2012年10月22日月曜日

米、イスラエル合同ミサイル防衛演習とイラン

U.S., Israel To Hold Major Missile Defense Exercise


aviationweek.com October 17, 2012]

米 国はイスラエルと大規模なミサイル防衛演習をイスラエル国内で今月実施する。これは両国の密接な協力関係を示しイランの核開発に向けたメッセージを送るこ とも意図。演習は三週間にわたり、両国間共同演習では最長となる。長距離、短距離のミサイル攻撃を想定し、実際にイスラエルが直面する事態そのものだとい う。イランからはイスラエルが核施設攻撃に踏み込めば全面戦争になると警告が出ているが、イスラエルのニッツァン・ヌリエル准将Brigadier General Nitzan Nurielは「今回の演習からのメッセージは明らかなはず」と発言。
  1. 「両国が共同演習のためともに作業をしていることは強いメッセージ」と同准将は記者会見で述べた。
  2. それよりは慎重に米国側のクレイグ・フランクリン中将Lieutenant General Craig Franklinは今回の演習は「メッセージを送るものではない」とし、二年前から準備されてきたためと発言。
  3. 「演習は両国のイスラエル向けミサイル防衛体制での実力向上となり、地域安定ならびに軍事優位性を確立するもの」(同中将)
  4. 演習には米軍3,500名、イスラエル軍1,000名が参加し、総額60百万ドル規模だとフランクリン中将は明らかにした。
  5. .米軍ペイトリオットミサイル部隊とイージス弾道ミサイル迎撃艦一隻が参加し、イスラエルからは同国が独自開発した多段階対応ミサイル防衛システムも加わる。ただし、迎撃ミサイル発射はすべてシミュレーションとなる。
  6. . マーティン・デンプシー米統合参謀本部議長Martin Dempsey, the U.S. Chairman of the Joint Chiefs of Staffが一部演習を現地で観閲するとペンタゴンが発表している。同議長は今夏に米国はイスラエルによるイラン攻撃に「加担しない」と発言しイスラエル 指導層を当惑させていた。また、単独攻撃を敢行した場合はイラン制裁を段階的に実施してきた各国間の協調にヒビが入るとも警告していた。
  7. イラン軍司令官が今月に入り同国は米国、イスラエルの区別なく攻撃を受ければ報復に踏み切ると発言している。
  8. . イスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフBenjamin Netanyahuは米国にイラン向け最後通牒をつきつけるか、イスラエルによる単独攻撃を静観するよう強く求めてきており、米政府関係者からはイランが 核戦力を手に入れることは許さないとしても、まだ最後の一線は設定していないとの発言が出ていた。■


