2012年8月18日土曜日

実戦に鍛えられたイスラエルの積極防空体制は進化を続けています

Israel Hones Active Air Defense System[Iron Dome]


August 13, 2012
David Fulghum Palmachim AB, Israel

イスラエルは小国だが領空には軍用機、民間機、ヘリコプター、無人機、ミサイルロケットが入り交じって飛行しており、この複雑性により同国の作戦立案では、空、宇宙、陸上、海上それぞれの運用を調整・同期化させようとする動きが目立つ。

  1. 「各 要素を共存させていくのは想像以上に困難な作業です」と第167積極防空隊167th Active Air Defense Wingの副指揮官T大佐(保安上の理由で匿名)は言う。同隊はテルアビブ南方のパルマヒム空軍基地Palmachim ABに駐屯し、アロー、アイアンドームIron Dome、ペイトリオットIIIの各防空システムを運用している。間もなく同隊はダビデのスリング David's SlingとアローIIIも配備される予定だ。
  2. 「対空防衛から積極防空への切り替えはおおきな変化で、これで一年になりますが、作業はまだ進行中です」(T大佐)
  3. この流れに踏み切った理由は2つある。ひとつは脅威が劇的に変化したこと、特にこの5年間での変化であり、もうひとつが新装備の登場で積極防衛が実現可能になったことである。
  4. 「ロ ケットやミサイルが国家組織以外にヒズボラやハマスのような非国家組織まで使うので防空は複雑な様相を呈しています。さらに脅威の出現方向が多方面にな り、エジプト、シナイ半島、シリア、レバノン、ガザ地区、その他も想定されています。テロリストが艦船からミサイルを発射する心配が最近言われています。 特に変化のきっかけは戦術弾道ミサイルですね」(T大佐) 
  5. そ の結果としてイスラエルは新戦略を打ち出す必要が生じた。その成果が積極防空構想であり、既存装備の調達(例 ペイトリオットIII)であり、新装備の調 達(例 アローIII高高度弾道ミサイル対応)であり、アイアンドーム(低空ミサイル、ロケット対応)だ。アローIIIはテスト中でアイアンドームは四個 中隊が配備済み。各中隊には固定レーダーx1、指揮命令所および発射機x3が装備されている。
  6. 「今 後数年間でアイアンドーム部隊は二倍規模に拡大し、10個中隊にします。その後ダビデのスリング(中高度防空)とアローIII(超高空)を整備します」 (アミカム・ノーキン准将、イスラエル空軍作戦部長Brig. Gen Amikam Norkin, the new chief of IAF operations)
  7. ガザ、シナイ半島方面からのミサイル攻撃からノーキン准将によると敵の戦術で毎週新しいことを学んでいるといい、同時多数発射、連続発射にも対応しているという。
  8. 「アイアンドーム4個中隊も動員しました。四個目の中隊はわずか2週間前に設置したばかりでしたが、敵との距離が近いため空軍には時間の余裕がないのです」(ノーキン准将) 200基以上のロケットがイスラエルに二日間で発射された事案もあったという。
  9. そこで課題は防空部隊をガザ国境のように小さな地区でどのように効果的に運用するかであり、オーケストラ指揮に似ているとノーキン准将は表現する。
  10. 「これまで以上に中央統制が必要になっています」(T大佐) 指揮命令系統はこれまでの部隊別・地区別から簡略化され、ニ部隊・二任務別に整理されている。
  11. 一方の部隊は対航空機任務、片方の部隊である第167が積極防空を担当する。この根底にはイスラエル防衛にはグローバルな視点が必要で、ミサイルやロケットはどこからでも発射できることがある。
  12. 積極防空体制には新しい組織や人員が必要なほか、ミッションも再構築し、運用方法も構想似合った形に整備する必要がある。
  13. 「弾道ミサイル防衛の対象空域は上下二面で考えます。情報共有、探知、目標捕捉データ、迎撃点、迎撃後の破片落下他影響など課題は多方面で、解決策は防空全体を統合し、調整、同期化できる指揮命令機能の中央統一にあります」(T大佐)
  14. 「二年ほど先になりますが、ダビデのスリングおよびアローIIIの実戦配備が完了しますが、米陸軍がパートナーになっています」(T大佐)事実、米側関係者は両国の合同演習が年末に予定されていることを認めている。
  15. 「米国との積極防空協力の一環であり、米国とは協同・同期化して実戦で対応する体制ができていることを意味します」
  16. 積 極防空装備ではアイアンドームが最新である。「運用経験は15ヶ月と新しいシステムですが、残念なことに三ヶ月ごとにガザからのロケット攻撃がエスカレー ションを繰り返している状況なので、アイアンドームは絶対必要な装備です。2006年の第二レバノン紛争では33日間で4,200発のロケットが発射され ており、当時は積極防空がなかったのでおよそ二百万人が危険にさらされていました」
  17. 「今日ではアイアンドームの機動性が高く、数時間で位置を変えられますので、利用可能なオプションも国家指導部には増えたといえます」(T大佐)
  18. イ スラエル関係者によるとアイアンドームの成功率は90から95%だというが、バラク国防相は実際はそれより低いと言う。「アイアンドームは非常に有効な迎 撃手段だと証明済みでミサイルの80%以上の迎撃に成功していますが、重要な目標を狙わないミサイルは無視します」 この国防相の発言ではあいまいで残り の20%の敵ミサイルが迎撃に失敗したのか、無視されたのかはわからない。
  19. 「数字で言うのはきれいですが、過去の存在になりました。次のエスカレーションではサッカー試合のように0-0で始まるのです」(T大佐)
  20. イスラエルはサイバー部隊創設でも戦術・防空全般でアクセスできる能力開発が必要だが、適切なサイバー防御がないとネットワーク事態がハッカーに攻撃の経路となってしまう危険性もある。
  21. 「外 部で調達可能なら自分で新規ツールの開発は必要ありません。サイバー能力をその他空軍機能と同期化する必要があります。システム全部をまとめる司令部、指 揮統制体制が必要です。攻撃と防衛を区別することは不可能です。真の実戦体制ではこの2つを同時に処理剃る必要があるのです」(ノーキン准将)■


