2020年9月20日日曜日

米海軍が進めたい大型無人水上艦の実現が一筋縄ではいかない---何が問題なのか

 

ゴーストフリート事業のオーヴァーロード試験艦が9月にフェイズIで最終段階を迎えた。オーヴァーロード事業で既成の民間高速補給艇は無人水上艦(USV)に改装され、海軍にUSVの基本情報を提供する役目を負う。 US Navy photo.

 

 

9月4日、米海軍は大型無人水上艦艇(LUSV)のあるべき姿を決める第一歩として合計六社に契約交付した。

 

契約規模は合計42百万ドルでオーストラルUSAハンティントン・インガルス工業フィンカンティエリ・マリネッタボリンジャー造船ロッキード・マーティンギブス&コックスの六社が7百万ドルずつで作業を開始する。

 海軍は各社作業は2021年8月完了を期待するが、2022年5月までの延長も可能とする。

 「各社向け契約を通じ大型無人水上艦の性能諸元を絞り込み信頼性研究を行い解決策を把握してからデジタルデザイン・建造契約(DD&C)の交付に向かいます」と海軍広報官ダニー・ヘルナンデス大佐がUSNI Newsに伝えてきた。「研究活動を通じ政府と産業界の間に強い協力関係が生まれ、艦艇性能諸元も洗練されます。また実現可能な技術性能をLUSVのDD&C競作で追及してきます」

 今回の契約交付発表はLUSV調達方法を海軍が変更したのを受けたことに対応している。未検証技術の実現が早期すぎると議会が懸念していることが背景にある。

 「LUSV検討は要求内容の完成を助け、導入可能で効果のある艦艇開発を円滑にし、性能要求内容の成熟化作業を継続させ、信頼性を向上させながら電気系統、機械系統で信頼性を引き上げ、コスト削減策の把握につながるので、導入を容易にしてくれるはずです」(ヘルナンデス大佐)

 もともと海軍はLUSVでも従来通りの調達方法で対応のつもりだった。構想設計を数社に任せ、海軍の要求性能を決定してから詳細設計・建造契約を一社に公布する方法がこれまで行われてきた。

 

開発計画の見直し


これに対し議会がLUSVで同じ方法をとらないよう要求してきたため、2021年度予算要求ではLUSV関連の調達方法を見直し、LUSV概念設計での契約交付は本年度最終四半期に先送りされた。この遅れにより、海軍は議会の求めに応じた形にLUSVの予算要求を変更できたという。議会は垂直発射装備(VLS))を含む設計をしないよう求めている。

 「新しい契約では概念設計(CD)で契約を数社に2020年度内に公布する。CDではLUSVの性能諸元を絞り込み、ここには垂直発射管(VLS)は含まれない」と2021年度予算要求文書に説明がある。

 2021年度予算所ではLUSV試作型二隻を調達するとあり、二隻は戦略性能整備室(SCO)が作成したゴーストフリートのオーヴァーロード事業がもとになっている。SCO仕様の試験艦二隻はすでに供用中で来年にも海軍に移管される予定で、海軍は独自に自律運用技術を試験し知見を深めることが可能となる。

 LUSVについて海軍は全長200から300フィート規模で一部あるいは全面的に自律運航可能な艦艇として想定している。

 

議会の反発

 

議会関係者と国防分析官が昨年に海軍があまりにも早く動きすぎていると無人艦艇整備で警告していた。その主張では海軍にはまだ関連技術で試験を完了していない分野があり、運航コンセプトも決まっていないとあった。これに対し海軍からは試験艦を導入してからテストを実施し、技術の理解を深めて将来の艦艇整備案に組み入れると反論があった。

 海軍作成の2020年度予算案で説明があったLUSV案は直ちに批判の的となった。2020年度要求にはLUSV試作艦二隻をSCOのオーヴァーロード事業をもとに調達するとあり、並行してLUSVの設計案を数社に求めるとあった。構想ではLUSV試作艦を2021年度から2024年度まで毎年二隻調達するとある。2020年度予算要求書類によると海軍は研究開発予算から調達予算への切り替え時期を決めかねていた。

