2012年5月10日木曜日

KC-46Aの基礎設計が完成

KC-46A Design Review Complete

May 09 , 2012 By Amy Butler abutler@aviationweek.com

ボーイングは2013年予定の米空軍向けKC-46A空中給油機の設計審査に備え、4月に事前設計審査(PDR)を完了した。このPDRでボーイング設計案が「システム要求水準を満たし詳細設計に進む基礎ができている」ことが証明されたと空軍は発表した。
  1. KC- 46Aは(計画のみにとどまっている)民生用767-2C貨物機仕様を原型に貨物扉や機内床の強化、尾翼、主翼、尾部などの設計変更をしている。ボーイン グは「PDRのような」社内審査を-2C型で行なってからKC-46Aの審査に入る。ただ同社関係者は詳細については明確にしていない。
  2. ボー イングはKC-46A開発契約を昨年初めにEADS提案のA330原型案にうちかって手に入れた。その結果、2017年度末までに実戦投入型機材を18機 納入することが求められている。その予定価格は合計44億ドルが目標だが、政府見積もりでは53億になっており、このうち空軍は契約上の上限額49億ドル を支払う。上限額を超える分は空軍とボーイングで60対40の比率で負担する。さらに政府の会計検査では同機開発を継続するためボーイングは4億ドルを自 社負担する必要があるとする。
  3.  同機開発を統括するクリストファー・ボグデン少将Maj. Gen. Christopher Bogdanは「これまでのところの推移に満足」しているという。
  4. ただし、同少将はボーイングはウィチタ工場の閉鎖を決定したため設計、製造上で計画が困難な事態に直面する可能性を以前に示していた。同工場は伝統的に空中給油機を担当してきた。この決定により専門知識はシアトルに移転することになる。
  5. 「ボー イングには同社が約束したことは全部責任をもってもらいたいです。それをウィチタ工場を閉鎖したからといってひとつでも反故にさせるつもりはありません。 同社の組織決定事項ではありますが、リスクを増やすのは問題です。ただ本官の観点からは何も変更が見えません。ボーイングには結果を出してもらいたいと思 います。」(同少将)
  6. KC-46Aの初飛行は2014年末の予定で、初期低率生産は2015年開始となる。空軍は179機を合計517億ドルで購入する予定だ。

2012年5月4日金曜日

F-35導入で悩ましい選択を迫られるカナダとオーストラリア

Canada Still Keen To Buy F-35s Despite Problems

May 02 , 2012

Australia Delays F-35 Plane Orders To Aid Budget

May 03 , 2012

カナダのF-35導入の選定過程に問題があったとの報告書が公表されたが、F-35の導入の希望を依然変更していない。
  1. カナダは2010年7月に合計65機の導入を発表した。選定は競合機がないまま決定された。
  2. これに対し政府支出の監視団体より導入決定のもとになっていたのは軍が提供した誤ったデータであり、費用とリスクを軽く評価していたとの指摘が先月出てきた。これに対してカナダ空軍は選定をやり直す予定はないと批判をかわした。
  3. カ ナダはCF-18の後継機種として同機を求めている。野党からはF-35にこだわることが結果的に高価な誤りにつながるとの指摘があり、F-35のコスト 上昇、計画遅延を理由にあげている。CF-18が退役する時点でF-35がまだ配備できないとどうなるのか、という視点だ。
  4. 2008年時点では総額92億ドルと算出していたが、配備を20年間維持するためにはさらに60億ドルが必要と判明している。さらに燃料、パイロット訓練まで含めると250億ドルを超えるだろうと国防省は認めている。