X-51A三回目フライト失敗の原因

Fin Failure Dooms Third X-51A Flight

aviationweek.com August 15, 2012

8 月14日の空軍研究所U.S. Air Force Research Laboratory’s (AFRL)によるボーイングX-51AウェイブライダーBoeing X-51A Waverider極超音速実証機の三回目フライトでは機体制御用の安定板が今回は作動せず、スクラムジェットエンジン点火前に機体制御を喪失してしまっ た。
  1. X-51Aの初飛行は2010年5月でマッハ4.88までスクラムジェットで加速して成功とみなされた。二回目の飛行が2011年3月で数秒で終了したのはスクラムジェットが始動用エチレンからJP-7燃料に切り替わらなかったため。
  2. ボーイングは第四号機も製造しているが、実験飛行の予算がとれていない。AFRLは実験飛行の継続実施を決定できていない、と空軍は声明文で伝えた。
  3. X-51三号機は300秒の飛行でプラットアンドホイットニー-ロケットダインSJX61ラムジェット・スクラムジェット二重モードエンジンでマッハ5に加速する予定だった。
  4. 同機はB-52から太平洋上空で午前11時36分(現地時間)に発射された。切り離しは成功し、ブースターは予定通り作動した。
  5. 16秒後にブースターの作動中に飛行安定板で故障が見つかったと空軍が発表。ブースターから分離したX-51は制御できず喪失したという。
  6. 「サブシステムで問題が発生し、スクラムジェットの点火まで至らなかったのは残念であった。記録データではエンジン点火までの状況は完璧でこのままテスト目的の達成を期待していた」とAFRLは声明文で伝えた。
  7. 三号機では2号機の失敗を教訓にハードウェア、ソフトウェアを改良し搭載していた。
  8. 炭化水素燃料へ切替得ようとした際に同機はインレットが作動しないためエンジンへの燃料供給が止まり、エンジンが停止してしまった。再始動を試みたが、うなくいかなかったのがその際の状況であった。
  9. そこで三号機ではエンジンの燃料系統のインターフェイスで改良を施し、第一回目飛行では「焼付け」が起こっていたと想定されることから高温ガスが機体内部に浸透することを防ぐシーリング改良が行われた。
  10. 一号機はマッハ5に達しなかったが143秒のスクラムジェット運転は技術的には成功とみなされた。その時点で以前のスクラムジェット飛行実績の11倍の長さに匹敵したためだ。
  11. 一方、DARPA国防高等研究計画局によるロケットブースター付き無動力ロッキーと・マーティンHTV-2極超音速グライダーも予定より短い飛行終了を二回続けており、2010年4月、2011年8月でそれぞれおよそ9分間に終わっている。
  12. DARPAは同機にロケットを装備し飛行途中で再加速することで長距離飛行の実施をめざしている。■