2012年10月21日日曜日

ロシアの次世代爆撃機名称はPAK-DA・現有長距離航空戦力の状況

Russian's next-generation bomber takes shape

09:00 15 Oct 2012
Source:  via Flightglobal


.ロシア空軍創立100周年式典(今年8月)の席上、空軍司令官ヴィクトル・ボンダレフ中将 Lt Gen Victor Bondarevが新型戦略爆撃機PAK-DAの開発が始まっていると明らかにした。この名称はロシア語で「未来型長距離航空機」を意味し、現有ツボレフTu-160、Tu-95MS、Tu-22M3で構成されるロシアの戦略爆撃部隊の後継機種となる見込みだ。
【政府は全面支援】.同 中将は直近のウラジミール・プーチン大統領との会談内容を紹介し、空軍が調達希望を優先採択してもらえる立場だと確認できたことに満足しているという。大 統領から空軍は希望をなんでも言えば手に入ること、PAK-DAプロジェクトでも大統領が支援することの確約を得ている。「国防省はPAK-DA関連の要 求内容すべてで作業中で、内容が固まれば産業界は同機の技術像を練り上げるだろう。」(ボンダレフ中将) ロシアは「戦略級無人機UAVs」も開発中で、 「第六世代機」のひとつにするといい、ボンダレフによると「知能を埋め込んだ」無人機が第六世代の中心となるという。
【2020年代に登場か】 アナトリ・ジカレフ中将Lt Gen Anatoly Zhikharev(長距離航空軍司令官)はPAK-DAの戦闘テストは2022年開始だという。初期設計は完成しており、納品済みでロシア航空産業は現在、同機の開発に取り組んでいるところだ。
  まだ新型爆撃機関連の情報はわずかしかない。超音速機なのか亜音速機なのか、有人機なのか無人機なのかも不明だ。ただロシアがこのような機体開発に取り組 んでいるのは驚くべきことではない。これまでの歴史をひもとくと最悪の時でさえツボレフ設計局は新しい設計概念や技術の研究を続けていたし、その成果が同 社展示館に行くと極超音速攻撃機、宇宙機、Tu-500大型無人攻撃機などの例で見ることができる。これらはTu-160(ブラジャックジャック)爆撃機 の生産が始まった後に開発されたものだ。
  その他ロシアの科学研究機関としてツアギTsAGI (中央航空流体力学研究所)がPAK-DA設計に技術協力しており、ツアギでは大規模な風洞試験をSova将来型極超音速機(マッハ5飛行可能)で行い、 ロシア以外にもヨーロッパが今後は衣鉢を狙う超音速ビジネスジェット等でも協力をとくにソニックブーム抑制と抗力の削減に重点を置いて行っている。
.【PAK-DAの開発はいつ始まったのか】ロ シア国内報道を総合するとPAK-DA開発は2010年早々に始まっている。初期研究は2007年にさかのぼり、ロシア空軍がツポレフに将来の長距離爆撃 機の想定で技術要求書を手渡したことがきっかけらしい。開発予算は2008年国防予算に計上されており、2009年に国防省からツボレフへ三ヵ年の研究開 発契約が交付され、概念研究調査が開始され、同機の空力特性とシステム構造の具体化をめざした。
  そして本年8月に空軍はPAK-DAの初期設計案を承認し、産業界は同設計を「各種戦術上および技術上の要求内容」にあわせ調整できるようになった。技術 実証機の金属素材削り出し、または試作機の開発は2015年の予想で、量産化は2020年ごろだろう。最初の飛行隊編成は2025年より早まるかもしれな い。ただし、業界筋によると新型爆撃機の生産は現実的には2025年以降で開発サイクルには最低15年から20年必要という。
 .PAK- DのA概念設計案も性能達成目標水準も未公表のまま。空軍はまだ性能要求最終案を出していないのかもしれない。ただ明らかにPAK-DAには核、非核両面 で精密誘導兵器を運用した作戦が期待されている。ロシア国防相がいみじくも言うように新次元の戦闘能力による新しい抑止力になることが期待される。
【搭載兵器開発にも要注目】 新型爆撃機には複合材など新素材もつかわれステルス機として設計される。搭載兵器は同機専用に新設計開発されるだろう。
ロ シア国内で議論されているのが「第二世代極音速兵器」の開発で、これが計画中の新型爆撃機と関連していると思われる。第一世代は現有のオニックスOnix 地上攻撃ミサイルとそのインド版ブラモスBrahMos PJ-10を指す。ただ、この種の兵器の性格上、燃料消費が激しく、抗力がどうしても高くなる。