一方、オーストラリアはF-35の第一期分発注(12機)を遅らせて予算の節約を図る。
  1. オーストラリアの最初の発注分は2機で2014年から15年の想定だが、この機体は米国内でテストと訓練に使われる。その後に続く12機についての決定を迫られていた。
  2. 国防省は今回の決定で米国向け機体と同一日程の納入予定になるとし、先送りにより16から21億豪ドルの節約になるとする。
  3. オー ストラリアはF-35国際共同開発に最初から参加して米国を助けてきたが、各国に同機の開発遅延と費用上昇により発注を削減したり、先送りしようとする動 きが出てきた。オランダは当初予定の85機を削減すると発表し、イタリアも発注機数を三割削減した。その他の共同開発国は英国、ノルウェー、トルコ、カナ ダだ。
  4. オーストラリは164億ドルで最大100機を購入する計画だが、当初の14機以降の購入を確約していない。
  5. オーストラリはF-35導入が遅れる間にボーイングF/A-18スーパーホーネットをつなぎとして購入する予定だ。
  6. これ以外に推進式火砲導入を取りやめ、225百万ドルを節約する一方、総額360億ドルで2025年までに12隻の新造潜水艦整備をすすめる。
  7. 米国はオーストラリア北部のダーウィンに海兵隊2,500名を常駐する準備を進めており、米海軍艦船がインド洋に面するパースに寄港する頻度も増えそうだ。
  8. .一方、同国北西部で採掘中の石油・ガス田の保護のため軍の駐屯を増強する提言が政府になされている。オーストラリアのスミス国防相からパネッタ国防長官に今回の予算節約はオーストラリア・米国間の作戦行動に悪い影響はないと確約したという。
 

    コメント F-35は西側防衛装備の整備に悪影響を与えているというのが当方の主張ですが、各国ともに悩ましい状況に苦しんでいるようです。さらに長期間使用すれば国庫財政上負担になるばかりという判断であれば、本当に同機の稼働期間は20年弱になってしまいそうですね。その中で日本は黙って高い請求書を払うのでしょうか。また、F-4ほどとはいわずとも西側各国よりも相当長期間の配備を続ければ総費用は天文学的な規模になりかねません。繰り返し言っているように日本にはF-35は不要な存在だと思います。

2012年5月1日火曜日

予算ピンチでこんなところにもしわよせが:救難ヘリCSARの運用でやりくりが苦しい米空軍

USAF Reviews CSAR Helo Fleet Plan

By Amy Butler
aviationweek.com April 27 , 2012

米空軍は戦闘捜索救難(CSAR)運用計画を見直し、現行のHH-60Gヘリおよび後継機種CRH(戦闘救難ヘリ)で作戦ニーズが実現できるかを検討する。
  1. 空軍の想定は148機の救難用回転翼機を配備することだが、現在の予算規模では112機の運用しかできない。そこで基本機能検討のマスタープランを今秋までに完成させ、現行の機材規模で戦略的な役割を実現できるかを検討することになった。
  2. CRH では新型ヘリコプター選定も視野に入れるが、配備中の機材の有効利用も課題だ。HH-60Gの三機はすでに飛行時間10,000時間に達しており、8機は 9,000時間台に達している。長時間稼動機は米国内で運用されており、飛行時間が少ない機体は海外に回されている。一つの問題は米空軍は機材寿命の判断 手段を持っていないことだ。
  3. さ らに機体構造とエイビオニクスの保守点検問題が浮上してきた。2008年以降の比較でペイブホークの点検修理工数は3割増加しており、単純に飛行運用回数 が増加している事の結果だという。それでもイラク・アフガニスタンでの作戦ペースが落ちているため、救難ヘリの運用も減っているものの、期待されるほどの 低下ではないという。
  4. 一年前に発生したHH-60Gの空中給油プローブ切断事故は構造疲労が原因だったと推定されている。原因の解析はまだ進行中だ。空軍にとって頭が痛いのはペイブホークの原型UH-60Lが米陸軍から退役をはじめていることで、予備部品の確保が困難になってくることだ。
  5. 空 軍はL型ブラックホークを原型とするHH-60Gを98機保有しており、UH-60MをCSARヘリに改装する予算も確保しており、すでに三機がシコルス キーから納入されている。ただ空軍が考えているのはM型とL型でかなりの相違があるのでM型をそのままHH-60Gに回想するのではなく、陸軍からL型を 譲渡受けることだ。まだこの交渉は開始されていない。
  6. HH-60Gには性能改修も順次実施されている。米海軍からミサイル警報装置を借り受け、装着している。機体はアフガニスタンで運行中だ。        

この記事に対するコメント 

Admiralさん

予 算が厳しいため米空軍はUH-60MをHH-60Mに改装し、これで長期的な解決策とすべきだ。新型機は損耗機材の穴埋めあるいはヘリ部隊の運用レベル向 上に投入すべきだろう。とくに重整備が必要な長時間稼動機をこうたいするためにも新型機を投入するべきだ。当面は陸軍、海軍と訓練、整備部品を共有するこ とで費用削減が可能で、HH-60Gの性能改修は予定通り進めるべきだ。新型機の設計はかなり時間がかかり、開発費用に加え訓練体系、部品供給網も新しく 整備する必要がある。性能要求開示が遅れると、契約締結その他の手続きもすべて遅れることになる。

