2016年6月8日水曜日

★日米が防衛装備品市場を相互開放へ ミサイル防衛他への波及効果を予想



本件はほとんど国内報道されていませんが、武器輸出三原則の変更、前向きになった日本の姿勢に対して米国内の保護主義条項がハードルになっていたわけですが、この合意でそれも適用除外にするという大きな意義があるのですね。ただし潜水艦案件で明らかになったように「売ってやる」姿勢では諸外国のマーケットに参入するのはほぼ不可能で、ここは必死に販路を開拓してきた民間企業のDNAを投入する必要があるでしょうね。とはいえ当面は中核部品や特殊分野のパーツの輸出が主になるのではないでしょうか。iPhoneと同様ですか。

US, Japan Sign Arms Trade Pact: Missile Defense Co-Production & More

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 07, 2016 at 12:41 PM

Navy cruiser Lake Erie launches SM-3 IB missile 575519537757ad8b1368733557
SM-3 IB ミサイルを発射する米海軍巡洋艦USSレイクエリー。同ミサイルは日本との共同生産。

日米が両国間で武器貿易を開放した。乗り気ではなかった日本が合意に踏み切ったのは中国の恐怖が日本を第二次大戦後の平和絶対主義から変貌させたことの証だ。アシュ・カーター国防長官と中谷元防衛相がシャングリラ対話に合わせて相互防衛装備調達Reciprocal Defense Procurement(RDP)合意に6月3日署名した。カーター長官は「包括的かつ原理原則に基づく安全保障ネットワーク」で日本のような従来からの同盟国とシンガポールのような新規に加わった協力国を結ぶ構想を提唱している。
今回の調印で日本はアジアで初めてRDPに加盟した。23カ国がすでに加わっており、イスラエル、エジプト、スウェーデン、NATO加盟国の多くがあるが、各国製の防衛装備品はバイアメリカ法やその他貿易保護措置から適用除外となる。このクラブ加盟は安倍晋三首相にとって大きな一歩で、日本を「普通の」国家にして他国と軍事作戦ならびに装備品生産を共同で行える方向を目指す一環だ。わずか二年前までは国内産業に武器製品の海外販売を禁じてきた日本にRDP加盟は大きな成果だ。
「貿易統計を見ると航空宇宙の民生用では日本は主要サプライヤーになっている。でも防衛用途を見るとゼロだ」とTeal Groupアナリストのジョエル・ジョンソンは指摘する。RDPで大きく変わる可能性が出てきた。RDPとはとどのつまり「日本企業を米国国民と同等の待遇を与え、貴国は米国企業を日本国民と同等の待遇を与えること」とジョンソンは説明する。「バイアメリカ条項の適用は繊維製品、靴を除き免除されます」
だからと言って米側が日本の防衛装備を導入することは期待できない。たとえば三菱重工のそうりゅう型潜水艦や川崎重工のP-1哨戒機、新明和工業のUS-2水上機などだ。保護主義の色彩の強い施策は別にしても米軍の要求内容は時として独特で他国装備品がそのまま選定されることは少ない。インドはUS-2の導入に踏み切りそうだが、オーストラリアへの潜水艦売り込みはフランスに敗れている。
逆に日本はすでに米国と同等の装備品をライセンスあるいは共同生産の形で生産している。富士重工のUH-1Jヒューイ、F-16をもとにしたF-2戦闘機などがある。戦略予算評価センターのブライアン・クラークは「日本は中核分野となる潜水艦戦などで米技術を導入し、電子戦、ステルス、攻撃兵器もその例ですが、その逆は発生していません」
だが今回の合意で日本製ハイテク部品の米製兵器への採用が容易になると期待される。
クラークは「外国から装備品を完成形で買うことは米国ではまれですが、外国製の部品やミッションシステムとしての武器、センサー、ジャマーポッド等では米国製より性能がすぐれているものがあります。これまでRDPは外国メーカーからの部品購入の促進に使われており、システムとしての完成は米企業がもっぱら行ってきました」と述べる。
では日本から何を期待できるだろうか。「カメラのようは光学製品はずっと優秀です」とジョンソンは話す。電子製品でも強い。すでにペイトリオットミサイルの一部は日本製であり、スタンダードミサイルSM-3の最新版アップグレードも共同開発している。ともにミサイル防衛関連で北朝鮮を脅威と受け止める日本にはミサイル防衛技術の向上は望ましい方向だ。
ただし攻撃兵器の部品となるといまだに根強い平和絶対主義により微妙な問題になるだろう。特に日本製部品を採用した米国装備が第三国に輸出されれば問題になりかねない。「日本は戦闘が進行中となるとアレルギー反応を示します」とジョンソンは説明。
「日本は事態を整理する意味で荒っぽい修正をしてくるでしょう。日本国内の方が米国より負担感は大きいかもしれません。米国は相互調達方式に慣れています」とジョンソンは説明したが、日本は武器輸出を開始したばかりだ。「今回の措置で日本企業は米軍への装備品売り込みが可能になりましたが、日本はどのハードウェアを販売対象にするかを選択するでしょうし、販売条件も慎重に検討するはずですが、果たして買い手にとって受け入れ可能な内容になるのか疑問ですね」■



★★★米空軍が想定する2030年以降の主力戦闘機の姿は現在の延長線上にない模様



F-XあらためPCAですか。空軍は思考が早いですね。問題はその実施で、KC-46Aのようにメーカーに責任だけ押し付けるやり方でも望ましい方向は実現しないでしょう。発注元とメーカーが一体になり真剣に考えないと実現は無理です。さらに空軍の思考は先に行っており、次期主力戦闘機(戦闘機になるのか不明)は相当今の姿と変わりそうですね。新概念が実現すればF-22生産再開の意味がなくなれば、F-35も就役すれば即老朽化となり相当苦しくなるでしょうね。
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Air Force Envisions Future Fighter Jet for 2030s

