造中機材と米空軍は見ている。F-15C、Eとの部品共通性は70%で、既存の地上施設、シミュレーター他支援装備が全てそのまま流用できる」とAir Force誌はまとめている。
「機体単価は両機種ほぼ同じだが、F-15EXへの機種転換は数週間で終わるのに対し、F-35では数ヶ月ではすまない」
F-15EXはC型よりセンサーやエイビオニクス性能があがり、兵装搭載量も増える。F-15Cは金属疲労のため「2030年まで持たない」と空軍のデイヴィッド・クラム少将が Air Force誌取材に語っている。
これに対しF-15EX批判派にはロッキードが頼りの選挙区議員の他に専門家も名を連ねる。2020年度のF-35調達規模は48機の要求だが、これまで空軍は毎年80-100機を調達してきた。予算がない、というのが空軍の言い分だ。
空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドフェイン大将はF-15EX調達でF-35を1,700機以上調達する空軍の計画に影響は出ないとDefense Newsで述べている。「ともに補完し合う関係だ。それぞれ相手をもり立てる」
だが非ステルスのF-15では「国家防衛戦略で最大の懸念の脅威環境を生残れない」と語るのが元F-15パイロットのデイヴィッド・デプチュラ退役将官、ミッチェル航空宇宙研究所所長で、Forbesに2019年2月以下寄稿した。
「中国、ロシアが軍事力を急速に拡充し、米国の戦略優位性を脅かしている。空軍が既存機種の新型版を導入すれば費用対効果に優れた解決策と主張する向きが国防総省にあるが、原設計1960年代で生産開始が1970年代の機体だ。博物館行きとなっておかしくない機材を21世紀の戦闘に駆り出していいのか」
「空軍はF-15EX導入でF-35の1,736機調達予定に変更なしとするが、過去の歴史や予算要求の動向を見る限り、逆の結果になりそうだ」「2020年度予算要求では空軍のF-35の今後5年間の調達数は24機減」とAir Force誌は指摘している。■

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This piece was first featured in April 2019 and is being republished due to reader's interest.

2019年12月30日月曜日

イスラエル陸軍を最強にしている5大装備

5 Reasons Why You Won't Beat Israel in a War. Period.

You'll lose.
 December 28, 2019  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: The Buzz  Tags: IsraelWeaponsDefenseTankArmyGaza