【現在運用中の戦略爆撃機の現状】  2012年現在、ロシア空軍は実戦配備の大陸間爆撃機を66機運用中で、これ以外に補修中、改装中、訓練用の機材がある。66機はTu-160が11機、 Tu-95MSが55機で、核爆弾200発を配備している。Tu-95MSは近代化改装中で新型長距離亜音速巡航ミサイルの搭載を可能とする。機材は大部 分が80年代90年代製造で飛行時間は比較的少ない。したがって各機が2030年、2040年代にも稼動している可能性がある。そうなるとPAK-DAが 時間通りに運用可能となる段階でTu-95MSやTu-160のミッションとちがう役割を担うことになるかもしれない。ロシア空軍としては探知されにくい 爆撃機により敵領土内深く進攻し、新鋭防空網を突破制圧するミッションを期待しているのだろう。
  ロシアとアメリカの戦略爆撃機では類似性が見られる。B-52HとTu-95MSが大型機で巡航ミサイル多数を搭載し、スタンドオフ攻撃を想定している。 B-2とTu-160は敵防空網を突破する作戦を想定。B-1B とTu-22M3は可変翼超音速爆撃機だ。ただ機材の戦闘投入では相当の変化があり、今日では戦略的よりも戦術的な運用が多くなっている。
【LRS-Bとは異なる機体になるのか】 米 国は長距離打撃爆撃機Long-Range Strike-Bomber (LRS-B)開発に取り組んでいるが、ロシアはそのコピーはしないだろう。むしろ、ロシアはより安価だが戦略抑止力として十分な機能を実現する可能性が 高い。PAK-DA開発予算は国防省内の反対派や他省庁の批判から守られているものの、弾道ミサイル原潜と陸上配備大陸間弾道弾でより効果的で経済的な抑 止手段になり、PAK-DAは不要との批判は根強い。原油価格水準が高止まりであれば、石油収入によりPAK-DAはじめ高額の国防装備調達をまかなえる だろうが、軍・産業界ともに高い期待を実現できるかが課題だ。
【PAK-FAは開発難航】. そのほかの主要航空機開発事業にPAK-FA第五世代戦闘機があるが、技術上の問題を解決していない。発動機と搭載システムに問題があり、サトゥルン 117エンジンが同機用に開発されたが飛行中にフレームアウトする事故が発生している。空軍は改良型129エンジンの開発をメーカーにすでに求めており、 結果がよいとPAK-DAにも搭載の可能性が開ける。
【エンジンが問題】.いずれにせよ発動機が大きな課題で、運用中の爆撃機もクズネツォフ製エンジンの信頼性の低さに悩まされており、その他部品不足もあり稼働率は50-60 %に低迷している。
. ロシアはTu-160のエンジン再生産をしようとしており、改良版NK-32Mエンジンは稼働率が向上し、燃費でも改善があるという。ただ生産型エンジン は2016年以降に装備となる見込みだ。一方で、NK-12ターボプロップエンジンの生産再開は難航しており、Tu-95の発動機である同エンジンの入手 に困難があるため、かわりにイヴェチェンコ・プログレスD-27エンジン(アントノフAn-70用に開発)に換装する案が検討されている。
 . 電子装備、エイビオニクスでも状況は同様である。Tu-160機内のシステム各種は故障が多く、20年かけてチップ、コンピュータ基板を交換する作業が続 いてきた。最後の近代化改修が完了すれば各機の耐用年数が延長される。Tu-160の場合は30年になろう。さらに、同型のうち10機を選び第二期近代化 改修が2016年から始まる。また、30機のTu-22Mがこれから8年間で生産されるが、さらに30機をロシア空軍が発注すると思われる。
【戦略爆撃機も地域紛争に投入するロシア運用思想】 グルジアが北オセチア紛争でTu-22M一機を2008年に撃墜している。ロシア空軍が核運用可能な戦略爆撃機を喪失した初の事例となっている。とくにこの事件でロシア軍が地域紛争にも戦略級機材を投入することが明らかになった。
【長距離航空作戦能力は着実に復活中】.ロシア国防省の公式刊行物である「赤い星」によるとTu-160各機の指揮官クラスの年間飛行時間は100時間程度、Tu-95乗員は200時間、Tu-22Mは300時間だという。こういった数字はロシア長距離航空の飛行時間が着実に伸びていることを示している。
ロシア空軍が老朽化進むツポレフ爆撃機各機の運用を何とか維持するのに懸命な状況にあることは疑いない。一方で、ロシア軍産複合体が現行の各機の性能を上回る新型機を必要な機数生産できるのかはまだ不明だ。■

