2018年2月8日木曜日

シリアでのSu-25撃墜でA-10の安全に懸念が高まる

The beloved A-10 Warthog is a sitting duck for the kind of attack that downed a Russian jet in Syria シリアでロシア機を撃墜した攻撃の前にA-10ウォートホグは格好の標的になるのか


週末にロシアのSu-25が撃墜されA-10ウォートホグが同様にシリア、さらにアフガニスタンで直面する危険に注目が集まる。
 Su-25はシリア・イドリブ地方で2月3日に反乱勢力が撃墜し、ロシア側はMANPADが使われたとする。パイロットは無事脱出したが銃撃戦になり捕虜になるのを避け自決した。
 Su-25は米A-10に匹敵する機体だ。両機種とも重装甲で爆弾ミサイルを大量搭載する。ともに30mmガトリング砲で低空で地上部隊を支援する。
 だが低空飛行中が危険が最大で、MANPADは高度15千フィート以内で効果を発揮するからだ。
 ウォートホグはシリアで2015年から活躍中で、一部機材をアフガニスタンに移動すると発表が先月あったばかりだ。
Su-25 crash Syriaシリアで撃墜されたSu-25の残骸。 Reuters
 「A-10が被弾する事態は十分ありうる」と英国共同軍研究所の空軍テクノジー研究員ジャスティン・ブロンクはBusiness Insiderに解説してくれた。また「西側でも心配の種になっている」とも語った。
 A-10、Su-25いずれも熱探知ミサイルがMANPADから発射されても探知レーダーは搭載していない。レーダー探知警報機はある。
 そのためA-10パイロットの唯一の防御策は常時地上に目を光らせミサイル発射の兆候を見つければ対抗措置を取り、急いで退避することだけだ。
 米側に幸運なのはA-10にはSu-25と比べ長所が二点あることだ。まず装甲が厚いし、排気の流れが上なので熱探知を惑わせる。ただそれで安全が保証されるわけではないとブロンクは指摘する。
 ウォートホグが恐れるのはMANPADだけではないとブロンクは言う。23mm以上の対空砲ならA-10撃墜は可能で、ロシア製ZU-23-2自動対空火砲は要注意だ。
 ブロンクはMANPAD、ZU-23-2、他の装備はISIS他シリアの戦闘員部隊が広く運用していると指摘。だがアフガニスタンの状況ははっきりしない。2010年の画像ではタリバンがZPU-1s (14.5mm) あるいはZU-23-2を保有しているとわかる。
 ただし本当にこうした装備がアフガニスタンにあるかで専門家の意見が分かれる。ブロンクはISISやタリバンは保有していると述べるが、大西洋協議会研究員のジャヴィッド・アーマッドはないという
ZU-23-2ロシアの ZU-23-2 対空機関砲 Wikimedia Commons
 「だがそれで状況が変わるわけではない」とアーマッドはタリバンがパキスタン、イラン、ロシア経由で装備を入手できると指摘。
 アフガニスタンでの不朽の支援作戦でタリバンないしISISにこうした装備があるのかを尋ねたところ同作戦司令部広報官トム・グレスバック大尉は「情報そのものの内容には触れられない」と回答してきた。「航空機乗員の安全にはいつも配慮しており、適切な対策を取り脅威への露出を最小限におさえている」(グレスバック大尉)