2012年8月17日金曜日

イージス艦の性能改修で日米間の協議が進んでいます

US, Japan Said Discussing Missile-defense Ship Upgrades
aviationweek.com August 16, 2012

米国と日本は日本が運用中の駆逐艦二隻のシステムアップグレードにより弾道ミサイル防衛体制の強化を協議中と国防総省との大手契約企業幹部が15日に明らかにした。
  1. あたご級誘導ミサイル駆逐艦の改修は米海軍艦船と同じ弾道ミサイル防衛能力を整備するものと、ロッキード・マーティンで海軍向け事業を統括するニック・ブッチNick Bucciが表現した。
  2. 北朝鮮の核開発と弾道ミサイル実験に脅威を感じる日本はミサイル防衛のすべての局面で米国の最大のパートナーとして注目される存在だ。
  3. 米国の現在の年間支出は全部で100億ドル程度で、北朝鮮とイランへの懸念を反映した形になっている。
  4. Lロッキード・マーティンが提供しているイージスシステムの構成はレーダー、コンピューター多数、ソフトウェア、ディスプレイ、兵器発射装置および兵器そのもので水上、空中、水中の脅威に対応するものだ。
  5. イージスシステムはルーマニア、ポーランド両国の陸上で2015年めどで配備される予定で、欧州をイランなどの弾道ミサイルの脅威から防衛するとともに、米国艦船も増強される予定だ。
  6. 日本は2003年にこんごう級駆逐艦4隻にレイセオン製スタンダードミサイル-3迎撃ミサイルを搭載し弾道ミサイルを撃破する能力を整備する決定をしている。
  7. 今回の協議の中心は海上自衛隊のあたごとあしがら二隻のイージスシステムの性能向上によりこんごう級を超える性能の実現にあると、ブッチは電話取材に答えた。
  8. 今回の想定対象はイージスシステムのレーダー情報を処理する新しい頭脳となるコンピューターであり、弾道ミサイルとあわせ他の空中攻撃を撃退する能力である。
  9. この近代化であたごとあしがらはSM-3ミサイルの発射能力が装備される。こんごう級の各艦には別個に性能改修が必要だ。
  10. 今回とりあげられているSM-3は正確にはブロックII-Aと呼ばれ、オバマ大統領提唱のNATO欧州向けミサイル防衛ロードマップで言及されている重要な構成部分である。
  11. 同ミサイルではロケット推進部が大型化され、弾頭部分も高性能になっていることから防御範囲が広がっていると見られる。弾頭部分は目標と衝突するように設計されている。同ミサイルの開発は2018年配備開始に向けてレイセオンと三菱重工業が順調に進めている。
  12. 二国間の研究開発の基礎となっているのが米日間の覚書で北朝鮮が突発的に発射したテポドン1号(1998年8月31日)が日本列島を横断して着水したことだ。
  13. ブッチによると韓国も保有するイージス艦三隻の改修の打診を米海軍入れたという。ただし、米国防総省並びに海軍から日本または韓国向けのプログラムについてコメントはまだ出ていない。
  14. なお米海軍の弾道ミサイル防衛能力があるイージス艦は2011年度末の24隻から2018年には36隻に増強される予定だ。■

コメント 日 本の海上自衛隊では相変わらず9000トンクラスのイージス艦でも護衛艦の名称を使っていますが、ここは原文のデストロイヤーを駆逐艦として使わせてもら いました。DDGとしている以上、駆逐艦という名称がぴったりくるのですが、まだしっくりこないものを海上自衛隊は感じているのでしょうか。ひょっとして こんなことがまだタブーになって頭の中を支配しているのでしょうか。

