ペンタゴンによる背景説明としてはよくまとまっていますが、ロシアの関与以外に北朝鮮が現地に人員を送っており何らかの関与があったのでは、北朝鮮へのメッセージだったまでは触れていませんね。記事にはありませんが、駆逐艦艦長二名にはエアフォースワン搭乗中の大統領から直接電話が入ったそうです。
How the U.S. Planned and Executed the Tomahawk Strike Against Syria シリアミサイル攻撃はこのように立案、実施された
By: Megan Eckstein
April 7, 2017 3:59 PM • Updated: April 9, 2017 12:06 PM
USSポーター(DDG-78)が地中海からミサイル攻撃を実施。April 7, 2017. US Navy Photo
THE PENTAGON —国防総省高官からアルシャリアート飛行場へのトマホーク攻撃作戦の立案および実施の説明が報道陣にあった。
米攻撃は4月4日の化学攻撃がハンシホーンKhan Sheikhoun市街地に向けられ多数の幼児女性含む死者が発生したことに呼応したもの。サリンガスが投入されたとみられる。
以下は化学攻撃の発生した4月4日以降を時系列で辿り、米最高指導部の意思決定がどのように木曜日の攻撃につながったかをまとめたものである。
攻撃発生
- 攻撃の翌日、大統領は国防長官に軍事対応策の選択肢検討を命じた。その結果は提言にまとめられ、国家安全保障会議にまわされた他、関係省庁が検討し、翌6日にまとめられた提言策が大統領に提出された。
USSロス(DDG 71)がスペイン・ロタに寄港中。同艦は前方配備として同地に2017年3月より配備US Navy Photo
- 国防総省高官によれば大統領向け提言策はそのまま米中央軍司令部および駆逐艦USSポーター(DDG-78)とUSSロス(DDG-71)に送られた。
USSポーター(DDG 78) が補給艦USNS メドガー・エヴァースMedgar Evers (T-AKE 13) より海上補給を受ける。April 15, 2015. US Navy Photo
- 「立案段階で該当駆逐艦二隻の投入も選択肢のひとつで、駆逐艦には大統領自らの選択と伝えられたことで実施は迅速に行えた」と同高官は説明。「あらかじめ二隻は予定地点に待機させてあり、命令あり次第実施できる体制だった。大統領が選択肢を受け取った段階から作戦実施できる状態だったことになる」
トマホークBLK IV巡航ミサイル US Navy Photo
- 4月6日、トランプ大統領はトマホーク陸地攻撃ミサイル(TLAMs)による攻撃案を選択。これについて軍当局は「相応の内容」でスタンドオフ攻撃なので「最小限リスクの攻撃」と解説していた。シリア国内のロシア軍に高性能防空装備があるため軍は有人戦闘機を危険な状況に送り込みたくなかった。だだしロシアはTLAMsを迎撃しなかった。
- 「大統領はアルシャリアート飛行場攻撃に決めた。6日午後に安全保障会議でこの選択が決定された」と高官は報道陣に説明。「同6日午後4時30分ごろに大統領命令を受けている。大統領命令は国防長官経由で中央軍司令部に伝わり、作戦実施となった。受領4時間後にTLAM59発が発射された。東部標準時で昨日8:40ごろのことだ」
アルシャリアート飛行場の全体像。Image courtesy of the Defense Department.
- 「化学攻撃に相応する選択肢を編成し大統領に示しており、攻撃直後の被害状況写真では丸で囲んだ軍事目標に強化航空機掩体壕、航空機、燃料施設、弾薬他が軍事目標の対象となった」
- 「ロス、ポーターは59発を発射した。ミサイル全弾が目標に命中している」
- 目標にシリア政府の軍事力が含まれる一方でロシア軍装備は対象から外された。すなわち回転翼機、20ないし100名のロシア軍関係者向け施設である。
- 「同基地は相当広い施設で、滑走路は10千フィート長で滑走路端に強化掩体壕がある。また原油、燃料の貯蔵地区がある。化学兵器貯蔵庫と見られる施設もある。また地対空ミサイルが基地周囲に展開している」
米攻撃後の同基地。Image via DoD
- また国防総省関係者は直後損害評価で目標59点に命中が確認されたと述べたが、強化掩体壕内の航空機すべてが破壊されたかは不明だと付け加えた。関係者は「約20機」が損傷を受けたとし、全てロシア製でシリアが運用する固定翼機で4月4日の化学攻撃に投入された機材も含む。滑走路は標的とされなかった。TLAMによる滑走路破壊は限定的で標的に選んでも「無駄」と高官は述べた。
- 攻撃時刻は現地時間午前3時で意図的に設定されている。民間人死傷者を最小限に抑える狙いがあり、基地周辺には住居はないという。関係者はさらに現時点では民間人、軍人の死傷者の情報はないと述べている。
なぜ駆逐艦発射のトマホークが選択されたのか
今月始めに米戦略軍トップが米海軍水上艦艇部隊が紛争時に通常弾薬をまず使う傾向があるのを称賛している。空軍大将ジョン・配転は水上艦艇からの攻撃は潜水艦や爆撃機と比べて、軍事力行使の際にはっきりしたメッセージを米国が選択したと示せる利点があるという。「水上艦艇には他の手段にはない選択肢だ」
「必要な場所に艦艇を配置できる」
USSロス(DDG-71)およびUSSポーター(DDG-78)からの攻撃は2011年のオデッセイ・ドーン作戦以来最大規模の艦艇からのミサイル発射になった。両艦とも弾道ミサイル防衛が主任務であるが短時間で攻撃能力の実施が準備でき、両艦それぞれ90門の垂直発射管があり、対空ミサイル、BMD迎撃弾と使い分けができる。
「各艦の性能から指導部に正確かつ効果的な攻撃の選択肢が実現しており、それこそ各艦の真価だ」とポール・ステイダー大佐(USSフエシテイ(CG-66)およびUSSロス(DDG-71)艦長を歴任)はUSNI News に金曜日語っている。「トマホークはきわめて短時間で効果を発揮できる。またここ数年間で相当の進歩をしており、必要なときに非常に効果のある選択肢となる」–Sam LaGrone
情報機関
二番目に現れた高官からは空爆の背景事情の説明があった。米政府はシリア政権が自国民への化学関連攻撃をこの数週間で拡大しているのを監視していた。反乱勢力がホマの軍用飛行場占拠を匂わせていた。
- 「シリア政権は激しいプレッシャーに置かれていた。ホマ地方で反乱勢力が大攻勢をかけて、反乱拠点はホマ県からイドリブ県にかけ不穏な動きを示していた」と高官は説明。「そのため政権はホマ飛行基地を喪失する危険にあり、回転翼機の重要拠点である同基地は樽爆弾の製造拠点とも疑われており、政権は死守を迫られている。今回の化学攻撃には前線での自暴自棄な決定で反乱勢力の動きを鈍らせる動機があったと見ている」.
