2025年10月4日土曜日

ヴェネズエラの防空体制の実力はどこまであるのか(TWZ) ― 米軍はF-35を投入する想定で準備を進めているようです

 

カリブ海で高まる緊張は、米軍戦闘機とヴェネズエラの寄せ集め防空システムとの対峙になりそうだ

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ランプ政権のカリブ海における麻薬対策作戦が「非国際的武力紛争」へ拡大する中、米軍とヴェネズエラ軍との衝突の可能性も高まっている。麻薬対策に加え、トランプ政権内の一部はヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の放逐を推進している

カルテル(現在は非合法戦闘員と指定)への内陸部での直接行動の可能性が現実味を帯びる中、ヴェネズエラが保有する防空資産に注目する価値があるが、旧式で低性能な装備と、主にロシア製の高性能システムが少数配備されるという、やや異例の組み合わせで構成されている。

昨日、本誌米海兵隊のF-35B戦闘機10機がプエルトリコの旧ローズベルト・ローズ海軍基地に前線配備された初の公式画像を報じた。これらの戦闘機は現在、同地域で哨戒任務を遂行しており、公開飛行追跡データはヴェネズエラ沖での出撃を示唆している。

2025年9月13日、米海兵隊F-35Bがプエルトリコに到着。米空軍上級空軍曹ケイトリン・ジャクソン撮影

ヴェネズエラのウラジミール・パドリノ・ロペス国防相は、同国軍がマイケティア飛行情報区(FIR)沖を飛行するF-35を追跡したと主張している。本日、米軍の活動への対応と思われる、ヴェネズエラ軍の移動式地対空ミサイルシステムの再配備を示す画像も確認された。

一方、同地域で活動中なのはF-35だけではない。麻薬取締作戦には現在、米軍の多様な部隊が参加中で、海兵隊のAV-8B攻撃機も、強襲揚陸艦「イオージマ」に配備された航空戦闘部隊(ACE)として展開しているほか、迅速に展開可能なその他の戦力も投入されている。

MQ-9リーパーも過去にこの海域での海上麻薬取締作戦に投入された実績がある。米軍がカリブ海で実施した麻薬密輸船とされる船舶への4回の致死攻撃(最新事例は本日実施)のうち、少なくとも2件はヴェネズエラ発の船舶を標的とした。過去に論じた通り、MQ-9は防空態勢が脆弱あるいは存在しない空域での作戦に最適な選択肢となる。

米国がヴェネズエラ国内のカルテル拠点を直接攻撃する決断を下す場合、あるいはマドゥロ政権への直接攻撃を拡大する場合、F-35が最適な兵器となる可能性が高い。これらの戦闘機は、比較的強固な防空網が敷かれた敵空域への侵入能力を有し、固定目標と移動目標の両方を攻撃できる。

同時に、F-35は強力なセンサースイートを監視・偵察に活用できるため、非殺傷能力においても重要な戦力として運用可能である。

しかしながら、ヴェネズエラ当局者の発言は、同国も米国の攻撃を想定し手備えていることを示唆しており、マドゥロ大統領は「万一の場合に備え非常事態宣言を発令する準備を進めている」と述べている。

ヴェネズエラ軍が米軍の航空作戦を妨害・弱体化させる際に核心となるのは防空システムである。これには、ヴェネズエラ陸軍(Ejército Bolivariano、EB、ヴェネズエラ・ボリバル陸軍)が運用する地上システムと、ヴェネズエラ空軍(Aviación Militar Bolivariana Venezolana、AMBV、ヴェネズエラ・ボリバル軍航空隊)が運用する戦闘機が含まれる。ヴェネズエラ海軍(Armada Bolivariana de Venezuela、ヴェネズエラ・ボリバル海軍)にも防空能力を備えた艦艇がある。

ヴェネズエラ空軍

AMBVの戦闘機部隊の主力は、21機のSu-30MK2V フランカー戦闘機でうち24機は2006年から2008年にかけて納入された。これらは視界外射程の空対空ミサイルを装備可能だが、多用途型であり、Kh-31A(AS-17 クリプトン)超音速対艦ミサイルを含む様々な精密誘導空対地兵器も搭載できる。