DAVE MAJUMDAR
12:59 AM

米空軍が次世代戦闘機のコンセプト作りを開始し新型コンピュータ技術、兵装、電子戦装備、感知機能の採用を検討中。新型機は2030年代以降に現れる予想の脅威内容に対応する。.
  1. 空軍は2030年代より先の航空優勢確立に必要なのは侵攻制空機能(Penetrating Counterair PCA)だと見ている。現行のロッキード・マーティンF-22ラプターとF-35共用打撃戦闘機では将来対応ができないことが次第にはっきりしてきた。
  2. 「F-22とF-35ですべてことが足りるなら、それ以上は不要だし、調達もいらなくなる」と次世代航空優勢の実現に携わる空軍幹部は語る。「現実は違う」
  3. 同高官は現空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が五月にF-22生産再開に前向きな姿勢を示したことに空軍上層部の大部分が理解に苦しんでいると付け加えた。ラプター生産再開が極めて困難かつ高費用につくだけでなく、搭載するエイビオニクスが陳腐化しており、生産設備工具治具類の再整備以外に、F-22では2030年代以降の世界で戦力を示し残存性が期待できない。「どうして参謀長があの発言をしたのかわからない」と別の関係者も感想を述べている。「魔がさしたのでしょうか」
  4. いずれにせよ、ラプターが再生産される可能性は極めて低い。下院軍事委員会のシーパワー兵力投射小委員会委員長ランディ・フォーブス議員(共 ヴァージニア)がどれだけがんばっても状況に変わりはない。逆に空軍はもっと広く総合的に検討して航空優勢の確保方法を模索するべきだろう。機体案も複数とし、電子戦を重視し、データリンクや新兵器の採用も当然考慮される。だが空軍が新しい機材が必要としてもこれまでの機体中心の思考方法から解放されなければならない。

  1. 「空軍が考える2030年代の戦力構造予想では敵対勢力と戦い勝利をおさめることはできない」と空軍の2030年想定の航空優勢確保案は述べている。「2030年の厳しい環境で航空優勢を確保し、実現するためには性能と能力を多角的に検討する必要がある。重要なのは作戦環境が迅速に変化していくことでこれにより空軍はこれまで通りの方法で直線的な装備調達開発大日程を続ける余裕はなくなることだ」
  2. 想定する脅威内容では統合ネットワーク化された空対空、地対空、宇宙空間、サイバー空間で戦術機が今後も減少し老朽化が進む前提で2030年以降の世界では米空軍が航空優勢を確立できなくなる可能性を憂慮している。脅威の一部として高性能機材があり、スホイPAK-FAや成都J-20、さらに新型センサー類や新兵器体系がある。「ほぼ互角の国力を持つ相手がこれら装備を保有する一方で、高性能装備が世界各国に拡散していることが問題だ」と報告書は指摘している。
  3. さらに新規脅威内容でこれまで当たり前だった米国の優位性が揺らぐ可能性がある。「わが方の宇宙空間での優位性を覆す強力な脅威能力の登場、サイバー空間での脅威が質量ともに増大すること、極超音速兵器、低視認性巡航ミサイル、高性能通常弾頭付き弾道ミサイルなど空の脅威の変化」を列挙している。「新しい種類の脅威がいつ、どこで出現するかは不明だが、確実なのは航空優勢を確保する中で2030年までに出現するこれら脅威対象への対策が必要になることだ」
  4. そこで脅威の高まりに対して空軍はあらゆる点で問題解決を迫られ、基地の強化、空中給油機の更新、「クラウドによるセンサーネットワーク」(空軍情報部長だったデイヴ・デプチュラ中将は「コンバットクラウド」と呼んでいる)まで各種あるが、新型機材も必要となる。「この戦略により航空優勢を確立し統合運用を支援するため空軍は各種能力ファミリーの開発が必要であり、航空、宇宙、サイバーの各空間で有効な能力が必要だ。単一能力ですべて解決するのは不可能だ。よってこのファミリー構成の中にはスタンドオフ、スタンドイン両面の戦力、統合ネットワーク化によるミッション効果の確保を実現する方法が求められる」と文書はまとめている。
  5. ペンタゴンはスタンドオフ・アーセナル機とノースロップ・グラマンB-21長距離打撃爆撃機の開発を進めており、それぞれ航空優勢の確保維持に役立つと期待される。空軍は新規の電子戦能力開発も求められており(空軍はこれまでこれを否定してきた)、ステルスだけでは次世代脅威に対抗できないとわかってきた。「個別の兵装開発活動は機体開発活動と連動させる」と文書は説明している。「長距離で高性能の兵器はAS2030で想定する各種能力ファミリーの全体効果を引き上げる存在だ」
  6. 空軍の航空優勢確立構想の中心的存在は侵攻制空能力だろう。これは新型機材の投入を意味するが空軍は「第六世代」や「次世代」機の表現は避けている。「『次世代』機に焦点を合わせた考え方は捨てる必要がある。このような考え方はえてして開始済みの事業で技術制約をさらに引き上げる結果に終わることが多い」
  7. にもかかわらず、文書ではPCAがどんな姿になるかのヒントがそれとなく示されている。「PCA能力の開発では航続距離、ペイロード、残存性、攻撃力、機体価格、維持管理の最適解を模索する。PCA能力は当然のこととして目標捕捉、交戦の要素も含まれれると同時にネットワークの中継点の役割も大きく、敵陣を突破したセンサーからのデータを中継し、スタンドオフ、スタンドイン兵装の投入を選択する。この一環で空軍は正式にAoAを2017年に行いPCA能力を定義づけるべきだ。機動性のある調達を心がけて適正能力を必要な時期までに実現することを目標に、AoAには迅速開発や試作品製作の選択肢も含めるのが望ましく、脅威内容より先に対応すべきだ」と文書はまとめている。「上記F2TA能力に加えPCAの侵攻突破のうりょいうがあれば航空空間から運動性、非運動性両面の効果をスタンドインで実現することが可能になる」.
  8. 空軍はAoA代替策検討を2017年に実施しPCA(旧称次世代航空優勢戦闘機、F-X)のあるべき姿を決定する。空軍関係者各位から聞いたところではPCAがF-22の延長形にになる可能性は低いようだ。だが議会にはそうあってほしいと願う向きが一部に残っている。

Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.



2016年6月7日火曜日

中国がワシントンの天安門事件関連イベントへサイバー攻撃?