2012年8月16日木曜日

イラン戦を一ヶ月以上、都市住民500名死亡と想定するイスラエル

Possible War With Iran Could Be Month-long Affair: Israel Minister

By Reuters
August 15, 2012
イラン攻撃が実行されれば作戦は一ヶ月にわたり、戦線は多方面に拡大し、イスラエルの各都市にミサイル攻撃が加えられ、市民の犠牲は500人を超えるとイスラエルの民間防衛担当大臣が取材に回答していることが明らかになった。
  1. 「慌てふためく余地はありません。イスラエル国内はかつてないほどの準備をすすめています」とマタン・ヴィルナイMatan Vilnai(退役将軍、まもなく駐北京大使として赴任予定)は日刊紙マーリフに語っている。
  2. 取材は各メディアがイスラエルによるイラン核施設攻撃のタイミングが米大統領選挙前になると報道しているのと同時期に行われた。
  3. イスラエルがイラン攻撃を実施する必然性があるのかとの問には「ここで論議している余裕はない」としながらもヴィルナイは「米国は我が国の最大の友邦国であり実施の際は両国で協調する必要がある」と語っている。
  4. エフド・バラク国防相Defence Minister Ehud Barakと同じようにヴィルナイもイランはイスラエル各都市を数百基のミサイルで攻撃し、死者は500名ほどになると発言している。イランは攻撃を受ければ即座に強力な報復を行うと公言している。
  5. 「死者はこれ以上になるかも、以下になるかもしれませんが、これが専門家の助言による最も実現性のあるシナリオです」
  6. 「この想定は戦闘が30日間つづき、多方面で攻撃を受けるというものです」とし、イランが支援するヒズボラがレバノン、パレスチナからイスラエルにミサイルを発射する想定をほのめかしている。
  7. イスラエルが構築したミサイル防衛体制で一斉発射されたミサイルの一部は迎撃されると見られ、民間防衛演習も定期的に行われており、ミサイル攻撃を想定している。
  8. ヴィルナイは攻撃が一ヶ月に及んだ場合の経済効果について、とくに商業中心地であるテルアビブが長距離ミサイル攻撃を受けた場合のイスラエル経済の行方については発言していない。
  9. テルアビブはガザ渓谷を巡る三週間戦争(2008年-2009年)、34日間に渡るヒズボラとの戦闘(2006年)でもミサイル攻撃を受けていないが、湾岸戦争(1991年)でイラクからのスカッドミサイル攻撃の対象だった。
  10. 日本国民が地震の発生可能性を受け入れるのと同様に、イスラエルに住む全員はミサイルが国内に落下する想定を当たり前に思っておかねばならないのです」
  11. ヴィルナイは8月末に異動し、後任はアブラハム・ディヒターAvraham Dichter(前イスラエル国内情報機関Shin Betの長官)だという。

コメント  この数日イスラエルからの報道が気になりますが、日本は相変わらず関心が示し切れていないようですね。イスラエルのショッピングセンターではガスマスクが 飛ぶように売れているらしいですが。それにしても国家の安寧秩序のためには市民500名の犠牲は受け入れられると公言できるところが政治家(政治屋ではこ れは無理)としてすばらしいところですね。(当たり前の話なのですが) 日本がおかしいのでしょうかね。なお、攻撃のタイミングとしてシリア情勢の行方も中止しておく必要がありますね。

2012年8月15日水曜日

【緊急】イスラエルのイラン空爆は間近に迫っているのか:事態の変化に注視が必要だが、日本の視点は大丈夫か

まず、イスラエル国内の報道の論調は開戦間近というものですが....