Su-30の空対空兵装には、NATOコードネームAA-12アダーとして知られるR-77超視程ミサイルが含まれる。最大射程50マイルと報告されるR-77は、通常は慣性誘導で発射され、中盤段階でデータリンクによる更新を受け、終末段階でアクティブレーダーシーカーを使用する。報告によれば、R-77は強力な電子妨害に遭遇した場合、妨害源を追尾する妨害源追尾モードに切り替えることができる。

Russian-made Venezuelan Air Force Sukhoi Su-30MKV multirole strike fighters overfly a military parade to celebrate Venezuela's 206th anniversary of its Independence in Caracas on July 5, 2017. Dozens of pro-government activists stormed into the seat of Venezuela's National Assembly Wednesday as the opposition-controlled legislature was holding a special session to mark the independence day. / AFP PHOTO / FEDERICO PARRA (Photo credit should read FEDERICO PARRA/AFP via Getty Images)

2017年7月5日、カラカスで行われた軍事パレード上空を飛行するヴェネズエラ空軍のSu-30MK2Vフランカー多用途戦闘機3機編隊。FEDERICO PARRA/AFP via Getty Images AFP Contributor

フランカーは旧式のR-27(AA-10アラモ)シリーズ超視程空対空ミサイルも搭載可能で、基本型は半能動レーダーホーミングのR-27Rと赤外線誘導のR-27T、さらに長射程レーダー誘導のR-27ERと赤外線誘導のR-27ETが存在する。射程延長型は、同じミサイルに高出力のデュアルパルスエンジンセクションを追加したものである。

R-27Rの最大射程は37マイル、R-27Tは31マイルと報告されている。射程延長型は、最大59マイル(R-27ER)または56マイル(R-27ET)の距離にある目標を攻撃可能である。

Su-30の近距離ミサイル武装はR-73(西側呼称AA-11アーチャー)が担う。全方位赤外線シーカー、高オフボアサイト能力、推力偏向制御を備え、パイロットのヘルメットマウントサイトによる誘導が可能である。正面目標に対する最大射程は約18.6マイル、後方目標では8.7マイルである。

現在、AMBVの装備体系で重要性が大幅に低下しているのがF-16A/Bである。かつては空軍の誇りだった。

Yesterday’s “show of force” by a pair of Venezuelan F-16s close to a U.S. Navy destroyer has put the spotlight very much back on the intriguing history of the South American nation’s Viper fleet. While you can catch up with our initial reporting on the incident, which involved the Arleigh Burke class destroyer USS Jason Dunham, here, it’s an opportune time to review why a country now so hostile to the United States flies F-16s.

ヴェネズエラ空軍のF-16A。ブラジル空軍/エニルトン・キルホフブラジル空軍/エニルトン・キルホフ

現役運用されているのはおそらくわずか3機だが、先月アーレイ・バーク級駆逐艦「USSジェイソン・ダンハム」付近で2機が「武力示威」に投入された。

F-16は視界外射程兵器を保有せず、イスラエル製パイソン4赤外線誘導空対空ミサイルに依存する。これはAIM-9L/P-4サイドワインダーを補完するもので、同国のF-16の導入時に150発が供給された。現段階ではヴェネズエラのF-16は主に象徴的な戦力として残存している。

ヴェネズエラ陸軍の防空能力

陸軍に目を向けると、最も強力な防空システムはS-300VMである。マドゥロの前任者であるウゴ・チャベス政権下でロシアから調達されたが、その数は非公開。この購入は、モスクワが提供した20億ドルの融資の一部であったと報じられている。EB(ヴェネズエラ空軍)のS-300VMは、2013年にカラカスで行われた軍事パレードで初めて公に披露された