 これに対し議会はこの方法論を批判し、調達リスクが高いと指摘した。

 「当委員会はLUSV設計、技術開発、統合の各段階を並行実施しながらLUSVの運用構想で理解が不足したまま追加LUSVの調達リスクを放置する2020年度要求内容には懸念を示さざるを得ない」と上院軍事委員会が2020年度国防政策法案補足で主張。「また当委員会はLUSV運用方針が不明瞭なままであることにも懸念する。各国の無人水上艦艇について調査が不十分であり、武装あるいは今後武装するLUSVの法的位置も明確になっていない」

 2020年度国防支出法案で海軍の試作艦2隻調達に道が開いたが、同時に概念設計ではVLSを含めないよう求められた。無人小型戦闘艦整備事業を統括するケイシー・モートン中将は海軍はVLS搭載のLUSV調達を2021年度から開始すると昨年11月発言している。

 


米海軍の無人水上艦整備のロードマップNAVSEA Image

 

 

今後の見通し

2021年度予算要求で判明した新戦略方針では海軍はLUSV初号艦を複数年度予算案件として購入するとある。

. 議会による2021年度国防政策法案の合議版が未公開のままだが、上下院ともにLUSV開発での監督強化をうたっている。下院軍事委員会は海軍が求めるオーヴァーロード事業の試作艦関連予算を削減したが、シーパワー兵力投射小委員会からは海軍から「技術成熟完了」の証明がない限りLUSV調達を海軍に認めないとの注文がついた。

 他方で上院の法案では海軍に具体的な技術達成証明を求めている。例として発電機容量ならびに最短30日間運航が可能なエンジンを取り上げ、LUSVがマイルストンBに移行する前に必要としている。

 海軍はくりかえし議会と対話を図り、無人装備の重要性への理解を求めている。

 海軍の調達業務を統括するジェイムズ・ギューツ次官補は議会の懸念を認め、海軍は新型装備の取得と無人技術のテストの必要性で「バランス」をとる必要があると7月に述べた。

 「無人装備の最大課題は技術ではない」とギューツは語っていた。

 「まさしく作戦構想であり、指揮統制であり、投入構想である。また試験艦の実地運用があって初めて海軍第一線部隊も活用方法を理解できるはずだ。バランス感覚も必要だ。実証済みの原則、事業推進方法でもバランスが取れた形にする必要がある」■

 

この記事は以下を再構成したものです。▲なぜ、米議会筋は無人艦艇をここまで警戒するのか理解に苦しみます。人間の統制に反抗する「フランケンシュタイン」を恐れているのでしょうか。

 

6 Companies Awarded Contracts to Start Work on Large Unmanned Surface Vehicle

By: Mallory Shelbourne

September 4, 2020 5:51 PM


2020年9月19日土曜日

DF-21Dを空中発射用に改装しH-6N新型に搭載したという写真....真偽を巡り中国国内でも論争

 

 

 

国メディアに強力な威力を秘めそうな新型対艦対地ミサイルの姿が現れた。

 

中国政府が出版する雑誌Modern Ships に未知の大型ミサイルを搭載する新型H-6N爆撃機が掲載された。

 

コンピューター合成写真とはいえ、CH-AS-X-13の姿が初めて公表された。これはDF-21D対艦弾道ミサイルの空中発射型だ。

 

 

中国空軍は新型ミサイル搭載用にH-6一部を改装し、米海軍水上艦他西太平洋に展開する各国軍の脅威となっている。特に空母で警戒が必要だ。

 

中国で長年供用中のH-6の新型H-6Nは2019年の建国70周年パレードでその存在が確認された。同機の機体下部は大型ミサイル搭載用に改装されており、DF-21Dは全長30フィート超で32千ポンドの重量がある。1,200ポンド弾頭を搭載し射程は1,300マイルだ。

 

「同機は少なくとも4機あり、中央軍区で人民解放軍空軍の爆撃機旅団に配属されている」とThe War Zoneのジョセフ・トレヴィシックが伝えている。

H-6Nの弾道ミサイル発射ミッションは2017年に始まっている。西安航空機国際公司が製造するH-6はソ連時代のTu-16バジャーが原型で、1970年代から中国爆撃機部隊の中心だ。.