Israel Media Talk Of Imminent Iran War Push


aviationweek.com August 10, 2012

イスラエル首相・国防相はそろってイラン核施設攻撃を11月の米大統領選挙前に実行したいと考えているが、内閣、軍内部で支持がまだ得られていない、とイスラエルで報道があった。

  1. 同国で最大の購読者を誇るイディオト・アハロノトYedioth Ahronoth の記事は観測高まる中で掲載されており、政府内外のリーク情報からも、イラン攻撃は迫っており、たとえ米国との関係を損なっても実施されるとしている。
  2. 「ベ ンジャミン・ネタニヤフ首相Benjamin Netanyahuとエフド・バラク国防相Ehud Barak次第でイスラエルによるイラン核施設攻撃は秋にも実施されよう。11月の大統領選挙までになる」とイディオト紙は報道しているが、国防相の発言 は引用していない。首相府はコメントを拒否している。
  3. イディオトによると閣内で即座攻撃案は反対にあったとのことで、軍も作戦内容から戦術戦略面で難易度が高いことから反対しているという。
  4. 「過去の実績から首相と国防相は尊敬を集め、これが今までは多くの軍事上の決断につながっていたが、今やその威光は消えている」と同紙は伝える。「人も変わるが、状況の現実そのものがこれまでと異なっているのである」
  5. イスラエルはこれまでも宿敵を攻撃すると脅かしをかけ、特にイランの核開発を決定的な脅威とみなし、限定軍事攻撃の機会を伺ってきた。米国はこれに対しイスラエルに外交手段に注力するように説得してきた。
  6. イスラエル、米国はそろって両国間の意見の相違をなるべく見せないようにしてきたが、とくに米国は軍事力行使は最後の手段だと公言してきた。
  7. ロイターによる世論調査(3月)ではアメリカ人の多数は軍事行動を支持し、それが米国政府あるいはイスラエル政府によるものでも同じだとしたが、イランが核兵器を開発しているという証拠がある場合に限るとし、その結果ガソリン価格が上昇しても受け入れると回答している。
  8. た だし、11月の再選をねらうバラク・オバマ大統領はイスラエルによる一方的な行動は時期尚早として歓迎しない。大統領はネタニヤフ首相の不満をおさえるべ く政府トップ高官を派遣している。これに対し共和党のミット・ロムニー候補はネタニヤフの旧友であり、イスラエルの安全保障を協力に擁護する立場で、自身 も先月エルサレムを訪問している。
  9. 前出のイディオト記事では出所をあきらかにせずイスラエル、米国の政府顧問は共通して11月以前に攻撃を敢行するとオバマに不利となりロムニー当選の可能性を増す結果になると考えていると報じている。
  10. イディオトによるとイスラエルによるイラン攻撃の目的はエスカレーションを狙い、米軍部隊の介入をひきおこすことだという。ただし、バラク国防相はこの点で懐疑的だという。「同相は米国は参戦せず、逆に全力で戦闘の回避に出てくるだろう」と見ている。
  11. ネタニヤフ首相は明らかに米国の外交政策の干渉を受けたくないのは明白で米国内の超党派によるイスラエル支援に感謝しつつ、自国の安全には自国で責任を果たすと主張している。
  12. リベラルな有力紙ハアレツHaaretzはネタニヤフ政権内部の匿名の関係者の声として中東地域で唯一の核保有国と言われる同国には1967年の中東戦争前夜にイランから現在以上の脅威に直面していたとの指摘があると報じる。この見方が国内で支持を広めているようだ。
  13. 8 月10日付の大衆紙マアリフMaarivによる世論調査ではイスラエル国民の41%がイランには非軍事手段では圧力をかけられないと信じ、これに対し外交 手段の有効性を信じるのは22%に過ぎない。その一方で39%はイラン問題は米国他世界主要国に任せるべきと考えており、35%は最後の手段としてのイス ラエル単独攻撃を支持するとしているが、後者は前回の調査では22%だったので増加が注目される。■