S-300VM(SA-23グラディエーター/ジャイアント)は、アンテイ-2500として販売されることもあり、冷戦時代のS-300V1(SA-12、同じくグラディエーター/ジャイアント)を近代化したバージョンであり、元々はソ連陸軍向けに設計された。これは長距離地対空/対弾道ミサイルシステムであり、履帯式輸送・架設・発射車両(TEL)に搭載されることで越境機動性が向上している。これは後述するように米軍にとって大きな問題となり得る。

S-300VMでは、S-300V1で提供されていた2種類の主要ミサイル  — 最大射程約47マイルの9M83(SA-12Aグラディエーター)と、62マイルの目標を捕捉可能な9M82(SA-12Bジャイアント)— が新型の9M83Mおよび9M82Mミサイルに置き換えられている。これらはそれぞれ最大81マイル(約130km)および124マイル(約200km)の射程で目標を撃墜可能とされている。

発射ユニットには9M83Mミサイル4基、または9M82Mミサイル2基を搭載可能。

ヴェネズエラは2基のS-300VMユニットを装備した一個大隊を配備しており、主要運用基地はグアリコ州のカピタン・マヌエル・リオス空軍基地にあると報じられている。

S-300VMとは対照的に、ヴェネズエラが保有するS-125ペチョーラ(SA-3ゴーア)中高度地対空システムは、1960年代初頭にソ連で初めて採用された旧式システムだが、ヴェネズエラ軍のS-125はペチョーラ-2M仕様に近代化されており、配備数は24基あるいは44基と諸説ある。

CARACAS, VENEZUELA - JULY 05: A truck carring russian missiles is seen in the military parade during the 208th anniversary of the Venezuelan Independence declaration on July 5, 2019 in Caracas, Venezuela. Venezuelan opposition leader Juan Guaidó and several NGO called for a demonstration after the death of Captain Rafael Acosta Arévalo on June 28, who was under arrest by the Venezuelan military counterintelligence department (DGCIM) since June 21. The motto of the protest is "No more torture" and people walk from the UN Development Program office in Caracas to the DGCIM building. On the other hand, chairman of the Constituent Assembly Diosdado Cabello called supporters to a military parade at Paseo de Los Próceres and a demonstration to the west side of Caracas. (Photo by Carolina Cabral/Getty Images)

2019年7月5日、カラカスに配備されたヴェネズエラ陸軍S-125ペチョーラ-2M。写真:Carolina Cabral/Getty Images Carolina Cabral

ロシア・ベラルーシ共同開発のペチョラ-2Mでは、ミサイル発射装置が従来の固定式から車輪式TEL(移動発射装置)へ移行した。一方、近代化された5V27Dおよび5V27DEミサイルは新型信管・弾頭を搭載し、電子機器が強化されている。低高度探知レーダー「ローブロー」も、ミサイル発射装置と同じ6×6輪式MZKT-8022トラックに搭載されている。

S-125と異なり、より近代的なブク-M2(SA-17グリズリー)中距離地対空システムは、当初から完全な機動性を前提に設計された。これはソ連末期に開発された9K37(SA-11ガドフライ)のさらなる発展型である。しかし、ソ連およびロシア版のブクシリーズが、4発の即応ミサイルと射撃管制レーダーを搭載した履帯式TEL車両を基にしているのに対し、ヴェネズエラに供給された型は6×6の車輪式シャーシを採用している。

高い機動性と独立運用能力に加え、80,000フィート(約24,384メートル)の高高度目標を撃墜可能と報告される性能を兼ね備えたブク-M2は、ヴェネズエラ空軍(EB)が運用可能な地上配備型防空システムの中でも最も高性能かつ汎用性の高いシステムの一つである。ロシア軍が運用するブク-M2は、ウクライナ空軍にも恐るべき脅威として実証済みだ。

ウクライナ空軍のミグ29パイロット「ジュース」こと故アンドリー・ピルシチコフは、本誌インタビューで、最も懸念すべき脅威としてブク-M2と最新型ブク-M3指摘していた