天安門事件は中国国内では情報統制により知る人が減っており、木キーワードでウェブから即削除されるそうですが(当ブログも中国で閲覧できなくなるかも)現代の中国王朝ともいうべき共産党が触れられたくない部分であるのは明らかです。そしてついに世界規模で言論統制に向かいつつあるというのが今回の記事です。あらためて情報戦の本質を考えざるを得ませんね。南京事件や尖閣、南シナ海もここに含まれるのでしょうね。ワシントンには天安門事件含め共産主義による犠牲者の慰霊碑があるのですね。

China Suspected in Hack of Tiananmen Anniversary

Victims of Communism website attacked, teleconference disrupted
June 3, 2016 6:05 pm

AP
AP
中国共産党の息のかかったハッカー集団が6月3日にワシントンの反共団体のウェブサイトを閲覧不可能にし、国際オンライン会議を妨害した。それぞれ1989年の北京天安門事件を取り上げていた。
  1. 共産主義犠牲者追悼記念碑財団 Victims of Communism Memorial Foundationへのサイバー攻撃は非常に巧妙で木曜日から金曜日にかけ発生しており、同グループが虐殺事件の画像を公開しオンライン会議で事件の生存者との座談会で合わせて中国の人権問題を議論しようとしていた矢先のことだったと財団を主宰するマリオン・スミスが述べている。
  2. スミスはサイバー攻撃の背景に中国政府の関与を確信している。「これだけの時間と資源を投入できるのは政府以外にない」
  3. ハッカー集団はシスコシステムズが運営するオンライン会議サービスWebExも攻撃し、数時間にわたり利用できなくなる被害が発生した。
  4. さらに財団の主催する2,000名規模のオンライン会議のホストとなっているピューチャリタブルトラストも攻撃を受けている。
  5. 世界で二百万人が6月5日の天安門虐殺事件記念日に抗議したと推定されている。
  6. 財団関係者によればサイバー攻撃は木曜日に始まり、一時的に財団本部でインターネットが使えなくなった。金曜日に天安門事件のビデオ発表と同時に攻撃は激化している。天安門虐殺事件とは1989年に共産党指導部が民主運動家を軍により制圧し北京中心部から排除したものだ。中国政府は事件で数百名が殺害され、その後も多くが処刑されたとは一切認めていない。
  7. 攻撃のためオンライン本会議の前に準備打ち合わせをしていた30名ほどが妨害され香港、ドイツ、フランス、オーストラリア、米国から接続できなくなった。会議は携帯電話やFacebookのライブストリーミングで続けたという。
  8. 財団のウェブサイトは金曜日午後に使用不能になり、技術スタッフが回復を試みた。
  9. スミスによればFBIに通報ずみで初動捜査が始まっている。財団には当日の記録を保存してあり、FBIに協力しているという。
  10. 「当財団は今後も中国で1989年の五月、六月に何があったのかを事実として記録を残していきます。当財団を妨害するのはそれだけ触れられたくない秘密だからでここワシントンにまで結社の自由、言論の自由を妨害せざるを得ないのです」
  11. 中国政府の関与が明らかになれば米政府も正式に抗議するのではないかとスミスは述べた。
  12. 財団はワシントンDCにある共産主義犠牲者慰霊碑で金曜日夜にキャンドルによる抗議活動を後援して天安門事件の遺族も参加した。
  13. 「当財団は今後も被害者を忘れず、正義を求め、天安門で何が起こったのかを記録し、中国が国家権力でこの出来事を世界の記憶から消し去ろうとしても決して止まりません」とスミスは述べた。
  14. FBIからは本件に関しコメントは出ていない。■

★米海軍がP-8をシンガポールから運用する意味



P-8の機内の様子など初めてわかる内容もありますが、そうですかP-3Cは乗員には優しくない機体だったのですね。ゼロから作ったP-8Aですが、わがP-1はどうなのでしょうか。そのうちに機内の様子などわかってくるとは思いますが、海外へのアピールをもう少ししたほうがいいのではないでしょうかね。それにしても中国は大変ですね。周囲に味方が皆無でこんな高性能機に見張られていては。

