能登半島震災の救援活動でも自衛隊、特に海上自衛隊はLCACなど「目立つ」装備の活躍が注目を集めていますが、組織としての総合力が真価を発揮していると言っていいでしょう。その裏には日頃の訓練と活動を裏付ける予算手当があってのことでしょう。そんな海自ですが、トップに立つ海上幕僚長が誰かは国民は知らないのではないでしょうか。日本のメディアには積極的に海自指導層に取材する姿勢が見られませんね。そんななかでUSNI Newsがインタビュー記事を掲載していましたのでご紹介しましょう。昨年夏の取材が今年になり公開されたのはなぜなのか勘ぐってしまいますが、それはよしとしても、海自には広報活動にも注力していただき、国民に正しい認識を与えていただきたいものです。
Adm. Ryo Sakai in his office in 2023. USNI News Photo
西太平洋で攻撃的姿勢を強める中国に対抗するため、アメリカ海軍の重要なパートナーとして海上自衛隊の存在が浮上している。
米政府関係者は、この地域における中国の行動に対抗する国防総省の戦略において、日本との関係が極めて重要だと繰り返し指摘している。
酒井良海上幕僚長は、日本政府が歴史的な防衛費の増額を追求する中、東シナ海における中国とロシアの継続的な侵略と時を同じくして、約2年間海上自衛隊を率いてきた。
酒井幕僚長は昨年夏、東京の事務所でUSNIニュースのインタビューに応じ、米海軍との協力関係から、自衛隊が戦闘機搭載の護衛艦を艦隊に統合する準備をどのように進めているかまで、幅広い話題について語った。
「海上自衛隊と米海軍の相互運用性は、自衛隊と米軍との戦闘活動の中心、あるいは基幹です」と酒井氏はUSNIニュースに語った。
米軍との連携
米政府関係者は、国防総省が日本のような国々と地上、空中、海中でどのように協力したいかを説明するのに、相互運用性や互換性といった流行語をよく使う。
例えば日本は、イージス艦搭載の誘導ミサイル駆逐艦やF-35BライティングII統合打撃戦闘機など、アメリカと同じシステム多数を運用している。
日米両海軍の相互運用性がなければ、両国の統合作戦は不可能だ、と酒井幕僚長はUSNIニュースに語った。
「それには多くの時間と莫大な予算が必要です。また、私たちの側でも、米国の情報や技術にある程度アクセスする必要があります」と語った。
そのため、日米両国は紛争時にどのように兵站を統合するのが最善なのか、また、日米両国が情報を共有することを妨げるかもしれない分類をどのように回避するのかを決定しなければならない、とし、日米間の相互運用性を追求するには、人材と資源への投資が必要だと海上幕僚長は語った。
大きな予算は多くの人材を意味する
防衛省は歴史的な規模の予算要求を発表し、イージス護衛艦、新型フリゲート艦、戦闘機をさらに購入するため、2024年度に530億ドルを要求した。12月に閣議決定されたこの予算は、これまでで最大のものとなった。
夏のインタビューで酒井幕僚長は、防衛省は今後5年間、特に無人装備や対攻撃能力の研究開発に多くの予算を投じると語った。
しかし、より多くのプラットフォームや兵器を構築するには、システムを運用する人材が必要だ。日本は採用難に直面している。世界銀行によると、日本の人口は過去10年間毎年減少しており、2021年から2022年だけでも50万人減少するという。
「人口は減少しているため......(採用は)民間部門と政府部門の一種の競争です」と酒井は言う。
これに対処するため、日本は自衛隊における採用年齢の上限を28歳から33歳に引き上げ、定年年齢を56歳から57歳に1歳引き上げた。民間部門に追いつくための賃上げや柔軟な労働環境など、その他の潜在的な取り組みも今後検討される可能性がある。
北朝鮮のミサイル発射、ロシアと中国の日本列島への一貫した接近など、日本が直面する数々の脅威のために、酒井は、乗員が燃え尽きるのを防ぎつつ、高い作戦テンポに留意しなければならないと述べた。
地域の脅威
北朝鮮が北西にあり、中国とロシアが日本列島周辺で活動しているため、日本は複数の地域主体からの脅威に直面している。近年では、日本は北朝鮮と中国からのミサイルが日本の排他的経済水域に着弾した。
「米海軍や航空自衛隊、その他の部隊と、共同訓練や二国間(統合防空・ミサイル防衛)訓練、BMD訓練を継続的に実施しています」と酒井は語った。
北朝鮮のミサイル実験に加え、自衛隊はロシアや中国の訓練飛行に頻繁にスクランブルをかけ、日本列島を周回するロシアや中国の艦船を監視している。ロシアと中国は日本海で一貫して合同演習を行っている。
「戦術レベルはまだ基本的だが......より緊密で緊密な関係を築きつつあると言える。それが懸念です」と酒井はロシアと中国の共同作戦について語った。
海上自衛隊は、人民解放軍海軍からアメリカのような嫌がらせを受けた経験はないが、尖閣諸島の近くや台湾の近くでは起こりうると酒井は予想する。
「そのような嫌がらせは-これは私の推測ですが-現場の指揮官やパイロットの判断で行われたのではなく、確実に上層部から指示されたものです」。中国駆逐艦が台湾海峡でUSS Chung Hoon(DDG-93)の艦首を横切った6月の行為について、酒井は「組織的な嫌がらせ」と述べた。
これは米国防総省の評価でもある。米国防総省の中国に関する年次軍事報告書によれば、米軍が空中で見た攻撃は、「合法的な米国の作戦活動や、米国の同盟国やパートナーの作戦活動の変更を強要するための集中的で協調的なキャンペーン」とある。
「もし将来、このような嫌がらせ、組織的な嫌がらせに遭遇した場合、彼らに言い訳を与えないようにこちらは準備し、プロフェッショナルでなければならない。もし私たちがプロフェッショナルでない対応をすれば、彼らは日本を非難する言い訳として受け取るだろう」と酒井は語った。
F-35Bの統合
海上自衛隊は、航空自衛隊のF-35Bを搭載できるよう、ヘリコプター護衛艦2隻の改造を進めている。駆逐艦ヘリ空母「いずも」(DDH-183)は、耐熱甲板塗装を施す第1段階の改修を終え、来年F-35Bの試験運用のため東海岸に向かう。
一方、「かが」(DDH-184)は、新しい甲板塗装や、戦闘機の離着陸に対応するための艦首の形状変更などの改造を終え、11月13日に試運転のために出港した、と朝日新聞は最近報じた。
「いずもとかがの運用能力が米空母と同じではないことが課題だ」と酒井はUSNIニュースに語った。「搭載機数は限られているし、戦闘機の指揮統制や弾薬の量にも限界がある」。
海上自衛隊は、F-35Bが搭載されたとしても、ヘリ護衛艦を米空母のように運用するとは考えていない。しかし、護衛艦が戦闘機を運用しての任務の正確な姿については、海上自衛隊が将来的な艦船のコンセプトを決定するため、まだ議論中であると酒井はUSNI Newsに語った。
USNI News Interview: Japanese Maritime Self-Defense Force's Adm. Ryo Sakai
JANUARY 4, 2024 6:01 PM
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