2012年4月28日土曜日

指向性エネルギー兵器に注目が集まる

Study Highlights Importance Of Directed-Energy Weapons

aviationweek.com April 20 , 2012

米国は指向性エネルギー兵器として高密度レーザーや高出力マイクロウェーブの配備に向けた予算配分を真剣に考える必要があるとの提言が出た。その主張では単に指向性エネルギー兵器の経済性だけがその理由ではないとする。
  1. 迎 撃ミサイル発射のコストは一回9百万ドルとされ、高価であるばかりか米国の軍事装備配備を偏った内容にしかねないと主張するのはマーク・グンジンガー Mark Gunzinger(戦略・予算分析センターCenter for Strategic and Budgetary Analysis)の最新の論文内容だ。
  2. 同 論文は4月19日に公表され、その中でグンジンガーは敵が米軍に対して安価なミサイルを波状発射するシナリオを想定した。指向性エネルギー兵器(DE)が ないと、米軍司令官は敵ミサイルに毎回高価なSM-3やSM-6の発射を迫られ、コストは高くなるが敵は米軍に高負担をさせるのにわずかな出費ですんでし まう。.
  3. DE 兵器には多くの利点があるという。DEを組み込んだ巡航ミサイルやUAVなら20もの目標上空を飛行してそのすべてに発射ができる。その後UAVなら帰還 し、再充電すれば戦闘空域に戻ることが可能だ。DDG-51アーレイ・バーク級駆逐艦なら艦上で電力を供給して高密度レーザー兵器を運用できる。DE兵器 により米軍には「行動の自由を復活し、コストによる制約から解放される」とグンジンガーは主張する。
  4. 実 際にはDE兵器の前線配備には解決すべき問題があるが、技術は成熟度を高めていると同論文は指摘する。最大の障害は予算と組織内の抵抗感だという。「太平 洋地区の各基地すべてを分厚いコンクリートで防御するのは不可能」とし、高精度ミサイルから誘導ロケット、火砲、迫撃砲と多種にわたる脅威に運動性兵器で すべて対応するだけの予算はないという。
  5. そこでDE兵器による防衛は兵站上でも有利だという。空中給油機に装備すれば戦闘空域の中まで前進することが可能となり、戦術戦闘機の有効飛行範囲がそれだけひろがる。
  6. た だ指向性エネルギーはそれだけで完結する体系ではないと同論文は強調する。つまり、既存の運動性エネルギー兵器をそのまま取って代わることはできない。敵 ロケットのセンサー部分を焼ききったとしても、あるいは通信リンクを使用不能にしたり、推進部を溶かしたとしても、前線司令官には運動性兵器を投入して敵 ミサイルを粉砕する必要が生じるだろうとする。
  7. グ ンジンガーは大型空中赤外線通信システムで使われる技術をさらに発展させることを主張する。つまり、敵の誘導兵器に対しマルチモードのシーカーで防御する のだという。この構想は低速大型機であるC-17の例では着陸接近時の機体防御に役立つ。空中発射レーザー兵器の開発中止は技術初期段階であまりに大きな 目標をもとめたためだとし、論文では丘をのぼりきったことがないのにエベレスト山をいきなり制覇しようとしたものだとしている。
  8. こ の論文の準備段階で著者は関連各計画の責任者と意見交換をしているが、ほとんどすべての計画で予算が不足していることを発見したという。研究開発の維持に は予算の追加が必要だと訴えている。それに対してはした金の20百万ドルが回答されたという。また驚くべきはこの状況は今年だけでなくかれこれ5年間変わ らないという。


この記事に対する読者の反応

1:42 AM on 4/23/2012
記事内容には賛同しかねる

1. 有効範囲
1.1 海上あるいは地上から発射されたレーザーは極めて短時間で分散してしまう。これに対し高高度で発射されたレーザーはそうではない。これは大気密度の差によるもの。
1.2 SM-3では有効射程範囲があるが、レーザーでは補強された弾頭部を目標到達前に破壊することができない。
2. 米海軍はすでに1969年から1999年にかけて艦載レーザー兵器の研究をしているが、実用化出来る見込みなしとしてこれを廃棄している。

3. コスト
小型ミサイルであるジャベリンやアイアンドームは製造単価5万ドルほどであり、ミーティエアは50万ドル、SM-3では百万ドルを超えることはない。Report Abuse

