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次期エアフォースワン予算はトランプ直々の交渉結果と逆に膨張していた

(コメントは下にあります)


The Two Sort Of New Air Force One Jets Now To Cost Nearly The Price Of A Nimitz Class Carrier 次期エアフォースワン機材2機の合計価格がニミッツ級空母一隻と同程度に

The total price tag for the program, which includes just two aircraft, has leaped by nearly a third to $5.3B.

事業費合計が当初より三割近く増え53億ドルに


BY TYLER ROGOWAYMARCH 24, 2019
MATT HARTMAN/SHOREALONEFILMS.COM


防事業は数々あるがエアフォースワン機材更新ほどここ数年関心を集めているものはない。トランプ大統領が自らボーイングに掛け合い大幅な予算節約を実現したと主張してきたからだ。だがその主張は中身がなく今や事業費合計が大幅増加している。
Defense Oneのマーカス・ワイズガーバーが事業経費がなんと53億ドルになったと明らかにした。ここには機材以外に必要な施設調達等を含む。これは空軍が以前公表していた事業費より三分の一程度ふくらんでいる。もっと心配になるのは機材そのものの価格とVC-25Bへの軍仕様改修で46.8億ドルになることだ。
空軍は約39億ドルとしていたので780百万ドルほど増えたことになる。また空軍からDefense Oneに伝えてきた53億ドルと言う数字自体が関心を集める。
2018年、ホワイトハウスはトランプが喧伝したボーイングとの交渉で15億ドル節約できたと発表したが、The War Zone 他は最終価格は空軍が以前発表していた試算と変化ないと述べている。ただし39億ドル+15億ドルは54億ドルであり、関係装備すべて含むVC-25B2機の合計価格に近く、トランプ政権が主張してきた価格引き下げの信憑性が怪しくなる。
46.8億ドルは機材2機分であり、ともに新造機材ではなく、モハーヴェ砂漠で太陽の下におかれている747-8の2機で、倒産したロシアのエアラインTransero向けに製造されたもの。同社が2015年k,倒産しアエロフロートが同社資産の大部分を買い上げたが747-8の2機に関心を示さなかった。そこでボーイングは2機をカリフォーニアへ移動させずっと屋外保管してきた。


MATT HARTMAN/SHOREALONEFILMS.COM
買い手がなくなった747-8がエアフォースワンになる。2019年3月24日撮影。一機の周囲で動きが見える。
MATT HARTMAN/SHOREALONEFILMS.COM

トランプは大統領に就任するとこの事業に関心を示した。説明ではこの2機を次期エアフォースワンに改装すべくボーイングから未だ未公表の相当の金額で買い上げたとあった。
エアフォースワンのミッションは大切であるが、ニミッツ級原子力超大型空母一隻に匹敵する価格で2機調達と聞くと考えさせられる。全くの新造機体でないし、重要機能が予算節減で削除されている、たとえばVC-25Bで空中給油能力が省略されたが30年近いVC-25Aで当たり前だった機能だ。
機体調達価格を下げても、改装費用と供用開始費用を足せば史上最高額といわれたB-2Aスピリットステルス爆撃機の値札を越しそうだ。Defense Oneによれば施設整備他関連費用を入れれば海軍発表のニミッツ級原子力空母の空母史上最高額45億ドルを超える。
ニミッツ級の建造費用で一番高い試算でも62億ドルと次期エアフォースワン取得費用と10億ドル未満しか違わない。Defense Oneが報じた数字で高い方には施設他関連経費が含まれるがヴァージニア級原子力高速攻撃型潜水艦二隻分に近い。


BOEING
VC-25B想像図


大統領の乗り物に安物はない。とくに空を飛ぶ際はそうだ。機体は電磁パルスに耐え、最新の防御装備や通信装置の搭載が必要だ。特別仕様のハードウェアや各種システムを統合する電源や冷却装置も必要だ。すべて適切に搭載し大統領の通話秘匿性を守る必要があり、同時に米国の核戦略を展開する能力を適切に発揮する必要もある。危機に際しエアフォースワン機上から大統領が最高軍事権限者として核使用を命令する。
それでもこれだけの予算規模は気になる。真水経費は53億ドルとなっている。2機と支援設備分だ。ボーイング747-8iの新機価格は4億ドル程度なのでVC-25A2機の6.5倍もの予算で機体艤装、転換作業をすることになる。しかもUSAFは全てをゼロから取得するわけではない。真反対の話だ。


AP
VC-25A「エアフォースワン」がアラバマにトランプ大統領を運んだ
.
たしかに747-8iは第1世代ジャンボの747-200と大きく異なる。だがUSAFはVC-25A改修を継続してきた。通信装置、防御装備は近代化され747による大統領移動の細部を空軍は把握している。したがって未体験業務になるわけでもなくサブシステムに至るまで全部更新されるわけではない。
747-8iを選択することで特有のコストも発生する。例えば専用の退避壕のような六角形格納庫がアンドリュース空軍基地にあるがVC-25A用で新型機に使えない。機体が僅かに大型化するため施設を新規建築する必要がある
GOOGLE EARTH.
アンドリュースAFBのVC-25A専用格納庫


DOD

現時点でUSAFが支出するVC-25B開発が別事業に応用される可能性は皆無に近い。また747-8i生産は2020年代に終了する見込みだ。現在の受注残24機は作業量として2年分だ。今後の大幅受注は考えにくい。そうなると新型エアフォースワンが就航するころに747生産ラインは閉鎖になっていておかしくない。
USAFはC-32A、E-6B、E-4B各機の後継機を共通化できないか検討中で、機体サイズは747-8iより小型化できる。KC-46が767派生型として軍用仕様になったため候補となる。VC-25B開発費用はすべて一回きり支出となる。しかもたった2機のために。Defense Oneの数字を借り一機あたり経費が26.8億ドルあるいは低い方の数字を使えば23.4億ドルとなる。
これだけの規模の支出を空軍はどう正当化するのか、その内訳に大いに興味を惹かれる。だがエアフォースワンと搭載装備には秘匿情報が多く、ニミッツ級超大型空母一隻に匹敵する規模の費用が発生する理由を一般国民が理解できる説明は出てこないだろう。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

トランプは不動産ビジネスで名を遂げたビジネスパーソンですが、国防分野のからくりはそれでも理解に苦しんでいるのでしょうね。あまりにも民間分野とことなるためです。大幅値下げに成功したと大見得を切っていましたが蓋をあければ他に潰しが効かない巨額事業になっていましたというのは笑いごとで済まされません。本人がどのようにコメントするか見ものです。

コメント

  1. まぁ、エアフォースワンは「空飛ぶホワイトハウス」で、核攻撃の指示が出ることや、逆にテロの標的にもなり得るので、様々な改修が必要なんでしょうね。高額なのも已む無しと思います。

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