スラエル陸軍も空軍と同様に創設時は規模は小さかった。ただし空軍よりも組織化は進んでいた。起源をたどるとシオニストの準軍事組織ハガナthe Haganahに行きつく。1920年代にユダヤ住民の安全を守るため生まれた組織だ。
ハガナは英国の統治機構に当初こそ協力的だったが1944年に枢軸側の敗北が見えるや敵対しはじめた。ユダヤ人国家設立の必要性が明白になったためだ。1947年にハガナは正規軍部隊になり、イスラエル国建国の二週間後にイスラエル陸軍になった。
以来イスラエル陸軍は毎年のように戦闘に臨んでおり、イスラエル防衛のためシナイ半島、レバノン、ガザ、西岸まで展開した。
1947年当時のイスラエル人口は少ないものの教育水準が高く、国軍の編成・訓練は迅速に展開できた。人員数に限界があるイスラエル陸軍は高度技術や火力に頼る傾向が強く、周辺国より高い実力を維持している。では中東各国に対決を回避させているイスラエル陸軍の主要装備5点を見てみよう。
メルカヴァ主力戦車:
イスラエル軍総司令官イズラエル・タル大将の構想から生まれたメルカヴァはイスラエル初かつ唯一の国産主力戦車で、イスラエルの戦車構想から生まれた。全高が低く、強力な主砲を備えたメルカヴァはエンジンを車体前部に搭載し乗員の安全を守る。急角度の複合材装甲をつけたメルカヴァはシナイ半島のエジプト装甲部隊、ゴラン高原のシリア部隊に対し十分な防御能力を有する。
初期型は英国設計の105mm主砲を採用し、米M1エイブラムズの初期型と同様だった。後期型は国産120mm滑空砲を採用した。2千メートルでも照準は正確で対戦車榴弾(HEAT)、装甲貫通弾(AP)を打ち込む。その他通常弾の補完としてLAHATミサイルがあり、レーザー誘導で有効射程が9千メートルに達する。
メルカヴァはアクティブ防御装備を初めて採用し、各型合わせ2千両が製造され、うち660両が最新のマークIV仕様だ。
スパイクミサイル:
イスラエルが万能型対戦車誘導ミサイルとして開発しのがスパイクミサイルだ。このうちSR(短射程)型は単発発射の使い捨て方式で米LAWと似ている。スパイクにはターミナルシーカーがつき、タンデム方式の弾頭で反応型装甲に対応し、射程は800メートルだ。
スパイクはあらゆる地上車両の他にセラフ(アパッチ)攻撃ヘリ、海軍艦艇、無人機にまで搭載できる。戦車や装甲車両、艦船、航空機さらにテロ集団戦闘員もこれで対応できる。
スパイクの大型版は基本的に同じ構造で単に大きくなっているだけだ。このスパイクMRは米ジャヴェリンに似ており、射程2,500メートル。スパイクLRは米TOW-IIBに相当し、4,000メートルまで有効だ。そしてスパイクERは米ヘルファイヤに似る。見通し線の外まで有効射程とするスパイクNLOSは光ケーブルで25キロ以内の標的を捕捉、撃破できる。
ナメール装甲人員輸送車両:
歩兵戦闘車両の装甲は厚くない。M2ブラッドレイ、BMP-3やウォリアーは戦車砲弾や対戦車誘導ミサイルの前に脆弱だ。歩兵戦闘車両は強力な戦車と投入される想定なのでこれは問題だ。
この点ナメールは異なる。戦車から改装されているためだ。ナメールはメルカヴァMk.1戦車が母体で砲塔部分を除去し、強力な装甲を前方、側面にとりつけた。ナメールの重量は旧型メルカヴァとほぼ同等で、大量の装甲板を装着していることがわかる。
およそ120両のメルカヴァがナメールに改装され、三個大隊の移動に十分な規模だ。ナメールの乗員は3名で、歩兵9名を運ぶ。
タヴォール強襲ライフル:
イスラエル国産ライフル第二世代のタヴォールはイスラエル国防軍の標準歩兵装備だ。未来的なデザインのタヴォールはブルパップ方式で弾倉を銃床につけ、小型ながらライフル同様の銃身を確保している。
タヴォールは21世紀のライフルに見えるが、AK-47がルーツで、AK-47自身はM-1ガーランドから着想を得ている。ブルパップ式により全長28インチとコンパクトながら銃身は18インチとなっている。
銃弾は5.56ミリ弾でNATO制式の30発弾倉が使える。更に小型化した銃は銃身も短くなり、ピストルと同様の9mmパラベラム弾を使う。
「スマッシャー」多連装ロケエット弾発射装備:
イスラエルには米製装備を独自名称に置きかえる傾向があり、これもその例だが新名称がはるかに格好いい。
「スマッシャー」ロケット弾発射装備は実は米製M270MRLSである。米陸軍の砲兵隊標準装備のM270は1970年代に開発され、陸軍装備を変革させた「5大」装備の一画だ。M2ブラッドレイを改装して装備した「スマッシャー」は227ミリロケット弾12発を運用する。三両構成でクラスター弾23,184発を毎分発射し、1平方キロを飽和攻撃する。
イスラエル陸軍は「スマッシャー」48編成を保有し、現状は射程は40キロだが、新型ロケット弾は150キロになり現在開発中だ。これが実用化sれればイスラエル砲兵隊はハイファからダマスカスを脅かす事が可能となる。■

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This first appeared in 2015.