 シリアでの不朽の決意作戦司令部は本誌の照会にまだ回答を寄せていない。■

米空軍の軽攻撃機実証はターボプロップ二機種に絞り込み、スコーピオンは落選

US Air Force kills combat demo for light attack aircraft

米空軍は軽攻撃機で比較検証対象を絞り込んだ 

次回実証ではA-29スーパートゥカーノとAT-6ウルヴァリンが対象に絞り込まれた。スコーピオンは選外となった。

By: Valerie Insinna    

空軍は軽攻撃機の次回実証の対象を二型式に絞り込んだ。ターボプロップ機が選ばれた。予定していた実戦実証はおこなわない。

次回実証は2018年5月から7月にかけデイヴィス-モンタン空軍基地(アリゾナ)でテキストロンエイビエーションAT-6ウルヴァリンとシエラネヴァダエンブラエルA-29スーパートゥカーノを対象とする。テキストロンのスコーピオンとL-3テクノロジーズAT-802Lは落選となった。
「実戦実証の代わりに各社と整備性、データネットワーク機能、センサー機能を試すこと年、最も有望な軽攻撃機候補のAT-6とA-29を対象にする」と空軍長官ヘザー・ウィルソンが発表した。「これにより迅速な調達に必要なデータを集める」
米空軍は軽攻撃機の飛行実証を行うと2016年に発表していた。その時点で航空戦闘軍団司令官マイク・ホームズ大将は安価な既存機種で近接航空支援の要求に答えられるかを試したいと希望を述べて中東を念頭にA-10やF-16で実施中のコストと比較したいと述べていた。
軽攻撃機数百機を調達すれば利点は多い、と推進派は述べる。保有機材が多ければ運用効果が上がり、パイロット訓練も毎年増やせるというのもその一つだ。
さらに低コストで取り扱いが楽な機体を導入すれば「相互運用効果があがる」と空軍参謀総長ディヴ・ゴールドフェイン大将が述べている。つまりF-35やF-15が高価すぎて導入できない各国との共同作戦の実施が視野に入るという。
初回の飛行実証を視察にホローマン空軍基地(ニューメキシコ)にやってきた空軍上層部は戦闘実証が次の段階と言っていた。ただし、中東に機材を持ち込まなくても軽攻撃機の調達に必要なデータは得られると言っている。
「導入決定に必要なデータは機体サポートや調達導入フィージビリティから十分得られます。現在、要求内容の文書化とともに調達戦略を練っています」(米空軍広報官エミリー・グラボウスキ大尉)
ネットワーク機能と協力国との相互運用性いが次回実証のカギになりそうだ。「空軍は迅速に構築できる安価なネットワークにより機体が部隊内で相互通信できるかとともに指揮命令系統との交信も検討する」と空軍は声明を発表した。
また次回実証では関係国も招くとあり、カナダ、オーストラリア、アラブ首長国連合、パラグアイを想定する。
次の段階の実証では補給面や整備上の要求水準も比較対象となり、その他兵装、センサー関係や訓練内容も重要だという。
ただし、空軍は次回実証の費用負担方法は未定としており、大日程も決めていない。
「次段階の実証の費用面を積算中ですが、関係各社と最終価格を詰める必要があります。その段階で現時点で残る予算を活用することになります」(グラボウスキ大尉)■
筆者が推していたスコーピオンが落選となり、がっかりです。近接航空支援で想定するのはイラクやアフガニスタンの地上戦やゲリラ戦でしょう。たしかに今回絞り込んだ二機種のいずれも効果を発揮しそうですね。しかしスコーピオンは薄幸の機体になってしまうのでしょうか。

2018年2月7日水曜日

韓国T-50がシンガポール航空ショー初日に離陸失敗し炎上

South Korean T-50 catches fire at Singapore Airshow

韓国T-50がシンガポール航空ショーで離陸に失敗し炎上



SINGAPORE — 韓国のブラックイーグルズ曲技飛行チームのT-50がシンガポール航空ショーで離陸途中に発火した。
YouTube投稿の映像でT-50三機編隊がそのまま離陸し、さらに二機が続いた。六番機が背後で横滑りし草地で転倒し炎に包まれるのがわかる。
空港緊急対応チームが消火し、パイロットは病院で検査を受けたとチャンギ空港がツイッターで発表。パイロットは軽傷を負ったという。
ブラックイーグルズはシンガポール航空ショー初日で最終飛行実演に向かっていた。事故が発生した滑走路は閉鎖され民間航空機に遅延が予想される。
ブラックイーグルズが運用するのは韓国航空宇宙工業製のT-50だ。
航空ショー主催者からはブラックイーグルズの今後の飛行実演予定は発表がない。■