これに対し米国の見方は「イスラエルはイラン攻撃を決断していない」

Israel Hasn't Decided On Iran Strike: Pentagon

aviationweek.com August 14, 2012

米 国はイスラエルがイラン原子力施設攻撃の決定を下しているとは見ていないとレオン・パネッタ国防長官が8月14日に発言した。これはイスラエル高官の発言 で金融市場が緊張したことを受けてのこと。パネッタ国防長官はイスラエルを2週間前に訪問しており、軍事行動はあくまで「最後の手段」であり、制裁はらび に外交圧力が功を奏するまでまだ時間があると報道陣に語った。
  1. この発言は攻撃の可能性をしきりに強調しているイスラエルと対照的で、在米イスラエル大使は8月13日にCNNに軍事行動を回避する可能性は「どんどん小さくなっている」と発言。同大使はイスラエルの考えるタイミングはワシントンよりも早く動いていると指摘している。
  2. イスラエル側の発言へのコメントを求められたパネッタ長官は「この時点でイスラエルがイラン攻撃を決定したとは思っていない」と発言。「外交交渉の余地は未だある」
  3. イランからは核開発はあくまで平和目的であり仮に攻撃を受ければ広範囲の反撃をすると警告が出ている。
  4. イスラエル金融市場は8月13日にイラン開戦を巡る議論の高まりを受け大幅安となった。ただし翌日に反撥している。
  5. マー ティン・デンプシー統合参謀本部議長General Martin Dempseyからはイスラエルによる空爆でイラン核開発の破壊は不可能であり、単に遅らせるだけだと警告が出ている。「イスラエル軍の装備について全て 把握しているわけではないが、破壊は不可能でせいぜい核開発を遅らせることしかできないと言っておくのが適当だと思う」■

コメント  きな臭くなって来ました。イスラエルが相当の閉塞感を感じていることは明らかです。ただし、相当な防御を施されていると言われるイランの核施設を一撃にし て破壊することはイスラエル空軍と言えども困難でしょうし、統合防空体制を打破するためにも電子戦の支援が必要となるとイスラエル単独攻撃は可能性が少な いのではないでしょうか。前哨戦としてサイバー攻撃、ISR活動が強化されるはずですが、こればかりは報道機関では把握のしようがありませんね。

米陸軍のLEMV監視飛行船が飛行試験を開始しました


Army’s LEMV Surveillance Airship Begins Flight Tests


aviationweek.com August 13, 2012


.米空軍は監視偵察用の飛行船開発を断念したが、米陸軍は独自に計画を進めており、ノースロップ・グラマン長時間飛行多用途情報収集機材Long Endurance Multi-Intelligence Vehicle (LEMV) が初飛行を8月7日に完了した。
  1. 同 機はハイブリッド飛行船で全長300フィート、初飛行では有人で90分間マクガイア・ディックス・レイクハースト共用基地(ニュージャージー州)からの飛 行に成功した。「初回飛行では発進と回収の安全性を確認することが第一で、次に飛行制御系の作動確認を目的にした」と宇宙ミサイル防衛軍団/陸軍戦略司令 部が発表。
  2. 「初飛行では耐空性テストと実証が目標であり、システムレベルでの作動確認が加わっていた。全ての点で目標は達成されている。追加して有人飛行が機体の点検のあとで予定されている」(陸軍)
  3. ノースロップ・グラマンが総額154百万ドルでLEMV開発の契約を調印したのは2010年6月で初飛行はその後12ないし13ヶ月後の予定だった。同飛行船はテスト終了後はアフガニスタンで運用される。
  4. LEMVは高度2万フィートで21日間連続運用でき、16kwの発電容量があり、ペイロード2,500ポンドの各種センサーを稼働させる。英国のHybrid Air Vehiclesが飛行船のメーカーとして同契約を下請参加している。
空軍はブルーデビル2監視用飛行船を5月に契約先のMAV6の業務内容が期待以下という理由で開発中止している。