2009年にはH-6Kが長距離対艦ミサイル運用に最適化した改装型として登場したが、H-6Nはこれをさらに発展させている。

 N型とK型の最大のちがいはN型では爆弾倉を全廃したことと大型ミサイル用ハードポイントを追加したことだ。ロシアのTu-22MバックファイヤーがKh-22またはKh-32対艦巡航ミサイルを機体下部に搭載するのと似る。

 パレードではH-6Nはペイロード未搭載でミサイルを積まない際に飛行性能を維持するためのプラグを付けるのを確認されている。中国が同機にどんな装備を搭載するのか今は不明だ。

 

だがトレヴィシックはCH-AS-X-13をH-6Nが搭載する第一の選択と考える。サウスチャイナモーニングポストはH-6Nは新型DF-100対艦巡航ミサイルおよびDR-8超音速偵察無人機も搭載するとしている。

 

DR-8は2019年10月の式典でトレーラーに乗り登場していた。同機はミサイル攻撃後の被害評価に投入されるだろう。

 

CH-AS-X-13を搭載したH-6N編隊は米海軍や同盟各国の部隊に大きな脅威になる。マルコム・デイヴィスはオーストラリアの戦略政策研究所の主任研究員で「同装備の有効射程距離とH-6N自体の航続距離を組み合わせれば、中国はグアムまでを攻撃範囲に収める。また対艦モードにすれば水上艦も同様に攻撃対象となる」

 

一方、中国官営の環球時報はH-6Nや新型ミサイルよりもModern Ships記事そのものをとりあげ、記事は絵空事としている。「掲載された画像はコンピュータ合成であり、構想図に過ぎず、何ら裏付けはない」と一蹴している。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Watch Out: China Has a New Bomber-Launched Anti-Ship Missile

September 14, 2020  Topic: Technology  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaMilitaryTechnologyNavyMissilesA2/ad

Watch Out: China Has a New Bomber-Launched Anti-Ship Missile

Meet the CH-AS-X-13.

by David Axe 

 

David Axe served as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This first appeared in 2019 and is being reposted due to reader influence.

Image: Wikimedia Commons


2020年9月17日木曜日

米空軍の第六世代機プロトタイプはすでに完成、初飛行している。

 空軍はロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機でいまだに問題解決が続く一方で、次世代戦闘機の試作型を秘密のうちに制作し飛行させている。

 

「実寸大の飛行可能実証機が完成し飛行もしており、これまでの記録を破った」と空軍次官補ウィル・ローパー博士(調達・技術・兵站担当)がDefense Newsの取材に答えている。ローパーは空軍協会の航空宇宙サイバー会議に先駆け同取材に応じた。「これまで誰も試したことがない方法で次世代機を製造する準備ができている」

 

試作機は次世代制空戦闘機Next Generation Air Dominance (NGAD) 事業の一部だが、実態はほとんどわからず、空軍はネット接続装備のファミリーを開発しようとしている。一部は有人操縦機になるだろうが、無人機他も空中で、宇宙さらにサイバー空間に投入されるだろう。

 

 

 

ローパーは試作機の何機が飛行しており、国防契約企業がどこかも明かしていない。またフライトがいつ、どこで実行されたのかも明していないし、有人操縦だったのか、一部有人操縦だったのか、あるいは無人操縦だったのか、さらに同機がステルス性能を有しているのかについても口を閉ざしている。

 

 

一方でローパー発言は謎に満ちている。

「かつてないほどの複雑なシステムの実現が近づいており、デジタル技術をすべてに応用し魔法のような成果を実証している」

 

動き出したNGAD事業

 

NGADは2017年に始まったが、ほとんどが構想段階だ。今年6月になり、空軍関係者から「試作」の話題が出てきた。作業にはモデリング、と重要ハードウェア、ソフトウェアの検討が含まれる。

 

ということで現在の試作機は技術実証用であり、構想の実現性を示すべく、リスク低減策の検討用に使われている可能性があると、The Drive.com が伝えている。

 

空軍の予算書を見ると、NGADの主要性能には「生存性、攻撃力、持続力を各種作戦で実現すること」とある。空軍の2021年度要求では10億ドル程度を求めているとTask and Purposeが伝えている。2020年度は9億ドル、2019年は4億ドルだった。同事業では2025年までにさらに65億ドルが必要との試算がある。

 

F-35の先に

 

空軍ではNGAD以外にF-35、F-15EXの調達が動いており、米海軍も独自にF-35Cの先に来る第六世代機の調達に向かっている。

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海軍はこの機体をF/A-XXと呼び、こちらも秘匿したままだが、F/A-18E/Fスーパーホーネット後継機といわれる。

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F-35が一兆ドル規模になりながら問題を抱えてたままなのを見れば、空軍海軍が別の選択肢を検討するのは賢明な動きだろう。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

The U.S. Air Force Has 'Built' and 'Flown' Potential 6th Generation Fighter

September 16, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-35F-226th Generation FighterU.S. Air ForceMilitary

by Peter Suciu

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.