★英海軍、揚陸艦全部処分で海兵隊縮小に向かうのか

英国の防衛体制で予算不足があちこちに影響を与えおり、ついに海兵隊の規模縮小に向かう動きがでてきました。具体的には揚陸艦の処分を考えているようです。

Report: Royal Navy Could Lose its Amphibs英海軍が揚陸艦全廃との報告書





       HMS Bulwark (file)


BY MAREX 2018-02-05 14:00:00

議会国防特別委員会は英政府が海軍揚陸艦二隻を処分して予算と人員を確保するのではと警戒している。HMSアルビオンとHMSブルワークを処分すれば「軍事的文盲」「戦略的事実を完全無視」「取り返しの利かない愚行」だと委員会は報告書で警句を並べている。揚陸艦がなければ英軍は「意味のある揚陸作戦の実施」は不可能になるというのである。
 テリーザ・メイ首相率いる政府は国家安全保障能力検討(NSCR)で英国防支出を検討中だ。昨年から国防筋のリークが続いており、検討委員会が英海兵隊の規模を3割削減したうえ揚陸艦二隻の処分で予算削減効果を狙っているという。そのシナリオではHMSクイーン・エリザベスとHMSプリンスオブウェイルズの空母二隻が揚陸作戦に投入されることになる。ただし両艦に上陸用舟艇の運用能力はない。
 政府は委員会報告書の内容を「観測にすぎない」としながら、議論のための材料は提供していない。委員会は国防力検討が密室で行われていると非難。「肝心の関係者が検討過程に呼ばれないままで、多くの疑問の回答に苦労している。特に議会が全く組していないことは深刻な事態」としている。「国防省は『観測』と報告書を一蹴したが、正しい外部関与がないままで秘密裏に閉まった扉の中で作業を進めれば報告書の内容になるのは避けられない」
 アルビオン、ブルワークはともに2030年代初頭に耐用年数を終える。英海軍で最後に残った揚陸艦である。かつての旗艦HMSオーシャンは退役済みでブラジル海軍へ売却されている。■


やはり国防の原点は強い経済力ですね。しかしクイーンエリザベスを揚陸艦に転用するなど全く机上の空論に聞こえるのですが。英海軍はこのままでは域内で限定力しか発揮できない小規模部隊になりそうですね。トライデントミサイル原潜と大型空母(整備したばかりですが)を処分してバランスの取れた艦艇整備に進んだ方がいいのではないでしょうか。

シリアで一般市民を攻撃し撃墜されたロシアSu-25パイロットはなぜ死亡したのか

これまでロシア機が好き放題に対地攻撃していたのですが、この事件で低空飛行を避ける通達が出るなど影響が出ています。これを機会にロシアの蛮行が国際社会で糾弾されるといいのですが、どうせロシアは対応しないでしょうね。War Is Boringの記事です。

A Russian Pilot Died While Attacking Civilians in Syriaシリア一般市民を攻撃したロシアパイロットが殺害された
反乱勢力がロマン・フィリポフ操縦のSu-25を撃墜

Insurgents shot down Roman Filipov's Su-25

撃墜されたSu-25SM識別番号06の尾翼 Feb. 3, 2018. Jaysh An Nasr photo.