2012年10月20日土曜日

シコルスキーのS-97レイダー高速ヘリはX-2技術の延長

Sikorsky starts construction of S-97 Raider prototypes


Flightglobal  19 October 2012
Source:

シコルスキーがS-97レイダーRaider高速複合ヘリコプター試作機の製作を開始した。同機は米陸軍が求める武装空中偵察Armed Aerial Scout構想に応じるものとして期待される。
  1. 同機は同軸ローターと推進プロペラが特徴で原型は革新的な設計のX-2(コリアー杯を2010年受賞)である。S-97は詳細設計の段階であるが、シコルスキーは同機の製作をすでに開始している。
  2. .胴体部の組立が進行中でその他部品の製作も始まった。一部は完了しているという。今年中に設計作業を完了するのが目標だ。
  3. 最終組立工程は来年中頃の予定だと同社はいう。地上テスト・飛行テストは2014年予定だ。
    Sikorsky

    1. 従来型ヘリコプターとの違いは巡航速度で、通常型の上限は180ノットだが、S-97は外部武装を搭載して220kノット、搭載なしで235ノットまで可能。まだダッシュで245から250ノットまで出すことができる。
    2. .同社としては米陸軍の意向にかかわらずS-97の建造は進める方針だ。米陸軍が目指すのはベルOH-58カイオワの代替機種だ。シコルスキーはS-97、X-2ともに民間資金のみで製作していると強調する。75%が同社負担で、残りは部品メーカー各社によるもの。
    3. . またX-2で実証済みの技術は陸軍の共用多用途 Joint-Multi Role (JMR)あるいは将来型垂直離陸輸送機Future Vertical Lift (FVL)両構想に応用ができそうだ。同技術を拡大応用して大型機体で使うことができる。シコルスキーはロッキード・マーティンC-130に機体寸法で匹 敵する推進式プロペラ二基を搭載する大型機案を検討している。
    4. 陸軍からは JMR/FVL 計画に応用可能な技術分野を広く募る発表がまもなく出る見込みだ。
    5. シコルスキーはその中でS-97は次世代機として競走に耐えられると信じ、X-2技術を今後も応用していく考えだ。
    6. X-2技術の民生利用も考えられており、救急救難、沖合石油掘削施設への人員輸送が例示されている。■