2020年9月16日水曜日

T-7AはeT-7Aに名称変更。デジタルエンジニアリングによる機体製造の最初の例となる。

 後調達する機体の設計テストはデジタル仮想空間で行ってから実機生産に入る、と空軍長官バーバラ・バレットが空軍協会主催イベントで発表した。

デジタルが基本の設計、開発、製造で調達そのものが変わるパラダイムシフトとなる。その例がボーイングT-7Aレッドホークで同機は今後はeT-7Aと呼称する。空軍省は新構想による機体をデジタルeシリーズとする。


「デジタルエンジニアリングの可能性を現実に移す努力を各社に促す意味でも、空軍省はウェポンシステムの新名称として『eシリーズ』を立ち上げます。航空機材、衛星、兵装システム他でデジタルエンジニアリングで実現した装備に『e』の呼称を前につけていきます」

 

第一例となったeT-Aレッドホークでは先にモデルを作り、3Dデザインツールで組立工程を8割削減し、ソフトウェア開発時間は半分にできた。コンピュータ内の存在だった機体が36か月後には初飛行していた。

 

その他装備品でもデジタルエンジニアリングの威力を生かし、設計試験の時間を減らしている。今後も多数の機材調達に活用される。

 

空軍関係者によればeシリーズのデジタル調達事業では最初から最後までデジタル環境かつすべてネット接続された環境でほぼ完ぺきなレプリカを作成し、現実の装備品の姿を検討する。前例のない迅速かつ柔軟な対応が可能となり、仮想要素を数千どころか数百万単位でマシンのスピードで設計し、最適装備に仕上げることが可能だが、最終的に製造に移るのはその中で一つだけ最良の選択となるという。■


この記事は以下を再構成したものです。デジタルなので「d」かと思ったのですが。


SECAF unveils new “eSeries” classification in nod to Department’s digital future

By Secretary of the Air Force Public Affairs / Published September 14, 2020


韓国KF-Xが4.5世代機でF-35を上回る機体価格になる....海外市場での訴求力はあるのか

 


国はF-35AライトニングIIステルス戦闘機計40機を購入すると2020年6月に発表した。先行調達分13機に追加する。

 

さらに2020年8月に入り、国防整備計画(2021年-2025年)の一環として空母一隻の建造計画も発表し、中国、日本と競合する態度を示した。韓国の空母は全通型甲板といわれるが、垂直着陸型F-35Bの導入に踏み切るか明確でない。

 

現実味のあるシナリオは韓国製空母に国産KF-X多任務機を導入する案だ。KF-Xの初飛行は2022年予定。同機は最高速度1,400 mph(約マッハ1.83)、航続距離約1,800マイルでペイロードは7.7トンとなる。

 

これは「ニュース」といいがたい。というのはKF-X構想は2010年に韓国とインドネシアの共同開発事業として発表されており、昨年のソウルADEX2019見本市まで同機の詳細は不明のままだった。販促ビデオで高性能ぶりをうたうものの、気になるのは同機が4.5世代機と称されていることで、韓国が同機を空母搭載すればF-35Bより一歩後退する機材となる。

 

 

韓国航空宇宙工業(KAI)が試作型一号機の製造を進展中とされ、機体の画像があちこちに現れてきた。KAIは同機は単座型・複座型を並行生産し、主翼に各三点のハードポイントがあり各種兵装あるいは燃料タンクを搭載可能とするが共通だ。機体本体下にミサイル四発を搭載する。

 

相当の性能の機体になっても第五世代機にならないまま、機体価格の問題がついてまわる。Eurasian Times記事では航空専門家の見解としてKF-Xの価格はロッキード・マーティンF-35を上回るとある。KF-Xは韓国史上最大の国産装備開発事例となるが、記事では政府は8.6兆ウォン(70億ドル)を投じているとある。

 

本生産が始まり、韓国空軍(ROKAF)向け引き渡しが2026年に始まるころには政府は10兆ウォンを追加投入しているはずだ。Forbes.comはKF-X機体単価を約130百万ドルとみており、F-35の2019年価格以上となる。