ヴェネズエラは12基のブク-M2システムを受領したとされ、海軍との共有により、海軍施設の防衛やヴェネズエラ海兵隊による水陸両用作戦に投入されている。

View of a Russian missile system (BUK-M2E) during a military training in Caracas on May 21, 2016. President Nicolas Maduro imposed a state of emergency earlier this week and ordered the two-day war games to show that the military can tackle domestic and foreign threats he says are being fomented with US help. / AFP / JUAN BARRETO (Photo credit should read JUAN BARRETO/AFP via Getty Images)

2016年5月21日、カラカスでの軍事訓練演習中のブク-M2。JUAN BARRETO/AFP via Getty Images JUAN BARRETO

これらのロシア製地対空ミサイルシステムは全て車載式で、高度な機動性を有する。これによりF-35を含む先進戦闘機に対しても脅威となり得る。警告なく至近距離に現れるため、探知・捕捉が極めて困難であり、この予測不能性が重大な脅威要因となっている。

最後に、EB(防空軍)は約300門のZU-23-2(23mm連装対空機関砲)を配備している。最初の部隊が2011年にこれらの自動砲を装備したと報じられているが、これは比較的旧式のシステムでりやや意外である。最大交戦高度約6,500フィート(約2,000メートル)のZU-23-2は、主にヘリコプター、低空飛行ドローン、巡航ミサイルへの対処に適している。同時に、地上目標に対する使用でも非常に効果的である。

1950年代に初めて配備されたZU-23-2だが、EBが使用するバージョンは、コンピュータ化された射撃管制システムと電気光学照準システムを備え、従来型より高度化されている。

最後に、EBは携帯式防空システム(MANPADS)も配備している。これにはロシア製イグラ-S(SA-24 グリンチ)やスウェーデン製RBS 70が含まれる。

イグラ-Sはイグラシリーズの最新型であり、現在市場で入手可能な同種兵器の中でも最先進的な部類に属する。旧型と比較して射程が長く、弾頭も大幅に大型化された。最大射程20,000フィート(約6,100メートル)は、米国製FIM-92スティンガーMANPADSよりも5,000フィート以上長い。

2017年、ロイター通信ヴェネズエラ軍の記録を入手したと報じ、同国がイグラ-Sミサイル約5,000発を保有していると明らかにした。これらは低空飛行する航空機や巡航ミサイルに対して重大な脅威となる。

EB(ヴェネズエラ空軍)は少数のRBS70も保有している。このレーザー誘導式MANPADSは、1992年11月にカルロス・アンドレス・ペレス大統領に対して行われた軍事クーデターの際、OV-10ブロンコ近接支援機を撃墜したとされる。

ロシア製新装備の流入にもかかわらず、ヴェネズエラ空軍は近年、主に制裁と国際社会からの孤立の影響により、能力の一部を失っている点に留意すべきである。

このためEBは、イスラエルから供給された3基のバラク-1 ADAMS短距離防空システム(SHORADS)を退役させざるを得なかった。これらは2006年の公開パレードで一度登場したのみであり、導入後比較的短期間で退役した。これらの牽引式システムは主に航空基地の点防御を目的に調達されたもので、1992年のクーデター未遂時にその必要性が浮き彫りになっていた。現在、低高度攻撃に対するヴェネズエラ空軍基地の防衛主力兵器はZU-23-2砲と報じられている。

ヴェネズエラ海軍

ヴェネズエラ海軍の防空能力は不確定要素だ。

イグラ-SおよびRBS 70携帯式地対空ミサイル(MANPADS)、陸軍と共有するブク-M2システムに加え、ヴェネズエラ海軍は運用可能な「マルシャル・スクレ」級フリゲート艦「アルミランテ・ブリオン」が1隻ある。このイタリア製艦艇は、シー・スパロー/アスピデ防空ミサイル用のMk 29八連装発射装置を装備して供給され、ポイント防御能力を提供している。このシステムの運用状態は疑問視される。

結論

全体として、ヴェネズエラは高性能なシステムを少数ながら含む、異例に多様な防空資産を有している。しかし、旧式の地対空ミサイルシステムの大半で改良が施されており、前述の通り高い機動性を有するため、事実上各地に展開可能であり、綿密に練られた作戦計画を混乱させる恐れがある。ヴェネズエラを標的としたあらゆる米軍の攻撃的航空作戦において、依然として深刻に受け止めるべき脅威となり得る。