February 6, 2018 Tom Cooper


2017年12月11日、ウラジミール・プーチン大統領はロシア空軍(VKS)隊員にシリア国内フメメム基地で演説し、中でもシリアからの撤退に触れた部分が注目された。
 だがプーチン演説はVKS機材乗員を本国からの交代配備を隠蔽する意図があった。ロシア機は30から40機で変動がない。また2017年11月からロシアは連日最大100回の出撃を行っており、イランが支援する戦闘員集団によるイドリブ東部襲撃を支援している。
 ここ二年にわたりロシア空爆はシリア反乱勢力や一般市民を標的にし、反乱分子撃滅を狙う聖戦主義勢力を支援している。
 無防備の一般市民には武装反抗の動きはない。そのためVKSパイロットは一層大胆に一般市民攻撃に集中している。Su-25攻撃機が低空から一般市民の車両をロケットや機関銃で攻撃するのがよく目撃されている。2018年2月1日にはSu-25で低空攻撃中に地上砲火が命中する例が現れた。ただし同機はフメメム基地に帰還したと見られる。
 その二日後の2月3日にロマン・フィリポフ少佐が操縦するSu-25SMが撃墜された。同機はマアサラン村郊外で移動中の難民を攻撃していた。
 同機を撃墜した武器が何だったのかは興味深い点だ。撃墜の二日前に出回った報道ではトルコ支援を受ける反乱勢力がシリア北部でクルド人戦闘員部隊を攻撃したとあり、写真ではロシア製9K38 Igla-3/SA-183地対空ミサイルが映っていた。
 フィリポフのSu-25撃墜時の映像が証拠となり、9K38 Igla-3が確かに使われているのが分かる。ただしクルド人部隊から捕獲した9K38なのかは不明だ


 フィリポフ少佐は射出脱出したが捕虜になるのを拒み手りゅう弾自決した。「英雄的行為」と称賛されるが、聖戦主義勢力に断頭されたくなかったのだろう。だが少佐の自殺は無駄になった。該当地区を支配するのは聖戦主義者とは別の勢力だったからだ。
 生存していればトルコ経由で交換されていたはずだ。同様の手続きでシリア人パイロット3名が2017年に戻っている。■

この事件で米空軍にも意外な影響が出ていますが、別途お伝えすることにします。

★この装備はなぜ実現しなかったのか、配備されていたらどうなっていたか

The Navy Had a Plan to Build a Mini 'B-2 Bomber' To Fly from An Aircraft Carrier




February 1, 2018


兵器体系が消えるのにはいろいろな理由がある。登場時期が悪いこともあり、予算が厳しい状況とか取り扱い人員に難がある場合もある。あるいはペンタゴンの官僚主義の犠牲になったり、各軍の対立にまきこまれることもある。また発想そのものに難があり日の目を見ないこともある。同様に実は低性能の防衛装備が追及を受けずにそのまま居座ることもあれば、隙間の存在になり生き残ることもある。
この記事では正式採用されなかった装備五種類に脚光を当てるが、生き残っていれば相当に変身していたかもしれない装備もある。変身ぶりで戦争そのものの様相は変わらなかっただろうが(勝敗は技術だけで決まらない)、波及効果が国防産業全般に広がっていた可能性は考えられるし、米軍の戦闘の仕方や調達方法でも変化を生んでいたかもしれない。ただし以下のすべての装備が優れていたわけではなく、取り消しにはそれなりの理由が見つかる。


AH-56シャイアン:
1960年代はじめ、米陸軍はヘリコプター部隊の真価に気づき始めた。第二次大戦末期にヘリコプターは投入されていたが、朝鮮戦争で偵察や傷病兵搬送に広く使われはじめられた。機体技術が次第に発展すると高性能ヘリコプターで広範なミッションをめざした。
その花形になるはずだったのがAH-56シャイアンで画期的な設計で高速飛行と攻撃力の両立をめざした。シャイアンで輸送ヘリコプターの援護にあて、地上攻撃支援や単独攻撃を想定した。とくに推進機構がすぐれ時速275マイルをめざした。
だがそのシャイアンは自らの目標に倒れてしまった。技術が未成熟で初期試作型は問題の山に直面、墜落もした。空軍はシャイアン構想が気に入らず、陸軍が近接航空支援任務を奪うと疑った。空軍は固定翼攻撃機を提案しこれがA-10になったが、シャイアンをつぶすためだった。ヴィエトナム戦争で国防予算が厳しくなり、予算は戦闘継続に流用された。
シャイアンは制式化されなかったが、数年後に陸軍はAH-64アパッチを求めてきた。このためシャイアン取り消しは高性能攻撃ヘリコプター出現を遅らせる効果になっただけだが、アパッチは通常型機構の採用でシャイアンよりはるかに安全度が高い装備となったが、逆に陸軍航空戦力の発展性にブレーキをかける効果になった。