The P-8, Singapore & South China Sea Strategy

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 06, 2016 at 4:01 AM

Sydney J. Freedberg Jr. photo
Singaporean Defense Minister Ng Eng Hen and US Defense Secretary Ash Carter pose in front of a US Navy P-8 Poseidon operating from Singapore.
OVER THE MALACCA STRAIT: アシュ・カーター国防長官はシンガポール国防相ン・エン・ヘンともにシャングリラ対話開会前に中国へ鋭く明瞭な声明を出した後、米軍が誇る対潜哨戒監視機P-8ポセイドンに乗り込んだ。
「この機はどんな感じなの」と長官がP-8搭乗員に尋ねるとトリー・プラム中尉は「大好きです」と答えた。
Sydney J. Freedberg Jr.
米海軍トリー・プラット中尉がアシュトン・カーター国防長官、ン・エン・ヘンシンガポール国防相を自らが機長をつとめるP-8に迎え入れた。
ボーイング製の同機に夢中なのはプラム中尉だけではない。米、オーストラリア、英国、インドの各軍に共通した受け止め方で各国が同機を配備しようとしている。
米海軍の最新鋭機P-8が真っ先に太平洋に配備されたのはとかく疑念を持たれる「アジア再バランス」が本物だとの証拠だと国防関係者や海軍上層部はいう。
国防戦略の担当者にとってはP-8がシンガポールを基地にしていることは興奮を呼ぶ事実だ。同国は昨年9月に同機の常駐を受け入れた。シンガポールに恒久的な米軍基地はないが、この事例はアジアにおける米国の新しい同盟関係のモデルになっている。世界有数の海洋ハブから最新鋭海上哨戒機が展開するのは中国にはうれしい話ではないだろう。
シンガポールから運用することの意味
まず地理だ。この地域は「スーパータンカーのスーパーハイウェイだ」とカーター長官はシンガポールへ向かう機内で報道陣に語った。
P-8体験飛行を終えてから「マラッカ海峡上空を飛行しましたがいつ見ても奇跡のような場所です。国際海上通行の混雑度、あらゆる国の船籍、すべての主発港、仕向け地と、まさしくグローバルコモンズの生きた証明であり、これこそ軍が守ろうとしていることです」
「シンガポールと比較できる国も立地条件も世界に存在しません」と長官はフライトの後でパヤ・レバ空軍基地で記者団に語った。
シンガポールはマレー半島先端で戦略的な位置にあり、マラッカ海峡につながり、同海峡を通り原油その他経済活動に不可欠な物資が韓国、日本、中国に輸送されている。逆に製品が今後は西方へ運ばれる交通の要所だ。
P-8配備は「この海域の重要性への共通認識のあらわれ」とン国防相がカーター長官の隣で発言している。「13百万バレルの原油が輸送されているのはホルムズ海峡に次ぐ規模。不安定要因が発生すればASEAN各国のみならず世界規模で経済活動が影響を受けます」
ロイドが海賊活動を理由に同海峡通過の保険料を数年前に引き上げが域内各国は2005年シャングリラ対話で海賊撲滅で合意し、米国など外部関連国が支援を約束した結果、共同パトロールが海空で始まり、保険料の高止まりは解消したとン国防相は説明している。
各国協力で海上通商の安全を守ればすべての国の利益につながるのであり、中国も例外ではない。「特定国だけが対象ではなく、むしろ中国も含めすべての国が対象なのです」とカーター長官は述べた。
だが作戦運用で問題がないわけではない。通過するのはタンカー、貨物船、漁船以外に中国の軍艦、潜水艦もある。海南島の軍事施設が出発地で、同時に中国の南シナ海進出の本拠地であり、人工島は海南の外縁部となる。そこで海南島の諸施設は中国が何としても秘密を守りたい対象で米軍が接近するたびに迎撃含め何らかの反対行動をとってくる。特にP-8のような長距離監視偵察機に敏感に反応する。
Navy photo
2014年8月に海南島沖合でP-8ポセイドン偵察機に嫌がらせをする中国海軍のJ-11戦闘機。
P-8の機内様子他
「高性能偵察機が海南島付近に来るのは中国には気に障ることです」と解説するのはブライアン・クラーク(退役海軍中佐、海軍作戦部長の上級補佐官を務めたあと戦略予算評価センターで主任研究員)だ。シンガポールのような戦略地点から運用するP-8は「水上活動を監視記録でき、フィリピンやヴィエトナムといった中国の南シナ海進出に反対する勢力に対する行動の記録も例外ではありません。またP-8が海南島から展開する中国潜水艦を監視していることにも懸念しているはずです」
P-8には対潜戦(ASW)能力もあり、浮上式ソナー(ソノブイ)を投では1960年代のP-3Cオライオンと比較すると二倍以上を投下できる。誘導式魚雷も運用する。現時点でソナー信号のプロセッサはP-3と同型式だが今後アップグレードし性能を引き上げ潜水艦探知能力は向上する。また水上艦探知能力も向上しており、ハープーンミサイルで攻撃も可能だ。
さらにP-8は高性能電子センサー類が搭載できるとクラークは指摘する。レーダー基地の位置を突き止め、無線交信を傍受すると、従来のEP-3の性能をしのぐ。中国がEP-3を海南島沖合で迎撃して戦闘機と空中衝突したことがあったが、EP-8としてシンガポールから飛来するのを中国が気持ちよく思うはずがない。
P-3やEP-3がシンガポールから飛来しても中国はここまで憂慮しないだろう。プロペラ推進の両機は空中給油を受けられないが、P-8は可能だ。速度と飛行距離からP-8は広い地域をカバーでき迅速に行動できる。高性能センサー類がすべてを探知できる。また新型機のため整備時間は短くその分飛行時間を多く確保できるのだ。
Sydney J. Freedberg Jr.
カーター長官とン国防相がP-8機内のセンサー操作員の仕事ぶりを視察した。
乗員の受け止め方
プラム中尉は記者に「P-3と比べてずっと新しい機材です」と離陸前に手短に取材に答えてくれた。パイロットとして中尉は「完全グラスコックピット」のデジタル表示の利点を挙げ、「飛行計器が全面的に新しくなり、今までなかった状況認識手段がつき、航空路の状況や気象状況がよくわかります」
「オートパイロット機能もあるね」とマーク・バーデン中尉(戦術調整士官(TACCO))が口を開いた。TACCOは機内のセンサー操作員を取りまとめる。
「そうね、オートパイロットはP-3でもあったけどうまく機能していなかった」とプラム中尉も述べた。
「機内で後ろから見ているとソフトウェアのインターフェイスがセンサーすべてで改良されていますね。無線装置がたくさん搭載されており、各システムの作動で正確度が上がっていると思います」(バーデン中尉)
「P-3も高性能でした」とバーデンは急いで付け加えた。「でもインターフェイスはここまでよくなかったですね。なんといってもP-3は1960年代のアナログ機で40年間にわたりアップグレードを重ねましたが、P-8は思い切って新しくスタートした全面デジタル機です」
「搭載機材の多くが前と同じで性能でもよく似ています」とバーデン中尉は述べるが、P-3の旧式装備は機内スペースをたくさん必要とし、操作員はかがみこむように対応していた。対照的にデジタル技術の恩恵でP-8機内はすっきりしており、乱雑ではない。センサー操作員とTACCOは一列に座り、高解像度の画像を共有したりメモの交換が簡単になった。
「替わってくれるかな」と操作員の一人が隣の同僚に気軽に頼み、センサー操作を任せてカーター長官、ン国防相への説明に専念した。P-3では機内配置の関係でここまで簡単にはいかなかっただろう。
P-3では乗り心地が悪く乗員がよく嘔吐する悪評があった。P-8はこれがない。「滑らかな飛行をしてくれます」とプラム中尉。確かに民間で多用される737が原型だ。「乗り心地が良くてずっと静かです」
結語
滑らかで静か。これこそシンガポールがP-8配備で望むことで、中国を怒らせることは避けたいのだ。「米国のプレゼンスは過去70年間にわたり安定の条件となってきた」とン国防相は述べている。「同時に状況の変化も認識している。中国が国力を伸ばし、われわれはこれがゼロサムゲームではないと理解している。封じ込めるかどうかの問題ではないのだ」
とはいえ南シナ海で緊張が高まる中でP-8は状況が円滑さを欠けば本領を発揮する機材だ。■
Sydney J. Freedberg Jr.
飛行後にクルーに感謝するアシュトン・カーター国防長官。左端はペンタゴン報道官ピーター・クック。