Bosega, David naole

7:54 AM on 4/23/2012
海 軍が配備している運動性エネルギー兵器としての現在のミサイルはより高性能の運動性兵器としてレイルガンに取って代わられようとしている。レイルガンで発 射された兵器をミサイルや指向性エネルギー兵器で迎撃することは不可能。そこで戦艦の時代が再度やってきつつある。新世代の強力な装甲を施した軍艦にレイ ルガンやDE兵器、対艦ミサイル、無人潜水艇を搭載するのである。

Bosega, David naole

6:02 PM on 4/23/2012
@Bismarck

海 軍が計画中のDDG1000は現代版戦艦というべきもので、レイルガン、DE兵器他の搭載で運用概念が変わるだろう。SM-3でICBMを迎撃するのは本 当は不可能な話で、それだけに同ミサイルに全てを期待するのは無理。DE兵器のよいところは敵目標撃破のチャンスをふやしてくれることで、DEで失敗すれ ばSM-3で狙えばよい。

「指 向性エネルギー兵器が補完的」というのは多目標ビーム収束技術が成熟して適正な機体に搭載すれば有効な兵器になると思う。レイルガンとDE兵器で艦艇は戦 艦に近い存在になる。レイルガンを2-4基搭載すればそこから発射する兵器には対抗できる防御ミサイルは存在しない。レイルガンにはDE兵器しか事実上対 抗手段はないことになるだろう。

F-22のUAE配備はイランへのメッセージ

UAE-based F-22s A Signal To Iran

By Amy Butler abutler@aviationweek.com
April 26 , 2012

イランとの緊張が米国・イスラエル側で高まるなか、米国は静かに切り札となるステルス戦闘機F-22をアラブ首長国連邦に展開しはじめている。
  1. アル・ダフラ空軍基地に複数機が配備され、作戦行動をすると事情筋が明らかにした。同基地はすでにU-2やグローバルホークの拠点になっている。
  2. 「米空軍はF-22を南西アジアに配備しました。この配備で現地国との軍事関係が強化され、主権・領土の保全に役立ち、戦術航空作戦での連携能力が向上し、装備、運航上の共同作戦体制が強くなります」(空軍スポークスマン)
  3. F- 22には優れた性能としてスーパークルーズ、ステルス性、情報収集能力があることから世界で最高性能の戦闘機と考えられている。同機をこの地域に配備する ことは当然同地域の注意を喚起することになる。このタイミングでペルシャ湾に同機を投入することは米国がイランの核兵器開発の野望に反対しているとの意思 表示となる。
  4. 同じようにF-22がグアムおよび日本に展開した際にも同地域では同機に注目が集まった経緯がある。
  5. 実 際にはF-22は中東に過去にも展開したことはあるものの、2005年に作戦能力獲得が公式に認められてから戦闘任務には投入されていない。リビア作戦な どに投入されていないのは同機の高コストが原因とみられる。裏返せば、同機の高性能が絶対に必要とならない限りは戦闘空域には投入されない。一方、同機搭 載の酸素発生装置では問題が発生している。
  6. なお、ロッキード・マーティンはF-22最終号機の引渡し式を来週開催し、マリエッタ工場(ジョージア州)の生産ラインは空軍の調達の歴史上で過去の存在となる。

