中国の戦闘ドクトリンが西側とはことなるため、CAS能力が空軍に不足しているので台湾侵攻がまだできないとは言えないと思いますが、今のままで作戦が実施されれば、ミサイル飽和攻撃など派手な場面が続いても陸上の侵攻部隊には西側と同様のCAS効果は期待できない、ということでしょうか。Insider記事からのご紹介です。
中国軍は空対地火力と戦術を向上させている
ただ中国は緊密な空対地連携を行っていないようだ
近接航空支援で友軍を誤爆しかねない
中国空軍は近接航空支援能力を向上させていると見る向きが一部の米専門家にある。
これは、台湾侵攻の準備で深い意味を持つ。空から降下した地上部隊や第一陣の陸上部隊には、戦車や大砲など重火器がない。そのため、敵の防御を抑えるには、艦砲射撃、ミサイルやドローンによる攻撃、ジェット機やヘリコプターからの攻撃など、火力支援に大きく依存することになる。
重要な要素は近接航空支援(CAS)で、米空軍は「友軍に近接した敵対目標に対する航空機による活動」と定義している。友軍が被弾する可能性もある難しい任務だ。空軍がA-10ウォートホグを開発し、海兵隊航空隊が地上部隊の直接支援を重視するなど、米軍はCASを長く実践してきた。
しかし、ウクライナ戦争で明らかなように、空対地作戦は長らくロシアの弱点であり、中国も同様だ。しかし、中国軍として知られる人民解放軍がソ連時代の装備と戦術を廃棄するにつれて、人民解放軍空軍(PLAAF)は航空機とドクトリンを近代化してきた。米陸軍対外軍事研究室Foreign Military Studies Office(FMSO)による2023年12月の報告書によると、PLAAFの「近接航空火力支援任務の能力は過去数十年間で向上している」という。
FMSO分析官ケビン・マッコーリーKevin McCauleyは、以前の航空支援は「主に計画的な攻撃で構成されており、戦場で移動したり新たに発見された目標に対処する柔軟性は不十分だった」と指摘する。しかし、航空支援は「地上部隊がより機動化・機械化され、PLAAFの能力が向上するにつれて」、より迅速に対応できるようになった。
例えば、中国は、中国でGPSシステムに対応する北斗を含むISR(情報、監視、偵察)システムを強化してきた。また、Q-5攻撃機(ソ連のMiG-19がベース)など冷戦初期の装備が、J-10やJ-16戦闘機、JH-7A攻撃機のような精密誘導ミサイルや高度なレーダー、電気光学センサーを装備した近代的な設計に取って代わられたことで、中国の空対地火力はより致命的になっている。「これらのアップグレードは、CAFS(近接航空火器支援)任務に投入される可能性の高い航空機の速度、揚力、生存性の大幅な転換を意味する」(マコーリー)。
しかし、中国の近接航空支援で最大の限界は、依然として指揮統制である。友軍が目標から数百ヤードしか離れていない場合に空爆を行うのは厄介なプロセスだ。第二次世界大戦中、各国は試行錯誤の末、軍隊と空軍が緊密に連携して初めて前線部隊への航空支援が効果的であることを学んだ。ノルマンディーにいたアメリカ陸軍の兵士たちは、味方の爆撃を受けることに苛立ち、アメリカ第9空軍を "アメリカのドイツ空軍 "とあだ名した。
米英は最終的に、敵軍には確実に命中させ、味方軍には命中させないため、前方航空管制官を使うなどの方法を考案した。韓国、ベトナムからアフガニスタン、イラクに至るまで、アメリカの地上部隊は航空支援を当てにするようになった。米軍では航空支援を利用して侵入してくる脅威を攻撃したり、敵の陣地を攻撃し、敵の攻撃を抑えながら地上部隊が機動できるように訓練されている。
PLAの近接航空支援へのアプローチにはアメリカと重要な違いがある。中国軍の航空戦力は、弾薬庫や中継地点のような、前線の後方にある目標に向けられている。中国のCASはまた、「米国の近接航空支援に比べて、指揮・調整システムが単純で合理化されているように見える」とマコーリーは書いている。「米国のCASほど地上作戦と密接に統合されてはいないが、戦術的な地上戦を直接支援している」。
マコーリーは、中国が米国の近接航空支援システムを研究し、学んでいると見ている。「PLAが米国の手順や組織を完全にコピーする可能性は低いが、空中火器支援能力の向上につながりそうな特徴を採用する可能性は高い」と結論づけた。
しかし、米国の他の専門家はもっと懐疑的だ。米空軍の中国航空宇宙研究所China Aerospace Studies Instituteのブレンダン・マルべーニーBrendan Mulvaney所長は、Business Insiderにこう語った。「CASと呼べるようなものからは程遠い」。
中国空軍は通常、地上部隊と緊密に連携していない。元米海兵隊のコブラ攻撃ヘリコプターのパイロットで、近接航空支援の経験が豊富なマルべーニーは言う。例えば、中国にはアメリカの統合端末攻撃管制官(Joint Terminal Attack Controllers)に相当するものがいない。特別な訓練を受けた地上要員が前方部隊に配置され、パイロットがどの標的を攻撃すべきかを把握し、スマート爆弾をその標的に誘導し、パイロットが友軍の位置を把握して謀殺を回避できるようにする。
PLAAFの作戦は、『近接航空支援』というより、『地上作戦への航空支援』に近いようだ。しかし、マルベーニーは中国がCASを改善しようと努力していると見ている。「彼らは何をしなければならないかをわかっており、研究しており、間違いなくそこに到達するための計画を持っている。
その一方で、近接航空支援は中国の強みではない。「そう、彼らは良くなっている。しかし、ハードルは低い」。
China's Air Force Is Far From Ready for a Crucial Mission It Needs to Seize Taiwan
Analysis by Michael Peck Jan 27, 2024, 8:00 PM JST
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