2016年6月6日月曜日

★米中もし戦わば 中国空母をどう攻撃すべきか




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How The US Navy Would Attack Chinese Carriers

JAMES HOLMES
12:24 AM


海軍大学校教授が中国空母を撃破する必要が生れたら攻撃潜水艦、空母搭載戦闘爆撃機、ミサイル他をどう投入するべきかを説明している。

  1. 中国は「空母キラー」誘導ミサイル各種で米海軍の原子力空母を猛攻撃すると喧伝をやめる兆候はないが、なかでもDF-21DとDF-26対艦弾道ミサイル(ASBM)は人民解放軍(PLA)が接近阻止領域拒否 (A2/AD) の要と期待する装備だ。
  2. 中国は自国の装備の威力を各方面に信じ込ませることに成功し、ペンタゴン取材の報道関係者も例外ではない。ペンタゴンはDF-21Dで「空母含む艦船攻撃」がPLAに可能で中国沿岸から900マイル離れても可能とあたかも事実のごとく記載した中国軍事力分析報告書を刊行している。
  3. 恐ろしく聞こえる。だが米海軍にも空母キラーがある。正確に言えば艦船キラーか。空母を機能不全にし沈没させのが可能なら小型艦にも同じ効果が生まれる。対艦兵器は数の威力で効果が増大し、有効射程距離、破壊力でも同様で米海軍は冷戦後の休日状態から目覚めている。どちらの陣営の空母キラーが勝利するかは海戦の発生場所で変わる。
  4. 空母キラーのイメージに西側はもう慣れっこになっており、中国のロケットが米海軍の誇りを海底に沈め、同時にアジア域内の同盟国への米支援も葬るというものだ。もっと悪いのはPLA指導部はわざわざ艦船や航空機をはるか沖合に送らずに世界の歴史に残る戦績をあげることが可能なことだ。ASBMの発射キーを回せばいいのだ。
  5. その可能性はある。有効射程など技術面になぜ執着するのか。DF-21Dは900マイルの射程があることになっているが空母艦載機の到達範囲をはるかに超えている。そうなれば空母打撃群はアジアの戦闘区域に到達したら大打撃を受けてしまう。さらに射程距離が食い違うのが恐ろしい。昨年9月の北京軍事パレードではDF-26の最大射程は1,800から2,500マイルだと伝えていた。
  6. 技術開発がうまくいけば、PLAの弾道ミサイルはアジアの第二列島線付近を航行する米海軍、同盟国軍側の艦船にとって脅威となる。DF-26の射程上限はASBMが列島線を超えた地点にも到達することになるからだ。
  7. これを大西洋に例えるとグアム東にいる艦船を中国沿岸から攻撃して沈没させるのはワシントンDCからグリーンランド東にいる艦船を狙うのと同じだ。グアムまで届くミサイルがあればハワイや米本土からかけつける部隊には危険状況を意味するが、グアム、日本、その他西太平洋各地での船舶運航はたえずミサイル攻撃の恐怖がつきまとうことになる
  8. ただしPLAがDF-21Dを供用開始して5年以上たつが洋上に向けたテストを一回も実施していない事実に注目すべきだろう。さらにDF-26では実戦想定テストをほとんど実施していない。平時の未完成技術は有事には失望させる結果しか生まない。

  1. それでもASBM技術を中国が成熟化させれば有効装備になる。米軍は相当する装備を有しておらず、今後も整備に走らないだろう。米国は中距離弾道弾開発を条約で禁じられており、かりに米政府が条約を反故にしても十年とまでいかなくても数年かけないと兵器体系としての開発、試験、配備は実現しないだろう。
  2. だからと言って米海軍に選択肢がないわけではない。米海軍は敵空母にどう対応するだろうか。答えはニューポートの海軍大学校で用いる標準的な内容にある。つまり、時と場合次第だ。
  3. まず交戦場所がある。空母同士の海戦となればはるか遠隔地の海上が舞台となりPLAの不沈空母たる中国本土から離れることになると、沿岸基地のASBM、巡航ミサイル、航空機が到達できない。
  4. これは艦体対艦隊の想定だ。事態はいつも投入する火力により決まるし、将兵の資質、戦術判断力、生への執着も作用する。PLA指揮官は陸上配備の兵器を大量投入してくるだろう。同時に米海軍も日本、韓国、オーストラリアの同盟軍とともに沿海部での戦闘を試みるだろう。そうなると中国同様に同盟各国の陸上配備装備が艦隊の戦闘力を補強することになる
  5. 戦術戦の舞台二つは大きく異なる。後者はより混乱を極め戦争の霧に包まれる可能性が高い。さらに敵が大胆な動きをすれば予測は一層困難だ。
  6. 米海洋戦略と沿海部近くの海戦で共通するのは潜水艦戦の重要性だ。原子力推進攻撃潜水艦(SSNs)には米ヴァージニア級、ロサンジェルス級があるが水上通商路の遮断が可能だ。あるいはA2/AD防衛網を突破して敵船舶を強襲し、敵の領海内で空母でさえも攻撃できる。
  1. つまりSSNsが米海軍の主力戦力だ。だからこそ議会がSSN部隊の規模縮小で現在の53隻を2029年に41隻体制にしたら大きな誤りとなる。これは23パーセントの戦力ダウンになり、一方で中国は2020年に潜水艦78隻を稼働させようとしている。ロシアも静粛化が進んだ潜水艦の復活に入っている。
  2. そうなるとアメリカの空母キラーは潜水艦になる。そこで近未来の対中国空母の戦闘を語るのは未来予測の様相を示してくる。現時点のPLA海軍は空母一隻しかない。ソ連時代に起工したものを完成させた遼寧で同艦は練習艦のままの公算が大きく、遼寧を改良した実戦用の空母数隻が建造中と伝えられる。