過去に議論した通り、フーシ派が米軍F-35を撃墜寸前まで追い込んだ事例(複数のF-16も同様と報じられている)が示すように、極めて初歩的な防空能力でさえ米軍戦闘機には現実的な脅威となり得る。なお、同じフーシ派武装勢力は即席システムにより、2010年代後半から2020年代初頭の戦闘でサウジアラビア主導連合軍のトルネード、F-15F-16戦闘機およびドローンを損傷または撃墜したと主張している。

少なくとも、ヴェネズエラの防空態勢は、米軍がF-35のようなステルス機を多用することを余儀なくさせるだろう。特に同国の防衛地域内目標への直接攻撃や、高価なスタンドオフ兵器の使用においてはなおさらである。このような作戦には、防空抑圧資産やその他の支援航空機、および関連する能力の支援も必要となる。有人航空機を使用すると作戦は劇的に複雑化しており、戦闘捜索救難(CSAR)パッケージが即座に準備可能でなければならない。

現時点では、麻薬密輸容疑者やマドゥロ政権に対する米軍の活動がエスカレートするかは不明だ。しかし、米軍資産がカリブ海地域に継続的に展開される中、そのシナリオは現実味を増しているようだ。■


Status Of Venezuela’s Air Defense Capabilities

Growing tensions in the Caribbean could lead to a confrontation between U.S. combat aircraft and Venezuela’s hodgepodge of air defense systems.

Thomas Newdick

Published Oct 3, 2025 3:07 PM EDT

https://www.twz.com/air/status-of-venezuelas-air-defense-capabilities

トーマス・ニューディック

スタッフライター

トーマスは防衛分野のライター兼編集者であり、軍事航空宇宙分野や紛争に関する取材歴は20年以上。多数の書籍を執筆し、さらに多くの書籍を編集。世界の主要航空出版物にも寄稿している。2020年に『The War Zone』に参加する前は、『AirForces Monthly』の編集者を務めていた。


米軍が麻薬密輸船と疑われる舟艇に4回目の攻撃をヴェネズエラ沖合で実施(USNI News)―攻撃の脅威を無視してまで海上輸送が耐えないのはいかに大量の麻薬が米国に向け運ばれているかを示しています

 


カリブ海で米軍に破壊された麻薬密輸船と疑われるボート。国防総省写真

ート・ヘグセス国防長官は米軍が麻薬密輸船と疑われる船に対し 4 回目の攻撃を実施し、米国南部軍管轄の公海上で 4 人が死亡したと金曜日、発表した。

ヘグセス国防長官は、金曜日午後、ソーシャルメディア X に、攻撃の様子を収めたビデオを含む投稿で、この攻撃を明らかにした。ヴェネズエラ近海で発生したこの攻撃は、トランプ政権が「米国に麻薬を密輸する麻薬密売組織」と表現する組織への一連の攻撃の最新の事例となった。

「今朝早く、トランプ大統領の命令により、米国南部軍管轄区域内で、指定テロ組織と関係のある麻薬密輸船に対する、致死的な武力攻撃を指示しました」と、ヘグセスは X に記した。「この攻撃により、船上にいた麻薬テロリスト 4 名が死亡し、作戦中に米軍の負傷者は出ませんでした」。

トランプ政権は、9月初めにホワイトハウスでの記者会見でトランプ大統領が最初に発表した一連の攻撃について、法的根拠をほとんど示していない。政権は攻撃を米国法典第10編に基づく軍事的な自衛作戦と位置付けている。だが両党の議員は、この攻撃の合法性に疑問を投げかけている。

トランプ政権は最近、議員らに対し、容疑者の麻薬密売人を「非合法戦闘員」と見なしていると伝えたと、ニューヨーク・タイムズ紙が今週報じた。同紙は議会への覚書を引用し、政権が麻薬カルテルを「非国家武装集団」と位置付け、「米国に対する武力攻撃」を実行していると説明したと伝えた。