2012年4月25日水曜日

米軍ISR機材は厳しい現実にさらされています

U.S. Navy And Air Force ISR Plans Jeopardized

avitionweek.com
April 20 , 2012

一年前とは対照的に、情報収集・監視・偵察(ISR)用機材は過酷な向かい風にさらされている。機体の老朽化、データリンクの過負荷、サイバー脆弱性の出現、に加え予算削減だ。
  1. 「ISR は本当に危機的状況になりつつあります。新規購入の予算がつきません。現有の経年機でさえ飛行継続の予算が不足しています。」(この分野に詳しい空軍関係 者) ISR,電子戦、サイバー作戦は技術的には表裏一体であり、運用面でも密接に関係している。かつては国防予算交渉ではそれぞれ優遇されていたもの が、2013年度予算要求では最後の段階で削減対象となり、さらに年末までに軌道に乗っている計画でも更なる削減を免れない可能性がある。
  2. 「大 型有人機のE-3B AWACS、E-8Cジョイントスターズ他の機種が老朽化していますが、現行機を維持することさえままならない現状です。エンジン、エイビオニクスの予備 がなくなってきました。RC-135フリート(リベットジョイント、コブラボール、コンバットセント)は健在ですがその他の機種は大変です。短期的な解決 方法は危機的な予算環境の中では見つかりませんし、そのほかの選択肢も購入資金もありません。関係者一同打開策を模索していますが、運用方法を変更せざる を得ない状況です」(上記空軍関係者).
  3. その解決策となるのは小型無人機のファミリーを開発し、ペイロードを変更することで柔軟に対応することかもしれない。次世代の敵勢力が一層進んだ防空能力を展開する可能性を考慮すると、一定の機体喪失は覚悟しておく必要があろう。
  4. 「こ こでの考え方は一機失っても即座に代替機をつかって必要なデータをてに入れるのです。そのため空軍はISRおよび電子戦用に高性能センサー開発を急いでい ます。単独飛行ではなく群れをなして飛行させる構想です。想定されるのはステルス戦闘用UAVとステルス性がないトラックのような機体で、大量に製造し生 存可能性を期待するというものです。各機はロボットであり、コンピューターと使いプログラムして、仕事をさせます。未完成の滑走路に着陸剃る必要もあるで しょう。機体が小さければこれも難しくはないはずです」
  5. ただし、サイバー作戦関係者は特に小型無人機が実戦に投入されるのはまだ先だと感じている。第一に小型UAVでは大型センサーを搭載できないので、広範囲の監視活動が実施できないし、大群の機体を一度に投入する構想も実現には時間がかかると感じているよう