  1. 中国が二隻目の空母を完成させたと仮定しよう。初の国産空母となる。ニューポートニューズ造船所がほぼ同寸の初のスーパー空母かつ通常動力のUSSフォレスタルを起工から就役まで三年で完成させている。
  2. さらにPLA海軍が空母任務部隊を洋上で運用する技術を確立したと仮定しよう。そうなると中国は新型空母を切れ目なく就役させ迅速に艦隊に投入することになる。想定する遠洋公海上の衝突は2020年ごろとしている。.
  3. 2020年でも米海軍水上部隊の空母キラーの主役は空母航空隊で今と変わらない。原子力空母は戦術航空機をおよそ85機搭載する。将来登場する中国空母の航空隊規模の予測はばらついているが、固定翼機・ヘリコプター50機とすの上限を採用するとしよう。これだと米海軍の空母搭載機数はPLA海軍空母より70パーセント多くなる。
  4. また米艦載機が中国機より優れていることはほぼ確実だ。次に登場するPLAN空母は遼寧と同様にスキージャンプ式構造のようだ。このため機体重量に制約が生まれ、搭載燃料や兵装量でも中国機には不利に働く。
  5. 米海軍のCVNは蒸気式あるいは電磁式カタパルトで大重量の戦闘攻撃機を発進させる。兵装量が多いということはそれだけ打撃力も多くなり、燃料搭載量が増えればそれだけ長く飛べることになる。
  6. F-18E/Fスーパーホーネット戦闘攻撃機はおよそ400カイリ先の敵を攻撃できるが、武装を投下した後はより長く飛行できる。中国がJ-15が同等の航続距離があると喧伝すしているが、ここでも米軍機が数の上で有利で、一機あたりの攻撃力も上だ。そこで米海軍が優勢と判定できる。

  1. さらに2020年には対艦兵器が性能を向上させているはずで搭載も始まっているだろう。現在の水上部隊の主力対艦兵器はハープーンミサイルで1970年代の産物で射程は60マイルを超える程度だが、PLA海軍の最新装備YJ-18は290カイリといい、影が薄くなる。
  2. そこで米兵装開発部門は射程距離の不足を大急ぎで解消しようとしている。ハープーンのメーカー、ボーイングは射程距離を二倍にしようとしている。ペンタゴンの戦略能力整備室はSM-6対空ミサイルを対艦攻撃用に転用し、水上部隊の攻撃範囲は一気に三倍になる。その他にトマホーク巡航ミサイルを対艦型に改装したものを昨年にテストしており、冷戦時代並みの超長距離攻撃能力が復活する。別に新型長距離対艦ミサイルが開発段階にある。
  3. 海軍にとって新型兵器の投入配備には重要な意味がある。「分散攻撃力」構想の下で海軍は各艦に火力を確保しつつ目標に集中させようとする。つまりこれまでより多くの艦船に対艦ミサイルを搭載し、補強策として電磁レイルガンや艦載レーザー兵器を投入して目的を実現する構想だ。
  4. だが米海軍には空母キラー専用の兵装は多数ある。潜水艦、艦載機、新装備の投入で米海軍は2020年でも大洋海軍力を十分確保しているだろう。問題は公海での交戦は対中戦で最も可能性の低いシナリオなことだ。たとえば太平洋中央部分で中国が沿岸火力支援が届かない状態で戦闘を挑んでくるとは考えにくい。
  5. 可能性が高いのはPLAの接近阻止兵器の有効範囲内での交戦だ。中国は自国領土に近い列島線付近の海域を一番心配する。同海域はアジア同盟各国の安全を守り航行の自由を保障し、海上パワーを確保する米国にも重要だ。そのため米中の対立が熱くなればこの海域や上空で交戦が始まる可能性が高くなる。
  6. 交戦が始まれば究極の面倒事になるかもしれいない。米軍がアジア本土に近づけばA2/AD防衛網に高い代償を払うことになる。空母キラーのASBMが西太平洋各地で発射されれば交戦一日目で西太平洋へ向かう艦船にミサイルの雨が浴びせられる。ミサイル搭載の小艦艇やディーゼル潜水艦が歩哨の役割となり、対艦巡航ミサイルを発射してくるだろう。
  7. 沖合警戒ラインでは不十分とばかりに沿岸から対艦兵器が発射される。ASBMだけでなく巡航ミサイルやミサイル搭載航空機が投入されるはずだ。原子力空母は浮かぶ飛行場だが各地の陸上航空基地や各種ミサイルと対決になる。総じてA2/ADは米側の艦艇指揮官にとって面倒な戦術作戦上の問題になるだろう。
  8. PLA海軍艦艇は西太平洋を航行する限りは太平洋の真ん中やインド洋他遠隔地より威力を発揮するはずだ。要するにPLA海軍とは砦防御を固める兵力なのだ。危険になれば容易に陸上防御網の有効範囲内に逃げ戻ることができ、自艦火力に陸上防御網を追加して強力な敵に対抗する
  9. 要塞艦隊には暗い運命が洋上はるか沖合で待っている。防御の傘は使えないからだ。母国近くでは沿岸火砲支援の元でうまく機能する。中国はここに期待している。

  1. 歴史の教訓を見てみよう。要塞艦隊構想は前からあり、海上権力の主導者アルフレッド・セイヤー・マハンがこの用語を生み出したと思うが、帝政ロシア海軍の例がある。ロシア艦隊は要塞砲の有効射程範囲内に残る傾向があり、火力で勝る敵に対抗していた。こうして艦隊は要塞の前方防御網となったが、艦隊は要塞砲を防御網に使っていたことになる。
  2. 要塞艦隊の背景としてマハンには旅順口の火砲が念頭にあったのだろう。渤海への入り口であり首都への侵攻経路にあたる旅順は日露戦争1904-1905年では東郷平八郎が指揮する日本帝国海軍連合艦隊が一貫して砲撃を加えていた。
  3. 旅順港のロシア分遣隊は要塞砲の射程内にいる限りは安全だったが、成果はほとんどあげていない。東郷長官以下の日本部隊はロシアと1904年に公海上で短い交戦をしている。1905年5月にも再び対決の場面が生まれ連合艦隊は対馬海峡でロシアバルチック艦隊と海戦をした。
  4. ロシア艦隊は簡単に日本海軍に圧倒された。だがもし旅順港の要塞砲が日本艦隊に正確な砲撃を加えていたらどうなっていただろうか。マハンの要塞艦隊構の有効範囲が拡大されていることがわかる。長距離かつ有効な火力支援があればロシアは逆に勝利をおさめていたかもしれない。劣勢な側が勝ちを収める場合もある。
  5. この例が現在でも通用するかは疑問だ。要塞としての中国は飛行基地や移動対艦兵器多数で数百マイル沖合の敵艦隊を標的にする。確かに大洋の真ん中では米海軍はPLA海軍に対してはるかに強力だ。艦隊対艦隊の対決で陸地か支援がなければアメリカの優位に動くだろう。だが仮説上ではアジア本土に近い場面での交戦では一方的な米優位は難しい。
  6. 米海軍が想定する大青原での交戦は発生の可能性が低いにもかかわらず装備作戦面がこれに特化しているようだ。一番脅威度が高く、発生可能性も高いシナリオはどちらなのか疑問は残る。空母攻撃兵器により要塞艦隊がマハンの死後何十年もたって懸念対象として復活している。中国にとっては優位な状況だ。