2012年8月14日火曜日

イスラエルのEW技術がF-35運用各国に大きな利益をもたらす

Israel, U.S. Agree To $450 Million In F-35 EW Work

August 06, 2012
総 額450百万ドルでイスラエルとロッキード・マーティンが合意したイスラエル開発の電子戦(EW)装備をF-35搭載の承認はイスラエルの計画する19機 27.5億ドルの第一期導入に道を開くことになり、中東における防衛協力の大きな柱となる。だがそれ以外の意味もある。
  1. 長く待たれていた今回の合意でステルス性能の技術的経済的な制約を認めたうえで、高性能レーダーの出現でJSFのステルス性を長期間確保する必要性があらためて浮き彫りになった。
  2. F- 35導入の決め手はステルス性能のはずだが、それだけで歴史上最大規模の装備調達に加わるわけではない。レーダー断面積が小さいことは隙間的な能力だが、 新型レーダーの開発でその重要性が減少する。中国、インド、ロシアがそれぞれ自国開発に乗り出してステルス機の弱点に気づきはじめている。
  3. 「ステルスによる防御能力は5年10年は有効でしょうが、機体は30年40年稼動しますから、EW能力は簡単に高度化できるようにしておくことが必要です」(イスラエル空軍IAFのある関係者が本誌に)
  4. も うひとつの重要な観点は費用だ。「イスラエルにとってF-35が装備の中にないことは考えられないです。生産機数が増えて単価が下がればF-35はF- 16の後継機となります。」(上記イスラエル空軍関係者) たしかにF-35の現在価格は高価だが、イスラエルは維持が高くつく老朽機を処分したいと考え ている。イスラエルは実質的に米国の援助を受けているのだが。
  5. 「旧式機の保守点検での追加費用発生分は米国の軍事援助では手当てされません。そのためF-35調達が遅れるとそれだけ国防予算の負担が増え、その他にまわす余裕がへります」
  6. 2008 年の最初の合意内容では75機152億ドル(約1.2兆円)調達のオプションがあり、第二飛行隊を複数年度調達で整備することが盛り込まれていたが、この オプションは他の国防装備調達案と比較検討されている。だがイスラエルに追加飛行隊の本体価格は第一飛行隊より低くなるとの連絡が入っている。
  7. 今 回の最新合意によりイスラエルは自国生産の無線 ・データリンク他を自国購入分のF-35に装備することが可能になった。オリジナルではステルス性のある データリンクはF-35のミッションシステムで不可欠な部分とされ、データ通信はF-35編隊内あるいはF-35と特殊な通信連絡機間だけとされてきた。 F-35用にハリスHarris Corporationが開発した多機能高性能データリンクMultifunction Advanced Data Link (MADL)により探知されにくいリンクが実現し、F-35編隊内およびMADLを装備した指揮命令系統間で通信が可能となる。MADLはアンテナ6本で 機体周辺を球状にカバーし、Kuナローバンド波形を「デイジーチェーン」方式で使用する。つまり先頭機が志向性のある信号を二番機に送り、二番機が三番機 に、と続けるのだ。
  8. こ の方式だと波形が探知されす、傍受されにくくなるので、敵の信号傍受情報活動sigintやEW活動から自由になる。今のところこの装備はF-35だけだ が、米軍のステルス機全体に装備されていく。ロッキード・マーティンF-22やノースロップ・グラマンB-2が想定される。MADLはF-35の通信・航 法識別(CNI) ミッションシステムの一部であるのでイスラエルはMADLの供与を期待でき、イスラエル空軍はデータリンクを米軍と共有する始めての海外軍事組織となる。 ただし、MADLだけに依存するとイスラエルのF-35は友軍内のほかの機材と共同作戦が実施できないので、別の解決策が必要だ。
  9. こ れまでステルス部隊はミッションの独自性を求めており、最高度の柔軟性でこそ各機のステルス性能が発揮できると主張してきた。ステルス機、非ステルス機の 協同運用の必要性およびF-35を近接航空支援に投入する想定が米海兵隊に特に強いことから同機にLink-16のような通常装備の搭載が求められること になった。
  10. 最 近のテストでもF-35 でLink-16が使用されており、まもなく可変形式メッセージVariable Message Format (VMF)のテストもはじます。VMFは西側で広く近接航空支援ミッションで使用されている。今回の合意でイスラエルは自国製のデータリンク通信装置の搭 載に道が開けた。