麻薬密輸船と疑われる船舶に対する4回の攻撃は全て、ヴェネズエラ近海で活動中の船艇が対象だった。トランプ大統領は前回9月19日の攻撃をSNSで発表している。

国防総省が「各攻撃で船上の者を殺害した」と主張するこれらの攻撃について、法律専門家や議員らは国際法違反の疑いがあると疑問を呈している。■


U.S. Conducts Fourth Strike on Suspected Drug Boat

Mallory Shelbourne

October 3, 2025 4:52 PM

https://news.usni.org/2025/10/03/u-s-strikes-fourth-strike-on-suspected-drug-boat



南カリブ海の石油、麻薬と地政学(The National Interest) ― なぜ、米国はヴェネズエラに焦点を当てるのか

 

南カリブ海の石油、麻薬と地政学(The National Interest) ― なぜ、米国はヴェネズエラに焦点を当てるのか

石油、犯罪、米中緊張が南カリブ海で衝突している。ヴェネズエラが地域の安定を脅かし、急成長中のエナジー産業が標的になっている。

カリブ海に影が落ちている。麻薬、武器、人身取引を行う強力な犯罪組織が脆弱な社会政治構造を脅かしている。ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領はガイアナ領土の3分の2を強引に主張し、自国を主要な犯罪中継地帯にすることに躊躇していない。米国と中国の間で激化する新たな冷戦による圧力も高まっている。南米沖に展開する米海軍艦隊は、マドゥロとその外国の後ろ盾である中国、ロシア、イランに対し、カラカスに構えた人物が脆弱であることを暗に示している。緊張レベルは高まる傾向にあり、南カリブ海地域は地政学的なレーダーに捉え続けられるだろう。

南カリブ海におけるエナジーと米国の利益

ヴェネズエラへのワシントンの強硬姿勢は、麻薬対策やマドゥロ政権への圧力だけでなく、エナジー資源と米国投資の保護が目的だ。ガイアナ、スリナム、トリニダード・トバゴからなるこの地域は南カリブ海エナジー・マトリックスと呼ばれることもある。ガイアナスリナムには世界有数の未開発森林が広がり、気候変動対策における炭素吸収源として重要である一方、新興の石油・天然ガス生産国でもある。ガイアナは西半球で6番目に大きな石油生産国であり、その地位は上昇中だ。同国の石油生産量と輸出量は急増しており、生産量は1日当たり66万バレル(bpd)を超え、2030年までに130万bpdに達すると予想されている。天然ガスも生産が開始されつつあり、世界の他の地域は南カリブ海が販売する資源を求めている。2024年時点で、ガイアナ産原油の最大の購入先は欧州であり、輸出量の66%が欧州向けであった。その他の購入国には中国、インド、米国が含まれる。

スリナムもガイアナと同様の道を歩んでいる。フランスのトタルエナジーズと米国のAPAは共同で105億ドルを投資し、今後数年間で商業規模の石油生産を開始する予定である。トリニダード・トバゴは天然ガスを輸出しており、炭化水素及び関連製品のための高度に発達した産業インフラを有している。これは、主要な国境を越えたエナジーハブとしての地域の国境を越えた開発の深化にとって重要となり得る。世界的なエナジー転換が起こるかもしれないが、石油とガスは今後数十年、エナジー生成において重要な役割を維持し続けるだろう。そしてこれらの国々はその役割を果たすことになる。

貿易の要衝かつ犯罪中継地としての地域の役割

南カリブ海地域は石油・ガスだけではない。大アンティル諸島・小アンティル諸島を含むこの地域は、合法的な貿易・投資の主要な交差点として機能している。パナマ運河を経由して南北アメリカからアジアへ向かう貨物、およびアジアから大西洋港へ向かう貨物にとって、この地域は重要な海上交通路に位置している。

