米陸軍の超長距離砲兵隊が敵の補給ラインを先に寸断し兵力集積地点にも砲撃を終えてから地上戦を展開すれば、敵部隊の排除は容易になるはずだ。
さらに、敵の届かない地点からスタンドオフ砲撃すれば米軍部隊は安全かつ自信を持って敵軍を駆逐できるのではないか。
との想定で陸軍は155mm砲を改良し有効射程を従来の二倍の70kmに延ばす。
この事業は射程延長砲撃戦力 Extended Range Cannon Artillery (ERCA)と呼ばれ、迅速な実現をめざし進められてきた。陸軍技術部門は威力を高め残存性を高くした新型155mm砲の開発試験に動いている。
ERCAは米陸軍次世代装備本部Army Futures Commandが試験中で、62km先への着弾を実現しながら必要な精度は維持した成果を上げている。最新のM777迫撃砲ではGPS誘導方式のエクスキャリバー砲弾を運用し、最大射程は30から40kmとなる。この射程を二倍に延ばすERCAでは戦術戦略両面の要求を実現する狙いがある。狙いは敵を「アウトレンジ」することだと陸軍関係者が語ってくれた。
従来型装備に対しERCAは30フィートの砲弾を発射し、遠距離を狙う。
「ERCAでは約30フィートで58口径砲弾を運用します。内部容積が増えているため推進剤や砲尾を変えられます。初速は砲身長に依存します」とジョン・ラファティ准将(長距離精密火力機能横断チーム長)が今年初めのTNI取材に答えていた。
ラファティ准将からは砲弾の背後に強力な推進剤があり、スライド式尾栓は長距離砲用に改良したとの説明もある。
「砲の後部は強靭な鉄鋼で封印します。火薬系列は電子点火方式で薬室は拡大しており、砲身を長くしたことで初速はずっと高くなります」
ERCAは既存155mm用砲弾も運用しながら、精密誘導技術を応用した新効果を上げる。陸軍はエクスキャリバー砲弾のメーカー、レイセオンと飛翔修正可能な砲弾の開発をめざしている。これが実現すれば発射後に修正を加え普通なら攻撃不可能な標的も狙える。この原理を「弾道変更技術」と呼び、橋の下に隠れる敵や山の背後にいる敵を攻撃する。
「勾配を隠れ蓑にする敵は砲兵隊には難題です。弾道の最終部分が逆勾配に邪魔されるからです。荒地での運用なら弾道を修正して攻撃効果を引き上げます。業界と協力しこうした狙いの実現をめざしています」(ラファティ准将)
長距離かつ強力な火砲となると特別な技術が必要となり長砲身から生まれる「爆風の過剰圧」を処理するとラファティ准将は説明してくれた。
「砲身の端にあるマズルブレーキは、煙と爆風を分散させ、爆風の過圧処理に役立ちます。砲弾が所定位置にロックされると、砲尾がロック位置に回転し、砲尾後端が密閉されます。 ERCAには、戦車砲のようなスライデド尾栓があります。上方にスライドする鋼鉄ブロックが発射管を密閉し、チャンバー圧力が生まれます。それ以外の場合は、抵抗が最少となるため、ラウンドは後方に出てきます。スライディングブロックのブリーチはより堅牢かつ大きな爆発に対応できます。チャンバー圧力が高いほど、爆発は大きくなります」■
この記事は以下を再構成したものです。火砲の構造に詳しい方に説明の不備をご指摘いただきたいです。
The U.S. Army's New Artillery Can Kill from 40 Miles AwayJuly 23, 2020 Topic: Security Region: Americas Blog Brand: The Buzz Tags: ERCAExtended Range Cannon ArtilleryArtilleryMilitaryDefenseU.S. Army
The U.S. Army's New Artillery Can Kill from 40 Miles Away
Meet the ERCA.
by Kris Osborn
Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University
>「ERCAでは58口径で約30フィートの砲弾を運用します。内部容積が増えているため~」
返信削除砲弾が30ftもあったらビックリなので、元記事を見てみましたが、
『ERCAは砲身長約30ftの58口径を射撃する』といったところでしょうか?
ノーマルなM777が155mm×39口径で砲身長約6m、ERCAは155mm×58口径で砲身長約9m(30ft)。
ERCAは、M777より3mも砲身が長い!ということですね、たぶん…
長くなった砲身を以て、たっぷり火薬を詰め・強力な砲尾を備え・高初速を発揮し、長射程を達成する、
といったところでしょうか。