最新ヴァージニア級で攻撃型原潜の作戦内容はこう変わる

Navy Block V Submarine Deal Brings New Attack Mission Ops

By Kris Osborn - Warrior Maven

量の火力を敵目標付近から投入する、脅威環境で「情報」活動を秘密裏に行う、水中から攻撃・偵察用無人機を発進させる...これが米海軍がヴァージニア級攻撃潜水艦ブロックVに期待する内容だ。
9隻が建造されると潜水艦による攻撃戦略や作戦構想に変化が生まれる。総額220億ドルのブロックV建造では全長80フィートの兵装部分が艦体に追加されトマホークミサイルが従来の12発から40発へと大幅に攻撃力を増強する。
「ブロックVヴァージニア級のヴァージニアペイロードモジュールは潜水艦戦力で画期的な進歩となる」と潜水艦部門の計画主管デイヴィッド・ゴーギンス少将が述べている。「新設計で艦隊は米国の海中優越性を維持できる」
海軍はブロックV各艦は「音響面で優越性を実現する設計変更」を搭載と伝えている。
「ブロックVには開発中の装備を搭載し、USSサウスダコタが1号艦となる」とクリストファー・ハンソン大佐(ヴァージニア級計画主任)が2019年4月に海軍連盟主催のシンポジウムで述べていた。
新規建造艦の技術的詳細は保安上の理由で不明だが、USSサウスダコタは各種新技術が導入され今までにない性能の攻撃型潜水艦になるとハンソン大佐は述べていた。同艦は供用を開始しており、テスト艦として新技術の実証に使われる。新技術はブロックVに加え2024年から始まるブロックVIにも応用される。やはり詳細は不明ながらUSSサウスダコタにはエンジン静粛化技術が導入され、偵察用の高性能アンテナ、低視認性船体塗装を採用と海軍技術陣は説明している。
ヴァージニア級の各ブロックではその時点での新規技術が都度導入されてきた。例としてブロックIIIでヴァージニアペイロードモジュールが導入されており、攻撃力が大幅に強化され、トマホーク6本単位の発射管が追加された。またブロックIIIで新型大型開口艦首(LAB)「馬蹄形」ソナーが採用された。
LABソナーは正確かつ有効距離が従来型より伸びる。またパッシブ、アクティブ双方の性能が向上した。パッシブは基本的に追跡用または「聴音」用で敵の動きを掴むのが目的だ。また音波を発しないため自艦の位置を隠すこともできる。ただし、「ピン」音を発出するアクティブ型の機能は有しない。潜水艦内では返ってくる音波を解析して敵艦の形状、速力、距離を把握する。ある意味でソナーはレーダーに似ているが、ソナーは音響信号、レーダーは電子信号を使う点が異なる。
このコンセプトがブロックVで拡大され、「アップグレード可能」艦になったが、ヴァージニア級が登場した15年以上前に予測されていた。2005年の技術論文ではヴァージニア級をモジュラー方式建造とし、オープンアーキテクチャ方式の利点を享受すべきとある。ヴァージニア級は将来のアップグレードを前提に建造されてきた。
論文は音響迅速COTS挿入(ARCI)に触れ、「ヴァージニア級、SSGN(オハイオ級艦を誘導ミサイル潜水艦に改装したもの)、今後登場する級に共通のモジュラー方式とする」構想とある。ARCIはその後十数年間に渡り成功をおさめており、最近の論文では対機雷ミッション対応が強調されている。
技術面工学面から見ればモジュラー化で各艦のハードウェア、ソフトウェアが対応可能になる。例として攻撃型潜水艦では魚雷とトマホークを運用するが、あと10年もすれば新型潜水艦発射兵器が当然ながら登場するだろう。
ブロックVではブロックIIIが採用した「フライ・バイ・ワイヤ」航法制御が搭載され、従来の機械式油圧制御装置は不要となった。操艦はジョイスティックとデジタル海図で行い、コンピュータ自動化で任意の場所に艦を移動させる。つまりコンピュータで深度速度を制御し、人員は指揮統制に集中する。
ソフトウェアでのアップグレードと急進歩するAIの活用で、ミッションの限界が広がり攻撃型潜水艦によるISR活動の可能性が増える。リアルタイムのアナリティクスとセンサー入力からこれまで人員で処理してきた機能をコンピュータがこなす。これにより攻撃型潜水艦の操艦はスピードアップし、深度速力や進路を迅速に変更でき、攻撃を受けた際の対応がすばやくなる。
潜水時の指揮統制でも無人装備の投入が増える。米海軍は新型UUVの整備を急いでおり、機雷の排除、低リスク前方偵察、補給品配送、「人員の介入を前提とした」火力の運用までを想定している。無人海洋システム主管のピート・スモール大佐によれば開発中のオーカXLUUVつまり超大型無人水中機では魚雷発射も想定している。
新型ヴァージニア級攻撃型潜水艦は特殊作戦ミッションに最適化されており、ブロックIIIで導入された「ロックアウトトランク」装備がブロックVでは最初から艦の一部となり大型化している。ロックアウトトランクとは海水を注入し特殊部隊を発進させ、隊員はこれまでより容易かつ静かに海中に展開できる
特殊作戦対応や偵察活動の機能が充実したため海軍は攻撃型潜水艦に「スパイ」として情報収集監視偵察ミッションを充実させ敵沿岸部近くの浅海部でにも忍び込ませ、敵潜水艦・水上艦や沿岸部の探知を行わせる戦略に切り替える。.
水中での航法精度があがり、探知能力が向上した中でコンピューターによる自動化と人工知能が加わることで、沿海部での行動が静粛かつ迅速に行えるようになり、敵の機雷や小舟艇などの脅威に対応できる。
ここまで接近して浅海域でも行動できる利点が生まれると「対地攻撃」ミッションの余地が増えると海軍は見ており、ISRの効果を活かし、対潜・対水上艦戦を展開できるという。
「これまでは『一匹狼』が前提だった潜水艦は今やネットワーク活用戦で鍵となる存在として世界的に認知されており、『水中優位性』を実現し、シーパワー21(海軍が以前提唱した攻撃構想で情報面での優越性を強調していた)で不可欠な要素になる」と2005年に海軍大学校論文が考察していた。■
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Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics& Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