しかしこの要衝としてのカリブ海には、別の側面も存在する。この地域は、米国から南へ向かう銃器、そして北へ向かう麻薬や人身取引の主要な通過ルートとなっている。麻薬、特に南米産コカインの多くは米国を最終目的地としているが、ここ数年、欧州のユーザーへ向かう流れが増加している。悲しいことに、ガイアナ、スリナム、トリニダード・トバゴは通過ルートの一部であり、ギャング関連の暴力に苦しんでいる。ヴェネズエラも麻薬の違法流通において重要な役割を果たしている(これについては後述する)。

カリブ海地域は大規模な国際犯罪組織の脅威に特に脆弱である。これらの国々は全体として警察力や沿岸警備力が小規模で、資源も限られており、多くの政府が財政的に苦境に立たされている。世界でも最高水準の債務対GDP比率を抱える国々も存在する。この状況は、南カリブ海諸国を含むカリブ海諸国政府にとって、違法な麻薬・武器・人身取引に対処する上での課題となっている。

地域不安定化におけるヴェネズエラの役割

南カリブ海における犯罪活動の主要因は、マドゥロ政権下のヴェネズエラである。前任者ウゴ・チャベスの死去により2013年に権力を掌握したニコラス・マドゥロは、長期政権を率いてきたが、その特徴は経済運営の著しい失敗、露骨な選挙不正、強硬な弾圧にある。経済は2014年から2021年にかけて75%縮小し、ハイパーインフレが通貨価値を崩壊させた。これにより民間部門は激減し、800万人以上のヴェネズエラ人が国外へ逃亡を余儀なくされた。元米国駐ヴェネズエラ大使パトリック・ダディは次のように指摘する:「マドゥロ政権の国内支持基盤が蒸発し、その経済的無能の結果がますます明らかになるにつれ、体制はますます露骨に権威主義的になっている」。この体制はキューバ治安部隊、中国・ロシア・イランの支援に支えられ、コロンビア・エクアドル・ペルーを拠点とする国際犯罪組織とも繋がりを持つ。

ヴェネズエラ経済、より狭義にはマドゥロ政権を支えているのは、犯罪活動、石油の流通、そして中国・キューバ・ロシア・イランからの支援の組み合わせである。マドゥロ政権と軍の高官が関与する太陽カルテルは、違法物品流通の主要なプレイヤーとして特定されている。2025年7月、同組織は特定指定グローバルテロリストとして制裁対象となり、「ニコラス・マドゥロ・モロス及びマドゥロ政権内の他のヴェネズエラ高官が率い、米国の平和と安全を脅かす外国テロ組織(具体的にはトレンド・デ・アラグア及びシナロア・カルテル)に物質的支援を提供している」とされた。

マドゥロ政権は密輸された金、麻薬、武器の主要な中継地を可能にすると同時に、近隣諸国の内政に干渉することでカリブ海地域及びラテンアメリカ全体の不安定化要因となっている。同政権は近年ヴェネズエラから台頭し西半球全域に拡大した主要な国際犯罪組織トレンド・デ・アラグアの本拠地でもある。トレン・デ・アラグアは、2024年にチリのサンティアゴで発生した反体制派ロナルド・オヘダ殺害事件の黒幕とされる。カラカスはまた、コロンビアのゲリラ組織である国民解放軍(ELN)とも協力・支援関係にあり、同組織は国際的な麻薬取引、金の密輸、誘拐・恐喝において重要な役割を担う存在となっている。同時にマドゥロ政権は、隣国ガイアナ領土の3分の2に対する領有権主張を再活性化。国境沿いに軍事力を増強し、鉱物資源豊富な係争地域エセキボを「ヴェネズエラの新州」と宣言、同地域での選挙実施を計画している。

より広範な地政学的観点では、ヴェネズエラは中国・ロシア主導の反米同盟に明確に同調している。ヴェネズエラは中国の「一帯一路」構想の初期加盟国であり、国際フォーラムで中国を声高に擁護し続けており、現在も中国の主要な輸出入パートナーの一つである。