2012年10月19日金曜日

米空軍次期戦略爆撃機の開発構想の最新状況

USAF targets long-range strike bomber

Flightglobal 15 Oct 2012


米 空軍が開発中の新型ステルス爆撃機のねらいは増大するA2/AD アクセス否定接近拒絶の世界的な広がりに対抗することにある。ただし、同機開発計画には 国防予算の縮小という大きな難題が立ちふさがっている。長距離打撃爆撃機(LRS-B)はいわゆる「システムファミリー」のひとつとして地球上いか なる地点であれ、空中より攻撃にリスクの伴う場合でも制圧を可能とする米軍の構想。そのファミリーの中でも爆撃機型はペンタゴンの中で重要になってきた 「エア シーバトル」の構築に中心的な役割を果たす。
  1. 去 る2月17日にレオン・パネッタ国防長官はバークスデイル空軍基地(ルイジアナ州)で米空軍の爆撃機部隊の運用を続けることは「きわめて重要」であり、 「新型爆撃機へ予算を投入することもしかりであり、われわれはこの両方を実施したい」と発言している。「わが国は現有の爆撃機部隊を維持する。運用可能な 状態に保つ。前方展開に爆撃機部隊が必要だ。太平洋における前方展開に必要だ。中東でも必要だ」と続けている。
  2. LRS-B新型爆撃機開発は今後の米国の軍事戦略を太平洋西部、中東で実現するための重要な要素と見られ、ペンタゴン予算が今後10年で合計4,870億ドル削減するとはいえ、同開発計画は継続して進められている。
  3. 「こ れまでの戦略抑止力整備ではいずれの場合も財政状態を考慮しt投資決定をするべきだった」と国防副長官アシュトン・カーターが空軍協会の年次総会で9月に 発言している。「コストと効果を計りにかけるべきだった。現在の投資は将来の性能の実現のためだ。その例がステルス爆撃機だ」 しかしながら、ペンタゴン 上層部の強力な支援がありながら、LRS計画が「強制執行」による予算削減から無事生き残るかは不明で、この措置は1月2日に実施される公算が大だ。もし 議会、大統領双方で解決策を見出せないと、さらに5,000億ドルの削減が今後10年間の国防予算から実施となる。これが実施されると、「万事休す」だと マーク・ガンジンガーMark Gunzinger(戦略予算評価センターのアナリストでもとボーイングB-52パイロット)は言う。
  4. LRS には2012年度予算で197百万ドルが計上されている。2013年度予算ではこれが300百万ドルになっている。ペンタゴンの5ヵ年予算案(2017年 度まで)ではLRSに63億ドルを計上することになっている。ただし新型爆撃機の実戦配備にはこれだけでは不足で、とくに米空軍が定めた実戦配備目標が 2025年であることを念頭におく必要がある。
  5. 「5ヵ 年案は予算手当ての加速ではすばらしいが、2017年までの開発費用必要額の10%程度に過ぎません」(Tealグループのアナリスト、リチャード・アブ ラフィアRichard Aboulafia, an analyst at the Teal Group)「いいかたをかえれば、もしIOC初期作戦能力の実現を2025年とするのなら、2010年度後半は毎年50億60億ドルを計上する必要があ ります」
  6. ロッキード・マーティンのF-22ラプターおよびF-35共用打撃戦闘機の経験から、新型爆撃機の開発費用は600億ドル規模になる。「予算状況を見ると、大変難易度が高い金額です』とアブラフィアは認める。「一番可能性があるのは予算調達を薄く長く伸ばすことで、IOCは2030年ごろになるでしょう」
  7. 米空軍の主張はLRS-Bには「成熟済み技術」を使い、開発費用を圧縮するというもの。「新型爆撃機が採用するサブシステム(エンジン、レーダー、エイビオニクス等)の技術は実証済みのものばかりである」とペンタゴン作成の予算根拠文書は説明している。
  8. さ らに新型爆撃機には既存機種から再生部品を流用する。たとえばノースロップ・グラマンB-2から着陸装置他在庫部品を使うが、同じ手法はロッキードF- 117ナイトホークでも使われている。それ以外に米空軍は別の調達方法も使う。同機開発は空軍内部の迅速能力開発室Rapid Capabilities Officeが統括している。ガンジンガーの見方は国防総省による予算見積もり550百万ドルは控えめすぎるとするもの。購入可能な単価にするためには機 体の要求水準を厳しく制限することだという。「要求性能を初期の段階で決定すれば、産業界はその範囲で全力を尽くしますよ。それこそ性能要求水準を定義す る方法なのです」
  9. 注 意が必要な前例もある。もし米空軍が要求運性能を変更したりもっと高度な内容を付け加えると以前のB-2やもっと悲運の次世代爆撃機(NGB)のように LRS-Bも同じ運命をたどることになりかねない。NGBは2009年に計画中止になった。統制をしっかり取らないと空軍がコースを見失う危険があると ローレン・トンプソンLoren Thompson(れきしんとん研究所)は警告する。トンプソンによれば米空軍はLRS-Bをオプションで有人機にしようとしているという。「敵の領空内 に10億ドルの値札がついた機体をパイロットなしで本当に送り込みたいですか」