2019年12月29日日曜日

中国の南シナ海軍事拠点は容易に粉砕できる:軍事的意義よりも政治的な主張の道具か

コメントは下にあります

China's South China Sea Bases May Be More Trouble Than They Are Worth

More territory to defend.
Key point: The islands of the SCS have some military relevance, but are more important as a political claim to waterways and undersea resources. SCSの人工島に軍事的意義もあるがもっと重要なのは水路や海底資源の確保につながる政治的主張のツールとしての存在だ。
国は南シナ海に人工島数カ所を構築したが防御は可能なのか。
第二次大戦中の日本は島しょ部を支配する戦略的優位性に気づいたが、米軍による個別攻略を止められなかった。さらに時とともに各島が戦略面で重荷になり、糧食燃料装備の補給に苦しんだ。南シナ海(SCS)内の各島は中国に都合の良い位置関係にあり、中国軍にとって重要な存在だが、有事には価値が急速に低下する。
ミサイル陣地
中国はSCSに軍事拠点数カ所を構築し、おもなものにスプラトリー、パラセルがある。このうちスプラトリーではスビ、ミスチーフ、フィアリークロスの各地に航空施設があり、その他にもミサイル陣地、レーダー施設、ヘリコプター運用拠点がある。パラセルではウッディ島に大規模軍事施設があり、その他地点にもレーダー、ヘリコプター運用施設がある。中国は建設作業を続けており、軍事プレゼンスはさらに拡大する。この中で大型基地(スビ、ミスチーフ、フィアリークロス、ウッディ島)には軍用機運用に必要な設備があり、戦闘機や大型哨戒機が使える。ミサイル、レーダー、軍用機により中国はSCSに広く軍事力を行使できる。
SAM陣地が数カ所にあり、導入済みHQ-9は射程125マイル、さらにロシア製S-400が導入される可能性がある。また地上配備巡航ミサイルの配備もあり得る。こうしたミサイルによりステルス性能がない、あるいは十分な防空体制のない米艦船・航空機にはSCSが危険地域になる。SAM陣地はレーダーと連携し十分な電子戦能力がない敵機には接近ができなくなる。GLCMが配備されればA2/ADの効力がさらにあがる。ただし、潜水艦、艦船、航空機が発射するミサイルほどの威力がなくてもよい。
ただし有事になればミサイル陣地は生き残れるのか。地上配備ミサイルが航空機の攻撃に生き残るためには丘陵地、森林など天然の防御が必要だ。ところが人工島には天然防御は存在せず、構築物も集中攻撃を浴びれば粉砕される。さらにミサイル発射装置には燃料、電源、弾薬で相当の補給活動が前提となる。撃ち合いがはじまれば中国は十分な兵站が維持できなくなる可能性がある。
航空施設
SCSに構築した軍事拠点の主要4箇所で軍用機運用が可能だ。高性能戦闘機に加え哨戒機、電子戦機材、早期警戒機が運用されるだろう。各飛行施設を有効利用すれば中国のA2/ADの有効範囲は広がり、標的データを海上や中国本土のミサイル陣地に送信できる。戦闘機はSCS上空を危険空域に一変させ、搭載する巡航ミサイルにより米艦船は遠距離でも安心できなくなる。