- 3月25日、シリア政権は塩素化学成分をホマに投下。
- 3月30日、同政権は未確認の化学成分をホマに投下し現地NGO団体は神経ガスだったと述べている。
シリアのSu-22. Sputnik Photo
- 4月1日に同政権はサリン爆弾をハン・シーホウン(イドリブ県)に投下し、2013年以来最悪の化学兵器攻撃となった。米軍はシリア軍機がアルシャイラート飛行場からハン・シーホウンに飛ぶのを監視していた。同日午前7時前のことでサリンによる死傷者の報告が入り始めた時間と符号する。
- 「該当機の飛行経路はわかっている。該当機が攻撃時間に現地上空にいたのもわかっている。攻撃時間は同日早朝で0650または0655ごろと見ている。神経ガスに触れた住民の死亡は0700とただちに発生しており、神経ガスと即座にわかった」と同関係者は説明し、「化学爆弾を投下したのはSu-22だった可能性が濃厚」としている。シリア運用のロシア製軍用機だ。
- 「化学攻撃の拡大傾向に大きく憂慮せざるをえず、罪のない一般市民が多数被害を受けることは看過できない」と同関係者は述べ、「サリンに代表される神経ガスがハン・シーホウンで使われたのは疑う余地がない。被害者の症状は神経ガス使用の場合と一致している」
- 化学攻撃の直後に「一般市民が病院を一斉に目指すと、UAV一機が上空に視認され、小さなUAVでシリア政権あるいはロシアのもので、病院上空を飛んでいた。病院では救急活動に忙しく、攻撃後5時間が経過して同じUAVが戻ってくると、病院は(固定翼機から)攻撃された。爆撃の理由も実行者も不明だが、同病院を意図的に狙ったのは化学攻撃の証拠を消すためだったのだろう。この点に当方は非常に関心を引かれている」と同関係者は述べ、病院を爆撃した機材はロシア製だが、ロシアあるいはシリアのいずれの所属か不明だという。両陣営は同じような機材を運用している。また病院関係の情報を収集していたUAVの所属も米側は掴んでいない。
ペンタゴンがシリアによる化学兵器投下だと信じる空中写真。DoD Image
- ロシア政府は反乱勢力がハン・シーホウンに化学工場を運営しており、これが爆撃を受けたと主張。だが説明に当たった国防関係者は爆弾投下爆発による大きなクレイターが道路真ん中にあり、建物のそばではないとするオープンソースの映像、衛星画像を見せた。同関係者は爆弾が民間人のそばに投下され、中にサリンガスが入っており、今回の攻撃が神経ガスだったのかという議論は事実の前に意味がない。シリア政権側の空爆が化学成分の元だったという以外に可能性がなく、多数のシリア一般住民が死亡しているのだと説明。
- 米軍はサリンガス攻撃にどこまでロシアが関与していたかを突き止めようとしている。「化学攻撃の実施方法は解明できた。政権側が化学製品を投入した化学攻撃の実績、化学工業力の水準はわかっている。先例があり、技術があるのはわかっている。さらに外部から援助を得ていたのではと疑っている」と同上関係者は述べ、「何が起こったのか、どこで起こったのか、誰が起こしたのかもわかっている。同時に誰が支援していたかもわかっている。明らかにロシアはシリア政府を押さえきれていない。結果として、再度シリア一般住民が死亡した。ロシアに化学兵器取り扱いの知識があるのはわかっている。今回の場合におけるシリアとロシアの絡み合いは現時点では説明できないが、注意深く情報を分析しロシアが今回の攻撃を事前に承知していた、あるいは支援で関与していたことを示していく」
- はたしてロシアが4月4日の攻撃を事前に知っていたのか、支援したのかとは別に2013年にロシアはシリア国内の化学兵器全部は廃棄ずみと保証していた。同上関係者は当時の米国はロシアの言い分を認めて化学兵器は全て同国からなくなったと見ていたが、今回の攻撃を受けて米情報機関はさらに注意深くこれまでの化学攻撃の対象地からシリアの化学兵器水準を把握する痕跡を見つけるという。■
興味深い記事でした
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