2012年4月7日土曜日

ステルス技術に対抗するロシアの防空装備充実に注意が必要



Fighters, Missiles For Countering Stealth

aviationweek.com Mar 23, 2012

2010年代以降をにらんだロシアの技術戦略思想を体現した新型航空機、防空兵器の試作型ないし初期生産製品が出現してきた。
  1. 各 く国が兵器体系の開発戦略を実際の状況に応じて打ち出している中、ロシアの国防計画は系統だっており一貫した姿勢が見られる点で一線を画している。米国の 軍事力に対称的に対抗する一方、米国のもつ弱点には非対称的に対応する意図が見られる。ロシアの戦略上の狙いはロシアの政治的主導力を米国が支配的な立場 にとる世界の中で実現することであり、武器輸出で得る収入で国防力整備の制約条件を和らげることにある。
  2. ロシアの選択はF-35共用打撃戦闘機中心とする西側の構想に呼応した戦術防空体制を構築することにある。JSFの配備遅延によりロシアには対応準備で20年以上の時間的余裕が手に入った。
  3. 航空機ではロシアの防空計画は機数ではなく性能を重視し、将来の主力は30トン超の戦闘攻撃機をスホイ製とする。Su-27フランカーから2つの型式が進化する。より小型のMiG-25/35は輸出専用とする。
  4. こ のうちSu-34打撃戦闘機兼中型爆撃機が一番完成度が高い。生産型のSu-34の最初の6機がリペツクの戦術開発部隊に納入されており、今後10機が追 加される。その他92機の発注が3月に発表されており、2020年までに納入される。同機の開発は1980年代末から始まっており、今後Su-24フェン サーの後継機種として、陸上・洋上攻撃任務、航空制圧・敵防空網打撃他のミッションに従事する。
  5. Su- 35S航空優勢戦闘機の飛行テストが1月に始まっている。同機はフランカーを大幅に改良した機体であり、推力ベクトル制御をヨー、ピッチ、ロールで行い、 完全な飛行制御を行う。これによりSu-30MKIで採用されたカナード翼が不要となったことで、従来の速度制限マッハ1.8がなくなり、重量を軽減した 結果燃料をそれだけ多く搭載する。戦闘機としては異例の操縦性を実現し、飛行制御・推力制御を統合したことが大きな特徴だ。.
  6. 搭 載する117Sエンジンは従来より16%出力増であるが、素材の変更と設計変更で重量は従来型にほぼ同じ水準だ。レーダ断面積(RCS)は減り、新型エイ ビオニクス装置に広角視野レーダーwide-field-of-regard radarがあり、電子スキャンアレイと機械式ジャイロgimbalを組み合わせて作動させる。
  7. Su- 35Sはは敵の防空ミサイルの有効射程を減らすことを目標とする。RCSが減ったこととジャミングによりミサイルの性能を減らす敏捷性が得られる。レー ダーにより状況把握が可能となり、退避行動が有効になる。米空軍の高性能中距離空対空ミサイルの弱点を研究してMBDAメテオの開発につながる対抗措置が 考案されている。
  8. 飛 行テストの写真ビデオからは三番目のスホイ戦闘機T-50の革新的な性能がうかがわれる。同機の試作機3号機の初飛行は昨年11月に実施されている。同機 も推力ベクトル制御を備え、双発のエンジンは大きく間隔を与えられた配列になっており、ノズルは30度の可動範囲があり、ピッチ・ロール・ヨー制御が可能 である。垂直尾翼は小さいが全体が可動式だ。はたしてこれら試作機は最終生産の形状なのだろうか。現状の丸いノズルと後部ナセルのカーブはステルス性能上 最適形状ではないし、エンジンは空気取り入れ口で完全にマスクがされていないのだが。
  9. Su- 35SとT-50開発は相互に関連しており、Su-35Sで採用した大型コックピットディスプレイや統合飛行・推力制御の知見はT-50開発陣にも参考に なる。サターン117SエンジンがSu-35Sで採用されているが、T-50搭載の117エンジンはこの発展形である。.
  10. 更 に非対称戦略を取るロシアの将来の空軍力開発では低視認性目標対応counter very-low-observable (CVLO) レーダー技術、長距離高速度地対空ミサイルの開発が重視されており、これを補うのが新世代の短距離地点防衛兵器で接近する誘導兵器を破壊するものだ。想定 している敵のミサイルは対放射線ミサイル、巡航ミサイル、誘導爆弾としている。これらの敵兵器の想定は高度の機動性であり、発射から到達まで5分間しか余 裕が無いと見られる誘導兵器への対抗だ。
  11. ロシアのCVLOレーダーの特徴は波長1メートルのVHFを使うことだ。ステルス戦闘機はVHFには有効ではない。それは垂直尾翼や翼端部分の寸法がこのレーダー波長に近いためだ。レーダー波吸収処理はS-バンド以上のレーダーには有効だがVHFには役立たない。
  12. こ のうち主力となるのがNNIRT/Almaz-Antey製の55Zh6MネボMの3-Dレーダーシステムで100基が発注されており、ロシア防空軍に配 備される。このネボMは多バンド設計となっているのが特徴で、レーダーを三基とデータ統合指揮所を組み合わせており、24トン8輪駆動車数台に分けて運搬 可能だ。
  13. 三 基のレーダーはRLM-M VHFバンド、,RLM-D Lバンド、RLM-S C/X-バンドであり、それぞれ追跡データを指揮命令車に送り、データとして統合される。これは米海軍のシステムと類似しており、高速度ナロービームのデ ジタルデータリンクをマイクロ波バンドで実現するものだ。各レーダーは半導体AESA(アクティブ電子スキャンアレイ)を採用。このネボMではRLM-M バンドでステルス機を補足し、RLM-Dと-Sバンドにより正確な追尾データを確保し、VLO目標が従来型のレーダーでは捕捉できない問題を克服する。有 効捕捉距離は公表されていないが、RLM-Mでは初期のネボ-SVUより最低でも40%長いと見られる。
  14. CVLO レーダー開発は移動型長距離SAMの高速度と対応時間の迅速化の追求と並行している。その狙いは2つだ。敵の情報収集・監視・偵察や電子攻撃機のスタンド オフ活動や領空侵入を出来なくすることと、探知可能範囲にいる間に敵のステルス機を近距離からSAMで狙うことだ。
  15. ロ シアの今後の統合防空システムの構成はS-400トリンフ(SA-21グラウラー)戦略級SAM、S-500トリムファターM、またはSA-X-NN  SAMミサイル防空防空システムとなるだろう。このうちS-400はドゥブロフカ、エlレクトロスタル(モスクワ近郊)、ウラジオストックの各防空部隊に 配備されている。
  16. S-400はS-300PMU2(SA-20Bガーゴイル)の発展形で、X-バンド交戦レーダーを搭載する。同時並行開発で陸軍防空部隊にはS-300V4改修型ミサイルが配備されている。
  17. さらに今後の予定ではS-500がSAM部隊に加わる。現在は開発中で情報が少ないが、公表資料空推察すると9M82Mミサイルがその原型となっているようで、射程500から600キロメートルで弾道ミサイル迎撃モードもある模様。