  10. 無 人機は平時でさえ有人機より事故率が高い。A2/AD環境では通信の確保はおおきな課題になろう。データリンクや衛星リンクが攻撃を受ければ事態は深刻 だ。さらに無人機では通信の遅れで反応時間がさらに犠牲になる。「人間の頭脳をシステムの運用場所から遠くに置けばおくほど、システムの脆弱性が増えま す」(デイビッド・デプチューラ空軍中将(退役)retired Lt Gen David Deptula、前情報本部長)
  11. 戦略爆撃機ほどの機体サイズでは最初から有人機にしても、オプションで有人機にしてもコストでは大差がない。ガンジンガーも大型戦闘用軍用機では大きな要素ではないという。
  12. . レベッカ・グラントRebecca Grant (IRIS Independent Researchのアナリスト)によれば主契約社になる可能性のあるボーイング、ロッキード、ノースロップの各社にはLRS-Bの基本要求性能の内容が伝 えられる可能性があるという。その中にはレーダー断面積ほか低視認性性能要求にくわえ、ペイロード、航続距離、上昇高度が含まれる。多くの数字は前身の NGBから流用とはいえ、詳細は極秘だ。ミッションの性格上でLRS-Bは全世界を活動範囲に収めるだろうとガンジンガーは予測する。そうなると機体は大 型のステルス機で大ペイロード搭載機になろう。
  13. 航続距離とペイロードではNGBが中型機体で戦闘飛行半径を2,000-2,500nm (3,700-4,620km)で想定していたものが4,000-5,000nmと二倍になるのは必至だろう。
  14. 超 音速ダッシュができれば生存性にはプラスだが費用と技術的複雑度が増して、ほかの性能を犠牲にすることになるとガンジンガーは見る。今年初めにノートン・ シュワーツ空軍参謀総長(当時)から超音速飛行性能は不要との発言があった。その真意は同機は「一連のシステム」により支援を期待でき、海軍のトマホーク 巡航ミサイル(レイセオン製)、ボーイングEA-18Gグラウラー、無人空母運用空中警戒・攻撃機、F-22およびF-35、超小型空中発射おとり装置、 各種衛星、サイバー戦装備の活用を想定している。
  15. た だしLRS-Bが単独で敵領空深くで作戦を展開する必要もあり、とくに敵側が通信妨害を展開する事態を想定するべきとガンジンガーは言う。そうなると機体 に目標の探知、捕捉、攻撃用センサー類を搭載して自機単独で行動する必要がある。LRS-Bには自機の攻撃効果の測定能力も必要だ。その結果、機 体は各種センサーを搭載することになり、デプチューラによればセンサー類の能力が強力であれば従来の情報収集・監視・偵察専用に運用している機体と同じ運 用ができるという。
  16. 新 型爆撃機には投下式からスタンドオフまで幅広い兵装を搭載できることになりそうだ。通常兵器に加え核兵器も運用できるだろうが、米空軍上層部はLRS-B が核ミッションに投入されるのは旧式爆撃機部隊が第一線を離れはじめて以降となると発言している。ただし、デプチューラは強力な防空網を完備した空域でス タンドオフ兵器のみを使用するのは高価かつ持続できない作戦だと論評している。
  17. .B- 52が50年以上運用されていることから新型爆撃機も技術の進化や脅威内容の変化に対応可能にすべきだとガンジンガーは言う。ただし、システムの中にもセ ンサーやステルス表面塗装膜のように急速に変化していくものもあれば、エンジンのように変わっては困るものもある。空軍は80機ないし100機のLRS- Bがほしいと言っているが、デプチューラは最低155機を調達すれば各12機編成で飛行隊計10個を編成できるという。グラントは200機でB-52、 B-2、B-1を全機更新する必要ありと見る。「中国が投入してくる機材を念頭に置けば、そう簡単に排除できない部隊がほしくなるはずです」
  18. 米 空軍には新型爆撃機調達しか方法が残されていない。B-52の老朽化が進むだけでなく、同機では敵の防空網を突破できない。B-1Bは高性能だが60機の 残存規模では厳重な防空体制に対抗できない。さらに同機は核運用が無能化されている。そうなると総数20機のB-2Aスピリットのみが敵防空体制内に投入 できる機材となるが、同機でさえ状況は厳しくなっている。
  19. シュ ワーツ参謀総長(当時)は2月28日に「現実はB-2も防衛体制が整っている環境では生存の可能性が減っていきます。探知されにくく設計されていますが、 その技術は80年代のものです。」 米空軍は2030年代までに爆撃機部隊の再編成を希望しているのだとアブラフィアは語る。「B-2だけが2040年代 まで残ります。予算の課題とは別にこれが現実です」
  20. 米空軍はLRS-Bについてコメントを拒否しており、同機の開発は極秘の「ブラックプログラム」扱いだ。また空軍は情報の保全に留意して、担当室がすでにできているのか、また同機開発が競作になるのかについても何ら言及していない。■