 

F-35に関してはロッキード・マーティンが価格低下を実現している。これが海外で関心を集め、F-35は今のところ海外導入実績のある唯一のステルス戦闘機になっている。韓国も海外市場の関心を集める機体が作れるかは未知数だ。

 

韓国は老朽化進むマクダネル・ダグラスF-4D/EファントムII、ノースロップF-5E/FタイガーIIの更新機材として120機を必要とするが、KF-Xは非常に高額な選択肢になる可能性がある。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

South Korea's KF-X Stealth Aircraft Could Cost More Than an F-35

September 11, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: South KoreaKF-XStealthF-35North KoreaMilitary

South Korea's KF-X Stealth Aircraft Could Cost More Than an F-35

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.

 

Image: Korea Aerospace Industries​.

 


2020年9月13日日曜日

新次元の長距離精密攻撃ミサイルで米陸軍が中国海軍艦艇を攻撃する日が来る

Lockheed Martin

 

 

陸軍は最大500キロ先を移動中の水上艦船をとらえ破壊する能力を2025年までに実現する。その手段として精密打撃ミサイルPrecision Strike Missile (PrSM)の開発を急ぐ。同ミサイルは異次元の攻撃能力を有し、精密かつ高性能標的捕捉効果をもたらす。

 

PrSMは最初は対地攻撃用だったが、標的捕捉用に高性能マルチモードシーカーを搭載して柔軟な標的対応が可能となり海上目標攻撃も可能となる。

 

このたび新型標的捕捉シーカーによる航空機からの「キャプティブキャリー」発射テストが終了し、実戦配備に道が開いた。

 

「初回テストは成功だった。防空ネットワークに接続したセンサー多数を使い、長距離から目標多数を攻撃するのが狙い」と長距離精密火力実現機能横断チームLong-Range Precision Fires Cross Functional Team長のジョン・ラファティ准将がNational Interest取材に応じた。

8.4M

5.1Problem China's J-20 Stealth Fighter Doesn't Have a Gun

 

新型シーカーの技術詳細は保安上の理由で不明だが、ラファティ准将の説明では米陸軍がめざす複合装備運用Combined Arms Maneuver構想さらに重要なマルチドメイン作戦Multi-Domain Operations構想のめざす性能に発展する余地がという。

 

ラファティ准将は同装備の開発は順調に進行中と述べ、メーカーのロッキード・マーティンが予定より一年早く基本設計を完了したのが大きいという。「議会からは開発を加速し2025年までの完成を求められている」

 

この装備が登場し、次世代照準技術が加われば、陸軍にアウトレンジでの攻撃能力となり、安全なスタンドオフ地点からの攻撃に道が開く。PrSMがあれば敵レーダー、防空網や空母への遠距離からの攻撃が実現する。

 

米海軍のトマホークの900マイル射程には届かないが、照準技術の向上でトマホーク新型では不可能な効果も可能となる。海軍のトマホークでは飛翔中に方向転換が可能となり、海上航行中の艦船を攻撃できる。従来は固定標的対応だった装備品に全く新しい可能性が生まれるわけだ。陸軍が陸上発射型トマホークの開発にあたっていることにも興味を感じる。

 

新型照準シーカーが実現すれば現場指揮官に移動中の装甲部隊や歩兵部隊を攻撃する手段が生まれる。

 

シーカーに採用する新技術の内容がまったくわからないが、複数モードのシーカーを搭載し各種技術と組み合わせればよい。RF誘導、レーザー、赤外線の応用が可能だろう。

 

新型センサーではネットワーク技術が使われているようで、ラファティ准将はこれでマルチドメインでの照準を実現すると言いたいのだろう。標的情報は無人機、航空機、前方配備統制官さらに艦艇から入ることで全く新しい形の攻撃手段となる。

 

この構想の一環としてラファティ准将から陸軍が高優先順位をつける統合戦闘指揮システムズIntegrated Battle Command Systems (IBCS)についての言及があった。これは網目のようにレーダー他センサー各種をつなぎ、標的情報をリアルタイムで共有するもので、従来のバラバラで独立した戦闘単位を一変させるものだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Precision Strike Missile: How the U.S. Army Plans to Sink a Navy

September 12, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: PGMsU.S. ArmyMilitaryInnovationMissiles

by Kris Osborn

 