B-70 ヴァルキリー:
B-70ヴァルキリーにはオペラのような展開が似合う。当初B-52ストラトフォートレス、B-58ハスラーの後継機として想定されたB-70は高高度マッハ3でソ連防空網を突破する機体として企画された。先の大戦中の爆撃機攻勢を経験した「爆撃機マフィア」のお気に入りのB-70こそ空軍の将来像の象徴だった。
B-70は美しい機体で、むしろ宇宙船のような姿だ。試作機がデイトンの米空軍博物館に残る。


だがヴァルキリーはとても高価な機体でその値段が命取りとなった。まずアイゼンハワー大統領が、その後マクナマラ国防長官がICBMでソ連本国に核兵器を届ける性能が向上する中でこれだけの出費で重爆撃機を作っていいのかと疑問を呈した。ソ連の迎撃装備の性能向上さらに地対空ミサイルの登場でB-70の任務遂行は当初より危険になっていった。


わずか二機しか製造されず、しかも一機をPR撮影中に喪失し、空軍は生産を終了した。15年後にB-1Bが就役したが同機の特徴を残している。


B-70が空軍にどんな影響を与えていただろうか。極めて悪い影響しか思いつかない。戦略爆撃機を一種類増やして予算を使えば戦術航空機材やミサイル部隊にしわ寄せが行っていただろう。B-70をラインバッカーI、II作戦で北ヴィエトナム空爆させていたかもしれないが、B-52以上の戦果はあげられなかったはずだ。B-52とB-1Bがともに驚くべき柔軟性をミッション実施や改修で示したのは乗員がそれぞれ4名、5名と多いのも理由だが、ヴァルキリーは2名運用前提だった。実施していれば三十年間の深い穴を生んでいたはずの調達を取り消すことでマクナマラは空軍を救ったと言える。


A-12アヴェンジャー:
空母運用のステルス攻撃爆撃機があればどうなっていたか。1980年代中ごろに米海軍は愛されながらも脆弱性が目立ってきたA-6イントルーダー後継機種を模索していた。ステルス技術をもとにマクダネル・ダグラスはA-12アヴェンジャーを作った。亜音速「全翼機」爆撃機はまさにB-2スピリットの縮小版の趣だった。ステルスと空母運用に必要な柔軟性を組み合わせたA-12は他に例のない長距離攻撃能力を実現するはずだった。空軍もA-12に関心を示し、F-111アードヴァークの後継機に検討したほどだった。


ただし問題があった。初期ステルス効果への期待は楽観的すぎた。また改修で機体重量が増えた。出費もどんどん増えたが機体は一向に飛ばなかった。だが最大の問題はアヴェンジャーの設計製造サイクルが冷戦終結時になったことだ。国防予算緊縮で国防長官ディック・チェイニーはA-12を中止し低リスク事業を優先させた。


中止の影響は今も残る。高性能ステルス攻撃機のかわりに海軍はスーパーホーネットで手を打ち、改修を加えつつ供用中だ。ステルス機の必要からF-35Cが生まれたが、F-35事業は「大災難」と「歴史的大災難」の中間を漂っている。かりにF-35Cが使い物になっても、スーパーホーネット採用で長距離攻撃能力を断念してしまったことに変わりない。空軍はA-12と類似点の多い次世代爆撃機を開発中だ。A-12を葬って米海軍空母航空隊の能力は変質し、その影響はこれからも続く