2012年10月18日木曜日

ペリカン飛行船は軍用輸送手段の新時代への先駆けになるか(T1共通記事)

Pelican Demonstrator Aimed At Airlift

aviationweek.com October 15, 2012

. 飛行船の歴史に革命をもたらすかもしれない試作機が組み立て・儀装の最終段階に入りタスティン(カリフォーニア州)の第二次大戦時代の飛行船格納庫内で作業が進行中 だ。開発したのはエアロス・コーポレーションAeros Corp http://www.aeroscraft.com/と言う新規企業で国防総省が資金を出し、長距離空輸手段としての可能性が注目されている。
  1. この飛行船ペリカンは浮力と空力学上の揚力を組み合わせるが、これまでの
  2. 通常型飛行船やハイブリッド飛行船にはなかった方法を採用して、効率性を追求し、柔軟かつ平易に地上で取り扱いができる設計だ。開発設計ではC-17クラスの積載量と飛行距離を垂直離着陸(VTOL)性能もつけて実現する方向へ今後早い段階で進化することを目指している。
  3. . エアロスは当初は同機の概念設計を国防高等研究プロジェクト庁Defense Advanced Research Projects AgencyにウォーラスWalrus (ペイロード500トン)飛行船として提案していた。だがウォーラスに資金が集まらないことが明白になった2006年に同社は核となる重要技術の開発を継 続、再び提出した提案書がペンタゴンの迅速能力開発室Rapid Reaction Technology Officeに2010年に採択されたのだ。
  4. . エアロスではペリカン飛行船を「硬式エアロシェル浮力可変式」“rigid-aeroshell, variable-buoyancy” (RAVB) と呼称している。以下の二つの特徴がある。浮力制御にはヘリウムガスを船内の上昇用ガス室と加圧ファイバー複合材製セルの間をポンプで移動させて行う。も うひとつが機体構造が硬式になっていることで1930年代のツェッペリン飛行船以来の採用だ。これはガスを圧力セルにポンプで送ることから軟式船体では形 状を一定に保てなくなるためだ。
  5. .RAVB 技術ではこれまでの飛行船につき物だった問題に取り組もうとしている。空気より軽いガスを一定量で船体高度を制御することだ。これには飛行中に消費する燃 料分の補正があり、ペイロードの違い、貨物搭載・取り出し中の変化への対応を意味する。これまでの飛行船には水バラストの搭載があったが、大型機では何ト ンもの水が目的地で利用できるのを前提としてきた。これに対してハイブリッド飛行船のノースロップ・グラマンLEM-Vのような機体では空力特性および浮 力を利用した揚力を常時利用しているが、このため離着陸には地上走行が必要となる。
  6. RAVBでは巡航飛行中の浮力は中立で燃料消費量に左右されず、垂直に離着陸できる。地上でペイロードを降ろすと空気より重い状態となり、ロープや支柱は不要であり悪天候での船体破損を避けられる。
  7. ペ リカンの全長は230フィート(約70メートル)、船体の容積は600千立方フィート(約17千立方メートル)。船体の基本構造は三角形のカーボンファイ バー製トラスで自動車用ディーゼルエンジンで推進方向可変式プロペラを稼動させる。操縦蛇およびコックピットもトラスに接続する。カーブをつけた二次フ レームが外殻を支える。
  8. 浮 力制御システムおよび基本構造の地上テストが今月末に開始となり、来年早々に「簡単な飛行テスト」を実施するとエアロス創業者にしてCEOのイゴール・パ スターナックIgor Pasternakは言う。とりあえずの目標はこの機体が可変式浮力と揚力、推進方向可変式、操縦翼面を組み合わせる方式で飛行できるのを示すことだ。
  9. 次 の目標はペリカンの二倍の寸法で容積は8倍、搭載貨物66トンで3,000海里(約5,500キロメートル)を一回の給油で飛行できる機体をディーゼルエ ンジンとターボプロップで実現することだ。同時にヘリウムガスを加熱させて離陸し、離陸後はヘリウムを冷却し、空力特性と浮力による揚力を巡航飛行に使 う。速度は80から100ノット(180キロメートル時)、上限高度は10千フィート(3,000メートル)となる。エアロスはエンジン排気からの水回収 技術も実験しており、燃料消費分をこれで補う。「設計から製造までのサイクルタイムは28から30ヶ月」と本誌に語った。
  10. ペリカン実証機のコックピットは格納式で、VTOL時には全方位で状況を確認することが可能で、その後部分的に格納して巡航飛行に移り、着陸時には完全に船体内に入っていることだ。これにより地上では船体の底面は全部地面に接触し、強風でも安定して船体を保持できる。
  11. .この構造は貨物取り扱いの考慮のためである。設計の狙いは「機体を貨物から離すのであり、貨物を機体から放すのではない」のだという。つまり同飛行船が着陸すると貨物はコンテナーかパレットで機体から切り離されて、その後浮力が増えて機体は貨物から浮揚する。
  12. 将来には大型機の製作も可能だが、パスターナックは「まずテスト機でためしてから100トン、200トン規模の機体に進みたいと強く感じています。」というが、66トン機の予算はまだ確保されていないのも事実だ。■

2012年10月16日火曜日

米、イスラエル共同で大統領選挙前にイラン核施設爆撃に踏み切るのか

 US & Israel Plan “Limited Surgical Strikes” on Iranian Enrichment Facility Before Presidential Elections

                   
                        Posted on October 15, 2012 UAS Vision                   
                                            
クリントン政権時代の関係者デイビッド・ロスコプDavid RothkopfがForeign Policyウェッブ版に寄稿し、米国・イスラエル間で限定的集中攻撃をイランのウラニウム濃縮施設を対象に敢行する合意が形成されたという。
  1. .ロスコプは内部筋を引用する形で一番実現の可能性の高いのは両国による共同作戦の実施で、イスラエル単独では地下施設破壊に必要な兵装を運版できる航空機がないことがその理由だという。つまり全重量30千ポンドの超大型貫通爆弾をさしている。
  2. ロスコプはさらに作戦の所要時間は基本シナリオで「数時間」程度、最悪の場合のシナリオで数日間で無人航空戦闘機による支援のもと空中から投下されるとする。
  3. ロスコプは両国政府にはこの攻撃敢行の大義名分を別に探す向きもあるが、実施案に基づく準備が相当進んでいると見る。
  4. 局所的集中攻撃は戦争に疲れた米国民には心地よく受け止められよう。そのため政治リスクはオバマ政権にとっては軽微ですみ、大統領選挙が熱を帯びる中で対立候補からの批判を封じ込めることもできよう。
  5. .前出記事では実施時期の言及がないが、攻撃作戦の性質上、全面的航空作戦と言うリスクに拡大する前に実施の可能性が大だという。
  6. .またウェブ上では攻撃作戦は11月6日の大統領選挙前に実施されるとの噂が流布している。■