----本稿はNational Interestが最初に掲載した。
著者ジェイムズ・ホームズは海軍大学校で戦略論を教え、Red Star over the Pacificを共同執筆している。見解は本人のものである。

Visit Warrior


2016年6月3日金曜日

シャングリラ対話へ向かう機内でカーター長官が語った内容に注目


精彩を欠く末期のオバマ政権でこの人だけが光を出しているように思えてなりません。中国からは冷戦時代の思考だと批判されているようですが、むだに緊張を作り出し結果自らの首を絞めているのは中国でしょう。次期政権にも現行路線が継承されることを強く望みます。

US Won’t Back Off On Korean Missile Defense, South China Sea: SecDef

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 02, 2016 at 10:06 AM

Sydney J. Freedberg Jr. photo
Defense Secretary Ash Carter speaks to reporters en route to Singapore.
ABOARD SECDEF1:  アシュ・カーター国防長官はシンガポールのシャングリラサミットへ移動する専用機内で報道陣に太平洋での連盟づくりに向かう米国を批判する中国に全く動じていないと述べた。
  1. カーター長官は土曜日に行うスピーチで重要点二つに触れるだろう。
  2. まず今月中に韓国と米国はTHAADミサイル防衛装備の韓国配備を発表する公算が大きい。中国がTHAAD配備に反対を表明しているのはTHAADが北朝鮮ミサイルよりも中国領空内での迎撃を行うと危惧しているためだ。カーター長官は報道陣に「これは同盟国同士で決めたこと」と繰り返し発言しており、あくまでも自衛のためと強調、つまり中国政府の関与すべきことではないと述べている。
  3. 7月にはハーグで国連海洋法条約にもとづき南シナ海を巡る中国-フィリピンの意見対立で裁定が出る見込みだ。(これ以前に出る可能性もある) 中国はかねてから裁定に従うつもりはないとしており、逆に防空識別圏(ADIZ)を一方的に設定する可能性を示唆している。一方的に同地区での航空航行の権限を主張すると挑発行為と受け止められかねないが、「仮に宣言があっても東シナ海でのADIZ設定の時と同様に軍の活動に影響は出ないだろう」と国防高官は述べている。
Ryan Lim - Malacañang Photo Bureau (Public Domain) via WikimediaPhilippine president-elect Rodrigo Duterte
フィリピン
  1. 南シナ海情勢を複雑にするのがフィリピンの大統領当選者、大衆迎合主義のロドリゴ・デュテルテで、アメリカとの同盟関係に疑問を投げかけている。現政権は退任間際になり米国との同盟を強化し、強化防衛協力合意(EDCA)によりA-10ウォートホグがフィリピンから南シナ海のパトロール飛行をしているが、あくまでも短期展開で今後の予定は発表されていない。
  2. カーター長官は報道陣に戦略的に重要な位置にありながら軍事的に脆弱な同国との同盟強化に疑問の余地がないと述べ、「EDCAに基づく活動は順調に推移している。方針変更は全く考慮していない。フィリピン新政権ともこれまで同様に共同でことにあたり民主的に成立した同盟国として処遇する」と語っている。
  3. 「フィリピンが『自らの進路を選択する』ことは理解できる」と国防高官がドゥテルテ自身の言い回しを引用して述べている。「フィリピンとの同盟関係すべてでフィリピン自身に選択の余地を残しているのは事実」
  4. カーター長官は今回のシンガポール訪問でフィリピン、中国それぞれの代表と会見する予定はなく、フィリピンの新国防大臣はまだ指名もされておらず、中国国防相はシャングリラに参加しないので、長官に同格の相手はいないことになる。ただし意見交換の機会はたくさんあり、カーターの部下は途中から今週土曜日に北京に飛び、第六回戦略安全保障対話(SSD)に臨む。
  5. SSDは米中高官会議の一環だ。会合に先立ち、関係者はワシントンで5月19日に戦略的安全保障の議論点を整理している。そのひとつに「忌憚のない、建設的な議論を双方が行い戦略的安全保障を論じる。海洋問題も含む」とある。外交的な表現だが米中が向かい合い強硬発言をしてにらみ合う(忌憚がない)様子が南シナ海の航行の自由を巡り想像できるだろう。建設的とは大げさに反対せず今後も会合を継続するが意見一致を見なかった内容を確認書あるいは論点として残すことだ。
  6. いかにも米中の安全保障議論の実態を表す話だ。