将来型戦闘システムズ:
21世紀初頭に軍事革命(RMA)理論から陸軍n「将来型戦闘システムズ」が生まれた。ひとことでいえばRMA理論を近代戦に応用して精密誘導砲弾、高速情報処理、リアルタイム交信、全般的センサー性能を組み合わせて陸軍の戦闘方法そのものを変貌させようとした。将来型戦闘システムズは兵器、車両、センサーを組み合わせてあらゆる戦闘場面で殺傷力を決定的に高めようとした。陸軍はこのシステムでセンサーと砲を組み合わせたり、攻撃力を増進しながら被探知性を減らそうとした。陸軍は軽量ながら足腰の強い旅団が生まれるとFCSに期待した。
だがブッシュ政権が米陸軍をイラク戦に投入した。イラクではFCS開発に深刻な影響が生まれた。知的資源は戦闘にどう勝利するかよりFCSコンセプトを極限まで考えることに費やされた。戦闘から各種システムが生まれたがどれもFCSコンセプトに合う存在にならなかった。おそらく一番重要だったのは戦闘の進展でRMA理論に疑問が生まれたことで、非正規戦闘員が最先端技術を駆使する米軍に多大な損失を与えたことだ。


FCSはゆっくりと死に向かった。システムにシステムで対応する考え方は戦場で必要な装備を一つずつ整備するニーズに勝てなかった。陸軍はイラク、アフガニスタン戦で新旧装備取り混ぜて戦い、そこには将来の展望の入る余地はなかった。FCS構想の個別構成部品はまだ残っているが、構想は予算と軍の現実の前に屈服した格好だ。


制海艦:

超巨大空母数隻の代わりに海軍が小型空母の大量の建造に乗り出していたらどうなっていたか。第二次大戦中に英海軍、米海軍は護衛空母を大量投入し、対潜戦や上陸作戦の支援にあてていた。


1970年代初頭にエルモ・ズムワルト海軍大将が制海艦(SCS)構想を提唱し、小型空母で海上交通路をソ連の長距離攻撃機や潜水艦から守うろとした。超大型空母の建造費高騰と長年活躍してきたエセックス級空母の退役を受けてズムワルトは低コスト解決策として大型空母群の航空運用能力を一部割愛した形を想定した。護衛空母は大西洋の戦いで有益な働きを示し、制海艦も同様にNATO対ワルシャワ同盟の戦いで効果を上げると期待したのだ。


米海軍は構想をヘリコプター空母USSグアムで実証しようとしハリヤー戦闘機まで加えた。最終的に海軍は新型艦建造費と超大型空母建造へのリスクが出ることを勘案して構想を退けた。


ただしタラワ級ワスプ級の大型揚陸艦が制海任務に代わる存在になる。名称こそ強襲揚陸艦だが米海軍は制海艦を取得しており、もっと広い範囲の任務を与えているのだ。また他国に小型空母を建造させてSCSが想定した任務を任せればよい。英国、スペイン、イタリア、日本が本質的にSCS任務を果たすことになる。


制海艦を追い求めると海軍戦力構造の変更につながり、海軍航空兵力でも変化が生まれる。最大の違いは用兵思想で、制海艦で海軍航空部隊が国際安全保障に与える役割が変わっていただろう。小型空母で多様な任務に効果を生む能力でマハン流の大海軍から自由になれるかもしれない。また最新CVNの建造費が膨大になっていることから、SCS構想で海軍兵力投射の在り方も違ってくるかもしれない。


結論:
技術は疑いなく重要だが、個別の技術結果が戦術効果で決定的に有利になることはまれだ。むしろ、技術革新や技術要素の選択で軍事組織や広義の軍産複合体は戦争への対応が決定される。それぞれのシステムで画期的な組織上の役割や優先順の見直しがあってしかるべきだ。また各装備の取り消しで性能に大きな穴が開き、その穴を埋めるべく画期的な手段が必要となることが続いている。


選外:
USSユナイテッドステーツ級空母、USSモンタナ級戦艦、USSレキシントン級巡洋戦艦、B-49、F-23「ブラックウィドウ」、F-20タイガーシャーク。

Robert Farley is a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat. Follow him on Twitter:@drfarls.