サイバー作戦に備える米国の最新状況

Panetta Gives A Peek At Some New Cyber Capabilities

aviationweek.com October 12, 2012

.ペンタゴンはサイバー空間内での新交戦規則の最終案にとりくみつつあり、国内ネットワークの防衛方法や攻撃を受けた際の反応方法を決めようとしている。
  1. 新 規則の鍵を握るのが新たに登場してきた技術でペンタゴンはサイバー攻撃源をつきとめようとしている。レオン・パネッタ国防長官によるとサイバー安全保障に 毎年30億ドル以上が支出されているという。また、この二年間でペンタゴンは「発生源の特定に相当の投資を科学捜査法にしており、その投資効果があらわれ はじめている」と同長官は10月11日にニューヨークで開催された国家安全保障を考える企業幹部の会で演説している。「攻撃を実施する可能性のある諸国は 米国にはいまや逆探知能力があり、アメリカの権益を損ねる行動には責任を取らせることも可能であることをよく理解しておくべきだ」
  2. す でにペンタゴンは「何千もの」低レベル攻撃の発生源を把握しており、なかには国家も犯罪組織もあるという。国防関係者が明らかにしていないのは発生源が明 白な場合の対処方針で、法執行部門に情報を流すだけなのか、海外へ攻撃を実施するか不明だが、後者はすでに許可が下りているようである。
  3. .パネッタ長官は国家支援の下で実施するロシア、中国、イランの実施能力が増強されていると注意を喚起する。同長官の訪中では、中国国防関連の高官にサイバー空間での国防活動および軍同士の接触でより高い透明性を要望している。
  4. ま た直近のサイバー攻撃の事例二つが機密解除されている。1件目は「シャムーン」“Shamoon”の名称がついており、サウジアラビア国営アラムコ石油会 社のコンピュータ30千台が感染した。ワイパーと呼ばれる手順でファイルが書きかえられ、米国国旗が燃える画像に差し替えられた。パネッタ長官が明らかに した。また産業機械のソフトウェアが無意味なファイルで上書きされている。数日後に同様の攻撃がカタールのラスガスRas Gas 地方エネルギー関連企業を襲った。
  5. . 国防関係者は強力な国防体制により、先制攻撃も含めて米国内のシステム進入を防止できると期待している。この種の防衛が空軍宇宙軍団司令官ウィリアム・ シェルトン大将Gen. William Sheltonの喫緊のサイバー作戦上の課題だ。ただ同大将も「攻撃も排除しない」と10月11日開催の空軍通信電子協会の来場者に語っている。
  6. そ もそも防衛は受動的な行為だが、シェルトン大将によると目標は「プロアクティブ」なモデルに移行することで、監視・対抗措置を取る能力を継続することだと いう。この考え方には情報収集活動が着実にサイバー空間で実施され、状況把握のための各種手段が利用可能であることが前提だ。同大将はサイバー指揮命令セ ンターを立ち上げ、攻撃能力も手に入れるのが次の目標だと語る。
  7. ま たシェラトン大将は空軍の「産業革命後の時代」的な装備調達方法をやめて、サイバー調達に着替えるべきと提唱している。「ハードウェアが支払い小切手のサ インが乾かないうちに陳腐化してしまいます。」 そこでサイバー調達では短い設計サイクルに対応する調達システムが必要だとしている。
  8. 他 方、パネッタ長官はサイバー攻撃を受けた企業が政府に情報提供をした場合に限り法的責任を軽減できるとする大統領令の利用を勧奨しており、超党派により 2012年サイバー安全保障法でこの内容が提言されているが、議会審議の中でこの実施が行き詰まっているとパネッタ長官は感じている。「企業には政府と個 別具体的な脅威内容の情報を共有できるはずで、訴追の心配なしにこれをすすめるべきだ。これが実施されないのは受け入れがたく、国家安全保障の観点からも 受け入れがたい」■