 

2020年9月12日土曜日

F-15EXは米航空宇宙産業の新しい発展に道を開く存在になる----ヒント デジタルセンチュリーシリーズ

 ーイング、国防総省、米空軍は旧型機により米航空宇宙産業に新しく学習させられるだろうか。

 

空軍はF-15EXの大規模調達を複数年度で実施すると発表した。F-15EXはF-15C/D型の更改機材とみられていたが、最新報道によればF-15Eの後継機にもなるという。

 

F-15EXは旧型F-15の機体に技術革新を盛り込む構想だ。機体こそF-15だが、内部にこの30年間にわたる改良点が見られる。

 

F-15生産は海外向け販売でここ数年維持してきたが、連続生産が可能となり生産ラインを維持できる。F-15Eに交代する構想では以下が盛り込まれている。

 

- F-15とF-35で重複するミッションもあるが別個のミッションもあり性能も異なる。

- F-15EXの性能は既存F-15各型を大きくしのぐ

- 高額出費につく耐用年数延長改修が不要となる

 

F-15EXにより米空軍はF-15旧型の任務を新型かつ高性能の機材で引き続き実施できる。

 

興味を感じさせるのがF-15EXがデジタルセンチュリーシリーズ(DCS)へ道が開く可能性だ。これには空軍で調達を取り仕切るウィル・ローパーが絡み、画期的な機材を少数生産で多数型式そろえる構想で、オープンアーキテクチャアを採用する。ローパーは以前のセンチュリーシリーズを振り返り、性能面で凡庸な機体が相次いで登場し、F-4ファントムIIを待つしかなかったこと、有人機偏重の傾向を踏まえ、DCSでは無人機に重点を移すと表明している。

 

DCS構想の中心にデジタルエンジニアリングがあり、設計と製造を分離し、3Dプリント他の高度製造技術で補修部品や整備の問題を解決できる期待がある。もっと重要なのが新技術の継続的採用で、これに対しステルス機では緻密な要求を設定したため調達が遅れてしまった。「デジタルセンチュリーシリーズ」は従来の機材調達の考え方を一新させ、米航空宇宙産業の実質的な再編の可能性を秘める。

 

とはいえ、F-15EXはDCSの第一弾ではない。F-15EXにはDCSが想定する技術手段多数が使われているのは事実で、高性能コンピュータモデリングの採用やモジュラー構造機体になっているが、DCSと別の存在だ。知的財産の取り扱いでも異なり、ボーイングはF-15EXの知的所有権大半を保持するが、DCSでは空軍が知財を完全所有する形になる。

 

だが、だからといってF-15EXがDCSのテスト例にならないわけではない。ボーイングからはF-15EXでは迅速改修に道を開く設計上の特徴が盛り込まれており、新型戦闘管理システムも採用しているとの説明が出ている。特に後者はDCSの中核部分だ。

 

無視できないのはF-15EXによりボーイングは今後も戦闘機ビジネスに残ることだ。ローパーがDCSで狙う一つに業界寡占化を食い止めることもあり、1990年代から顕著になった合併統合の流れを逆行させたいとする。DCS支持派には軍用航空宇宙作業の一部で国有化を主張する声もあり、ソ連時代の国営設計局と製造拠点の分離状態を思わせる構想だ。米国防産業の経緯や米国の政治体制を踏まえると、さすがにこれは行き過ぎだろう。とはいえ、デジタルツールを駆使しF-15EXの設計製造をこなすボーイングの実力を見れば、空軍の次期機材開発でも同社が重要な存在になりそうだ。

 

F-15EXは決して安価な機材ではなく、F-35Aの機体価格を上回りそうだ。空軍は悩みの種だった既存機材と技術進歩のバランス問題を解決できそうだ。F-15EXの教訓をDCSに生かし、空軍の有する各機材に高度技術を逐次導入する課題が解決できる。しかし、この実施は未経験分野であり、超大国間対決が中心課題に戻ってきた現況で旧型戦闘機の生産を続けることの是非は長期間にわたり有効な装備品を実現する能力が米国航空宇宙産業にあるのかという公然たる疑問につながるはずだ。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

Could the F-15EX Transform the U.S. Defense Industry?

September 11, 2020  Topic: Technology  Blog Brand: The Buzz  Tags:

by Robert Farley 


Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005.  He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph.D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.