だが有事になれば、攻撃を受けた航空施設の利用には物資装備の投入で補修をどこまでおこなえるかが鍵となる。米軍のミサイルや爆弾が降ればSCS内の各基地はもろい。大型島しょ部には航空機掩体壕があるが、米軍の集中攻撃を浴びれば掩体壕がいつまで持つか自明の理だ。
レーダー施設
SAMやGLCM、航空機には正確な標的データが必要だ。SCS島しょ部による最大の貢献はレーダー情報であり、中国はこのため多数地点にレーダー施設を構築した。各施設は他に代えがたい有益な戦闘の全体像を中国に提供するはずだ。また中国の防御態勢の強化にもつながる。
とはいえレーダーは米軍攻撃の前に脆弱だ。ミサイルによる運動的効果以外に電子戦、サイバー攻撃あるいは特殊部隊による強襲作戦も考えられる。有事には中国はレーダー網の急速な衰退に直面するはずだ。それでもレーダー網は安上がりに米軍のSCS侵入を難しくする手段となる。
兵站活動
中国軍のSCSでの作戦行動は中国本土との通信の保全に全て依存する。人工島の多くは十分な補給物資の備蓄はできず、あるいは補給物資を攻撃から有効に守れない。開戦となれば、各島しょ部への燃料、装備、弾薬の補給が困難となる。中国の輸送能力がぎりぎりまで酷使されるためだ。PLANやPLAAFが攻撃を浴びる該当島しょ部に危険な補給活動を実施し重要装備の喪失を覚悟できるだろうか。中国にとって不幸なのは各施設への補給は短期間では困難なことだ。
艦船対砦
ホレイショ・ネルソン卿は「砦に戦いを挑む艦船は愚か」と述べた。だがいまや艦船が砦に対し有利な状況になっている。SCS内の中国施設は固定されており、かつ十分な広さがないので軍事装備や物資は丸見えである。米国はSCS内の各施設の内容を把握し、軍事装備の補給路も追尾するだろう。これにより各島は艦船・航空機からの攻撃に極めて脆弱になる。ミサイルにはリアルタイムの標的データは不要である。
米国にとって賢明な手段はズムワルト級駆逐艦に搭載の高性能艦砲システムの「不使用」方針の撤回にある。同装備を活用すればズムワルトは中国施設を遠距離から攻撃でき、低コストで相当の損害を与えることができる。これ以外にも巡航ミサイル攻撃で重要目標への攻撃が可能だ。
SCS内の島しょ部には一定のの軍事的意義があるものの、水路や海底資源で政治的主張を押し通す意義のほうが重要だ。軍事面では中国のA2/ADの薄い外縁部を構成し、一定の条件で米国の作戦行動で制限が生まれるが、米空軍・海軍の攻撃力を持ってすれば難なく無効にできる。■
Robert Farley, a frequent contributor to TNI, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily eflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government. This first appeared last year.

コメント 辺野古埋め立てではあれだけ環境破壊を理由に反対しかも不当な実力行使までしている人たちはSCSでの中国の遥かに大規模な環境破壊になにも意見がないのでしょうか。この国の「平和勢力」に特有のダブルスタンダードではないでしょうか。ともあれ、軍事的に脆弱としても、既成事実の積み上げを容認してしまった国際社会の怠慢はこれから大きなつけを支払わられそうです。重要な交易路をSCSに有する日本が本来一番敏感になっていなければならないのですが。相手が既成事実の積み上げをしている中、航行の自由作戦は海自も行うべきではないですか。