2018年2月6日火曜日

1月29日中国貴州、陝西Y-8GX-3、12名死亡

先回お伝えした記事を訂正します。

Date:Monday 29 January 2018
Type:Silhouette image of generic AN12 model; specific model in this crash may look slightly different
Shaanxi Y-8GX-3
Operator:People's Liberation Army - Air Force - PLAAF
Registration:30513
C/n / msn:
First flight:
Crew:Fatalities: 5 / Occupants: 5
Passengers:Fatalities: 7 / Occupants: 7
Total:Fatalities: 12 / Occupants: 12
Airplane damage:Destroyed
Airplane fate:Written off (damaged beyond repair)
Location:Zhengchang, Suiyang County, Guizhou Province (   China)
Phase:En route (ENR)
Nature:Military
Departure airport:?
Destination airport:?
Narrative:

中国人民解放軍空軍(PLAAF)所属の輸送機(機機種未確認)が貴州省綏陽近くで山地に墜落した。
中国国防筋は情報提供をほとんどしておらず、機種は明らかではなかったが、現地映像で尾翼の登録番号が判明した。それによれば陝西Y-8GX-3の30513機である。Y-8GX-3は空中指揮命令所として投入中のY-8輸送機のECM装備搭載機で、原型はアントノフAn-12である。

中国筋によれば乗員5名と軍関係者7名が同機に搭乗していた。生存者はない。


シリアで化学兵器投入の兆候、ふたたびシリア懲罰攻撃が話題に上るのか

気になるニュースです。シリアで化学兵器が投入されているようです。昨年、懲罰的に米海軍がトマホークミサイルを撃ち込んだのですが、平気でうそをつく政権には何も答えていなかったようです。ロイター記事をビジネスインサイダーが掲載しています。



Disturbing video shows what Syrian rescue workers say is another chlorine gas attack

シリアで塩素ガス攻撃が再度実施された模様
Reuters
Chlorine gas Idlib Syria
シリアのイドリブ地方で塩素攻撃を受けた被害者。 Screenshot/Twitter via White Helmets
  • 救援スタッフや医師団によれば少なくとも9名がイドリブ地方のサラケブに投下された塩素ガスで負傷した。
  • 救援スタッフ、医師団は政府軍が塩素ガスを首都ダマスカス近郊ゴウタの反乱勢力拠点にも投入したと非難。1月に三回投下された。
  • ドイツ政府がイドリブ、東ゴウタでの化学兵器投入の完全調査を求めている。
リア北西部で化学薬品が空中投下され住民少なくとも9名が呼吸困難を訴えている。救援スタッフ、医師団が2月5日に発表した。
シリアアメリカ医療学会(SAMS)はシリア国内の病院運営を援助する慈善団体で所属医師団がイドリブで患者11名で「塩素使用を示す症状」ガ見つけたと発表。
ホワイトヘルメッツ民間防衛団体の化学兵器チームはロイターに9名中3名で「呼吸困難障害」が見つかったと伝えている。
化学ガスを封印したドラム缶二個が4日夜にヘリコプターから投下されたとも言っている。
シリア政府は化学兵器の投入を一貫して否定し、今年で8年目になる。
日曜日夜にシリアのイドリブ地方で反乱勢力が占拠する市町村で空襲が激化したが、前日に反乱勢力がロシア軍用機を撃墜しパイロットを殺害していた。
シリア大統領バシャール・アサドはロシア空軍力とイラン支援を受けた武装勢力に助けられシリア全土の統治奪回を目指している。シリア政府と支援勢力が北西部の反乱勢力支配地区に進軍を強めている。
英国に本拠を置くシリア人権監視団によればヘリコプター攻撃後に呼吸困難症状数件が見つかっている。
救援チームと医師団は政府軍が塩素ガスを首都ダマスカス近郊東ゴウタ地区の反乱勢力に投下したと非難しており、先月は三回の攻撃があったという。
シリアは2013年に化学兵器放棄で合意していた。国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の共同調査はシリア政府が神経ガスサリンを使用し、塩素も兵器として数回使用したと二年前に突き止めた。イスラム国集団も硫黄マスタードを使用している。
ドイツ政府は5日にシリアがイドリブ、東ゴウタで化学兵器を使った事実を完全調査するよう求めた。「シリア政府が再度化学兵器を投入したと判明した。嫌悪すべき行為であり、道義上も化学兵器禁止義務違反として言語道断」とドイツ外務省が発表した。
国防長官ジム・マティスはシリア政府が繰り返し塩素を兵器使用しており、米政府はサリンガスの投入可能性を懸念していると先週発言した。■