米国の政策と再確認されたモンロー主義

トランプ政権は、特にモンロー主義の再確認が必要だと主張していることから、ヴェネズエラに対してより強硬なアプローチを好んでいる。この観点から、南カリブ海地域は重要な影響圏と見なされている。その理由は四つある:米国大手企業が活動する主要な石油・ガス拠点となっていること、米国のエナジー供給源であること、中国が同地域で活動しており封じ込めが必要であること、そしてヴェネズエラが南カリブ海エナジー・マトリックスの運営を脅かす可能性があることである。米国がこの地域に関心を示したのは、2025年8月、麻薬密売組織の摘発を名目としてヴェネズエラ沖に艦艇部隊を派遣した事例が顕著である。これは数十年で最大規模の米軍の展開であり、真の目的はマドゥロ政権への圧力と推測される。

トランプ政権が1989年のパナマ「正義の作戦」や1983年のグレナダ「緊急の怒り」作戦に倣った軍事介入を検討しているとの憶測もあるが、今回の海軍演習は特にヴェネズエラ軍内部の結束を崩す意図で圧力を段階的に強化する作戦の一環と見るべきである。マドゥロ大統領の首には5000万ドルの懸賞金がかけられているが、軍部が大統領とその側近を権力から排除し、より民主的な秩序への道を開く可能性もある。この文脈において、トランプ政権はヴェネズエラにおける政権交代を、中国との覇権争いにおける「手近な成果」と見なしているかもしれない。

カリブ海地域における米国の長年にわたる介入の歴史を踏まえ、域内各国政府はその帰結を深く懸念している。砲艦外交の時代や武力衝突の再来を望む者はいないものの、移民の流入、犯罪活動の増加、地域外交の複雑化をもたらしたヴェネズエラに強硬な姿勢を取るべきだと主張する声もある。トリニダード・トバゴ政府はヴェネズエラへの強硬路線を支持しているが、この措置は野党から非難されている。ガイアナも、自国の主権に対するヴェネズエラの継続的な脅威を考慮し、米国の強力な関与を支持している。一方、親ヴェネズエラ派のセントビンセント・グレナディーン諸島は米国の行動を批判し、グレナダは仲介を申し出ている。

ヴェネズエラへ注目が高まる中、米国による同政権への圧力は、より広範な麻薬対策の文脈で捉える必要がある。ガイアナ、トリニダード・トバゴ、スリナムが自国の麻薬問題を抱え米国の支援を受け入れるだけでなく、ワシントンは最近メキシコやエクアドルと麻薬政策に関する合意を結び、コロンビアの認定を取り消した。さらに、米軍がカリブ海地域での存在感を強化していること(プエルトリコへのF-35戦闘機の配備を含む)は、ハイチの犯罪組織に対し、米国がより広範な領域で介入する能力を有していることを示す警告ともなり得る。

米国の戦略と地域の安定

今後、トランプ政権は軍事力行使の脅威を用いながらマドゥロ政権への圧力を強化し、経済的展望をさらに締め上げるだろう。これにより南米諸国からの米国向け石油販売が減少する可能性があり、主に米エナジー企業シェブロンに影響が及ぶ。ただしシェブロンは最近、米エナジー企業ヘスを買収し、ガイアナの石油資源へのアクセス権を獲得している。ヴェネズエラに対する米国の強硬姿勢はカリブ海全域に緊張をもたらしているが、ガイアナの国境保全への米国支援を含むカラカスへの強硬姿勢は、長期的にはより建設的な結果をもたらす可能性が高い。

米国が南カリブ海地域で展開する動きは、12月に米国の強力な同盟国であるドミニカ共和国で開催される米州サミットの舞台設定にもつながるだろう。トランプ政権は、米国がより強力なプレイヤーとして復帰したこと(中国とロシアは留意せよ)、新たな麻薬戦争が始まったこと、そして南カリブ海地域がワシントンの政策立案者にとって重要であることを、他のアメリカ諸国に知らしめている。この分野では今後さらに多くの動きが見込まれる。■



Oil, Drugs, and Geopolitics in the Southern Caribbean

September 26, 2025

By: Scott B. MacDonald