Missile Defense Agency photoTHAAD missile launch.
韓国のミサイル防衛
  1. 「中国とは競合の一方で協力の余地は十分ある」とカーター長官は述べ、北朝鮮へ中国が圧力をかけていることを評価する。「北朝鮮の行為には各国が不満を覚えている」
  2. だが記者の一人が尋ねた。(失敗したとはいえ)北朝鮮がミサイル試射を五回連続実施しており脅威対象としての再評価が必要ではないのか。
  3. 「テスト結果に関係なく、同国がミサイルを運用しようとしているのは明らかだ」とカーター長官は答え、「結果に関係なく、挑発行為である。安定を損なう行為であり、国連安全保障理事会決議に違反している」
  4. ミサイル実験を脅威と受け止めた韓国が米THAAD装備の展開を求めてきたのは事実だ。THAADは短距離用のペイトリオットミサイル防衛を補完できる。(ともに米陸軍の装備であり、太平洋で陸上兵力が軽視されがちな中で重要な存在だ) カーター長官はシンガポールで韓国国防相と会い、「当然この話題が出るだろうが、多く議論することにならないだろう。すでに実施に向けて動いているからだ」と述べた。
  5. 「これは同盟国同士で決めることで、米国と韓国間で北朝鮮ミサイル攻撃に対応する動きだ」とカーターは述べ、「同盟国による決定であり、両国が決めることだ」とした。
  6. 「まだ技術的な課題はある」と国防高官が述べている。つまり政治面、戦略面で今やTHAAD配備は実施すべきかの問題ではなく、どう実施するのかの問題だという。「まもなく公表するが、時期をお伝えできる立場ではない」
Navy photoP-8 Poseidon
「節度ある安全保障ネットワーク」
  1. 米国は韓国、フィリピンと正式な同盟関係を長期間にわたり維持し強化しているが、その他条約関係がない国とも軍事的つながりを強化する段階にきている。かつては非同盟を標榜したインドが米国との関係を強化している。かつては米国に敵対したヴィエトナムで米国は人道援助用装備を配備し、強力な武器の輸出でも制限を解除している。
  2. シャングリラ対話を主宰するシンガポールは沿海戦闘艦のローテーション配備を受け入れ、P-8ポセイドン部隊も受け入れた。カーター長官はシンガポール国防相とP-8に搭乗する。P-8は軽武装だが監視装置の性能は高く中国は警戒しており、中国戦闘機が数回にわたり危険な接近飛行を企てている。
  3. 「節度ある安全保障のネットワークが着実に大きな進展を示している」とカーター長官は総括した。「特定の相手は想定していない。特定の相手を孤立化させる意図もない」
  4. 特定国は孤立化させないかもしれないが、中国に圧力をかけることで行動を変えさせ法の支配による国際秩序を受け入れさせようとしているのは明らかだ。■

6月2日、ブルーエンジェルス、サンダーバーズがそれぞれ機体喪失



Two jets from elite U.S. military squadrons crash, one pilot dead

World | Thu Jun 2, 2016 8:50pm EDT
コロラドスプリングスから4マイル南の墜落現場のF-16.同機は空軍士官学校の卒業式典で上空通過飛行をした後で墜落している。REUTERS/JOHN WARK

米海軍と空軍の飛行展示隊所属の二機が同日中に墜落する珍しい事態が6月2日発生した。うち一機は空軍サンダーバーズで空軍士官学校の卒業式典を祝賀しコロラドでオバマ大統領が式辞を述べる上空を飛行していた。
  1. もう一機はテネシー州で海軍ブルーエンジェルズ所属F/A-18でナッシュビル南東で墜落しパイロット一名が死亡している。墜落地点はブルーエンジェルズが週末の展示飛行に備え練習中の空港から2マイルのところで海軍が事故原因は調査中。パイロット氏名は公表されていない。
  2. コロラドの墜落地点はピーターソン空軍基地から5マイルの原野だと空軍が発表。パイロット(氏名非公表)は射出脱出し、救難隊に無事回収されている。
  3. ホワイトハウス広報官ジョシュ・アーネストはオバマ大統領一行の支援にあたっていた軍用ヘリコプターが急きょ墜落地点に急行したと述べた。
  4. 同乗していたシークレットサービス捜査官が現場でパイロットの状態をチェックし、ピーターソン基地へ搬送した。ヘリコプターはその後大統領の車列の支援に復帰している。
  5. オバマ大統領はその後、ピーターソン基地でサンダーバードのパイロットを見舞い、重傷ではないと知り安堵したと報道官は述べている。
  6. アーネスト報道官はパイロットが大統領の目の前で立ち上がり歩いていると追加で述べている。大統領はとっさにパイロットを救難し他チームにも感謝の念を伝えたという。
  7. 墜落原因について空軍は調査を開始したと発表。空軍の航空戦闘軍団はツイッターで事故での負傷者はないとし、危険も発生していないと述べた。■

★タイがP-1、US-2導入に関心を示す



今回はうまく成約するといいですね。防衛装備を巡る技術協力は単なる装備の輸出だけでなく運用面での支援や共同作戦能力の向上につながり、高コストの防衛産業構造にも一定の改善効果が期待でき、一層高性能の装備開発のインセンティブにもなります。防衛産業、航空宇宙産業にとってはよい効果を生みますので応援したいところです。


Nikkei Asian Review
Exclusive

Japan, Thailand eyeing arms deal

June 2, 2016 2:00 pm JST
TOKYO -- タイ政府が海上自衛隊の川崎重工P-1哨戒機と新明和工業US-2水陸両用救難捜索機の導入に関心を示している。
成約すればタイ軍事政権と中国の間にくさびを打つ効果が期待できそうだ。
中谷元防衛相はプラウィット・ウォンスワン副首相兼国防相とバンコクで会見し防衛装備案件を協議。
川崎重工とNECは昨年11月のバンコク国際防衛装備展に出展しており、プラウィット副首相も視察していた。
日本が東南アジアで成約した防衛装備契約は一件のみで、フィリピンに海上自衛隊のTC-90練習機を捜索救難用途にリースで提供している。同様の案件はマレーシア、インドネシアと交渉中だ。
欧米各国は現タイ政権が2014年5月の軍事クーデターで誕生したため一定の距離を保っている。中国がこの状況に付け込み影響力を増やすことを日本は警戒しており、ASEAN加盟国に中国と領有権問題を抱える国もある中、中国がASEAN加盟国を分断させようとしているのではと見る向きもある。
ただし日本には防衛装備輸出で解決すべき課題も多い。先に潜水艦受注でフランスに負けたばかりだ。「不調に終わったことからマーケティングの知見不足が露呈した」と防衛省関係者は振り返る。
日本は2014年4月に武器三原則を改訂し、防衛装備輸出に道が開け、国際開発にも参画できるようになった。■