これはまずい。シリア政府は昨年の米国の突然の攻撃から何も学んでいないのでしょうか。そもそも約束を守らないこと自体が信義上問題なのですが、世界には約束を約束として守らなくてもいい風潮があるのでしょうか。日本にはシリアは遠い世界の話と理解されがちですが、米ロがにらみ合い、イランの影が見え隠れする看過できない問題であることはあきらかです。多様な視点を維持しておきたいものです。

F-35Aが初の三沢基地展開、しかし生産のおひざ元には不安が残る

航空自衛隊三沢基地にF-35Aが到着しましたが、国内生産では思わぬ苦労もあるようです....


Japan base welcomes 1st deployed F-35A, but industry hiccups delay fighter’s supplies 日本基地に初のF-35A配備、しかし産業界は部品供給に苦しむ







1月26日、航空自衛隊のF-35A配備一号機が三沢基地に到着し、歓迎式典が開かれた。. (Staff Sgt. Deana Heitzman/U.S. Air Force)

By: Mike Yeo 
MELBOURNE, Australia — 日本がF-35AライトニングII共用打撃戦闘機を北方の国内基地に初配備した。
機体は青森県三沢基地に先週金曜日到着し、航空自衛隊が歓迎式典を開いた。式典では第三航空団司令鮫島建一空将補が「F-35Aにより防空力が向上し、平和と安全の確保に大きく貢献する」と述べた。
三沢基地には米空軍第35戦闘航空団も駐留しており、F-16ファイティングファルコン多用途戦闘機を運用する。航空団指令R・スコット・ジョウブ大佐Col. R. Scott JobeはF-35は「戦闘能力での大きな技術進歩のみならず米日関係でも大きな進展を意味する」とのべ、配下の部隊は「JASDFとの訓練で日本の安全保障をさらに確実にする」ことを期待すると述べた。
日本でF-35Aをはじめて運用するのは航空自衛隊第302飛行隊で現在はマクダネルダグラスF-4EJファントムIIを百里基地で運用中だ。同隊は三沢に移駐しF-35運用部隊となる。
日本はF-35Aを計42機発注しており、最初の4機はロッキード・マーティンのフォートワース工場で、残りの38機は三菱重工業の名古屋FACO(最終組み立て点検施設)で完成させる。FACOでの完成初号機は2017年6月に完成しており、同FACOは北アジア太平洋地区での重整備修理点検改修施設に認定されている。
日本産業界はすでに日本向けF-35の最終組み立て以外に各種部品製造に参加している。
ただし、日本製部品が実際には使用されていないとの報道があり、IHIはエンジン試作品で品質合格認証を受けなかった。米国協力企業からの素材提供が遅れず、三菱電機も協力企業との問題に遭遇したという。
会計検査院によれば日本側協力企業の製造工程に不完全な部分があることを防錆装備庁が見つけており、同庁に対して米政府と協力してF-35製造に必要な部品が納期通りに利用できるよう努力する旨伝えているという。■

民生部品とは全く異なる世界で苦労も多いと思うのですが、初期に苦労したほうが必ずいい結果に繋がりますので各社には奮闘をお願いしたいところですね。部品点数、機能、品質要求などMRJの比ではないと思います。