  11. I イスラエルは絶えず海外調達の機体には自国製システムを付加すると主張してきた。米国製戦闘機ではこのような性能向上の中心はEWシステムズ、指揮命令通 信コンピュータ、データリンク、およびイスラエル製兵装の組み合わせが中心だった。このようなイスラエルによる改修は輸出にもつながり、たとえばライトニ ング高性能目標捕捉ポッドは米空軍・海兵隊にも採用されており、F-16、F-15、AV-8B、A-10、F/A-18、B-52の各機に搭載されてい る。
  12. た だしイスラエルのEWを巡る今回の合意内容は簡単に決着しなかった。JSFでは戦域固有の脅威ライブラリーやジャミング・対抗措置技術のレパートリーを元 にシステムの更新を頻繁に行う想定であり、この点で従来型のEWシステムズとは異なる。これまでもEWでは性能改修が行われているが、その他のエイビオニ クスとは関係なく実施されていたので、この改修は可能だった。
  13. こ れがF-35では主要エイビオニクス装備はすべて統合され一体化されているので、システムの一部に手をいれることはすべての関連システムに影響が出るの だ。異なる国籍の空軍がそれぞれ異なる型式のエイビオニクスを使用していると統合作業が非常に複雑になるばかりか非経済的だ。
  14. そ こでF-35のエイビオニクスの構造設計ではこの問題を統合のレベルを2つに分けることで解決。各国は高レベルにアクセスが可能で、使用国特化のサービス 内容、ライブラリー、改修を行うことができ、これは同機のソフトウェア改修スケジュールとは別箇に行うことができる。これに対し低レベルは米国の共用機開 発室の管理対象でアクセスはロッキード・マーティンに限られる。低レベルでは飛行性能およびミッションで不可欠な機能を制御する。同時に機体の低視認性能 とも関連しており、米国が精力的に自国管理を主張している領域だ。
  15. 中 核となるエイビオニクスを新システムで交換することで統合の根底部に触ることは考えにくく、実施すればF-35運用国のすべてが長期間のテストを求めら れ、開発のメリットがないからだ。そこでイスラエル空軍はこれとは違うアプローチを考えた。いわゆる統合モジュラーエイビオニクスintegrated modular avionics (IMA)である。この考え方はイスラエル黒帽研究開発局が長年かけて練り出したもので、現在試験的な搭載が進行中だ。
  16. 階 層は三段構造で新しいアプリケーションを統合していく。統一ハードウェアは協力な汎用プロセッサーgeneral-purpose processor (GPP) と大容量メモリーバンクで形成し、開発メーカーにはソフトウェア開発キットのようにデバイスと機能のライブラリーが利用できる。共通のハードウェアは各型 に適合化され、共通のデバイスや機能を作動させることが可能なので開発メーカーは新しいアプリケーションを異なる型式の機体に同時に提供する異なる。これ はこれまで特定の型式に特定のアプリケーションを開発していたのと対照的。アプリケーションはイスラエル空軍の認証を受ける必要があるが、各型式に問題な く適合し、保守点検が容易になる他アップグレードも長期間に渡り可能だ。
  17. 「ね らっているのは開発メーカー各社のセンサー類、アプリケーションソフトウェアをハードウェアの種類を問わず作動させることです。これにより機体の型式を問 わなくてもよく、統合試験コストを削減できます。」(イスラエル空軍のエイビオニクス部門長)イスラエル空軍はこのコンセプトを現有また将来の戦闘機、輸 送機、ヘリコプター、UAVに採用する予定だ。とくにUAVでは余分なスペースが無く、電力供給余力も少ないので課題となろう。処理能力を高めて、メモ リー領域も拡大することでIMAは中核エイビオニクス装置の負荷を緩和することが可能だ。イスラエル空軍がとくに期待しているのはソフトウェアによる無 線、情報融合、作戦立案の各機能での応用だ。
  18. イ スラエル空軍はIMAを費用対効果の高い手段として既存機種の性能向上を期待しているが、F-35へも新しい可能性を提供できるし、既存の中核エイビオニ クス装置に干渉せずにこれは可能だ。GPPでIMAを共通ハードウェアとすると運用各国に大きな利点が生まれる。サードパーティーのアプリケーショ ン開発メーカーが画期的な新アプリケーションをF-35に提供する道がひらける。スマートフォンのアプリと同じアプローチだ。
  19. . 国営イスラエル航空宇宙工業Israel Aerospace Industriesが今回のEW開発に加わる公算が高く、同社はすでに同機の主翼生産を始めようとしている。エルビットシステムズElbit Systemsの子会社エリスラElisraはイスラエル空軍にEW装備の提供を広く行なっているが、これも参画するだろう。エルビットはロックウェルコ リンズとの合弁事業体で高性能ヘルメットをF-35用に生産している。■